ジャンルレスで食べ歩かなければ味覚は拡張しないと考える、すしログ(@sushilog01)です。
さて、食べ手として尊敬する友人が足しげく訪問していて、気になったお店、GUUUT(グート)。
最寄り駅は宿泊施設が無いローカル線の駅「沢駅」です。
タクシーも走っていないので、呼んでから来て頂くのに1時間かかります。
そのような場所にあって、GUUUT(グート)さんではイノベーティブ系のタイ料理を提供されています。
すしログ
モダンタイ料理をまさかこの地で!?と思う立地と外観ですが、御料理を頂いて、この地だからこその魅力を痛感!
タイのチェンラーイでもイノベーティブが生まれる時代…全く違和感ないというのがグローバルな感覚なんだ、と納得しました。
タイ料理好きは勿論、発酵料理が好きな人なら訪問すべき素晴らしいレストランです。
1日1組限定なので、人気が炸裂しないことを願います(記事執筆時点では食べログ3.08)。
…いつか「アジア・ベストレストラン50」を受賞されるかもしれませんが。
GUUUT(グート)の魅力とは?
「GUUUT(グート)」のご主人である、三浦俊幸さんは長野県伊那市出身の方です。
もともとは六本木で会員制のうどん屋を営んでおられ、その後、同じく六本木で創作和食店「さだ吉 鎹」を開かれました。
実は、2018年にタイ料理の「GUUUT(グート)」をオープンされた時は、平日は六本木、週末に伊那の2拠点・2店舗運営をされていたそう。
しかし、コロナ感染拡大の影響もあって「さだ吉 鎹」を閉じ、「GUUUT(グート)」に一本化されました。
グルメな人には有名ですが、伊那を始めとする南信州は、発酵料理や昆虫食が歴史的に強いエリアです。
三浦さんはタイと南信州の類似性に惹かれ、モダンタイ料理を志向することを決めたそうです。
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御料理を頂いて感じた事は、率直に「唯一無二」です。
全ての御料理がご主人だけの味。
自家栽培で育てられたハーブと野菜も大活躍し、感動的な創作タイ料理に仕上げられています。
正にテロワール。
しかも、最も素晴らしいところは、三浦さんは食材の背景にあるストーリーや文化も御料理に活かされます。
「料理屋」ではない「食材屋」が増え続けている東京では、中々生まれづらい発想ではないでしょうか。
ミシュラン星付きだろうが、食べログハイスコアだろうが、食材自慢の高価格店は理念を捨てた「食材屋」です。
三浦さんのお話を伺いながら御料理を頂くと、食材との出会いに心が動くはず。
個人的に感じた「GUUUT(グート)」の味覚的な特徴としては、タイ料理らしい甘味・酸味・辛味を駆使しつつ、苦味も効果的に使用されているところです。
香りも素晴らしいのですが、苦味の使い方に調理上の魅力=個性を感じます。
酸味でコースの連続性を高める手法は一般的ですが、苦味を随所に用いる手法は興味深いです。
そして、御料理の「仕掛け」として面白い点は、伝統的な料理の再構築をされるところ。
知っている有名料理が全く違う形で目の前に現れたら、そりゃあテンションが上がりますよね。
どんな味なんだろう?と頂いてみると、もとの有名料理の骨格を感じさせつつ、独自の味へと昇華されていて、これぞイノベーティブ!と更にテンションが上がります。
御料理の味覚と仕掛けが、ご自身の手による食材や調味料で構築されているなんて、出会えて僥倖と言わざるを得ません。
ちなみに、御料理は非常にボリューミーなので、大食漢の成人男性でもお腹を空かせて訪問することは必須です(笑)
僕と同じく食旅行好きの同志は、ついつい旅先で連食や間食、昼夜コース料理などの出来心を起こしがちですが、「GUUUTシフト」を組むことをオススメします!
すしログ
GUUUT(グート)のコースの詳細について
GUUUT(グート)は完全予約制、コースのみ、1日1組の営業です。
コースは2つ用意されていて、5,500円と8,800円になります。
ボリュームは大きく変わらないそうなので、遠方から訪問する場合は、明らかに8,800円一択ですね(笑)
そして、お酒については、ペアリングがオススメです。
長野県産の日本ワインや新政の日本酒と合わせるペアリングは、コースの魅力を更に高めてくれます。
おまかせコースの内容
- 枝豆の炭火炙り
- 虹鱒のマリネのズッキーニ巻き
- ラープの再構築
- ラペットゥの再構築
- 鶏皮とキュウリのヤム(和えもの)
- 自家栽培の無農薬カオニャオ
- スップノーマイ(発酵タケノコのスープ)
- カオマンガイの再構築
- トムソムプラー(魚の酸っぱいスープ)
- ネームの焼いたん
- ゲーン・ハンレー(タイ北部シャン族の豚肉カレー)
- スイーツ
枝豆の炭火炙り
ナンプラーの香り付けを行っているのがタイ料理らしく、北タイのナンプリック、トマトと乾燥納豆を使用。
トマトの旨味と甘味と酸味に、納豆のコクと香りが絶妙に絡まる!
そして、ナンプラーの香りがふんわりと食欲を刺激する。
辛味はピリ辛。
一品目から振り抜いてくる!
合わせるお酒は枝豆と言えば…な、ビール。
虹鱒のマリネのズッキーニ巻き
虹鱒は5年モノで、20センチになる大型。
凍らせたシャインマスカット、ライム・ミント・青唐辛子・ニンニクなどの激辛ソースを添えている。
香りの爽やかさに魅了されつつ、辛味、酸味、甘味などが複合的で素晴らしい!!
虹鱒の〆が活きているため、強い味付けであっても負けない。
苦味も使われているところが面白いと感じた。
色鮮やかな蔓はハヤトウリのものだそう。
合わせるお酒は…
前の御料理のシャインマスカットと同じ生産者さんの黒ブドウを委託醸造させたペティアンロゼ。
強い発泡があり、甘味があるため御料理に合う。
テロワールとストーリーが素敵なペアリング。
ラープの再構築
紫がかっている理由は、タイ米とタイ黒米をミックスしているため。
本場式に水牛の胆汁を使用!
プリッキーヌ(唐辛子)は激辛!
パクチーは勿論、「パクペオッ(?)」というドクダミ風の香りと酸味のハーブも使用!
攻撃的な味わいなのに異様に旨い一皿で、興奮が止まらない。
旨味と酸味のバランスが絶妙。
タイでは胆汁だけでなくお肉も水牛で作るが、当地には馬肉文化があるために発想された御料理だ。
しかも、タイでは農耕作業で使役された老水牛を最後に頂く文化があるところ、伊那における馬と人との関係性も同様であるそう。
単純に食材として置換したのではなく、文化も置換しているところが最高だ。
この極小の唐辛子はタイでも最高峰の辛さを誇る品種だそう…
新政陸羽一三二號
上記の攻撃的なラープとのペアリングだが、甘酸っぱい新政陸羽の味が分かるところが凄い。
日本酒とタイ料理の高度なペアリングを感じさせるマリアージュ。
ラペットゥの再構築
ミャンマー料理の再構築で、お茶の寒天寄せに仕上げている。
トマトの中にはラペットゥらしい揚げ豆とキャベツと茶葉が入っている。
口腔調理でサプライズを与える面白い再構築だ。
茶葉の存在感があり、上品に噛み締めるラペットゥと言える。
鶏皮とキュウリのヤム(和えもの)
赤タマネギ、味付けはナンプラー、お酢、砂糖で、タイ流の三杯酢!
塩味と甘味が穏やかに調整されている。
鶏皮のコクと香ばしさに、フレッシュハーブの香りが活き活きと躍る。
ハーブはホーリーバジル、レモングラス、柔らかい生のプリックなど。
これは誰もが好みの味だろう。
自家栽培の無農薬カオニャオ
まさかタイのもち米を無農薬で自家栽培されるとは!
ヤムと同時に出されるタイミングもベスト。
スップノーマイ(発酵タケノコのスープ)
発酵させた破竹を使用するばかりか、糠床で漬けた鮒も併用!!
発酵の酸味と旨味の奔流に味覚中枢を揺さぶられる!
マニアックな発酵食材を併用しつつ、香り的にも味覚的にも上品なのが奇跡のようだ。
香りや味覚の癖をカットしているところが巧み。
結果的に、やたら旨いと唸るばかりだ。
振りかけられた煎り米の香りもタイらしさを高めてくれる。
カオマンガイの再構築
味噌と生姜、ニンニクで作ったソースを巻き込んでいる蒸し鶏だ。
カ、カオマンガイ?
しかし、頂いてみると、ついつい失笑してしまう。
確かにカオマンガイなので!
緑のソースはバイホーラパーとカレースパイスのソースで美味。
付け合せのトマトの甘味と香りも印象深い。
トムソムプラー(魚の酸っぱいスープ)
なんと、魚にまぶされているのは、自家栽培のタマリンドの葉!
さらにタマリンドペーストと、もち米でコシアブラを発酵させたナレ野菜ペーストを使用している。
フレッシュハーブは、レモンバジル。
甘味と酸味の力強くも甘美な協奏が良い!
魚は虹鱒のお腹の部分を使用。
自家栽培のタマリンドの葉はコクのある香りで印象深い。
ネームの焼いたん
これはシンプルに面白い提供方法。
自家製のネームは熱を加えることで、とろっとしていて半生状。
頂くとネームらしい強い酸味が届いた後、コクの強さに魅了される。
旨くて爽やかだ。
そのネームを野菜類の甘味と合わせている点が面白い。
ゲーン・ハンレー(タイ北部シャン族の豚肉カレー)
コクが濃密で抜群に美味しいゲーン・ハンレー。
塊肉を用いてホロホロに仕上げ、スパイス・ハーブの香りが力強い。
満腹であってもスプーンが伸び続ける。
スイーツ
フローズンの白イチゴにピーナッツ風味の赤イチゴのアイスクリームを。
スイーツまで手が込んでいて嬉しい。
GUUUT(グート)の立地と雰囲気
GUUUT(グート)はレストランがあるとは思えない立地にあり、外観もまた知らなければレストランだと分かりません。
最寄り駅は飯田線の「沢駅」。
本数が少ない路線ですが、お酒を飲むためには、行き電車・帰りタクシーが無難です。
タクシーは呼んでから1時間もかかり焦りましたので、早めに呼ぶのが良いと思います。
代行で訪問される方も多いそうなので、実はそれがベストか?
建物は、意外性があります。
築100年超の土蔵を改装されているそうですが、店内に入ると意外に感じるはず。
清潔感があり、香りが良いので。
発酵の香りがにスパイスや調味料が混ざり、どことなくタイのスーパー的な空気を思い起こします。
テーブル席は落ち着いた雰囲気があり、初めての訪問でも速攻で寛げます。
僕の訪問前日にトイレが完成したそうで、ラッキーでした。
…それまでは外の仮設トイレだったそうなので(笑)
GUUUT(グート)のお店情報と予約方法
繰り返しになりますが、完全予約制で1組限定なので、早めの予約が必須です!
予約は2名以上で、最大4名+α(要相談)とのこと。
詳しくは公式サイトをご参照ください。
店名:GUUUT(グート)
予算の目安:コースは5,500円と8,800円
最寄駅:沢駅から350m
TEL:090-1541-0215
住所:長野県上伊那郡箕輪町中箕輪542-1
営業時間:ランチは土日限定11:30~13:30、夜18:00~22:00
定休日:木曜
食のために旅する幸せを実感する、すしログ(@sushilog01)でした。
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