こちらはならまちにある小体な日本料理店です。
建物こそ一軒家ですが、入口は控え目で、カウンター席は僅か4席のみ。
現状ネット上の情報が少ないものの、料理写真を見て美味しいと当たりを付けて訪問しました。
そして、結果的に大正解。
奈良の川波さん、大阪の吉兆さんで修行されたと言うご主人の腕前は確かであり、素朴でありながら食べこんでいる人も満足させる説得力があります。
特に椀の吸い地の完成度は抜群で、鮎の塩焼きの技量も申し分ありませんでした。
この2点においては東京ではまず頂けない味わいなので、西の味が好きな関東の方は訪問して損は無いと思います。
もちろん、関西の方であっても、実直で美味しい日本料理を求める方ならば満足されると思います。
時代に迎合しない味、これこそが将来に残っていく味なのではないか?と、飲食バブルで狂う昨今の状況に対して思うばかりです。
頂いた日本酒
篠峯・純米吟醸雄町夏凛、みむろ杉・純米大吟醸
後者はキリリとした苦味が持ち味の、爽やかな純米大吟醸。
華やかさは程々に、スッキリとしているので、料理を邪魔せず、同時に味がある掃愁帚。
まつ喜さんのコースについて
こちらのコースはコースは8,000円と12,000円の2本となります。
主に大和牛を用いるかどうかの違いとの事でしたので、前者を予約の上で訪問しました。
ただ、メインの御料理はオプションで選べるので、牛肉好きでなければ前者+オプションが良いかもしれません。
僕は+1,600円で【泳ぎ鮎塩焼き】をお願いしました。
鮎好きであり鮎の塩焼きは焼きの技量を表すので頼んだのですが、「天然物」ではなく「泳ぎ鮎」と表記されているのが粋だなと感じました。
まつ喜さんの御料理の詳細
先付
長芋の寄せ、ミニトマトのブランデー漬け、根室の海胆。
あしらわれているのは梶の葉。
古く平安時代には、願い事を書いたとされる葉っぱ。
実に爽やかな先付。
ひんやりと冷えた温度は勿論、長芋の自然な甘みと香りがふわりと漂い、清涼感がある。
出汁は鰹節に鮪節も混ぜており、醤油はコクのあるものをバシッと利かせている。
メリハリがある。
椀
蒔絵が美しい器は正法寺椀。
椀の出汁は本枯節と水出汁昆布のみで、塩気は穏やかな吸い地。
大変美味しい。
鰹と昆布の両方の旨味を引き出しながら、香りを一切立てていない点は見事。
椀種は帆立真薯で帆立の甘みと風味が吸い地によって活きる。
秋田のじゅんさいのシャクッとした食感、玉子素麺のぷるんとした食感がアクセントになる。
お造り
和歌山産の鰹、淡路産の鮃、五島のケンサキイカ。
調味料はちり酢、造り醤油、淡雪塩。
器は何と黄瀬戸!
モダンなデザイン性で驚いたが、山口真人さんの織部リム皿となる。
鰹は藁で炙って、地芥子を添えている。
脂が乗っており美味。
八寸
ハスイモ・つるむらさき・モロヘイヤのお浸し、イタヤガイ、ジャガイモと三度豆の胡麻クリームアーモンド和え、鬼灯の中に揚げ玉蜀黍、鴨ロース、自家製スモークサーモン、枝豆。
奈良食材メインの八寸。
酢の物は青菜の香りを楽しませ、野菜使いが良いと感じる。
胡麻クリームアーモンド和えは胡麻の風味が強いので馴染んでいる。
枝豆は粒が大きいものを選んでおられる模様。
全て満足度が高いのだが、もっと振り切っても良いかと感じた。
全体的に端正な御料理が多いので、八寸で「遊んで」も決して下品ではないと思う。
「ご主人ならでは」の御料理で固めると、八寸のみならず全体の満足度、飲食を通しての喜びも高まるだろう。
鮎の塩焼き
件の泳ぎ鮎は大変イキが良かった。
肌艶も良い。
焼かれた後の盛り付けは、題して「縄張り争い」との事(笑)
付け合せの野菜はオクラで、ダビデの星と言う品種。
鮎は長時間掛けて焼かれており、焼かれている際に脂が滴り、炭が爆ぜていた。
よって燻された香りも付いており、格別の味となっている。
焼きによって旨味と香りを凝縮させており、縮こまった肝は良い風味。
振り塩も文句無し。
また、ダビデの星もうまい。
意外にも柔らかかったが、これは焼きによるものだろう。
甘みと香りが強く、名脇役であった。
調味料も単なる蓼酢ではなく、蓼に出汁とワインヴィネガーを用いたもの。
炊き合わせ
全て地場産の野菜を使用。
大和丸なす、万願寺唐辛子、ヤングコーン。
繰り返しになるが、野菜の引き立て方が巧み。
出汁や調味も野菜の良さを崩しておらず、秀逸。
お食事:じゃこ山椒ご飯、留椀、香の物
お米は奈良のヒノヒカリ。
僕はサーモンハラスやトリュフを用いたご飯よりも、こう言うシンプルなご飯が好きだ(笑)
香の物も白菜の塩漬け、小梅、四方キュウリの糠漬けと、大変魅力的!
また、留椀も抜かり無く、トマト出汁を利かせている。
トマトの酸味が爽やかであり、旨味も加えられている。
敢えて説明すると、トマトはインド料理に於いて出汁として用いられているので、酸味や甘みだけでなく旨味も強い食材である。
塩梅が良かった。
水菓子
白桃のアイス、ゴールデンキウイ、ルバーブソース。
白桃の強い甘みにゴールデンキウイとルバーブの酸味が合う。
異なる季節に異なる食材を求めて訪問します!
割烹 まつ喜さんのお店の情報
割烹 まつ喜(食べログのリンク)店名:割烹 まつ喜(まつ㐂)(かっぽうまつき)予算の目安:コースは8,000円と12,000円の2本、メインはオプションで選択可能
最寄駅:近鉄奈良駅から600m
TEL:0742-93-6222
住所:奈良県奈良市東城戸町16-1
営業時間:お昼11:30~14:30(L.O.12:30)、夜17:30~22:00(L.O.19:30)
定休日:月曜、第3日曜、火曜ランチ
※完全予約制となります
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前略。
数年前より拝読参考にさせていただいております。
私は1996年に奈良県より上京し、その頃に築地場内市場の「寿司大」さんで東京の鮨、とりわけ天然黒鮪の味に魅了されました。
当時の価格は店長おまかせセット3500円 でした。
(十貫と玉子焼きとお好きな握り一貫 現在は九貫 価格は5,000円ほど)
以後、通い詰めるも当初一般顧客がいなく並ばず暖簾をくぐれる状態だったのが(ランチ三色丼1,000円があった。)徐々にマスコミの知るところになり、インターネット時代が到来した以後はご存じの通りです。
そこで、同じ価格帯で寿司大さんレベルの黒鮪を出す江戸前鮨店を探すも見つけられず、高級江戸前鮨店に行くほどの器量もない20代でした。
そのうちに東京の飲食店事情にも理解が及び、ある時にこちらのブログを知って幾つかの名店の味を堪能させていただいた次第です。
(特に価格帯からも心に残ったのが椎名町の松野寿司さんでした。)
現在、地元奈良に帰郷しています。
改めて拝見し、貴方の行動範囲とアンテナの正確さに驚かされています。
柿の葉寿司では大手のものは百貨店や駅売店などに納品されるため、大量生産によりシャリが炊き立てで押されるので非常に状態が悪いのですが、ブログで紹介された「山の辺」さんは朝から売れる分だけを作る非常に良心的なお店で、高齢者の母も褒めております。
そして、長谷寺のうどん店の「与喜饂飩」。ここは他府県からのお客さまが多いぐらいの味でした。(残念ながら家庭事情で閉業)
あとから、こちらにも訪問されていると知り驚愕いたしました。
そしてこちら、ならまちの割烹店。
まだ未訪ですが散歩の折に見つけて、良さそうだったので行きたいなぁと思い、こちらのブログを調べてみて、再三再度感服した次第です。
さて、
長くなり恐縮ですが、いろいろと名店の情報を拝読させていただいたので、私もご報告がてらコメントをさせていただきたいと思っていたのですがついつい忙しく遅くなったのですが、現在関西にいらっしゃるようなので取り急ぎと思い、乱文で失礼いたします。
すでにご存知かと思いますが、
こちらの ならまち に昨年夏に姉妹で経営されている江戸前鮨店「はなこ」というお店があり、先日訪問したのですが、私の感覚ではなかなかの料理と握りに器の誂えも佳き鮨店と感じました。
もしお暇があればぜひ訪問してみてください。
こちらのブログには掲載されていなかったので報告させていただきました。
無数の名店の鮨を経験されていると存じますので、お口に合うか、相応しい鮨か、判断できかねますので、お口汚しに終わるようであればご容赦ください。
では、
良い連休休日と関西の旅をお楽しみください。
草々
まお様
この度は励みになるコメントを頂きまして、誠にありがとうございます!
世の評価は全く気にせず、真面目に美味を追求されている方のお店を応援したいと痛切に感じながらブログを運営してきましたので、心底嬉しく思います。
これからも精進いたします!
また、「はなこ」さんのご紹介にも感謝いたします。
機会を設けて訪問したいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします!
追伸
関西には先月、大阪と和歌山に行ってきました。
時間が無く、ブログ記事を書くのが1ヶ月ほど遅れてしまいました…
ご丁寧に返信ありがとうございます。
こちらを知ったのは、「江戸前鮨」検索を繰り返すうちに食べログにて「辣油は飲み物」さんの松野寿司さんの投稿を拝見して辿りついたしだいです。
東京を去るにあたって、懸念したのが私の三大好物の江戸前鮨と南インドカレーと蕎麦でした。
南インドカレーはならまちで「タリカロ」さんというお店を発見して通い詰めるも一昨年に東京の西荻窪に移転。(今はtoi印食さんに通う)。
蕎麦は奈良市内にもミシュランがありますが、現在は天理市と桜井市の境にある「かおく」さんに通っております。(最近評判なのか週末は開店前から県外ナンバーの車がやってきます。)かなり江戸前レベルの細くてコシのある蕎麦です。ツユは関西にしては甘くないです。
江戸前鮨なんですが、奈良県は不毛の地なので、こちらの投稿を参考に京都祇園の「鮨まつもと」さんに出会うことができて大変感謝しております。
最高のシャリ、冬場の津軽海峡の黒鮪を堪能させていただいております。
最近は「はなこ」さんもそうですが、奈良県の橿原神宮前に「鮨かわしま」さんというお店もでき、先日伺いました。(奈良市にはもう一軒女性が握る鮨店 WASABIさんがあります。電話が繋がりにくいので未訪。)
京都まで行かなくても良くなりつつある地元の状況に嬉しいような寂しいような感じであります。
長くなりましたが、
これから暑い日が本格的に続くかと思いますので、
お慈愛ください。