こちらは鮨の全国的激戦区である福岡県で、オープンから僅か1年半ほどで評価を得ている人気店です。
2018年5月末にオープンされた時からマークしておりましたが、最近話題に上る事が多いので、今回機会を作って福岡に飛びました。
お店は赤坂の住宅街にあり、有名パティスリーのオーフィルドゥジュールや和菓子の五島さんの近くです。
入口のアプローチは長く設けられており、大変優雅。
店内も上質な空間で、客席と通路は落とし目の照明ですが、つけ場とカウンターにはスポットライトが照らされております。
握りに入る前にライトの位置を考えて皿を調整されており、微笑ましいです(笑)
親方は32歳と言う若手で、日本料理の作一、紀茂登を経て、福岡の安吉で鮨の修行をされたそう。
お父様が鮨職人であったため、幼少の頃から鮨職人を目指されたとの事です。
頂いた感想としては、日本料理の修行を活かしておられ、鮨に落とし込むべく試行錯誤されております。
また、提供テンポも中々で、20時半の予約で20時40分にシャリ切りを行い、おまかせが終了したのは22時10分。
一斉スタートだと酒飲み客のペースに合わせられ、2時間を超えてしまう事があるので、これは嬉しいです。
鮨店は握りを食べるための場所なので、おまかせ一本といえども、ダラダラお酒を飲むのは大変無粋です。
鮨唐島さんの握りの概観
シャリは硬めの炊き加減で、酸味はそれなりに強めで、塩気は穏やか。
酢は赤酢と米酢を3種類ブレンドされているそうで、赤酢の旨味と風味は巧くコントロールされております。
温度はバッチリで、ほどけ加減も上々。
最も着目すべき点はタネによって温度を調整されているところで、親方は研究熱心な方だとお見受けしました。
しかも、かなりの精度で合っていたので、これは紛れもない武器だと思います。
…ただ、改善すべき点もあり、それはひとえに魚の仕込み。
小鰭に骨が残っており、これは自分の鮨人生で初めての経験です。
自分で仕込む時ですら流石に残しません。
また、車海老のワタの処理が甘く、苦味と臭いがあった点も残念。
小鰭と車海老と言う、江戸前鮨の代表的タネ2貫でのミスは大変痛いところ。
そして、槍烏賊に橙の果汁を合わしておられ、それ自体は魅力的だと思うのですが、使用量がイカの味に調整されていない点は明らかな改善点でした。
イカといえども端の身を味見して、その日の魚味に仕事を調整しなければ、魚の魅力を本当に引き出す事は出来ません。
若い内にオープンされ、初速が良いと、客観的に指摘してくれるお客が少なくなるものかと思います。
あくまでもご自身の感性を信じつつ、折に触れて初心に戻られれば、将来の糧となる素地を得られると感じました。
魚の切り付けを見ていると、隣のお父様の方が精度と速度が上。
師が隣にいて、それが実父と言うのは、大きなアドバンテージだと思います。
精進を期待しつつ、数年後に再訪してみようと感じました。
この度頂いた日本酒
龍神・純米大吟醸山田錦、澤屋まつもと・守破離
鮨唐島さんのおまかせの詳細
蛤出汁の茶碗蒸し
蛤の香りを上品に立て、穏やかな滋味が余韻を引き締める。
一品目から否応無しに期待を上げてくれる。
卵掛けご飯
親方がシャリ切りを行い、お父様が鰹を削る。
切りたてのシャリと削りたての鰹節の組み合わせは日本人の心に無条件で刺さる。
鰹節は極薄で、しっとり且つ香りが良い。
シャリの酸味がキリッと引き締める。
牡蠣
佐賀いろは島産。
ほぼ生に近い火入れで見事!
特に肝は磯の香りを艶めかしく残す。
身はぷっちりと弾け、とろりととろける。
出汁と甘みの塩梅も良く、料理のセンスを感じる。
鰆塩焼き
炭は備長炭で、排煙もバッチリ。
中心をしっとりに保ち、鰆自らの脂による燻し加減も良い。
これも日本料理の技術を感じさせる。
ナマコ
茶振りで柔らかく仕上げたナマコ。
柔らかいと言っても、ただ柔らかいだけでなく、むっちりした身はブチッと切れ、軽いサクサク感を楽しませてくれる。
味付けは出汁と柚子胡椒少々。
花芽わさび
バッチリ辛く、同時に香り良く、甘い。
鯖
即席の漬けで、すり胡麻と共に。
鯖は長崎産で、脂がしっかり乗っており旨い。
カマス一夜干し
熱源の藁は黒木本店の無農薬栽培のものとの事。
カマスは旨味が凝縮しており、済みとは異なる藁の香りが魅力的。
絹もずく
沖縄産。スッキリした酸味とほの甘みある味付け。
リフレッシュ。
鮟肝
スイカの奈良漬けと共に。
間違い無く美味しい酒肴だが、すし匠にて編み出されて以来、既に使い尽くされた感が強い。
若いお店で出されるのは、率直に申し上げて、ダサい。
鮟肝をペーストにして、奈良漬けは微塵切りして一体感を高めているが、折角技術があるならば、独自の酒肴を考えた方が良い。
勿体無いな…と感じた。
ガリ
優しい甘みがあり、食感も強め。
辛味と酸味は弱い。
箸休め的な味付けのガリ。
鰆
熟成されているのか、とろりとした食感でシャリと乳化し易い。
旨味が強い一貫目。
春子
瑞々しい〆加減の春子。
朧の甘みが最後に広がるのが良い。
使うのは血鯛のみとの事。
槍烏賊
橙を使用。前述の通りボンヤリした味になっていた。
イカを用いるならば、甘み、食感の何れかに寄せるイメージを元に仕事を構築された方が良いかと。
鰯
橙を使用。脂がしっかり乗った鰯を細かく切って提供。
この包丁により一体感が高まっている。
鮪赤身
漬け。赤身の旨味を活かしており、香りも中々。
また、室温での温度調整もきめ細かく、大変良い。
さらに、シャリを変えて高めの温度で提供され、見事。
鮪トロ
筋張っており、気になった。
状態がイマイチであれば、赤身のみでも全く問題無い。
食べ手の脂志向が強い昨今だが、固執する必要は無い。
小鰭
塩と酢は強めで、旨味と香りが上品。
親方は小鰭を寝かす事はせず、毎日その日〆のもののみ使用するそう。
「熟成による特有の香りが嫌い」との事だが、寝かせつつ香りを制御する方法もある。
前述の通り、骨が気になった点が残念。
海胆海苔巻き
鮪とは対照的に、冷えたシャリで握る。
起伏ある温度差は親方の握りの魅力だ。
海胆の甘みと香りを自然に活かし、爽やかに食べさせる。
鯖寿司
昆布は甘みと酸味を付けて柔らかく炊いている。
浅葱の風味を強く感じる。
車海老
出汁に漬けたもの。
出汁を用いつつ車海老の甘みを活かしており、魅力的な仕事だが、ワタの苦味と臭いがあり残念。
穴子
出来たてで手渡し故に写真は撮らず。
とろとろに仕上げられており、穴子の香りも活かしている。
美味しい穴子だが、提供前に「熱々です」と言われる割に、そんな事は無かった(笑)
親方がイメージされている仕事の「熱々」状態で頂いてみたい。
干瓢巻き
食感はしっかりしており、味付けは醤油も甘みも穏やか。
故にシャリの味が活きる。
あとは椀と玉子でおまかせは終了だが、追加のタネの確認が入る。
ノドグロ(アカムツ)や白甘鯛などの高級なタネに人気が集中していたが、自身は鯖の腹身をオーダー。
鯖
〆加減はしっかりしており、酸味も浸透させている。
脂が大変乗っている鯖なので塩梅は良く、香りも良い。
椀
潮汁に鰹、昆布を用い、佐賀の味噌2種と薄口醤油も用いた椀。
味噌が極上品で、潮汁に近い味わいで、魚介出汁を楽しませてくれる。
玉子
スフレを通り越して泡のような口どけ。
お会計から推察すると、おまかせが18,700円で、追加1貫1,100円ほど。
お酒もお任せとなりますが、結構ベタなラインナップ。
実力派の親方だと思いますので、型にはまらず、内容もお酒も自由に考えられると良いかと感じました。
人気が出てくると「変える怖さ」もあるものですが、変えても問題無いセンスだと思いますので…
折を見て再訪したいと思います。
鮨 唐島さんのお店の情報
鮨 唐島(ヒトサラのリンク)鮨 唐島(食べログのリンク)店名:鮨 唐島(すし からしま)シャリの特徴:赤酢と米酢を巧みにブレンド。温度管理が秀逸なシャリ。
予算の目安:20,000円〜25,000円
最寄駅:桜坂駅から400m、赤坂駅から1,100m
TEL:092-707-3999
住所:福岡県福岡市中央区赤坂3-1-2 大東ビルⅡ1F
営業時間:一部18:00~20:15、二部20:30~23:00
定休日:不定休
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