
こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
さて、福岡の「船越」さんは、急速に人気を高める気鋭の江戸前鮨店です。
僕はnoteのメンバーシップにご参加いただいている熊本の経営者の方から強い推薦をいただき、福岡旅行が決まった時点で予約を取りました。
確か旅行の4ヶ月くらい前だったかと思います。
結果として、早期決断して大正解でした。

親方の船越 久生さんは会席料理店と鮨店での修行を活かし、福岡の魚を見事な鮨へと昇華されています。
仕入れに甘んじること無く江戸前の仕事で独自の表現を志向する俊英。
さらに日本料理修行のキャリアを活かして独自のおまかせコースを設計されています。

福岡で「地に足の着いた実力派の鮨」を求める方にぜひ訪れていただきたい一軒です!
「船越」は船越 久生 親方が2024年11月にオープンした鮨店です。
船越親方は金沢の名店「片折」での日本料理修業を経て、福岡の人気店「菊鮨」で鮨を学んだ二刀流の職人さんです。
お店は福岡の中心地から離れた住宅街、野間にあり、建物は築70年を超える日本家屋です。
店内に入ると靴を脱いで上がり、角が鋭角的に美しく整えられた白木のカウンターが凛々しく迎えてくれます。
真夏らしく金魚が目にも涼やかな空間。

着席して間もなく、鮨店としては珍しい「鰹節をカンナで削る軽やかな音」が静かな店内に響き渡り、初手から期待感を高めてくれます。

船越親方の特筆すべきスタンスは、「酒肴には朝どれの鮮度優先の魚を選択肢、鮨種には仕事を施した魚を用いる」という明確なコントラストです。
魚が強い福岡において、単に朝どれの活きの良さだけに頼るのではなく、鮨種には脱水、〆、寝かせを効果的に施し、魚味を高めて江戸前鮨を編み出されています。

また、生命線であるシャリが美味しく、コースを通して安定している点も美点です。
福岡・大川の「庄分酢」の米酢8割に赤酢2割をブレンドし、修業先よりも酸味を穏やかに抑えつつ、塩気を利かせています。
もっちりとした粒立ちがあり、味が濃い九州の地魚に寄り添う端正なバランスです。
さらに煮キリには僕も大好きな糸島の「ミツル醤油」をブレンドするなど、調味料に至るまでテロワールと品質を考慮。
結果として、旅して訪問すべき鮨へと昇華されています。
それでは、実際にいただいた内容を紹介します。
8月の訪問時にいただいたおまかせコースの内容です。

食前酒ならぬ食前茶。アタックに華やかな和紅茶の香りが立ち、フィニッシュには緑茶的な清々しいニュアンス。胃袋と味覚を整えてくれる嬉しいおもてなし。
そして、日本酒はおまかせで注文。

初手は「山の壽 うたかたなま(141酒店別注)」。酢酸イソアミル系の上品な青メロンやマスカットを思わせる香りと生酒らしい若々しい香りが漂い、微発泡の爽快感と心地よい酸味、後口にジリジリと広がる苦味が秀逸。低アルコール設計で、コースの幕開けにふさわしい提案だ。

志賀島産の鮑はむっちりとした心地よい食感を楽しませつつ、歯切れが良い。鮑自体の風味は穏やかで、出汁を含めた全体の調和を志向する仕立てだ。合わせる玉子豆腐は卵の風味が優しく、昆布のまろやかな旨味が効いた吸い地が全体をしっとりと支える。

ともに福岡産。メイチダイはクリアで澄んだ香り。脂の乗りとともに豊かな旨味があり、後味を締める心地よい酸味と余韻の甘味が実に魅力的だ。
鯵は海苔と同じ海域で育ったものとのことで、脂は穏やかながら鯵特有の風味があり、海苔との協奏によって香りとコクが一層引き立つ。
ともに握りではなく刺身で提供する意義が味を以て分かる選択と仕事である。

続いてのお酒は「若波 TYPE2」。若波らしい軽やかな酢酸イソアミル系の香りに、クエン酸系の爽快な酸味が輪郭を描く(う記事を書く時に調べたところ、実際に白麹由来のクエン酸を使用しているお酒であった)。続く酒肴の味わいを邪魔せず、酸味が自然と同調する。

姪浜(めいのはま)で朝水揚げされた小ぶりの蝦蛄。穏やかな漬け込みに三杯酢を合わせ、カンナで削りたての鰹節を添える。鮨店でこの仕立ては珍しいが、この仕入れの蝦蛄が持つ香りと味わいを壊さず引き立てる丁寧な仕事だ。貴重なカツブシ(子持ち)もいただけて何よりである。

宮崎県産の香り高い胡麻を贅沢に使用。椎茸の滋味深い甘味とお酢の穏やかな酸味が調和し、後を引く香ばしさが食欲を刺激する。野菜を用いて記憶に残る一品を作られていて、鮨店では珍しいリズムを生み出す。

黄瀬戸の器に盛り、実に美しい景色を表現している。西京味噌に漬けつつも、むっちりとした繊維質の弾力と強い旨味はまさに九絵ならでは。添えられたへべすのほろ苦さと爽快な香りが、ねっちりした食感から滲む濃厚な脂を上品に引き締める。

合わせるお酒は「古伊万里 前」。カプロン酸エチル系の香りと甘味・苦味がしっかりとした、典型的な鑑評会出品用の吟醸酒を思わせる設計。

能古島のテングサを用いて作りたてを提供。プッチプチな独特の弾力ある食感と心地よい海藻の磯香が初手から印象的であり、自然な旨味があるところに驚いた。心太で旨味を感じたのは初めてかもしれない。

地物の車海老、出汁漬けにしたパプリカ、枝豆、椎茸を合わせた一品。饅頭でありながら涼やかな見た目で、味付けも洗練されている。

大根のべったら風、ゴーヤーの佃煮、白瓜。握りの合間に嬉しい箸休め。僕はガリを必須だと考えていないので、香の物も選択としてアリだ。ただ、ゴーヤーは流石に苦味が強いので、酢飯よりも白ご飯に合うと実感した笑 ただ、佃煮としては美味しい発見だったので即座に自宅で量産した。

地物の鯛を寝かせてしっとりとした身質に仕上げて食感は軽やかにしつつ、皮目から香ばしい脂と香りを引き出している。シャリと良いバランス。

昆布〆を施し余分な水分を抜きつつ、甘鯛自体の脂がじんわりと滲み出る。昆布の当て方が良い。結果として、むっちりとした食感から甘鯛らしい甘味が口いっぱいに広がる。

他の産地に比べて脂が軽やかで、澄んだ酸味と爽快な香り、そして喉越しに残る豊かな旨味の余韻が長く続く。今の御時世、縞鯵が真冬に揚がることもあるが、やはり夏にいただく方が印象深い魚である。香りと脂を踏まえ、他の夏の魚と比べると、個性が引き立つ。旬味とはその魚単体で成り立つものでは無いことを再認識する。

地物・糸島産の新子。皮目が柔らかく、脱水だけでなく酸味をきりりと利かせた〆加減。〆の仕事で新子の中に小鰭らしい味わいを表現しており、酸によって旨味と極軽い脂の甘味が浮き彫りになる。

「地物が揚がらなければ鮪は出さない」という潔い気概に敬服。今回は宗像・金崎漁港に揚がった150キロの天然本鮪。澄んだ酸味と香りが良く、軽やかな漬けによって旨味が凝縮している。爽やかながら力強い血の香りと余韻が印象深い。

同じく金崎産。むっちりとした身質に上品な酸味を含み、重たさを感じさせない爽快な脂の乗り。赤身同様、血のニュアンスが心地よく広がる。

お酒は辛口方向にシフト。握りの中盤以降に冷酒だと良い選択である。

金崎産。過度に柔らかくしすぎず、もっちりとした適度な歯ごたえを残すことで噛むほどに濃密な甘味が広がる。酢橘の爽快な酸味がアオリイカの強い甘味に馴染む。

生のような瑞々しさを保ちながらも、確かな脱水と〆を施した端正な仕事。凝縮した旨味の後に豊かな脂が広がり、食欲を刺激する香りが立ち上がる。これは鯖自慢の県、福岡でシグネチャーとなりうる鯖の仕事だと感じた。東京の鮨店では鯖の握りに出会う機会がめっきり減ってしまったので(乱獲と海水温上昇による激減が理由)、美味しく個性的な鯖の握りをいただくと感動ひとしお。

姪浜産の天然車海老。肉厚でみっちりとした力強い食感があり、噛みしめるほどに濃密な甘味と強い香りが満ちる。加熱した殻の香ばしさを想起させるほどの芳醇さだ。これも非常に魅力的な仕事で、臭みや苦味が全く無い。

煮干し出汁を利かせたお椀。一般的な赤出汁とは異なるキリッとした輪郭があり、具を入れない潔さ。

天草産の海胆。濃厚な甘味が強く、松葉を思わせる清涼感と血液のニュアンスが共存する複雑な香りが広がる(ともにポジティブな意味合いだ)。

福岡県、伊崎港の穴子。身はふっくらとしっとり柔らかく、口の中でとろける。煮ツメは濃厚ながら甘ったるさがなく、穴子の持ち味を活かす調味で秀逸。これは実に江戸前鮨らしい穴子の仕事だ!

干瓢は栃木県産なので、九州のエッセンスを加えるべく前述の宮崎県産の香ばしい胡麻をたっぷりと加えた胡麻干瓢巻きにされている。干瓢は強めの食感に仕上げ、山葵をしっかりと利かせた端正な締めくくり。

地物の芝海老を使用。ふわふわとしっとりエアリーな口当たり。甘味が上品である点も琴線に触れる。
「船越」さんの予約は、お電話での予約となります。
冒頭に記載したとおり、結構前から取らせていただけます。
旅程が見えたら直ぐに連絡するのが得策です。
店名:船越(ふなこし)
予算の目安:お酒を飲んで一人25,000円〜30,000円ほど
最寄駅:高宮駅から1.2km
TEL:092-541-3533
住所:福岡県福岡市南区野間4-11-27
営業時間:月・火・木18:00〜22:00、水・金・土12:00〜15:00、18:00〜22:00
定休日:日曜
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