
こんにちは、土地ならではな食材をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
マスメディアの事前報道とは裏腹に大盛況を博している大阪・関西万博。
僕の周りにも年パスを買ってリピートしている関西在住の方がいて、なんて羨ましい…と感じています。
僕は行くタイミングを完全に逸してしまいましたが、この度、友人から「万博に出展/出店した面白いイタリアンレストランがある」と聞いて、そのお店にお伺いしました。
お店の名前は「Nishideria(ニシデリア)」。
何が面白いかと言うと、大阪のレストランとしては珍しく大阪府産食材でコースを組み立てていて、しかも野菜は大阪市内の契約農家から仕入れている点です。

実際にお料理をいただいたところ、「期待」のみならず「想像」を超える素晴らしいお料理ばかりで、訪問して良かった!と心から感じました。

現在のところ食べログは3.62で、ミシュランやゴ・エ・ミヨも無冠ですが、近い将来に必ず誰もが知る大阪を代表するレストランになるのは間違いありません。
ここまで「大阪でしか食べられない味」を表現されているレストランならば、評価されない方が不自然だと思います(笑)

「Nishideria(ニシデリア)」さんの魅力を端的に述べると、以下の5点です。
- 美味しさと面白さを兼ね揃えている
- 完全にオリジナルの調理法がある
- コストパフォーマンスが抜群
- 大阪府の生産者さんを開拓して食材を仕入れている
- 契約農家と対話して野菜のカスタマイズを行っている
まず、美味しさと「面白さ」を兼ね揃えている点については、訪問した誰もが実感するところだと思います。しかも、「面白さ」は浮ついたところが無く地に足がついています。創作的であっても確かな「イタリア感」を感じさせてくれる点が類まれなアレンジ、創作性の証です。スーシェフの相川航平さんもイタリアで修行されたキャリアを持っているそうで、層の厚さを感じました。

後述するこちらのお料理や、下記のお料理に驚かない人はいないと思います(断言!)。

オーナーシェフである西出さんは、大阪の食材を駆使しようと思い立った際、生産者さんの新規開拓を行ったそうです。結果として現在、厳選食材を集めることに成功されています。大阪も東京も大都市なので全国の食材を仕入れられるところ、生産者開拓を行われるとは覚悟を感じますね。やはり、大都市だろうが地方だろうか「そのお店でしかいただけない食材」に出会えると、また足を運びたいと思うところです。何でも手に入る物流が確立された現在だからこそ、仕入れる食材の必然性に向き合う料理人は、調理の面でも独自のセンスをお持ちの確率が極めて高いです。

また、もう一つユニークなところが、大阪市内の契約農家さんから野菜を仕入れている点です。初めて聞いたときは「え、大阪市内に畑があるの??」と驚きました。しかも今回、友人がシェフと生産者さんに調整してくれた結果、畑を見せていただけることに!
早朝5時起きで畑に向かったところ、ユニークな試みと土地の特性を知り、大都会で地産地消が行われていることに感銘を覚えました。やはり食材の生まれる現場を見てからお料理をいただくと、食の解像度が飛躍的に上がります。お料理の根底には料理人のパッションだけでなく、生産者のパッションも存在するところ、そちらはどうしても感じにくいので。感じられると食の体験はさらに深くなる。

生産者である「佐々木農園」さんと畑には、下記のような面白い特徴があります。
- 在来野菜だけでなくイタリア野菜を生産している
- シェフとコミュニケーションを取り野菜をカスタマイズしている
- 当地の地下水は大阪では珍しい鉄分が豊富な硬水である
佐々木さんは5代続く農家で、もともとは在来種の春菊と菊菜を生産されていたそうです。種は自家採種。しかし、西出シェフと知り合うことでイタリア野菜をメインに生産されることになります。

畑で打ち合わせを行い、料理のイメージに合わせた野菜に「カスタマイズ」されている姿が印象的でした。僕は常々ブログに書いていますが、料理を想像できる生産者、腕が立つ料理人、とにかく食いしん坊な消費者の3者の好循環が食文化の向上と土地への集客に奏功するのは間違いありません。

水は地下600〜800メートルの地点から引かれる地下水で、口に含むと明らかな鉄分を感じます。イタリアは一般的に硬水なので、この地でイタリア野菜を作られているのは因縁を感じざるを得ません。とってつけたように奇抜な野菜を育てるのではなく、地に根付いた個性を活かして野菜を育てるところに…

ちなみに、佐々木さんは現在41歳で、大阪市内の「若手」に当たる農家さんは下の人が35歳で、上は50歳とのこと。歳が離れている状況ですが、佐々木さんの試みに感化されて個性派野菜で就農する方が増えると良いと感じました(大阪市に限らず)。イタリア本国でも、若い方が付加価値の高い野菜の生産を行って農業を再興させた実績がありますので、日本のこれからの農業が楽しくお金を稼げるようになることを常々願っています(コメ問題で再認識しました)。
それでは、お料理の詳細をご紹介します。
この度いただいたコースは「2025 EXPO Menu(2025万博メニュー)」です。コース価格は12,000円ですが、率直に申し上げてコストパフォーマンスが高すぎです。大阪市内のリストランテでこのCPは圧巻です。
- 八尾産枝豆 由良のウニ
- 大阪鱧 黒門白瓜
- 「青の洞窟」 ~海のジェラティーナ~ 泉南直送鮮魚 東住吉 ケール
- 和泉のパプリカ
- 【スペシャリテ】ゼッポレ・アッラ・オオサカーノ
- 無花果 南洲黒豚
- パーネ
- 下荘漁港直鮮魚 大阪茄子
- お口直し:東住吉 ルッコラ 八尾 レモン
- 能登牛イチボ炭火焼き シャドークイーン 山葵菜 クレソン
- イタリア産フレッシュポルチーニのタリオリーニ
- 「大阪名物」ジェラート仕立て
- 河南町 メロン
- ピッコラ パスティチェリア(焼き菓子)
- 和紅茶

そして、ペアリングのワインについてはイタリアワインのみで行っておられ、大変魅力的です。8杯9,900円、5杯7,700円、3杯5,500円を用意されています。そして、ノンアルコールペアリングも4杯3,850円で用意されているのが飲まない人や運転手にとって嬉しいところです。なお、水も大阪産で、能勢(秋鹿酒造のある大阪最北部)のものを使用される徹底っぷりです。

見た目はシンプルだが、味と香りにグラデーションあるのが魅力だ。枝豆の香りを楽しみながら、レモンの香りがところどころに漂う(あたかも柚子のように感じ、レモンをそのように感じさせる使い方は中々できない)。このような薬味の使い方は繊細で好感を持てる。海胆も決して仰々しくなく、あたかも甘味と上品な香りを添えるような使い方で洗練を感じる。クランブルのナッツのようなクリスピー食感も楽しく、一口サイズではないアミューズとして楽しい連続性を与えている(最近のモダンなお店では一口アミューズが多いところ)。味付けは塩味、油脂ともに軽やか。清涼感がありつつ、まろやかな方向性でスタートする、魅力的な一品目。


鱧は炭火炙り。「黒門白瓜」は浪速の伝統野菜とのこと。ミョウガのピクルス、ディル、エストラゴンなどのハーブ、鱧の濃厚な骨出汁を効かせた冷製スープを添えて提供。そもそも鱧の味が良く、「黒門白瓜」もシャキシャキした食感で地物食材の楽しさを伝えてくれる食材の取り合わせ。ソースはサルデッラソースで、強い旨味とピリ辛のソースがイタリアらしを感じさせる(カラブリア州のソースで、サルデッラはロザマリーナとしても知られる発酵しらすを指す)。

柑橘的な苦味を添えて、甘味を同調させるペアリング。

実に美しい見た目だが、味のインパクトは見た目を超えるプレートだ。魚介類は泉南のヒラメに加えて、帆立、ミル貝、生わかめなどで、じゅんさいも使用。昆布チップ、ケールのピュレと合わせている。ジェラティーナの青色はチョウマメの色素を用いている。
まず驚いたのが、海藻の香りが広がり、異なる貝類の甘味や旨味が広がるところだ。間違いなく誰もが初めて口にする味覚的なサプライズがあり、鮮烈な印象を残す。ヒラメも旨味を十分に楽しめ、調味のバランスと確かな仕入れを実感できるプレートだ。この料理の中だとじゅんさいも意表をつく他にない食感に感じる点も面白い。

パプリカはペペロナータとフレッシュを両方使用。

合わせるのはトマトを混ぜたパン、デラウェア、パプリカとトマトのソース。

甘味と旨味の凝縮感がサプライズだ!ヤギチーズのようなテクスチャーとコクを持つチーズが上品なアクセント。旨味と酸味の重厚感があるスープで、前の皿に続いて印象を強める。さっぱり味の方向性ながら野菜の美味しさを実感できて、イタリアらしさもある。

これはかなり魅力的なペアリングで、確かなマリアージュを感じた。味覚的な一致度が高く、相補、同調ともに感じるペアリングだ。

サプライズを体感して笑顔になっていただきたいので、このお料理の詳述は割愛する。ナポリ名物のゼッポリーニを大阪風にアレンジして、イタリア人もビックリな一皿に昇華している。片方には泉州だこのラグーを合わせ、全て西洋の調理法で大阪名物の「アレ」に見立てている。これには味覚、嗅覚の類まれなセンスを感じた。

香ばしさとシュワシュワ感でスッキリ方向のペアリング。

無花果はソテーして、ゴルゴンゾーラソース、 小林良子さん(国内唯一のドイツ国家認定食肉マイスタリンを持つ女性)の18ヶ月熟成の南洲黒豚の生ハムと合わせる。無花果の甘味とゴルゴンゾーラの風味、生ハムの旨味と塩気が合わさることで奥深い味わいを満喫できる。日本らしい、口腔調理の楽しさもあるプレートだ。


自家製フォカッチャ。
コース冒頭で生地を見せていただける。高加水であることが分かる。


白眉!魚は大阪湾の真鯛。付け合わせは茄子とデュカ、ミントソース。斬新な見た目だが、これはシェフが考案した唯一無二の調理法だ。鯛の甘味と旨味を満喫させてくれるだけでなく、半身を重ねて焼くことで他の調理法にない火入れ、食感を実現している。

身のジューシィさと皮目のバリバリ感や香ばしさが記憶に残り、もはや中毒性のある味わいと言わざるを得ない。ジューシィさ、バリバリ感以外にも、しっとり感やプリプリ感など、多様な食感を楽しめる。ポーションが大きいのに食べ終わるのが残念に思うほど珠玉の調理。焼き茄子の香ばしさやホロ苦さもまた魅力。そして、デュカが香りの面で焼き茄子と抜群の相性である(トルコやイランの料理から着想を得たのだろうか?面白い)。

楯の川酒造のソーダクラッシュを能勢のソーダ割。繊細な方向性ながら香りは米由来なのが分かり、ワインからガラリと変化するので誰もが驚くペアリング。魚料理で日本酒を合わせる選択は実に良い。日本酒の甘味をもたつかせないためにソーダ割を行いつつ、日本酒らしい味覚を活かしている点も魅力だ。

佐々木さんのルッコラを使用したグラニテ。青臭くなく清涼感がある香りだ。甘味を削ぎ落とした口直しであるのも良い。

能登牛はシェフが惚れ込み、以前から使用されていて、能登震災後も引き続き使用しているそうだ。脂もありつつ赤身の旨味と香りが広がる実に美味しい牛肉だ。

アーティチョークには酸味を含ませつつ香ばしいので、鮨のガリ的な役割を果たしてくれる。シャドークイーンは熟成を掛けているそうだが、ほくほくした食感と香りが良く、熟成タイプでありながら甘味が濃厚でない点に味覚のバランス感覚を感じる。葉野菜は大阪府産のクレソン。

GAJA CA’MARCANDA PROMIS 2022。相性バッチリ!


香り抜群!フレッシュポルチーニは恍惚となる香りだ。これは一度味わうと死ぬまで止められない魔性の香りであろう。トリュフや松茸と同様に。そして、タリオリーニは良い意味でどことなくチープ感がある食感なのが魅力。ウェイビーな細麺にはプチプチした食感とソースを吸収する弾力があり、「めっちゃ美味しく作った日清カップヌードルの麺」的な印象がある。日本人にとって感慨深いパスタフレスカだと改めて感じた。


食べて「大阪名物」とは何か当てるなぞなぞ形式のドルチェ。大阪人はほぼ100%当てられるらしい(笑)

温度とテクスチャーの差が面白いドルチェ。メロンの香りと甘味を活かす糖の塩梅にセンスを感じる。手をかけつつフルーツの個性を活かしてこそ現代的なスイーツだと思うが、いかがだろうか。シェフパティシエの方を雇っているそうだ。

シェフパティシエが描いたイタリア地図の上にイタリアの郷土菓子を盛り付ける粋なプレゼンテーション。そもそも郷土菓子のみで焼き菓子を提供するところが心ニクい演出だ。北から順に、トルテッリ・フリット(フリウリ)、ベックーテ(マルケ)、チャンベローネ・アル・ヴィーノ・ビアンコ(ラツィオ)、パスティッスス(サルデーニャ)。もちろん味も全て美味しく、小菓子でイタリアを旅できるなんて粋な締めだ…と実感した次第である。

食後のドリンクは上記から選べる。僕は和紅茶をいただいた(ソムリエさんの故郷のものだそう)。
「Nishideria(ニシデリア)」さんは、一休や下記の食べログ経由でWEB予約が可能です。
店名:Nishideria(ニシデリア)
予算の目安:おまかせコース12,000円
TEL:06-6809-3900
住所:大阪府大阪市中央区天満橋京町3-8 DDC天満橋ビル2F
最寄駅:天満橋駅から200m
営業時間:11:30~15:30(L.O.13:00)、17:30~22:00(L.O.20:00)
定休日:不定休
ご当地食材と類まれなセンスの融合に感動する、すしログ(@sushilog01)でした。
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