すしログ No. 341 氏金寿司@登米市(宮城県)

仙台市と塩竃市に複数の有名鮨店を持つ宮城県。

しかし、今回は仙台でもなく塩竃でもなく、内陸の登米市にあるお店を訪問しました。

最寄駅からお店までの距離は10kmで、お店の外観は街場寿司です。

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しかし、写真を見ると街場寿司のそれとは異なる印象を受けたので、東京から車でお伺いしました。

なお、コロナの感染リスクを下げるべく、訪問の2週間前から予防対策を徹底し、途中のSA・PAでも人との接触を排除して移動しました。

それはさておき、こちらの名物料理は【カツ丼】です。

えっ…と思われる方が100%でしょう。

ネットで見た際に【カツ丼】が有名だと知り、お伺いした際は実際に【カツ丼】を頼んでいるお客さんが多数いらっしゃいました。

これには理由があり、初代の頃に始めて評判を集めた事が由来との事です。

現在は3代目が暖簾を守っておられますが、同時に【カツ丼】の味も守っておられるようです。

僕が頂くのは勿論鮨ですが、【カツ丼】もいつか頂いてみたいものです。

ちなみに、お店の名前の由来も初代となり、お名前が氏家金太郎さんとの事です。

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現在の3代目親方は東京の職人さんとの交流もあり、店名を伺ってみたところ、太一さん、心白さんのお名前が挙がりました。

心白の石田さんは宮城県の食材を偏愛されているので、納得です。

もともとは【カツ丼】も出す街場寿司だったところ、若い親方が暖簾を継ぎ、江戸前鮨のお店に新しく生まれ変わるパターンは現在全国でアツい流れですね。

新潟の登喜和さんや最近ミシュラン二ツ星を取った兄弟寿しさんなど、他県についても同様のお店が増えていて、今後が楽しみです。

氏金寿司さんの握りの概観

さて、氏家さんの握りは全体的に雄々しいところが特徴です。

タネもシャリも大ぶりで、見た目も味も存在感があります。

そして、宮城県の魚介を多数揃え、確かな仕事で楽しませてくれます。

塩竃の鮨とは異なるので、これは宮城県の人も楽しいのではないでしょうか?

シャリは硬めの炊き加減で、味付けは穏やか。

甘みを用いつつ過剰ではなく、塩気と酸味は良い塩梅でまろやかです。

温度は温かめで、ぱらりとほどけます。

お米は登米市産のササニシキを使用されているそうです。

また、変わっているところが煮キリの味。

甘みの強い煮キリを使用されていて、結構特徴的です。

今回は【おまかせ】6,000円をお願いしつつ、タネは宮城県産で固めて頂きました。

敢え無く塩竃産の鮪は不漁のため豊洲に流れて都内のお店に回っていましたが、鮪以外は金目鯛のみ他県産で、他は宮城県産でした。

素晴らしい!

蛸や穴子などは江戸前は勿論、瀬戸内のモノと異なる味わいなのが面白いです。

宮城は久々でしたが、魚に固有の味がある海域である事を再認識しました。

こちらは松島周辺のエリアならば訪問する価値のある一軒だと思います。

塩竃の鮨は街場寿司に近く、仙台市内の鮨店は高額であり夜のみの営業である事が多いですしね…

【おまかせ】6,000円と言う価格は絶対額としては高いかもしれませんが、内容を考慮するとリーズナブルです。

地元の人に強くオススメしたいのですが、鮨を食べる時は上のコースにした方が、100%満足度が上がります。

鮨店は節約する場所ではないと個人的に思います(※都会の鮨バブル店舗は除く)。

ただ、僭越ながら個人的に気になった点もあり、下記の2点となります。

1つ目が、山葵のクオリティ。

指摘するお客さんがいないのかもしれませんが、甘みのある本山葵のみ使用された方が良いです。

鮨店における山葵のクオリティは一流店と二流店を分ける大きなターニングポイントです。

是非とも一流店を目指して頂きたいと感じます。

そして、もう1つは、タネとシャリのサイズ感。

大ぶりなタネ&シャリは個人的には嫌いじゃないのですが、もう少し小ぶりにした方が都会の食好きを引き込めると感じました。

私見となりますが、握りのサイズ感は「ボリューム」の問題ではなく、「味覚」の問題だと考えます。

「デカネタ」なるジャンルの寿司が流行った事で「ボリューム」の問題だと思われがちですが、握りのサイズ感は鮨の味を定義する重要なファクターです。

個人的に、大ぶりだと味覚を表現する事が難しくなるので、少し小ぶりにしつつバランスを向上させると飛躍的に上品な味になると思います。

今後の進化が楽しみなので、折を見て訪問致します。

氏金寿司さんの握りの詳細

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ガリ

甘みが強いクラシカルタイプ。

ガリについても甘みを抑え、辛味と酸味を優先させたものにすると上品になるかと思います。

シャリは米酢であっても、ガリが赤酢で問題は無いので、赤酢のガリを自ら仕込んでも良いかと(宮城県では面白い試みでは?)。

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クロソイ

仙台湾のもので、2日半寝かせたもの。

しっとりほろりとほどけ、旨いを滲ませ、固有の香りが広がる。

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ホシガレイ

石巻産。むちむちした身は旨味がたっぷりあり、旨いの一言。

縁側の旨味と食感を加えている。

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金目鯛

下田産。昆布〆の加減が良い。

脂が乗った金目鯛を〆の仕事で巧くコントロールしている。

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帆立

分厚さに驚く。

そして、見た目を裏切らない味わいで甘みも香りも抜群。

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鮪赤身

漬け。前述の通り塩竃産のクロマグロは豊洲に流れて入手出来ないため、天然モノのミナミマグロを使用。

穏やかでさっぱり味。

漬けで魅力を引き出しつつ、海苔を加えてアクセントにされている。

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鮪トロ

脂はトロトロに溶けるが、クドくない点が嬉しい。

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小鰭

なんと宮城県七ヶ浜産!

しっとりほどける〆加減で、香りが強めだが臭みは無い。

珍しい産地の小鰭を頂けて嬉しい限り。

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ノドグロ(アカムツ)

石巻産。塩〆の後に軽く干して脱水している。

よって、ノドグロらしいとろっとした食感にむっちり感もあり、良い仕事。

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石巻産。香りが良い鮑で、かなりしっとり柔らかな食感に仕上げている。

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海胆

女川産。無添加で、とろ~り溶ける。

海胆らしい磯の香りのある海胆で、甘みはありつつ強過ぎない。

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みっしりした食感の後に繊維質がホロリとほどける。

良い火入れの煮蛸。

甘みのある煮キリとの相性が良い。

なお、近海の漁場について非常に面白いお話を伺った。

金華山の海域の魚は石巻漁場と南三陸漁場に揚げられるが、海域は同じなのに異なる漁場の名前で流通するとの事。

こう言った話は現地に赴かないと分からないので、大変勉強になる。

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穴子

石巻産。柔らかく煮られていて、ふわとろ。

特にとろりとした食感が強く、これは宮城の大型の穴子らしいと感じる。

煮ツメは濃厚な味わいの穴ツメ。

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北寄貝 追加

かなり柔らかくトロトロだが、臭みは皆無。

北寄貝の甘みを満喫させた後、、軽い苦味が引き締める。

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車海老 追加

みっしりした力強い食感の茹で置き。

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海胆 追加

七ヶ浜産。剥きたての殻海胆!

香りも甘みもさっぱりで、端正な味わいの海胆。

また機会を作ってお伺いさせて頂きます!

店名:氏金寿司(うじきんずし)

シャリの特徴:甘みを用いつつ過剰ではなく、塩気と酸味は良い塩梅。温かめ、硬めの仕様。

予算の目安:握りは並1,300円〜おまかせ5,000円まで

最寄駅:なし

TEL:0220-22-2230

住所:宮城県登米市迫町佐沼字錦27

営業時間:11:00~14:00、16:00~21:00

定休日:月曜

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