こちらは金沢は主計町(かずえまち)にある江戸前鮨のお店です。
親方の木場谷光洋さんは東京の名店・すきやばし次郎と鮨青木で修行された後、出張職人を経由して2016年にオープンされたそうです。
なかなか異色の経歴ですが、出張職人中に人脈を築き上げられた模様。
よって、わずか2年強で金沢を代表する人気店へと躍り出て、県内外のお客さんがこちらでしか頂けない味を求めて訪問されております。
主計町は金沢の中でも独特な空気が漂っており、「凛」と言う語句がぴったりです。
お店の入り口もまた、小体ながらに雰囲気が良いです。
店内に入ると一直線のカウンターが清々しく鎮座し、お店の奥には中庭があるため開放感があります。
つけ場には「初心不忘」の書が掲げられ、屈強な体躯の親方が迎えてくれます。
そして、女将さんの肩肘張らない接客が緊張感をほぐしてくれます。
頂いた感想としては、「恐ろしく身体に馴染むシャリ」だと感じました。
前述の2店(共に米酢)で修行されたのに赤酢で勝負されており、このバランスが絶妙。
酸味、塩味、旨味が非常に良いバランスで構築されており、一見するとサッパリなのに確かに舌を喜ばせます。
温度もピタリと合っております。
そして、親方の握りは手数が少なく精確無比。
お米は輪島で曹洞宗の僧侶が作っているものを使用されているそうですが、確かに幽玄なる味わいに思えてきます(笑)
仕事には熟成を用いてられますが、この塩梅も良い。
そして、お茶が熱く濃く、差し替えもピッタリだったのは望外の喜びでした。
この度頂いたお酒
ハートランド700円、手取川・吉田蔵1,500円、宗玄・純粋無垢特純1,000円
器は中村梅山氏のものを多用。
気迫があり、親方に似合っております。
そして、頂いたものは下記の通りです。
読んで頂ければ一目瞭然ですが、氷見漁港のものを主に使用されております。
朝5時に氷見漁港に仕入れに行かれているそうです(金沢から60分程)!
エッチュウバイ
俗称・白バイで、富山湾産は大変貴重。
深いところでは水深500mほどの海域に生息する。
甘みが大変強く、酢橘を用いても負けないほど。
軽い苦味や風味が絡まり、初手から喜ぶ。
煮蛸
氷見産。
身はねっちりした繊維質が力強い。
歯切れ良く炊きつつ、力強さを感じさせてくれる。
反面、皮はトロトロで、全体的に旨味が強い蛸。
蒸し鮑
氷見産。
香り!旨味!素晴らしい…
酒すら不使用で、蒸しただけとの事。
肝も大変美味しい。
蒸し時間を伺ったところ、6時間。
矢張り手を掛けただけの味わいがある。
毛蟹と海胆のソース
毛蟹は氷見産。
海胆ははだてともう一種をブレンドし、さらに卵黄も混ぜておられる。
それ故に乳化状態の旨さを楽しませてくれる。
ノドグロ(アカムツ)
氷見産。
脂質が多すぎず、香ばしく焼き上げられている。
椀
日本料理店のような吸い物が登場し、ビックリ!
しかも、鰹節を直前にかいて調理。
吸い地もバッチリ美味しいが、蛤の柔らかな火入れも魅力的。
この後、握りに移行します。
酒肴が多すぎず、握りとのバランスが良いです。
上品にオリジナリティも出されておりますし。
ガリ
甘みはごく弱く、辛味が走り、旨味も十分なガリ。
ソリッドな味わいで、辛味と旨味で構成されている好みの味。
鱚
氷見産。昆布〆。
身はしっとりほどけ、昆布のグルタミン酸も程よく旨い。
鯛
香りしっかり!食感はジャクッと。
それでいて旨味が乗っているため、寝かせの時間を聞いたところ、神経〆の後に5日との事で、熟成仕事だった。
真鯛などの白身は熟成で個性を失うリスクが大きいため、これは素晴らしい熟成だと印象に強く残る。
アオリイカ
トロトロ感を押し出したアオリイカ。
薄切りにした上で細切りされているので、口の中でとろけてなくなるよう。
これだけだと甘みだけのタネになってしまうが、シャリの美味しさが効果的に支え、カボス皮の使用も上品なアクセント。
鮪
沖縄産の延縄。
旨味をひたすら強めており、圧巻!
「夏の鮪感」を完全に裏切るための仕事!!
10日以上は掛けておられるだろうと聞いてみたところ、予想を超えて20日熟成だった。
酸味が強く香りが爽やかな夏の鮪も好きだが、これは木場谷親方のところでしか頂けない鮪の味だった。
鮪大トロ
こちらは脂がダイレクトに!
ただ、鮪の香りもあり、魅力的。
小鰭
バシッと〆ている。
皮の食感も打ち出されており、小鰭の香りも楽しめる〆加減。
旨味が高まり、身に回したお酢の酸味で上品に着地させる。
鯵
濃厚な旨味!
鯵特有のクセは無く、小笹調味料が良いサポート。
香りと酸味が付加され、鯵の輪郭をハッキリさせる。
トヤマエビ
バツッと弾けた後、甘みが充満する!
そして、トロトロトロトロ…
ひたすら濃密にとろけるばかり。
鰹
富山産。
旨味が非常に強い鰹だが、酸味もあり、味わいを引き締めてくれる。
藁で炙ってから漬けにされている模様。
海胆
はだて故に低温でも口どけが良く、甘みも香りも強い。
安定感ある高級海胆である。
穴子
対馬産との事で、これだけは少々残念(時期的に)。
地元の穴子は旨味が弱く、パサパサで骨が硬かったとの評。
仕事に合わせて仕入れておられるのは重々承知だが、望むらくはいつか地元の穴子で親方の仕事を楽しませてもらいたい。
玉子
見た目通りしっとりと美味しい玉子。
以上で22,000円。
個人的に大満足の内容です。
価格は金沢としては高額ですが、タネひとつひとつの存在感が凄い。
モノの良さ以上に親方の仕事に感服した次第です。
また伺いたいと思います。
店名:鮨木場谷(すしきばたに)
シャリの特徴:バランスが秀逸な赤酢のシャリ。
予算の目安:19,000円〜24,000円
最寄駅:金沢駅から1,600m
TEL:076-256-1218
住所:石川県金沢市彦三町1-8-26 1F
営業時間:17:00~21:00
定休日:日曜
本記事のリンクには広告がふくまれています。