秋田名物と言えば、きりたんぽ!
東京で頂いた際、それなりに美味しいものの、「何か違う」と感じておりました。
突き詰めて考えると、原因はお米部分の美味しさなのではないか?と思った次第です。
米どころの秋田の名物料理でありながら、お米の風味が弱いと言うのはおかしい。
さらに言うと、鶏の出汁も満足出来るものに出会えませんでした。
それに勘付いてから、どうしても美味しいきりたんぽを頂きたくなりました。
上質なお米と上質な鶏出汁を求めて、この度秋田に飛びました(本当にメインで)。
こちらのお店は大館にあり、きりたんぽにも出汁にも妥協を許さぬ専門店。
とは言え、わざわざ現地まで行って微妙だと心底悔やまれるので、秋田市から大館に移動し、乳頭温泉郷・鶴の湯や田沢湖と絡め、ドライブも兼ねて訪問しました。
大館??と思われる方は、同じルートを組まれると総合的に満足度がアップするかと。
…しかし、昔のきりたんぽや、とは実に惹かれる店名です。
これは工場生産や冷凍モノのきりたんぽが多いご時世へのアンチテーゼを込めた命名でしょうか?
尚、グルメ漫画の『美味しんぼ』にも登場したのは有名な話。
その後、このお店を調べて知った、「備長炭で焼きあげる手作りのきりたんぽ」、「大館産比内地鶏のガラだけを使い8時間かけて作るスープ」には多大なる憧憬を抱きました。
秋ながら雪が降りしきる日にお店に入ったところ、店内には出汁と舞茸の良い香りが満ちておりました。
心身ともに温まり、お腹が鳴る良い香りです。
この度は【きりたんぽ】2,000円に加えて、
事前予約がベターである【たたき】1,500円を頂きました。
先付
こちらが使用する鶏肉は、比内町でお店の為に飼育された特別なもの。
店内に掲示された鶏たちに期待を高められつつ、念願の実食!
まずはスープを一口頂いてみましたが、鶏の旨味が大変強く出ております。
そして、牛蒡の力強い風味が盛り上げてくれる。
醤油も色の濃さに比べて軽やかで最後までしょっぱくない。
そこで、満を持してメインのきりたんぽを頂くと、もっちりした食感に頬がほころび、
口の中には米の甘みがグンと広がります。
もっちり感と米の存在感は未体験のレヴェル。
現地に来て良かった!と心から感じました。
本当にお米由来の甘みが強く、風味も心地良いです。
しかも、煮詰めても崩れたり、ベチャッとしないところが凄い。
これは良いお米を丁寧に焼き上げて、新鮮な内に頂く事で成せるところでしょう。
鶏肉は力強い香りと食感ですが、それでいて歯切れが良い。
そこに、秋田県民が口をそろえて自慢する、当地の芹が名脇役を演じます。
清々しい大地の風味が絶妙なアクセント。
ネギも風味良く甘みが強い点が印象的。
舞茸は太く歯応えあり、香りも十分。
素材は全て大館産で、舞茸は天然に極めて近い栽培を行ったものとの事です。
鍋料理はシンプルでありながら素材を楽しむ上では究極的な料理の一つ。
一見するとざっくばらんな調理法ですが、
食べ手が出汁、具、調味料を引き算すると魅力が新たに立ち上がってくる調理法。
僕は自分で作る時は複数のアミノ酸を掛け算し、旨味の相乗効果を狙いつつ、調味料を引き算し、具の品数は最低限に止め、個々の素材でベストの火入れを目指します。
グダグダに出汁を取り、調味料と素材を全てブチ込む方もいますが、それは鍋に非ず。
本当の鍋は手数が多いものであり、こちらのきりたんぽ鍋には経験に裏打ちされた仕事を感じさせて頂きました。
【たたき】は鍋に入っている肉とは全く異なる楽しみがあります。
胸肉は繊維質一本が、長く力強い。
強い酸味に加えて旨味もしっかり。
もも肉は鍋の肉のように力強くも歯切れが良く、凄い旨味。
あと鉄分も感じさせます。
皮はぷるぷるながらに歯切れ良く、旨い。
胸肉ももも肉も、共に炙りの香ばしさが食欲を刺激します。
結論として、敢えて県外から伺っても十分な満足感を与えてくれる、全国の鍋料理店の中でも訪問価値の高いお店だと感じました。
芹が流通している時期に行くのが、鶏の状態的にもベストです。
きりたんぽとは、米、鶏、芹の三拍子が揃って最高の完成度となる事を体感しました。
コメ・トリ・セリが合言葉!
店名:昔のきりたんぽや
食べるべき逸品:絶品のきりたんぽと比内地鶏のたたき。
予算の目安:2,000円〜3,000円
最寄駅:東大館駅から1,000m
TEL:0186-43-4040
住所:秋田県大館市字大館75-5
営業時間:11:30~13:30、17:00~19:00
定休日:月曜
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