
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
2025年5月に新たな実力店が誕生します。
お店の名前は「みつい」で、場所は麻布十番。
親方の三井 祥さんは名門「青空」さん出身で、抜群の技量を持つ職人さんです。
そのように感じた理由は、プレオープン営業でお伺いしたにも関わらず、確かな技術が発揮された鮨だったからです。
僕は普段はオープンからしばらく経って訪問することが多いので、安定感の高さに驚いた次第です。

また、三井親方はSAKE DIPLOMAを持つ貴重な職人さんです!
よって、日本酒の提案がズバ抜けている鮨職人さんなので、その点においても応援したい。

今後注目を集めるのは間違いありません。
魚への手の加え方にセンスを感じます!

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のっけから脇道にそれて恐縮ですが、僕が人生で初めてお伺いした高級鮨店は「青空」さんです。
20代後半のお金が無い時でしたが、アメリカから帰国した親友を連れていき、おもてなししました。
当時の手取りの1/3近くが吹っ飛ぶ事態となりましたが、親友に感動してもらえて、僕も鮨愛が深まったので大切な思い出です。

そして、「みつい」の三井親方は、その「青空」さんで8年半の修行を積まれた正当なる継承者。
2021年7月に「豪龍久保」の姉妹店である「鮨 祥」の漬け場に立ち、この度、2025年5月1日に「みつい」をオープンされました。
三井親方は長野県上田市出身で、沖縄出身の女将・三井 美紀さん、中学一年からの付き合いという料理人・君波 真吾さん(なんと人気イタリアンのドンチッチョ出身)と組んで「みつい」を切り盛りされています。

コースならびに仕事の特徴としては、古典の温故知新と日本料理の確かな技術を感じさせつつ、それでいて鮨店の範疇で最大化している点が魅力だと感じました。
行き過ぎたところが無く、魚味を最大化するという鮨店らしい本分を守りながら、オリジナリティや独創性を表現されています。
一部の仕事に「すきやばし次郎」より連なる小野二郎親方が編み出した仕事を感じさせつつ、内容のほとんどはオリジナルの仕事と構成です。
塩気や油脂の使い方についても、意識的にコントロールされていて、繊細です。

店内には鮨店としては異例の竈(京都で言う「おくどさん」)が鎮座しています(前掲の写真もご参照)。
さらに炭火を巧みに操りつつ、行き過ぎたところが無い点にセンスを感じます。

生命線のシャリについては、塩気が適度に強めでキリッと効いていて魅力的。
「青空」さんや「すきやばし次郎」直系のお店よりも塩味のアタックが軽めで、お伺いしたところ3/4ほどにしているそうです。
しかしながら、お酢はミツカン白菊のみ。
系譜を感じさせつつ、独自の調整を行っておられます。
「みつい」さんのおまかせコースは27,500円と、現在の鮨相場からするとホッとする価格設定です。
「鮨 祥」は、おまかせ33,000円、42,000円(海胆食べ比べ・ノドグロ付き)だったので、ありがたい限りです。
また、ペアリング料金は7,700円なので、お酒が好きな方は是非とも頼んでみてください。
ペアリングと言っても、酒肴に日本酒2種類しか合わせない点に、握りと向き合わさせる硬派な精神性を感じました。
2025年4月に訪問した際にいただいた内容です。

スパークリングで低アルコール日本酒を1杯目とは、実に素敵なチョイスだ。甘味のある青メロン、ふくよかな印象のお米、酸味を予感させるヨーグルトとともにコクを感じさせる生クリーム、ライチ、軽いミネラル香が特徴的。いただいてみると、ふくよかな甘味からスッキリした酸味が広がる。うすにごりらしいコクに加えて、酸が効いたスパークリングなので爽快感と厚みを合わせ持つ。泡は微細で、余韻が軽い。これで酒肴3品をカバーする。

銚子産で、花山椒は和歌山県産。出汁は浅蜊出汁とのことで意外性がある。そして、金目鯛と浅蜊出汁の思わぬ良相性に相好を崩す。金目鯛自体の仕立てはピュアだ。金目鯛が人口に膾炙して久しいが、握りではなく酒肴、それも1品目に提供するのが良い。脂を前面に打ち出すこともなく、本質的な調理と取り合わせで独自性を表現し、意外性へと収斂させる。
これに対するペアリングの妙味は、お酒の甘味を寄せて、酸味と泡で余韻を切る方向性だ。料理を決して邪魔せず同調も果たさせるペアリングは、旧態依然とした「料理に寄り添う酒」の使い方ではなく、紛れもなくペアリングを考慮したうえでの選択である。

富山県産。4月上旬に富山現地でホタルイカを満喫した身としても、大きさに目を奪われた。そして、皮はぷっちりと弾けて中はとろりと。季節らしいホタルイカの持ち味は、叩くよりもシンプルに提供することで伝わる。
お酒はハッキリとマスキングの方向性。お酒で清涼感を与える。酸味があるので、余韻に味のもたつきが無い。

東京湾竹岡産で、8.5キロ。鮟肝は安定感のある余市産。甘海老は塩麹とくーす(泡盛の古酒)に漬けていて、軽くむっちりしつつ、とろりととろける食感だ。
虎河豚に柑橘を加えているので、スパークリングと抜群の相性を示す!お酒の酸味が同調し、甘味を添える。そして、お酒の酸味が行き過ぎることなくバランスが取れるのは、虎河豚の旨味が強いためだ。これは確かなマリアージュを感じる提案であった(これは鮨店において凄いことである)。 なお、甘海老の仕事に合わせて、前割のくーすも提供される。

忠孝酒造の三年もの。女将さんのご出身、沖縄のエッセンスを加えているのがほっこりする。

軽いミルキー香があるが、全体としては穏やか。お酒の苦味でマスキングをしつつ、重くならない方向性のお酒で米の旨味を乗せる。お料理とお酒を合わせた時にお酒の旨味が開くペアリング設計で、これはアリだ。

銚子産で、紛れもない「初鰹」である。初鰹は「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」の時期にいただくに限る。炭火で炙った後に藁で軽めに燻すタタキの仕事。初鰹らしい酸味を活かしながら、皮下の脂を溶かして調味料的に脂の甘味を添える仕事である。暖かくなり始めた初夏に清涼感を覚える酸味と血の香りで、脂によって食欲も刺激される。

対馬から直接仕入れているそうだ。炭火焼きの焼き鮨とはノドグロの扱い方を心得ておられる。ノドグロは生よりも焼きの方が圧倒的に美味しく、炭火焼に勝る調理法は存在しない。厚みがあるので炭火焼き映えする。使用しているキュウリは、宮崎県産の「ワンタッチきゅうり」だそう。産地でキュウリに触れるのは収穫時の1回のみなので、「ワンタッチ」と命名されている。確かに、香り良く瑞々しいキュウリだ。

甘味を上品に付けて、酸味が広がりつつ辛味と旨味があるガリだ。

米の甘味や旨味を寄せつつ、アル添らしい軽いキレがある。甘味があるので、モダンな鮨の冒頭に幅広い方の心をつかむ酒使いだと言えるだろう。軽くしゅわりと微発泡もある。

名刺代わりの一貫目は、長井漁港の長谷川さん仕入れ。アオリイカ特有の甘味に加えて、口の中で沈むような独特の食感を楽しませた後にむっちりしながら甘味が高まってゆく。甘味だけでなく食感の波があり、ひとえに包丁が活きている。ピュアな香ばしさも余韻にある。

室津産。甘味がふんわりと広がり、磯の香りの後にフルーティーな香りが波状的に広がる。ワタを楽しませる仕事で、ネガティブな香りも味も無い。
ペアリングについては、お酒の甘味を寄せる方向性でマッチする。

鮪に合わせるペアリング。味わい的にも提供方法的にもバッチリだ。特にトロとの相性は格別。

舞鶴産、定置網。能登の藻塩で提供。脂が強く、ほぼ瞬時にシャリと乳化する。コクのパンチが強い中トロで、やはりミツカン白菊と鮪のトロとの相性は非常に良い。系譜と同じ鮪3連発であるが、中トロから出される点はアレンジ。

柔らかく、しっとり、さっくりした赤身で魅力的な食感。軽い漬けにしつつ、ねっちりではない点に仕事へ意識的に向き合っておられるのが分かる。当日いただいた赤身は旨味が強く、実に旨かった。

脂の甘味だけでなく、香りも楽しめる大トロ。後味が良い。
【春霞純米、蒸し燗】は、大トロに最も照準を合わせているとの談だけあり、ペアリングの醍醐味を伝えてくれる相性だ。

皮の食感を軽く楽しませる〆と包丁の仕事。塩気、酸味ともに強すぎず、軽くジューシィな仕上がり。とは言えネガティブな要素はゼロで、小鰭の香りと旨味が味わえるサッパリ方向の小鰭だ。

鰹と昆布出汁で、スッキリと口直し的な提供。蕎麦の実は軽くとろりとしていて、甘味がある。塩気は強めずに落としている点が素晴らしい。

【而今】らしい華やかなフルーツ香が主体。提供タイミングに「?」と思ったが、いざ次のタネを見て納得した。使用する銘柄の提供タイミングは流れだけでなく合わせるタネにも依拠する。

尾の身。生姜と浅葱(要は当たり葱の原料を当たらずに)。柔らかく香りふくよかで甘味がしっかりしている。脂がじゅわりと滲む。

甘味はもちろんのこと、むっちりとした食感が実に良い。酢橘を少量使用。

軽く脱水しており、昆布〆との事だが、昆布の旨味を浸透させるよりも脱水が主眼の昆布〆だ。ねっちり、ぷちりと二重の食感を楽しめる。

青森の新根の紫海胆。ピュアで美味い海胆だ。甘く、香りが良い。海胆らしい香りを楽しませてくれるのは嬉しい。

鮨店では決して見ない銘柄が投入されて驚いた!甘味をシロップ的に合わせて香りをスパイス的に使う。これはこの銘柄ならではな味と香りの合わせ方。

こちらも対馬から直で仕入れているそう。しかも、親方自ら神経〆!脂の甘味があり、身はほろほろ、しっとり。香りが良い穴子である。

海老の甘味をたっぷりと楽しめて、味噌もまろやかだ。信州味噌かな?

芝海老と大和芋を使用し、甘味も効かせた玉子。「すきやばし次郎」の系譜らしいカステラだ。しかし、それを敢えて冷やして提供されているのは工夫の賜物。お洒落。

クルミのアイスクリーム。卵黄を使わずに作るセミフレットだ。クルミのロースト香とふわっと軽やかなテクスチャーが魅力である。
「みつい」さんは、OMAKASEでWEB予約が可能です。
店名:みつい
予算の目安:おまかせコース27,500円、ペアリング7,700円
TEL:03-4400-3023
住所:東京都港区麻布十番3-10-2 THE CITY 麻布十番 LIBERTA 5F
最寄駅:麻布十番駅から400m
営業時間:17:00~
定休日:日曜、不定休
修行先の「青空」さん

親交があり、女将さんも一時期研修に入っていた「鮨ゆうき」さん

日本酒ペアリングを実践する実力派職人の登場にテンションが上がる、すしログ(@sushilog01)でした。
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