こちらは丸太町駅から10分弱歩いた場所にある、スタイリッシュな鮨店です。
古くからの家具街の静かな一角にあり、扉は何と銅製!
店内に入ると壁はコンクリートとタイルが組み合わされ、カウンターはニス塗の白木。
スタイリッシュでありながら暖かみがあり肩が凝らない内装だと感じました。
オープンから1年2ヶ月との事ですが、京都で意外性のある立地と内装なのではないでしょうか。
コースは握り主体で、鮨好きとしては大変好ましいです。
日本料理店がひしめき合う京都において、料理ではなく握りに絞られている点はお店お客の双方にwin-winかと思います。
親方は東京で修行されたとの事で、その繋がり故か魚の多くは築地経由。
築地から引っ張ってきているのにコース設定が8,000円とは、恐れ入ります。
親方の握りは掌ポンはあるものの、4手ほどで捨てシャリ無し。
シャリは硬すぎず「やや硬め」の範疇に巧く収めておられます。
また、見た目は赤酢が強そうですが、色ほど強くはなく、それでいて京都の感覚からすると、酸味はやや強めに感じられる塩梅です。
まとまりの良いシャリなのですが、気になった点が温度。
要因は明白で、恐らく営業中1度炊きであるため。
訪問時間が遅めだと、冷たい点がネックです。
鮨の根幹はシャリであり、味付けよりも温度が先に感知されるものなので、いち早く改善された方が良いかと思います。
お客の方としては、早めの時間帯に訪問すればリスクを下げられるかと思います。
極めてリーズナブルで、京都では貴重な江戸前鮨店なので、今後の進化に大いに期待です。
そして、もう一つ気になった点としては、全体的に「炙り」の仕事が多い点。
11貫のうち4貫が炙りで、酒肴にも1品炙りが入っている事を考えると、流石に多い。
(しかも炭火ではなく、ハンディバーナーなので)
炙りによる香りは思いのほか強いものなので、もう少し減らされた方が、食の連続性が高まり、食後感も綺麗に纏まるかと思います。
キラリと光るものはあるので、頑張って頂きたいと感じました。
この度頂いた日本酒。
玉川酒造・イットキー純米吟醸、
澤屋まつもと・守破離、亀の井酒造・ばくれん超辛口。
先付
生湯葉、絹もずく、堀川牛蒡。
個人的に蔵前の幸鮓を彷彿とさせる先付。
生湯葉はとろとろで濃厚、もずくは非常に細く、酢が極々弱めな点が上品。
寒鰤と炙り〆鯖
寒鰤は濃厚な脂と特有の酸味を楽しめる。
鯖はしっとり且つぷりっとした食感を残す〆加減で期待が高まる。
野菜は胡麻醤油で頂く。
胡麻が濃厚で野菜を活かし、これも美味。
この後、握りに移行します。
ガリ
食感はシャクシャクで、関西としては甘みが弱め。
そして、抜ける辛味。
フルーティーな印象を与えるガリ。
剣先烏賊
竹墨塩と酢橘で。
トロトロながら一本一本がバッチリ主張する切りつけ。
これは良い包丁の入れ方。
酢橘の使用量は程良く上品。
鮃
縁側と共に握る点が面白く、嬉しい。
浅葱を僅かに噛ませている。
これは旨く、縁側のコリコリ食感も魅力。
金目鯛
炙り。
寝かせているのか、旨味が非常に強い。
塩での提供なので、金目鯛の脂をスッキリと楽しめる。
ノドグロ(アカムツ)
炙り。
かなりトロトロで、脂もしっかり乗っている。
金目鯛の後にアカムツとはシャリとの相性を考えての2貫で、
構成上の工夫を感じさせる。
海胆乗せアカエビ
シャクッと弾け、トロッととろけるアカエビ。
シャリとの相性が非常に良い組み合わせ。
ただ、海胆が弱いのは価格帯的に仕方無いとして、ここにきて前述のシャリ温の低さを強く感じ始めた。
温度が低めのタネだと特にシャリ温が気になってしまう。
蓮根饅頭
合間に気の利いた一品。
香ばしく、蓮根の野趣と甘みが食欲を刺激する。
鮪赤身
漬け。
ねっちりとした食感で漬けの魅力を楽しませてくれる。
この時期の鮪の赤身は酸味が穏やかなので、胡麻の風味が加わる事で全体としての満足感を高めている。
但し、これもシャリ温が…
温かい蓮根饅頭の後だけに、更に気になってしまう。
鮪トロ
強い脂の旨味。
水蛸
酢橘と塩で。
包丁のアゴで細かく叩く。
水蛸なので噛み締める喜びがあるが、もうちょいと火を入れた方がシャリと合う。
帆立
炙り。
とろんととろける食感で、帆立自体の味わいが強い。
よって、強い炙りは不要かと思われた。
いくら軍艦
しっかりプチプチと弾ける。
穴子
ほっこり程良く食感を残した煮穴子。
煮ツメはサッパリ目だが、穴子の風味と旨味が抽出されている。
シーズン的に対馬かと思ったが、淡路産を使用されており嬉しかった。
旬に比べて数段落ちるものの、関西で対馬産は何だか味気ないので。
干瓢巻き、追加
柔らかめ、甘めの干瓢。
山葵を強めに使用しており、これは良い。
赤出汁
アラの旨味がたっぷり。
山椒をたっぷりと使用している点が京都らしい。
焙じ茶パンナコッタ、黒蜜
完成度高し!
尚、お茶がサッパリ味でしたが、鮨店では濃いめのお茶を使用した方が良いと思います。
特に旨味の強い赤酢を用いたシャリならば特に。
京都でどのような進化を遂げられるか、楽しみです!
店名:夷川 鮨 すずか(えびすがわ すし すずか)
シャリの特徴:赤酢を利かせつつ、酸味は比較的穏やかに仕上げたシャリ。
予算の目安:おまかせ8,000円
最寄駅:丸太町駅から600m
TEL:075-251-0111
住所:京都府京都市中京区俵屋町305 FORUM夷川1F
営業時間:17:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:不定休
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