
こんにちは、「その土地でしか食べられないもの」が大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
土浦にある「よし町」 さんは、方々からオススメいただいていました。
「茨城に、凄いお店がある」と。
なかなか機会を作れませんでしたが、この度、霞ヶ浦で天然うなぎを獲って食べる会に誘っていただいたので、チャンス!とばかりに訪問しました。


こちらは茨城の食材力を実感させてくれる、郷土性100%のお店です。
茨城県は魅力的な食材が多く、もっと注目されるべき土地だと実感しました!
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「よし町」さんは江戸時代から魚商を営んできた老舗で、当代料理長の木村英明さんは8代目だそうです。
東京や神奈川の日本料理店で修行された後、32歳で帰郷して家業を継がれたとの談です。
僕がお店を知ったのは2018年頃でしたが、当時は「あんこう鍋のお店」として有名だったように思います。
しかし、現在は「茨城テロワール」を強く押し出されていて、茨城県産の食材を豊富に使用される点が最大の魅力となっています。

御料理の味付けについては全体的にパワフルで、塩気と油脂を強めに使用される点が特徴です。
先付から油脂を用い、前菜(八寸)もハードパンチ系の酒肴が主体なので、コース冒頭から「力強さ」を雄弁に表現されていると実感しました。
そして、ご主人は中華料理が好きと見られ、中華料理のような調理も散見されます。
味付けの方向性としては濃厚な味わいなので、「東京和食」が好きな人に特にヒットするお店だと感じました。
それでいて食材は地物100%なので、東京では決して味わえない体験が可能です。
さらに東京のお店よりも遥かにリーズナブルであるため、通う人が多いのだと実感しました。

個人的に大ヒットだったのが、霞ヶ浦のそばらしく淡水の食材を多用されるところです。
鯉、鰻、スッポンなどの食材を使用されているのが嬉しく、これらについてはシンプルな調理と調味で提供されています。
ホロホ口鳥も同様の方向性で美味しかった!
食材の持ち味を調味よりも調理で引き出す方向性の御料理が琴線に触れました。
9月の訪問でしたので、「長月テロワールコース」をいただきました。
おまかせコースは2つあり、16,500円、22,000円となるので、前者を選択しました(+サービス料10%)。
お酒はペアリングで「本日の日本酒七種」をお願いしました。

細かく選べるのが良いですね。
もちろんグラス単位でもオーダー可能です。


つるむらさきの煮浸し。

つるむらさきとキクラゲに地鶏(あるいはホロホロ鳥か)の旨味を合わせていて、先付からパワフルな味わい。つるむらさきに動物性の脂を嫌味なく用いてパンチを加えており、塩気も強いため中華的なニュアンスがある。各食材の食感の多様性も楽しく、コリコリ、しゃきしゃき、トロトロ。

一杯目は森嶋山田錦、生酒らしい香りが溌剌な印象。コクが強く、甘味を引き締める旨味を伴った苦味。「昔ながらの酒好きも喜ぶ現代の技術で造った酒」という印象。

内容は、辛子茄子、鯖燻製、しその穂オクラ、冬瓜、白魚蓮根、おおまさり、鴨生ハム。白魚と蓮根とは嬉しい組み合わせだ!実に当地らしい(ともに名産地)。野菜料理については、「野菜の味を引き立てる」よりも、「野菜を味付けでブーストする」方向性の調理を志向されている。冬瓜には鶏出汁のような旨味と油脂を強めに乗せてハードなパンチを加えている。おおまさりは茹でたてホクホクで甘味が強く、そこに強めの塩を当てる。辛子茄子はクラシックに甘味を強めに含ませる。鴨の生ハムは鴨の香りをたっぷりと楽しませて野趣溢れる意欲作だ。鯖の燻製は安定感バッチリ。香りと酸味を楽しめる。

来福、カプロン酸エチル系の華やかな香りと甘味と苦味。模範的な香り酵母系の吟醸酒。よって強い味付けの前菜とバッチリ合う。

霞ヶ浦産スッポン、長葱。

吸い地はスッポンの旨味やゼラチン質に、塩気と強めの甘味を効かすパンチのある味付け。スッポンは天然ものかと思われ、繊維質とゼラチン質のパワーが強い。ネギもシャキシャキした食感が良く、香りも強いのでバランスが取れている。

鯉は霞ヶ浦「山野水産」から仕入れたもので、綺麗な水で1週間ほど泳がせて臭みを取り除いているそうだ。器は尾形乾山の写しだろうか?

鯉は厚切りでプリプリ、パツパツ。そして、脂がノリノリ。臭みは全く無く、これは多くの人にとって印象的な鯉刺身になるはずだ!「鯉って美味しいんだ!」と。皮や揚げた鱗も添える点が魅力。色々な部位をいただくと、その食材への愛情が深まるのは間違いない。

調味料や薬味については、行者ニンニク醤油と酢味噌、黄ニラ。調味料も薬味も万人に訴求する方向性なので、「鯉」と聞いて苦手意識を持った人でも美味しいと感じるようキャッチーに仕上げている。郷土食材の魅力を伝える事に成功していると実感する。

常磐沖のもので、左が8日目、右が3日目。当然のことながら熟成期間が短い方からいただくと、脂がたっぷりと乗りつつぷちりと気持ち良く弾け、ホロホロ、とろりと魅力的なテクスチャー。穴子の香りも上品に楽しめる。8日目の方は香りがこなれていて、独特の香ばしさにびっくりする。穴子自体の香りよりも熟成で生まれたこなれた香りが面白い。脂がたっぷり乗っている穴子なので、ともに皮目を炙りつつバランスが良い。

ライチ様の香り。お酒の甘味は先ほどから落として苦味がキリリと味を引き締める。食中酒の方向だ。

天然鰻の白焼きで、霞ヶ浦の「斉藤川魚店」から仕入れた1キロアップの大型。皮はサックサクで、香ばしく弾ける。香りがいかにも天然だ!雄々しくて香ばしい。脂が乗っているので皮下脂肪はとろけながら舌に絡みつつ、身はホロホロ、皮目の焦げの苦味でキリリとしたフィニッシュ。

こちらの白焼きについては、冒頭に書いた霞ヶ浦で天然うなぎを獲って食べるイベントの「うなぎ村」よりも格段に美味しく、別次元の美味しさだったのでいただけて僥倖であった。やはり、鰻は食材の質だけでなく調理の技術がモノを言う食材だと体感(うなぎ獲りイベント自体は最高に面白かったですが!)。

香りは純米大吟醸としては淡く、甘味が強めで苦味がキリッと。

かすみがうら市「ジャフラトレーディング」のホロホ口島のひな鳥で、部位はもも肉、胸肉、レバー。胸肉でも旨味が強い!皮パリパリで爆ぜさせている点が魅力だ。旨味と脂がたっぷりながら胸肉らしい酸味もあり、実に旨い胸肉である。もも肉は力強い旨味!焼きが素晴らしい。血のニュアンスも楽しい!レバーは濃密な香りで、あたかもレバーペーストのようで甘味も強い!振り塩は多めながら鳥の味が濃いのでバランスが良い。

糖が切れていて、これは抜群の相性!

「わかば屋」仕入れの天然ヌメリササタケのみぞれ和え。香ばしいキノコで、渋い香りが魅力。柑橘の酸味で軽やかに爽快な口直し。

鯉は刺身と同じく「山野水産」のもの。香味ソースはパブリカ、長葱、オクラで構成されていて、味付けは完全に中華!町中華の甘酢餡掛けのようで、とろみを片栗粉ではなくオクラを活用している点が面白い。鯉の仕込みにもカレーのニュアンスがあり、これはクミンか?

森嶋、美山錦純米酒。

茄子田楽、茸味噌。茄子は土浦産の緑茄子で、茸味噌にはチチタケ、ヒラタケ、クロカワダケ、ハツタケ、ウラベニホテイシメジを使用。止肴がまさかの揚げ茄子とは驚いた!!油をたっぷりと吸い込んだ茄子に、甘味を効かせた味噌を合わせる。揚げ物の後に畳み掛けるような油と糖のラッシュだ。正にヘヴィ級の日本料理であると実感した。

森嶋、雄町純米大吟醸。

キノコはアカヤマドリタケ、シャカシメジ、ショウゲンジ、ヌメリササタケ、ムラサキヤマドリタケで、お米は土浦市新活地地区産特選コシヒカリ。

キノコは油で炒めている模様。味付けも濃厚で、力強いキノコご飯だ。

留椀は豚汁。豚の脂を危惧したものの、出汁として豚を感じさせる使い方で好印象。

茨城県三大銘茶の一つ、猿島茶のほうじ茶ゼリー。フルーツは甘太(梨)かマスカサーティーン(マスカット)かの選択。僕はシャインマスカット系の甘味が強いブドウが苦手なので、甘太を選択。名前のとおり非常に甘い梨であった。これも個人的な好みとなるが、日本料理や鮨の水菓子は、甘味に全振りした品種よりも後味が爽快になる酸味も持つ品種を選んだ方が洗練を感じる。
「よし町」さんについては、食べログ経由でWEB予約が可能です。
店名:よし町(よしちょう)
予算の目安:おまかせコース16,500円、22,000円 +サービス料10%
TEL:029-821-5267 ※完全予約制
住所:茨城県土浦市中央2-9-28
最寄駅:土浦駅から730m
営業時間:月~金18:00~22:00、土12:00~14:30、18:00~22:00、日12:00~14:30
定休日:木曜
当地固有の食材が大好きな、すしログ(
@sushilog01)でした。
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