こちらは今は無き京都の「あじ花」で修業された方の日本料理店です。
お店は赤坂のクラブビルに入っており、あたかも銀座8丁目の如し!
僕は水商売に一切興味が無いので一瞬怯んでしまいましたが、どうやら周囲の再開発に伴い、続々と当ビルに移ってきた模様です。
しかし、店内に入ると穏やかな時間が流れており、逆に「隠れ家感」があって、僕は心地良いように感じました。
御料理を頂いた感想としては、東京の日本料理店としては非常に琴線に触れました。
この度は椀ものが無く、松茸の土瓶蒸しでしたので、吸い地による評価は保留となりますが、シンプルでありながら強い印象を与える、質実剛健な御料理だと思います。
そして、素材で創作性を顕されている点が面白い。
具体的に言うと、焼きものに鵡川のシシャモを用いたり、牛肉の代わりにナガスクジラのタタキを供されたり。
個人的に東京における高級食材の足し算に辟易する昨今、ご主人の試みは素晴らしいと感じました。
異なる季節でどのように表現されるのか気になるお店なので、時を置いて再訪したいと感じた次第です。
この度の内容
・先付:いくら、銀杏
・椀もの代わりの松茸の土瓶蒸し
・お造り:真鯛、カマス
・焼きもの:シシャモ
・お凌ぎ:鯖寿司
・生麩の利休焼き
・穴子と九条葱の小鍋
・ナガスクジラのタタキ
・進肴:ボタンエビ、帆立、毛蟹の松の実の酢のもの
・お食事:舞茸と秋鮭の炊き込みご飯、留め腕、香の物
・水菓子
日本酒は30種類ほど用意されているとの事。
この度は、福祝・特別純米ひやおろし、永寶屋・辛口純米八反錦、万齢・特別純米を。
いくら
ねっちり漬け込み、おろしに土佐酢を使用してサッパリと。
銀杏
大ぶりでホクホク。
椀もの代わりの松茸の土瓶蒸し
松茸は、今年何度か頂いたブータン産。
全国各地で不作の悲鳴を聞いた次第。
ブータンは高地なので虫食いが無く、香りの質は高い。
そして、それを活かす仕事が素晴らしい。
出汁は松茸を活かすレヴェルで鰹を利かせ、旨味のコントラストにより松茸の輪郭を強める。
松茸本体はしっかりした食感で、旨味も割とあるが、これは土瓶蒸しで頂くからこそ満足感が高まったのだと思う。
お造り
鯛とカマス、藻塩と松前醤油で。
カマスは横須賀産で350gと肉厚!
脂がしっかり乗っており美味しく、香りも追ってくる。
鯛はブランド、明石産。
力強い旨味と何よりも香りが産地を物語る。
塩水海胆
焼きもの
北海道・鵡川町(むかわちょう)の本シシャモ。
本来シシャモに「本」を付けるのは本質的に間違いなのだが、世間に出回る「シシャモ」の多くはキャペリン(標準和名カラフトシシャモ)と言う魚。
味わいは異なり、ノルウェーやカナダから輸入されている。日本人ならば好きな人が多く居酒屋の定番おつまみだが、意外にもシシャモでない事を知っている人が少ない。
「本シシャモ」は漁期が10月初頭から11月中旬までと極めて短く、北海道の鵡川町こそが産地の代名詞となっている。
そして、多くが現地で加工されて出荷される。
「高級な日本料理店でシシャモ!?」と思われた方もいらっしゃるかもしれないが、このような背景があるため、東京で生の状態から頂けるのは極めて嬉しい事なのだ。
しかも、調理技術(火入れ)が秀逸。
超しっとりと仕上げられており、特に卵の食感は優しく軽やか。
高い技術でシシャモを焼くとこうなるのか!と現地でも味わえない悦びがあった。
写真は、手前がメスで、奥がオス。
シシャモは雌雄で味が異なるので、両方出される点も気が利いている。
ざっくりと述べると、オスは力強い香りと旨味で、メスは矢張り卵の食感に妙がある。
10月上旬の漁解禁のタイミングであれば、子を持つ前のメスを狙える。
魚は子を持つと味わいと香りが変わるので、いつか頂きたいところ。
鯖寿司
鯖はぷるぷる、パツパツした食感で、香りがズバッと抜けた後、脂の旨味がグングンと高まる。
即ち、良い〆加減である(笑)
酢飯は硬めに炊き上げ、軽い甘みが付いている点は京都出身らしい。
生麩の利休焼き
酸味の利かせている点が興味深い。
味噌は焼かれてカリッと香ばしく、胡麻が強めに利いているため、酸味が良い繋ぎとなっている。
穴子と九条葱の小鍋
穴子の滋味溢れる香りと九条葱の爽やかな香り。
立ち上がる香りと湯気に心が癒やされる。
ナガスクジラのタタキ
松茸を添えて。
肉のような繊維質に驚くも、牛肉に比べて脂の主張が無く旨い。
癖も皆無。
個人的に脂分が多い牛肉を出すよりも良いように感じるが、如何か?
進肴
ボタンエビ、帆立、毛蟹の松の実の酢のもの。
酢の酸味が柔らかく、ふくよかな甘みが付けられているため、ボタンエビの甘みが活きている。
各種北海道の恵による自然な甘みで牽引する酢のもの。
舞茸と秋鮭の炊き込みご飯
舞茸の香りに歓喜!
そして、秋鮭のサッパリした脂と香りを殺さずに調和。
エノキの食感がアクセントとなり、干し椎茸の旨味が活きている。
味噌汁にはボタンエビが使用されており、美味。
水菓子
梨、シャインマスカット、ピオーネ?(朧気です)
お手製のどら焼き
小豆は京丹波の大納言を使用。
実に風味が良く、粒を少し硬めに炊いて食感を加えている点が面白い。
そして、焼きたての生地が香ばしく、焼きたてのもみじまんじゅうのような喜びがある。
店名:詠月(えいげつ)
予算の目安:おまかせ13,000円、15,000円、18,000円、税サ別
最寄駅:赤坂見附駅から270m
TEL:03-6277-6293
住所:東京都港区赤坂3-11-7 ソシアル赤坂ビル4F
営業時間:月~金18:00~23:00、土18:00~22:00
定休日:日曜、祝日
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