こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
2018年に初めてお伺いして以来、応援し続けている職人さんが林ノ内 勇樹さんです。
今回はオープン日の3月9日以来の訪問。
3ヶ月半後に訪問したところ移転直後よりも更に前進されていて、率直なところ感銘を覚えました。
生命線のシャリについてはガラリと変わっていて、米粒の加水率や硬さが大幅に改良!
粒が立ち、硬くなく、お米の甘味が広がるシャリ。
加水率を高めながら粘りを出していないのは見事。
酸味とのバランスが取れているシャリとなっていて、明らかに過去訪問した中でもトップクラスの精度でした。
また、仕事のみならず酒肴の方向性も定まっていて、江戸前鮨らしさの中で独創性を表現しています。
気負うことなく存在感を放つ鮨店。
林ノ内親方の今後が更に楽しみで目が離せません!
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広尾「鮨ゆうき」の林ノ内親方は、今は無き名店「水谷」の二番手を務めていた方です。
同業の鮨職人からの人望も厚く、今や人気を高めに高める鮪仲卸「結乃花」の井出社長からの信頼も強く、「鮨職人の粋」を感じさせてくれる方です。
「鮨みずかみ」の水上親方と共に、江戸時代に転生しても江戸ッ子からモテるであろう職人さんだと感じます。
経歴などの詳細は過去の「常盤鮨」の記事を見て頂くとして、本記事では移転後の魅力について端的に表現します。
移転後に改めて感じた魅力
- 握りが主役のコースの仕立て
- 王道の鮨種を用いてシャリで魅せる粋
- シャリの明確な個性
これらを成り立たせているのが鮨の生命線であるシャリである事は言うまでもありません。
親方は「横浜時代と同じことをしていますよ」と仰るものの、個人的には心なし更に美味しくなったと感じました。
米酢のみを用いる系譜ならではなシャリは、酸味が強めながらに塩分濃度は抑え目。
酸が立ちつつ喉が渇かない良いバランスです。
そして、大ぶり。
硬さも温度も申し分無く健在。
林ノ内親方のシャリは、「すきやばし次郎」の系譜の中でも明確な個性を持っています。
なお、ちょっと余談になりますが、僕は基本的に新規店には訪問しないようにしています。
何故なら経験則で新規店はムラが大きすぎる為です。
新しい設備や動線に慣れていないためか、職人さんの真骨頂を感じられない事が多いので、親交のある方のお店以外、新規店のお誘いは断っている次第です。
特にシャリについては新規店で感心するケースは少なく、今や予約困難となっているお店でも疑問符を感じた事があります(特に加水率、粘度については難しく、硬く炊きすぎていても疑問が残ります)。
そのような状況で訪問しては職人さんに失礼だと思うようになり、落ちついたタイミングでの訪問を心がけるようになりました(結果的に、初速で予約難易度が高まるお店に伺えない状況となりました)。
故に、移転早々の難しさは実感するところですが、林ノ内親方は難なくクリアされていて、この点に実力を再認識した次第です。
お弟子さん達のサポートも奏功しているのでしょう。
今後、「チームゆうき」として更に良い鮨店となり、東京を代表する一軒となるはずなので、鮨好きは是非とも訪問してみてください!
「鮨ゆうき」のコースについては、ランチおまかせ握り17,600円、ランチ/ディナーおまかせコース28,600円です。
【ディナーおまかせコース】の内容としては酒肴7品、握り12貫、椀、巻物、玉子。
酒肴が多いと思われるかもしれませんが、少量であり、鮨店らしい範疇の酒肴を作られているので、一連の流れで頂くと握りが主役と感じる構成です。
きっちり、追加のタネも多々仕込んでおられ、干瓢もバッチリあります(と書かないといけないくらい仕込んでいないお店に遭遇するため)。
ちなみに、「常盤鮨」では玉子がカステラではなく出汁巻きでしたので、移転後どうなるか個人的に興味津々でしたが、蓋を開けてみると両方用意されていました(笑)
お酒については、グランドメニューはこちらの通り。
他にも時期折々で用意されているので、おまかせで頂くのもアリです。
2024年6月に頂いた内容です。
水茄子のスッキリした味に焼きの香ばしさが滲み、初夏らしい嬉しさを実感。
さっとしゃぶしゃぶ状に火を入れている。
初手はポン酢の酸味が広がるものの、切りつけに厚みがあるため、噛みしめると酸味を超える旨味が横溢する。
これは旨い。
刺身の体を取っているが、全て仕事を施した酒肴である点が着目すべきところ。
サゴシは酢〆に、蝦蛄は勿論煮ていて雄を使用。
味わいのコントラストがあり、楽しい一皿。
刺身で楽しさを与えてくれるのは素晴らしい。
酒と昆布水に漬けて焼いている。
これは大変魅力的な調理法の探求であり、魚味を活かしている。
日本料理で定番の西京焼きを鮨店で出さなくても良い、と言う一つの結論を明確な味を以て提示している。
これまた魅力的な食材だ。
香りと苦味が良い。
味わいだけでなく、古典的な江戸料理らしい食材を高級店で臆さずに使用する点が良い。
東京湾産!
肉厚で脂が乗っているので酢〆が奏功している。
これも魅力的な調理であり、握りに入る前に提供する構成も良い。
〆による脱水の加減が良い。
細切りの酢橘皮を噛ませて、コリッとした食感と爽やかな香りを嫌味なく調和させている。
苦味は無い。
バランスが良い昆布〆で90分ほどにしては上品である。
力強い脂が滲む!
寝かせているようで、食感をねっちり、とろりとさせ、シャリとの一体感が高い!
酢〆にして軽く炙っている。
これもシャリとの一体感が高い。
内側の片面炙りによる香りをしっかりと付け、内側を表面にして握っているが、バランスは良好でトロトロしつつ甘味が強いので違和感が無い。
北寄貝で炙りによる違和感を感じたり強すぎたりする仕事は二流なので、流石に一流の仕事を見る。
やはり抜群に美味い「鮨みずかみ」さんとは異なる方向性で美味を表現している。
境港。
血の香りがありつつ旨味があり、むっちりと食感が強い赤身。
「結乃花」仕入らしい夏鮪である。
鮪への殊更の愛情を持って食すべき産地、夏の境港。
仲卸と職人の二人三脚が味を昇華させている。
これも香りが良く、美味い。
香りが良い中トロは印象に残る。
夏場なのに良い型を仕入れておられビックリ。
仕事はいつも通りのしっかり〆で、旨い。
時期を考慮すると素晴らしい仕入れと仕事である。
見た目的に分かりやすい走りの新子よりも遥かに嬉しい出会いだ。
濃厚な脂!
系譜どおりの鮪連発からの小鰭ではなく敢えての構成が奏功している。
中トロの後よりも鮮烈な印象であったし、小鰭の味も大トロの後よりも活きると感じる。
時期的に脂が強くなっていて、香りもしっかりある。
当たり葱の風味を調和させる味の濃さだ。
茹で上げを寝かせて、プリプリ、しっとりした食感。
比較的生っぽさを残しつつ加熱して甘味を活かす茹で加減。
爽快ながら甘味を楽しませてくれる紫海胆。
繊維のホロホロ感とふんわりした食感のバランスが良い穴子。
甘味の塩梅も良い。
炙りの香りが良く、スッキリした酸味を楽しめる鰹。
「常盤鮨」時代、最後に共に訪問した鮨好きのブルワリー経営者友達への敬意を表して注文した。
何よりも蛤の香りを抜群に活かしている点が素晴らしい漬け込みだ。
塩梅が秀逸。
蛤の味と香りを満喫させて頂いた!
追加して大正解。
すっかり馴染んだ感のあるカステラ玉子(常盤鮨時代は出汁巻きであった由)。
お茶も美味。
2024年3月9日のオープン日に頂いた内容です。
香り良く甘味を楽しめる。
先付が野菜とは嬉しい。
鮃は青森。
肉厚な切りつけだ。
初手よりも中盤から旨味が高まり香りが抜けてくる。
寝かせずとも高まる味わいに、厚切りなのが嬉しい限りだと実感する。
トリ貝は室津。
甘味もトロピカル香も申し分無し。
酢酸イソアミル系の酵母を用いた磯自慢とピッタリ合う。
鹿児島、横山さんの鰻。
脂が乗り、食感はぷりっとしている。
肉厚なのを焼き込んで焼き物として提示するが故に鮨店で出す必然性がある。
漬け地の香ばしさも食欲を一気に増進させる。
室津。
大ぶりの牡蠣を火入れしつつぷりっとしてしっとり。
これは相変わらず良い仕事である。
牡蠣の旨味、甘味、風味をバッチリと楽しませてくれる。
ねっちりとしていて、旨味がありつつ酸味も感じさせる。
戻りよりも初に近い味わいの迷いだろうか。
漬けでも鰹の味を感じられるのは酸味のお陰。
香りも楽しめる。
富山。
中をレアに仕上げている。
生っぽくも加熱されているバランス感覚。
小皿ながら温めているのも良い。
青森。
むちっ、みしっとしていてコリコリ。
あたかもナタデココのような食感に仕上げていて魅了。
出汁を効かせた土佐酢で提供。
薄切りでシャキシャキした食感。
酸味と辛味がありつつモダンなお店としてはやや強めに甘味を用いて、シャリの味覚とのバランスを取っている。
ぷりっとした針魚に海苔を合わせ、更にシャリの酸味をアクセントに効かせる仕事。
かなり個性的な名刺代わりの一貫目だ。
タネのみならずシャリの方向性を示す。
肉厚でむっちりしている鯛を昆布〆。
厚み故に春子の味を楽しませて、少し遅れて昆布の旨味がアシストし、途中から昆布の香りが高まる。
初手から昆布の旨味と香りを感じさせる春子の仕事は無粋なので、これは良いバランスだ(無粋たる理由は春子は昆布を用いずとも〆の仕事で昆布様の風味を感じさせられる為だ)。
脱水してむちっとした食感で、初手で強い脂を出さぬのが良い。
金目鯛の調理で重要なのは、あざとさの有無だ。
要は脂を強烈に感じさせるか否か。
脂が前面に出すぎると、金目鯛は途端に野暮ッたくなり、上質なお店よりも大衆店を想起させる。
林ノ内親方の金目鯛は噛み締めると脂が高まり、更にシャリの酸味と合致する。
食後感が良い。
香り、酸味、旨味のバランスが良く、柔らかい赤身。
血の香りがじんわりと高まる美味しい赤身。
ちなみに、林ノ内親方は豊洲の鮪仲卸「結乃花」さんの鮪を非常に早い段階で使い始めた方。
今や使用する鮨店が増えており、陰ながら応援している自分としても嬉しい限りだ。
閖上。
香りは上品だが途中からふんわり、甘味が先行して旨味がじゅわりと高まる。
しかしながら、他店も同様であるが、閖上の赤貝は本当に弱くなった。
かつての趣を感じる機会が極端に少ない。
和牛や他の畜産肉とは異なり、基本的に全て天然モノの魚の産地ブランドが通用しないことを痛感する。
柔らかく滑らか。
脂と香りが印象的。
乗りつつ重たくない。
また、香りがある大トロ。
シャリの酸味が活きる。
みしっと〆つつ旨味も香りも良い。
喉で旨味を感じる小鰭(すきやばし次郎の小野二郎親方が理想とする小鰭は「喉が鳴く」小鰭だ)。
甘味たっぷりでシャリの酸味で引き締める。
そして、甘味がまた超えてくる。
みっちり〆つつ中心部からしっとり感が広がり、脂と香りもまた広がる。〆加減だけでなく、鯖の香りを活かしているのが実に良い。あたかも良質な鰹の鰹節様の香りの如し。
漬け込みで味を強めに含ませつつ、咀嚼して蛤の風味を高める仕事。
甘味だけでなく香りがあるのが嬉しい海胆!
紫系で個性を感じさせる軍艦に仕上げているのは良い。
酢〆しっかり!
脂が乗った鰯をここまでしっかり塩と酢で凝縮するのは今の時代に良いなあ。
ふわんふわんとろり。
しかしながら穴子の香りを楽しませる。
甘味と醤油を効かせつつシャリの酸味を強く感じさせる!
山葵入りの鉄砲が合う干瓢であり、山葵の辛味や香りが全く蛇足では無い。
みっちりしつて、しゅわりとしたテクスチャー。
芝海老の香りを楽しませる。
甘味はやや強めなので、デザート的に頂ける。
「鮨ゆうき」は広尾駅から徒歩至近距離にあり、交通至便です。
広尾駅周辺よりも落ち着いた一角なので、なんとなく落ち着きます。
開店時の大輪の花。
店内は間口から想像出来ないほどに広いです。
お店を入ったら個室があり、奥には8席のカウンター。
横一列のカウンターが硬派に感じます。
席の間隔も取られているので、非常に寛げる上質なお店です。
「鮨ゆうき」の予約については、OMAKASE経由で可能です。
予約システムについては、完全に回転制にされていないのが良いです。
17時以降に予約を取り、19時半~20時までなら大丈夫というスタンス。
17時や17時半スタートは厳しいので、これは助かります。
店名:鮨ゆうき(すしゆうき)
シャリの特徴:酸味、塩気、温度、粘度の全てがバランス良く、ミツカンの白菊を使用する米酢のシャリとしてはトップクラス
予算の目安:ランチおまかせ握り17,600円、ランチ/ディナーおまかせコース28,600円
TEL:03-6277-0468
住所:東京都渋谷区広尾5-17-4 1F
最寄駅:広尾駅から300m
営業時間:ランチ(火・土・日・祝のみ)12:00~、夜17:00~
定休日:不定休
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