こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
この度、人気鮨店で使用されている赤酢の飲み比べを行いました。
これは鮨好きとしていつか実現したいと願っていたことの一つです。
どの酢を選んだら良いのか?は、素人だけでなくプロでも若手の方が悩む問題のようです。
そこで、素人とは言え昔から全国で鮨を食べ歩いている自分が分析すれば、使えるデータになるのではないか?と考え、この度実行した次第です。
そして、結果として一定の成果を上げることが出来たと感じています。
プロの方だけでなく、家で美味しい鮨を作りたい!と言う、私と同じ一般の方もご参照にして頂けるかと思います。
お酢は素人が入手できないプロ仕様のものも多いですが、本記事では一般的に入手出来る銘柄に絞りましたので!
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鮨向けの赤酢を飲み比べしようと思った理由
本企画をやりたいと思った理由については、非常にシンプルです。
すしログ
のっけから変態的なコメントで、すみません。
しかし、一流の鮨職人さんは「鮨にとって酢飯が最も重要である」と断言するものです。
ざっくり言うと、鮨の構成要素は魚、仕事(調理)、酢飯。
それぞれの重要度のウェイトは職人次第ですが、酢飯を60%以下と言う職人さんは非常に珍しく、70〜80%以上と言う職人さんが多いように感じています。
安い穀物酢に大量の砂糖を入れるようなお店は論外ですが、真っ当な江戸前鮨のお店であれば酢飯を重視するので、お酢は鮨店にとって極めて重要な調味料となるわけです。
ちなみに、鮨店を訪問し続けるとメーカー名や商品名は自然と知ることとなります。
しかし、今回の検証を経て、お店を巡っているだけでは個々のお酢の香り、酸味、コクを把握し、酢飯(お米)との相性を知ることは不可能だと確信しました。
何故なら、一般的に鮨店では複数のお酢をブレンドしているためです。
また、お酢はそのまま飲むのとお米と合わせるのでは、性質が信じられないほど大きく変わるためです。
個々の味を知るためには、液体の状態で飲み比べして、酢飯の状態で食べ比べしなければ鮨にとっての真価が分からないと痛感しました。
ちなみに、今回使用したお米はササニシキで、宮城県登米産の減農薬米となります。
ササニシキは新米であっても容易にシャリを切れるので、僕が「鮨用のお米」として常備している銘柄です。
酢飯の味は合わせるお米で変わりますので、ご自身のお米を試される際にはご注意ください!
そもそも赤酢とは?
職人さんと醸造会社の方、鮨ヲタの読者の方は飛ばしてください(笑)
赤酢と米酢の違いについては、端的に原材料となります。
赤酢は酒粕がベースで、米酢は名前の通りお米が原料です。
長期熟成に伴い色が褐色となっているため、シャリを切ると薄い赤褐色になります。
香りや酸味は銘柄によりけりですが、旨味成分であるアミノ酸の含有量は米酢よりも多いとされています。
穀物酢が50~80mgであるところ、米酢が100mgで、赤酢200mgとなるそうです。
ちなみに、赤酢と色が似ている黒酢は玄米や大麦を酢酸発酵させて作ったお酢です。
中国の黒酢として名高い鎮江香酢はもち米、山西老陳醋はモロコシが主原料となります。
最後に、赤酢には2つの発酵方法があり「静置発酵法(長期間)」と「全面発酵法(短期間)」があります。
言うまでもなく長期熟成の「静置発酵法」の方が旨味が強く、価格も高価になります。
今回のお酢は全て「静置発酵法」となります。
今回飲み比べした赤酢5銘柄について
今回は以下の5種類の赤酢を飲み比べしました。
- ミツカン(1804年創業):三ツ判山吹
- 横井(よこい)醸造(1937年創業):江戸前熟赤酢
- 後藤(ごとう)商店(1890年頃創業):帝釈の酢
- 内堀(うちぼり)醸造(1876年創業):美濃三年酢
- 私市(きさいち)醸造(1922年創業):江戸前赤酢
選択の基準は、有名店・人気店で使用されていることです。
他にも定評あるメーカーさんの赤酢がありますが、鮨店の食べ歩きで使用を確認したお酢に絞りました。
リアル店舗では揃えることが困難なので、全てネットで入手しました。
プロが使う調味料を一般人が容易に入手出来るなんて、便利な世の中になりましたね…
入手先については、記事の最後に記載しますので、ご参考にされてください。
なお、最近人気を高める京都の飯尾醸造のお酢については、別記事でまとめています。
実際に5銘柄を飲み比べ&酢飯の食べ比べ!
全てのお酢について、下記の指標で飲み比べします。
香り:
酸味・コク:
酢飯における食味:
ちなみに、テンポ良くお届けするために、メーカーの詳細情報については後述致します。
まずは味わいをお届け致します。
ミツカン 三ツ判山吹
1804年以来の赤酢の味を伝える赤酢の元祖
香り:寝かせたようなこなれた香りがあるが、鄙びてはおらず穏やか
酸味・コク:酸味と同時に熟成によるコクが広がり、酸味が引き締める
酢飯における食味:酸味がしっかり活きて、キリッとした味わいに
横井醸造 江戸前熟赤酢
「ヨコ井」の名で知られ、最も多くの江戸前鮨店で使用されるメーカー
香り:しっかりした熟成の香りがあり、これぞ赤酢!と言った印象を与える
酸味・コク:コクがかなり強く、酸味は舌に放射状に広がる(直線的な酸味でない)
酢飯における食味:旨味がしっかりと感じられ、色の割に酸味はそこそこ。お米の味が活きる
後藤商店 帝釈の酢
広島の山間部で作られる江戸時代から続く赤酢
香り:スッキリした上品な香りで、米酢に近い
酸味・コク:酸味が強めで、スーッと走り喉にまで伝わる。柑橘のような鋭さ。コクは穏やか
酢飯における食味:酸味が相当穏やかになり、お米の甘みと香りを活かす。酢のコクよりもお米の旨味を活かす。酸味は味をキリッと引き締め、「赤酢ぽさ」は無い
内堀醸造 美濃三年酢
岐阜が誇るメーカーで、最近取り扱いが増える色黒系の熟成赤酢
香り:穏やかな熟成香に酢らしい香りがどっしりしている
酸味・コク:酸味はしっかり目だが、鋭くはない。コクも強い。酸味とコクのバランスが良く、黒酢的ユーティリティ
酢飯における食味:色の割に穏やかな味で、酢飯でも酸味とコクのバランスが良い。お米の味が活きる。特徴的な点として、軽い苦味が強調される。嫌な意味ではなく苦味がキリッとする
私市醸造 江戸前赤酢
都内の通好みの鮨店で使用される千葉の赤酢
香り:今回のラインナップの中で一番濃厚な香り。こなれた熟成香。
酸味・コク:コクが非常に強い。ヨコ井に似ているが、より強い。酸味はどっしりした感じで鋭くはない。
酢飯における食味:液体で飲むとパンチがあるが、酢飯だと穏やかにまとまり、コクと酸味のバランスが良い。その上、お米の甘みと香りを活かす。かなりの出来映えの熟成赤酢。
5つの銘柄を分かりやすく表で整理!
酢飯作りで重要な要素を分類すると、こちらの表の通りです。
結論としては、どれが一番良いと言う訳ではなく、ブレンド比が大切だと感じました。
ブレンドは鮨における酢の面白さであり深さだと思った次第です。
ベースにするなら…三ツ判山吹(ミツカン)と美濃三年酢(内堀醸造)
コクを加えるなら…江戸前赤酢(キサイチ)と江戸前熟赤酢(ヨコ井)
酸味を高めたい時や米酢的な酢飯を作りたい時…帝釈の酢(後藤商店)
一般人が作る場合、江戸前赤酢(キサイチ)を用いると完成度が大変高い酢飯を作れます。
単体でも酸味とコクのバランスが良いので、ブレンドで多めに使っても上品にパンチを利かせられます。
帝釈の酢と合わせると、「上品さ」は弱くなりますが、酸味が加わり「コクがあってスッキリ」した酢飯に仕上げられると思います。
今回の実験を通して、鮨におけるお酢のブレンドの重要性を痛感しました。
単一銘柄だと足りない味覚・風味をブレンドによって補足することは必須なのだと。
しかし、4つも5つもブレンドするのは無粋なので、せいぜい3つが良いように思います。
まあ、一般家庭だとお米の分量的にも2つがベターでしょう。
お酢の酸味やコク、香り、お米の味わいをどう活かすか?を考えながらお酢を使うと面白いと思います。
お酢に関心のなかった人ほどハマり、おうち鮨率がアップすることは間違いないかと!
各メーカー・お酢の詳細情報
まずは、目安の価格については以下の通りです。
- ミツカン 三ツ判山吹 900ml・1,000円(100ml・111円)
- 横井醸造 江戸前熟赤酢 150ml・500円(100ml・333円)
- 後藤商店 帝釈の酢 500ml・700円(100ml・140円)
- 内堀醸造 美濃三年酢 500ml・430円(100ml・86円)
- 私市醸造 江戸前赤酢 200ml・400円(100ml・200円)
各種メーカーの情報については下記の通りです。
自身が購入した際のリンクも貼っておきます。
各種メーカーの情報と入手方法
三ツ判山吹(ミツカン)
社名:ミツカン(株式会社 Mizkan Holdings)
ミツカン自体は日本人ならば全員知っているメーカーですね。廉価な穀物酢のイメージが強いかもしれませんが、もともとは日本における醸造会社の古参です。前述の通り江戸時代からの製法を守っているのに、意外にもリーズナブルな点は流石大企業です。
江戸前熟赤酢(横井)
社名:横井醸造工業株式会社
江戸前鮨店で使われている商品は業務用となり、一般人も手に入るお酢が【江戸前熟赤酢】となります。業務用のお酢は最も有名な與兵衛(よへえ)に始まり、ラインナップが大変豊富です。純米酢をブレンドした白寿(はくじゅ)や、金将(きんしょう)、大吟(だいぎん)、米寿(べいじゅ)、吟成(ぎんじょう)、珠玉(しゅぎょく)、琥珀(こはく)、江戸丹念酢(えどたんねんず)など。【與兵衛(よへえ)】は味のパンチが強すぎるので、単独で用いず、他のお酢をブレンドするのが一般的です。今回のお酢と同様ですね。
帝釈の酢(後藤)
社名:後藤商店(後藤生酢醸造場)
広島県の山間部にある醸造会社ですが、日本で最も有名な鮨店の一つである銀座久兵衛で使用されている点は凄い(久兵衛でメインで使用されているお酢はミツカン=米酢です)。先に酢を知り、後に使用されている事を知ったのですが、驚きました。生産量が少ないようなので、かつては「幻の酢」と呼ばれていたそう。立地と味わい的に「幻の酢」と言われる理由に納得します。酢飯にして威力を発揮するお酢だと思います。
美濃三年酢(内堀)
社名:内堀醸造株式会社
岐阜県の醸造会社です。スーパーで一番見かけるのは【美濃三年酢】よりも【臨醐山黒酢】かもしれません。赤酢、黒酢、米酢、穀物酢に加えてフルーツビネガーも造られており、伝統と革新を体現するメーカーさんのようです。
江戸前赤酢(私市)
社名:私市醸造
千葉県鎌ヶ谷にある醸造メーカーで、黒酢やフルーツ酢などカジュアルな健康酢も多数造られています。鮨店での取扱数は少ないですが、今回試してみてポテンシャルの高さを実感しました。大手ネットショップに卸していないようなので、直販サイトから手配致しました。
▶入手先:私市醸造のオフィシャルサイト
【2022年7月補足】
→その後、人気の急上昇に伴い、個人販売を停止されてしまいました。
業務用の1.8リットルが発注単位になります。
【参考記事】
文中でもご紹介しましたが、飯尾醸造さんのお酢の記事も是非!
調べてみて、赤酢の世界の奥深さを痛感した、すしログ(@sushilog01)でした。
※すしコラムNo. 9をリライトしました
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江戸前赤酢(私市)の入手が現状難しく代替の商品や組み合わせでおすすめのものがありましたら、ご教示頂けないでしょうか。
私市さんの赤酢は記事を書いた後に使用する職人さんが増えた結果、入手しづらくなったようですね…
ご家庭で使われるならば、飯尾醸造さんの手巻きすし酢が使いやすくて美味しいです。
一般入手できない赤酢プレミアムを使用されています。
https://www.iio-jozo.co.jp/product/017