こんにちは、淡水魚の魅力を広めたい、すしログ(@sushilog01)です。
「海なし県」なのに寿司店の数が人口比で日本一である、山梨県。
魚の人気が高い県だとデータから分かりますが、淡水魚で新しい表現を行うお店は、決して多くはありません。
そんな山梨県で、今回ご紹介する「NOST」さんは、淡水魚を見事に美味しく表現されています。
すしログ
ベースはイタリアンになりますが、魚好きなら訪問して欲しい一軒です。
食べログは3.05ですが、間違いなく今後伸びるお店です。
甲府市「NOST(ノスト)」の魅力とは?
甲府にある「NOST」さんは平たく言うと、ナチュラルワインとイタリアンのお店です。
オープンは2021年4月。
イタリア料理がベースですが、ジャンルにとらわれない発想が調理の根底にあります。
お店に入り、着席して、ふと本棚に『聞き書 山梨の食事』を発見して間違い無いと感じました。
「聞き書」シリーズは僕も持っていますが、郷土料理の名著です(書架のストレージを食いますが)。
そもそも、僕が「NOST」さんを知ったのはインスタがきっかけでした。
鱒の変わった調理法を探していた時、「NOST」さんのポストがヒットしたのです。
そして、写真から調理技術を確認して、長らく訪問してみたいと思っていました。
いわば期待値が高い状態での訪問となりましたが、期待を全く裏切らず、むしろ独自性の高さに魅了されました。
食べログのスコアは3.05ですが、山梨県全体で見ても10指に入るべきお店です。
そのように感じる最大の理由は、郷土食材を率先して使用し、自己表現に成功しているためです。
全国から食材を引っ張るのではなく、山梨県内の食材を仕入れ、あるいは自家菜園で野菜を育てられるなど、試みが紛れも無い地産地消です。
創作的な調味料や食材の使い方をされていますが、それが決して奇抜ではなく、地に足がついていて、ひとえに美味しくて楽しい。
知られざる食材や意外な味覚との出会いに、常に心が躍ります。
オーナーシェフの大沢さんは、実は山梨県ではなく新潟県出身。
山梨に来て土の良さを実感し、それを活かすべく自家菜園を始められたそうです。
新潟県の料理人、生産者とのつながりもあるようで、近年「グルメ県」として頭角を現す新潟県の良き刺激を受けて、自らの世界観を大きく広げていくのは間違いないでしょう。
「NOST(ノスト)」の御料理の詳細
「NOST」さんは基本的にアラカルトでのオーダーとなります。
訪問当日のメニューは、こちらの通りです。
ただ、僕は他県に行く時は必ず使用食材を確認するようにしています。
そこで、訪問前に使用されている淡水魚についてお伺いしました。
その上で御料理をご用意頂いたので、本記事を見て訪問される方も、必ずお伺いすることをオススメします。
お店の味は、食べ手の努力で変わるものなので…。
同時に、「NOST」さんはお酒もオススメでお願いするのが楽しいと感じました。
新潟県内の飲食店にしか出回っていない、キヨワインの泡!
自家菜園野菜のサラダ、豆腐のディップ
野菜の下に豆腐のディップが隠されている。
野菜は自家菜園のものを使用していて、味が濃い、
時に金時草を生で食べさせてくれる点などが実に魅力的だ。
ディップは豆腐に胡麻とマヨネーズだろうか?生クリームかチーズかもしれない。
一見するとエディブルフラワーを使用したフラワーバスケット的な見た目で「映え」意識かと邪推したが、しっかりと美味しく、根底に自家栽培の精神がある点に好感を覚えた。
茶豆
フェンネルやクミンなどのスパイスと合わせているところが楽しい。
岩魚(イワナ)
放血神経〆して脱水を行い、2週間熟成させている。
イワナにこのような手当てを行うお店は決して多くは無い。
結果的に、初めて頂く味のイワナへと昇華させている。
身質はねっちりとしていて、旨味が強い。
熟成をかけつつ、みっちりとしたテクスチャーに仕立てている点に妙がある。
香りも強い。
噛み締めると脂が力強く滲み出て、あたかもイワナ自体がソースのように感じるほどだ。
イワナで一般的な生からの焼きよりも楽しい味に仕上げていて、これは調理技術の勝利だ。
ソースもまたセンスがあり、キュウリのソースだ。
添えているのは、コリアンダーのピクルス、生で食べられる空豆。
ソースはキュウリとミントの香りが実に爽やかで、イワナに合う。
ミントを用いながらキュウリの香りを殺していない点が良い。
空豆はまさかのシャクッとした歯ごたえで、それでいて甘みが強い。
空豆の「あの香り」は弱い。
ほのかなで爽やかな苦みが引き締め、夏の訪れを予感させる一皿だ。
この岩魚と次の鱒料理に合わせて登場したお酒。
なんと、稲とアガベの日本酒(精米歩合90)!
酒の甘みが活きていて、米らしい香りが軽く広がり、岩魚料理の味覚を受け止める。
それでいて酸が引き締めるので、相互補完的な相性で、マリアージュが奏功している。
ワインよりも攻めた選択をされているのも良い!
鱒(マス)
こちらも2週間の熟成を掛けている。
付け合わせはナッツ、ねこじゃらし、サワークリーム、タプナード。
クレソンは鱒が育った場所のものとのことで、ドラマがあって魅力的だ。
皮付きで熟成させつつ脂を回しているようで、色合いが神秘的で美しい。
引き込まれるような色合いで、奥から色が輝いてくるような深みだ。
そして、味も然り。
奥深い味わいの鱒であり、これは今まで食べた事が無い味わいであった。
イワナの卵、自家製パン
珍しい岩魚の卵をバターと合わせる。
ぶちっ!ぶちっ!と食感が抜群だ。
魚卵らしく味わいは濃厚だが、イクラ(鮭の魚卵)に比べるとサッパリしている。
パンも美味しい点が良い。
次に登場するのは、なんとタニシのキタッラ。
それに合わせて頂いたワイン。
タニシのキタッラ
これは実に攻めている御料理だが、味の完成度は高い。
タニシとマッシュルームを用いたソースが記憶に残る。
そもそも、香りが良い。
淡水の貝ながらに磯っぽくニュアンスがあり、どことなく海苔っぽいので食欲を刺激する香ばしさだ。
そして、苦味が爽やかだ。
苦味がありつつ確かな旨味もある。
タニシの使用量が上手く、これには試行錯誤の足跡を感じる。
マッシュルームの香りと旨味も活きていて、タニシと調和している点が良い。
隠し味に自家製のイワナ魚醤を使用されている点も魅力的。
パスタは全粒粉を使用したキタッラのパスタフレスカだ。
もっちりと、米粉のような弾力があり、力強いソースに絶妙に合っている。
さらに、馬肉のソーセージに合わせて頂いたワイン。
馬肉のソーセージ
添えているのはタプナードと、自家製のゆかり、そしてリンゴのガリ!と個性的。
また、「キャベツを発酵させたもの」との事だったので、ザワークラウトか。
山梨の馬肉食文化をソーセージで表現していて、味わいもバッチリだ。
最後に頂いたのが、山菜とサルシッチャのキタッラ。
ワインを合わせて頂く。
山菜とサルシッチャのキタッラ
使用している山菜は、たらの芽、コゴミ、ワラビ、コシアブラと魅力的!
山菜の香りと旨味を見事にパスタで表現されていて、これぞ旅して食す醍醐味!と感じる。
マイクロハーブは花椒のようで、香りと軽い麻がある。
「NOST(ノスト)」の立地と雰囲気
「NOST」さんは甲府城の南側に広がる繁華街の一角にあります。
お店の外観はいかにも自然派ワインを出すお店と言った感(笑)
内観は気兼ねなく寛げるカジュアルな雰囲気ですが、デートにも十分使えるしっとりした空気感です。
店内に流れる雰囲気は穏やかで、非常にリラックスできます。
「NOST(ノスト)」のお店情報と予約方法
「NOST」さんの予約は、インスタのDMのみとなります。
最近SNSのみというお店が増えてきましたが、僕個人的には良い傾向だと思います。
予約の際に気になる食材や御料理をお伝え出来るので、訪問時の体験価値が上がりますので。
店名:NOST(ノスト)
予算の目安:8,000円~10,000円
住所:山梨県甲府市丸の内1-16-1
最寄駅:甲府駅から500m
営業時間:11:30~14:00、17:30~22:00
定休日:不定休
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