こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
先日、日本橋室町の蛇の市さんを訪問して、同じく日本橋の吉野鮨さんに久々にお伺いしよう!と思い立ちました。
吉野鮨さんは鮨ヒストリーにおいて押さえておくべき一軒なので、僕は鮨の食べ歩きを始める前に訪問しました。
既に10年以上経っているとは自分でも驚き。
すしログ
そして、職人さんだけでなく食べ手も温故知新は必須だと再認識しました。
老舗が残り続ける確かな理由が、吉野鮨さんにはあります。
日本橋・吉野鮨とは?
こちらは「江戸前鮨の開祖」として伝わる、華屋(小泉)與兵衛の「與兵衞壽司」の流れを汲む老舗です。
系譜で現存するお店は2店のみですが、吉野鮨さんはご家族で暖簾を守り続けています。
格式は非常に高いお店なのに、価格は超リーズナブル。
それでいて全く手抜かりの無い江戸前仕事を楽しめる名店です。
吉野鮨さんの創業は1879年(明治12年)。
「與兵衞壽司」3代目の元で、4代目の小泉喜太郎氏とともに学んだ吉野政吉氏が初代です。
もともとは日本橋魚河岸の屋台として始まりました。
そして、吉野鮨は【トロの握り】の発祥として広く知られます。
鮪の脂身であるトロは今では大人気の鮨種ですが、当時は「足が早くて、脂がクドい」として捨てられていました。
すしログ
当時の呼び名は、「アブ」やら「ダンダラ」など、かなり酷いです(笑)。
今聞いても食欲が全くわかないですよね…
そこで、2代目の吉野正三郎氏が「トロ」に改名して、握りに用いたところ大ヒットしました。
なぜ「トロ」かと言うと、「トロッと口の中でとろけるから」とのこと。
ちょっとオヤジセンスが入ってますが、コピーの力を感じます。
今でもお店の名物として知られます。
しかも、老舗の鮪となるとクオリティが決して高くないこともありますが、吉野鮨さんのものは美味しく、しかも安いところは特筆に値します。
吉野鮨3代目の吉野曻雄氏は鮨職人であると同時に鮨文化の研究者であり、さらに俳優という異色の才能を持つ方でした(伊丹十三監督作品に多数出演)。
鮨文化研究の成果として『鮓・鮨・すしーすしの事典』を記され、これは鮨好き必携の一冊です!
現在は5代目の吉野正敏氏が御兄弟と共に暖簾を守っています。
日本橋周辺の老舗は未だに家族経営で切り盛りされているお店が多く、そのようなお店に伺うと、味だけでなく雰囲気も味の一つなんだと実感します。
すしログ
まあ、歳を食っても趣を介さない人はゴマンといますので、早めに気づけて良かったです。
吉野鮨のシャリと仕事
吉野鮨のシャリは昔から赤酢(お米ではなく酒粕が原料のお酢)と塩のみで切られていて、砂糖は不使用です。
お酢の酸味と塩気は古典としては利いている方です。
そして、温度は人肌温で、硬さも良く、パラッとほどけます。
現代でも通用するシャリと握りを出されている点こそが、長く続く理由の一つであることは間違いありません。
そして、吉野鮨と言えば握り方が「本手返し」であることでも知られます。
※「本手返し」とは現在一般的な「小手返し」よりも手数が多い伝統的な握り方
今回はお好みで頂いたのですが、非常に素早く握られていて、お好み対応可能なお店としてテンポが極めて良いと感じました。
また、仕事については大変クラシカルです。
件のトロのみならず、〆る、煮ると言った仕事は堂に入っていて、説得力があります。
〆加減は強めで、煮ものの漬け込みは貝類の旨味を余すところなく楽しめます。
モダンな鮨や地方の鮮度重視の寿司に慣れている人は意表を突かれるかもしれませんが、これこそが老舗の説得力。
かたくなに昔の仕事を継承しつつ、個性を維持している点が強みです。
そして、薄焼き玉子を鞍掛けで握るスタイルも古典中の古典。
これは「握れなければ鮨ではない」との思想に基づいています。
全ての鮨店が玉子を握る必要はありませんが、思想を実践して継承する点も老舗の意義でしょう。
全体的に、浅草の弁天山美家古寿司とは異なる方向性で、「日本橋の鮨」らしさを最も感じさせてくれる仕事です。
すしログ
お好みでオーダーするのが圧倒的にオススメです!
吉野鮨の立地と雰囲気
日本橋高島屋のすぐそばのビルに入っています。
ビルの店舗ながらに独特の雰囲気があり、威勢の良さもあるので、誰もが気兼ねなく伺えます。
壁には提灯が掲げられ、色々なすし字があり味わい深い雰囲気です。
老舗ですが、入り口では検温&消毒が実施され、カウンターにはアクリルの間仕切りが置かれ、コロナ感染対策を取られています。
吉野鮨のメニューについて
老舗中の老舗なのに、極めてリーズナブルなメニュー構成です。
お昼
- にぎりずし¥2,420
- にぎりずし¥2,970
- にぎりずし¥3,520
- ちらしずし¥2,420
- ちらしずし¥2,970
夜
- にぎりずし¥3,850~
- お刺身盛り合わせ¥3,960~
- 御予算¥11,000~
こちらが凄いのは、お好みで頂いても値が張らないところです。
通例、お好みの場合は当方のペースで頂く都合上、お決まりよりも高くなるのが常です。
しかし、8貫頂いて2,500円と言う価格は、久々に伺って驚きました。
言葉は下品になりますが、激安です。
ここ10年、いや5年の間で見ても東京の鮨の価格は高騰していますが、吉野鮨さんは昔ながらの価格です。
10年前は確か1,500円から用意されていたので値段が上がってはいますが、資本主義で物価が上がらないのは逆にマズい状況ですからね…
極めて良心的な範囲内で価格改定されているのが分かります。
この度頂いた鮨
ガリ
酸っぱくて、しょっぱい!
甘みが一切ない、硬派な味わいのガリ。
薄切りで食感はシャキシャキ。
昭和の影響を受けていないガリで貴重な味わい。
小鰭
縦置きなのが、老舗らしい。
食感はみっしりしていて、しっとり感が無く、酸味もしっかり浸透している極めてクラシカルな〆加減。
しかし、小鰭の旨味と香りがこみ上げてくる点は仕事の必然性を感じる。
当世流の〆の仕事とは全く異なるものの、未来にわたって残り続けて欲しい小鰭である。
鯖
これもしっかり〆で、お酢が中心部まで浸透しているところに特徴がある。
鰹
むっちりした食感で、酸味が先行し、脂と旨味がこみ上げる。
鮪赤身漬け
湯霜漬けなので、食感はねっちりではなく、しっとりしている。
みしっとした身を噛みしめると、鮪の旨味を引き出す漬け加減であることが分かる。
鮪中トロ
筋っぽくなくトロッとしており、発祥の由来どおりの食感に満足。
クロマグロの香りも楽しめる中トロで、これは予想外のクオリティ。
煮浅蜊
極めて珍しい浅蜊の鮨。
てっきり浅蜊を掴んで握る「つかみ漬け」かと思ったが、軍艦での提供であった。
とは言え、味は良く、他では楽しめない妙がある。
浅蜊はしっとりとジューシィ。
漬け込みの味が良く、さらに煮ツメの旨味がじゅわっと追い掛ける。
貝類の旨味成分であるコハク酸を十分に楽しませてくれる浅蜊だ。
穴子
ふっくら、じゅわっ、ほろっほろ。
提供前に炙り、香ばしく焦がしている。
江戸前鮨の穴子が初めてな方は必ず笑顔になる仕事だろう。
煮る際の味は割と穏やかで、濃厚な煮ツメと絶妙なバランスだ。
玉子
これが「鞍掛け」スタイルの握りとしての玉子。
玉子は甘みの塩梅が良く、ジューシィなところが特徴だ。
シャリの酸味がキリッと引き締め、最後に頂いて野暮ッたくない点に老舗の矜持を感じる次第。
吉野鮨のお店情報と予約方法
予約はお電話のみとなります。
が、予約をせずともふらりと伺える点が吉野鮨さんの魅力。
開店早々を狙えば、高確率で入れると思います。
ただ、年末は界隈の会社への仕出しでてんてこ舞いなので、外したほうが無難です。
店名:吉野鮨(よしのずし)
予算の目安:おきまりお昼2,420円、夜3,850円〜
最寄駅:日本橋駅から300m
TEL:03-3274-3001
住所:東京都中央区日本橋3-8-11 政吉ビル1F
営業時間:月~金11:00~14:00、16:30~21:30、土11:00~14:00(閉店、早仕舞いあり)
定休日:日曜、祝日
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同じく日本橋の老舗、親方と交流もある「蛇の市」さん
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日本橋は江戸前鮨発祥の土地の一つだとしみじみ思う、すしログ(@sushilog01)でした。
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4代目は5年前に鬼籍に入られてます。
吉野鮨26年生さま
ご返信が遅くなってしまい申し訳ございません。
事情を承知しておらずお恥ずかしい限りです。
訂正させて頂きます。
この度はご指摘頂きまして、誠にありがとうございます。