喜多品老舗
こちらは1619年(元和5年)創業と言う、400年の歴史を持つ鮒鮓店です。
かつてお店の存在を知った際、頂いてみたい!と思ったのですが、訪問を先延ばししていたところ、なんと2012年に閉店してしまいました。
老舗ゆえの後継者不足か…と思い、ニュースを聞いた時には意気消沈。
しかし、それは単なる自身の間違いでした。
長女の北村真里子さんが18代目を継がれ、旦那さんと共に2013年に復活。
発酵食品として「マニアック」な鮒鮓を継がれる方がいるなんて!と感激を覚えました。
ただ、「マニアック」であっても今後の可能性が大きいのが鮒鮓です。
「発酵料理」が世界的に注目を集め、滋賀には名店・徳山鮓さんもあります。
鮒鮓は食文化が多様化する現在だからこそ、絶やしてはならない伝統料理だと思います。
当ブログは微力ではございますが鮓・鮨・寿司の専門メディアである以上、世間に伝えなければ!是非とも応援しよう!と足を運びました。
喜多品老舗さん秘伝の製法
こちらの鮒鮓は何と3年もの間熟成されるところが特徴となります。
製法の通り名は「百匁百貫千日」。
百匁(375g)の鮒を、百貫(375kg)入る木桶で、千日(約3年)掛けて漬ける事を意味します。
つまり、18代目が作られる鮒鮓は、2016年頃から頂けるようになった模様です。
鮒鮓は通常の家庭だと、春に捕獲した鮒を3~4ヶ月塩漬けした後、土用(7月下旬〜8月上旬)の頃に本漬け(お米と漬ける)して、師走から新年のお祝いの時期に頂くのが常となります。
こちらでは、2年も塩漬けしてから半年本漬け、更にお米を入れ替えてまた半年本漬けと、3年も熟成させる、いわば長期熟成。
代々伝わる木桶で漬け込むため、桶に常在する乳酸菌が固有の味を生み出します。
使用する鮒は勿論、ニゴロブナ(いお)。
琵琶湖の固有種で一時期は絶滅が懸念されていた魚となります。
スポーツフィッシングの弊害で、ブラックバスやブルーギルによって稚魚が駆逐される状況でしたが、滋賀県の尽力により近年は漁獲量が回復基調にあるようです。
お店のある大溝地区は独特の景観が魅力的。
店内に昔の写真(前掲)が飾られておりましたが、現在も通りに水路の名残を残しております。
そして、町自体が発酵に適した気候なようで、他にも日本酒や調味料の蔵が密集しております。
日本酒は【萩乃露】や【雨垂れ石を穿つ】で有名な福井弥平商店。
お酢は淡海酢、味噌は西川みそ糀店などのお店が連なっております。
訪問した際は閉まっておりましたが、魅力的なお店が目に付くので、今度は訪問してみたいと感じました。
さて、この度頂いたのは、【飯漬】と【鮒寿し発酵和ごはん】。
前者は伝統的な鮒鮓で、後者はアレンジ商品となります。
喜多品老舗さんの鮒鮓
【鮒寿し発酵和ごはん】
鮒鮓の「漬け地」であるお米部分は「飯(いい)」と呼ばれ、廃棄される事が多かったようです。
しかし、乳酸発酵の触媒となる米は酸味と旨味を含み、唯一無二の味わいがあります。
最近は飯を巧みに利用して、ソースやディップ、デザートにまで用いるお店が増えております。
こちらでは刻んだ鮒鮓と柚子を混ぜ、食べやすいように工夫されています。
【飯漬】
卵の美しさと美味しさこそが鮒鮓の真骨頂。
旨味が凝縮された身の部分も美味しいのですが、卵は食感は言わずもがな、発酵による酸味や旨味をまとっており、他の発酵食品には無い魅力を有しております。
こちらの鮒鮓は「香り」が割としっかり目で、長期熟成だけあり凝縮感がある鮒鮓だと思います。
乳酸発酵による酸味がしっかりあり、旨味が強いです。
皮は凝縮により食感が強めです。
なので、そのまま頂くだけでなく、お茶漬けで頂くのも美味しいです。
筆者は削りたての本枯節で出汁を取り、薄口醤油少々を加えて出汁茶漬けにしました。
鮒鮓特有の香りが弱まり、風味が活き、旨味と酸味が出汁に馴染み、これぞ鮒鮓茶漬けの美味かな!と痛感しました。
滋賀には前述の徳山鮓さんのみならず、魚治さんや阪本屋さんなど、歴史ある専門店が点在します。
また、道の駅に立ち寄ると、小規模生産者さんの様々な鮒鮓 が並んでいます。
自分自身、初めて滋賀を訪れた際には鮒鮓の多様性と文化として定着している強さに驚きました。
それと同時に、鮒鮓を初めて頂いた時には、パンチの強さに圧倒されました。
しかし、日本酒との相性は抜群であり、何度か頂く事で鮒鮓ならではな魅力を感じるに至りました。
また、魚治さんが営む湖里庵さんで【鮒寿し懐石】を頂く事で、鮒鮓の魅力と可能性を痛感した次第です。
湖国、滋賀の味。
悠久の歴史が誇る味ですが、未来の味でもあります。
喜多品老舗さんのお店の情報
喜多品老舗(食べログのリンク)店名:四○○年鮒寿し 総本家 喜多品老舗(400ねんふなずし そうほんけ きたしなろうほ)予算の目安:【飯漬】5,400円〜、【鮒寿し発酵和ごはん】540円
最寄駅:近江高島駅より800m
TEL:0740-20-2042
住所:滋賀県高島市勝野1287
営業時間10:00~17:00
定休日:月曜、木曜(祝日の場合は翌日)
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