こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
長らく前から「都内の人気店を凌ぐ仕入れ力」や「ピンの中のピンの鮪が流れるお店」と聞いていた、横浜の「なか條」さん。
クオリティだけでなく高価なお支払いでも有名なので、中々訪問できずにいました。
しかし、この度さる御仁からお誘い頂き、その方とならばお伺いしようと訪問を決意。
結果として、確かにお支払いが高額でしたが、予想を凌ぐ仕入れとパワフルな仕事に圧倒されました。
頻繁にお伺い出来る価格帯ではありませんが、価格には妥当性を感じます。
食材力は間違い無く、パンチあるタネのラッシュに次ぐラッシュなので!
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「なか條」さんの魅力については、以下の通りです。
- 御料理を選べるサービス
- 仕入れ力の高さ
- パワフルなタネの構成
- 「やま幸」の最高峰の鮪
「なか條」さんがユニークな点が、予約時間は固定されておらず、料理や調味料を選べるところです。
これは素晴らしいサービスだと感じました。
業態としては「おまかせ一本」ですが、お客さんの都合で酒肴と握りのボリュームや、食材、果ては調味料も選べる点は、「進化系のおまかせ」スタイルだと思います。
昨今、「おまかせ一本」で「2回転制」のお店で、追加のタネをほとんど用意していないお店に遭遇する事もあります。
しかし、これについては非常に危険な兆候だと危惧している次第。
お客の満足度を下げるばかりか、職人さん自らが仕事の幅を制限している状況です。
ある程度の自由度が無いと鮨店は鮨店ではなくなります。
中條親方は、全てのお客さんに自由な選択肢を与えている点が素晴らしいと感じました。
そして、噂に聞いていた仕入れ力の高さについては事実でした。
一つ一つの食材が力強く、他店との違いを味で見せつけてくれるものばかりです。
今回の訪問では、お酒300mlボトル、酒肴13品、握り15貫+玉子を頂き、お会計は45,000円ほど。
覚悟して訪問したので、「片手」を超えず安心しました…。
これはもちろん高額なお会計ですが、都内の下手な35,000円ほどのお店で頂くよりも理に適った価格だと感じたのも事実です。
35,000円自体が高額なので、僕の主戦場は今も昔も3万円アンダーのお店ですが、「高級鮨店」を選ぶならば選択肢に入ると感じたのが、高い食材力故です。
そして、タネは旨味や脂のパンチが強いものが多く、「ハードパンチャー」なお店だと感じました。
酒肴だけでなく握りについても同様なので、塩気が効いたシャリでバランスを取っておられます。
中條親方は「やま幸」の山口 幸隆社長と20年以上のお付き合いがある方。
中條親方はもともと天麩羅も出すような街場寿司(旧屋号は「すし割烹 清川」)だったそうですが、20年前、40歳の頃に一念発起。
築地に仕入れをシフトされます。
しかし、ツテの無い中條親方は仕入れルートの構築に多大な努力が必要だった模様です。
そして、当時は無名に等しかった「やま幸」山口社長と知り合い、試行錯誤の末に今のポジションを確立されました。
ハードパンチの背後には、たゆまぬ切磋琢磨があると知り、身が引き締まる思いです。
努力する意義や人の信頼関係の大切さを、鮨職人さんは伝えてくれます。
中條親方はシャリを2種類使い分けるタイプの職人さんです。
赤酢主体、米酢主体のシャリの2種類で、赤酢のシャリの方がまろやかな方向性です。
共に炊き加減はパラッとさせつつ、芯を全く残さない良い炊き加減。
赤酢のシャリは旨味主体で、お米の粒が大きめに感じます。
そして、米酢のシャリについては塩をしっかり効かせて、酸味は上品な部類です。
塩気のある米酢のシャリは、味わいにパンチがあるタネに合わせられている印象です。
それでいて、お米は粒が小さめのブレンドだと感じました。
2種類用意されている理由は明白で、仕入れる鮪の性質故だと思います。
お話を伺うと鮪は親方、「やま幸」山口社長ともに最高だと考える定置網のものを使用されています。
その味わいと香りを活かすために開発されたのが赤酢のシャリのようです。
なお、Googleマップを見ると親方の接客についてアレコレ書かれていますが、僕はフレンドリーで話が面白い職人さんだと思いました。
どことなく怖いところはありますけどね(笑)
ただ、今の時代に珍しい職人らしい職人さんなので、個人的には非常に好感を抱いた次第です。
そもそもカウンターのお店はキャッチボールをする場所なので、キャッチャーに徹するようなコミュニケーションでは快楽は生まれません。
最近は笑顔でパフォーマンスする職人さんも増えましたが、僕はスパルタンな職人さんも残り続けて欲しいと思う、鮨界のドMです(但し、傲岸不遜な方は論外です。自負心は強くとも清々しく表現出来るのが本物の職人なので)。
お会計が高額になるのは分かっていたので、お酒はセーブしようと考えていました。
願ったり叶ったりで【まんさくの花 特別純米 辛口】の300mlボトルがあるとのことで、そちらで温度変化を料理に合わせながら頂きました。
まさかの先付がシラカワ(白甘鯛)の椀!
産地は八幡浜。
しかも肉厚な切り付けで、吸い地はパワフルだ。
日本料理と比べると荒々しい吸い地だが、鮨店の椀としてはハッキリした個性があり、一品目から鮮烈な印象を覚える。
山形県産。
これは力強い脂!
椀が衝撃的であったので意表をつかれたが、刺身を頂き一度冷静になり、確かに凄いクオリティだと実感する。
そもそも身も旨い点が素晴らしい。
付け合わせの肝は、裏ごしをするのではなく、かき混ぜて粘度を上げながら血管を除去している。
故に、非常に濃密な味わいだ。
調味料を醤油とポン酢から選べるところが楽しい。
まさかの大原産で、非常に分厚い!
今の時代に珍しいサイズ感に驚いた。
しかも、切り付けも厚みがあり、久々に大原の鮑をほおばる喜びを噛み締めた。
柴山漁港に揚がる松葉ガニの上位ランクとして知られる「柴山ガニ」のAランクだそうだ。
しかも、冷蔵庫に入れていないそうで、濃密な味わいと香りであった。
中條親方は味わいを重視して雄しか使用しないポリシー。
よって、香箱蟹は使わないそうだ。
なお、柴山港では松葉ガニの管理が厳しく、ランクを約60段階にも分けている。
呼称 | 甲羅の大きさ | 重さ | ランク分け |
---|---|---|---|
番ガニ | 13~15cm | 1kg以上 | 7ランク |
出ガニ | 11~12cm | 800g前後 | 3ランク |
沖ガニ | 10~11cm | 小さめで上質のカニ | 3ランク |
箱ガニ | 10~11cm | 小さめのカニ | 3ランク |
ボタガニ | 11~15cm | 大きさは番ガニや出ガニ同様だが、少し軟らかいもの | – |
その他 | – | 少し黒っぽい「スス」、指の取れた「指落ち」等 | – |
審査をクリアした松葉ガニのみ、柴山ガニの証であるピンクのタグが付けられる。
余市産。
大根おろしと山葵醤油を合わせる点がユニーク。
実に脂が強烈な鰤だ。
熱湯ばらしからの塩漬け。
旬の名残での訪問であったが、時期を考慮しない皮のとろけ方で良い仕事だ。
濃密な味わいを塩漬けでピュアに楽しませる。
使用されているばら海苔も香り良し。
岩手県山田漁港の定置網の鮪。
これは初めて頂くが、それもそのはずで親方曰く稀少性が高く、日本唯一との事であった。
頂いてみると、強烈な脂!!
しかし、食後感は脂としても香りとしても軽やかで、上品に美味い脂であった。
香ばしい香りを出すのが個性的な仕事。
恐ろしいほどに柔らかい。
そして、クセは皆無。
獣肉として極めて美味な肉であった。
「尾の身」は言わずと知れた鯨の際高級部位であるが、親方は60キロ仕入れたそうである。
焼きものを幾つかの魚から選ばせて頂けるのが非常にユニークで楽しいサービスだ。
選んだ魚は【幸神目抜け】で、我ながら抜け目ないと感じる。
昔は廉価であったそうだが、今や「超高級魚」として知られ、出会える事が少ない。
さらに親方から「カマもあるよ」と聞いて、すぐさま頼んだ。
【幸神目抜け】で一番美味しいのはカマであるので。
味わいは期待以上。筋肉質ながら脂がノリノリ、それでいて口中に下品に残らない脂の質だ。
脂がたっぷりなのに全くクドくなく、美味い。
味わい深さで考えるとアカムツ(ノドグロ)を凌駕するコウジンメヌケであった。
身は表面にサッと火を入れていて、甘味を強く感じる。
とろとろした身から甘味があふれ出てくる。
頭は表面を焼いて香ばしく。
見た目からして脂が乗っており、芥子醤油で頂く。
酸味と塩気をキリッと効かせていて、薄切りながら食感はシャリシャリとリズミカルなガリ。
なんと11月末に新烏賊とは驚いた(新烏賊は8月の限られた時期のみ流通するのが一般的なので)。
ブチッと強い食感で切れるため、矢張りクラシック方向の包丁かと思いきや、パツパツした食感から、とろ~りと滑らかな食感にシフトしていく。
みしっと〆て、香り良い春子だ。
酸橘を使用されているが、気にならない範疇での使用量。
脱水によりパツッとした食感の後に、とろとろと脂が滲む。
脂が先行しない食感と仕事なのが粋だ。
クロムツとアカムツの連発は非常に珍しい。
脂のラッシュだ。
昆布〆をバシッと効かせて、上記ムツとのコントラストがハッキリしている構成。
金目鯛と同じく昆布〆で、これもしっかりと昆布の旨味を乗せている。
ムツの脂2連発の後に、魚の旨味と昆布の旨味を強く打ち出す2連発とは、非常にユニークでパワフルな構成だ。
中條親方は三陸の鯖しか使わないそうだ。
頂いてみると、脂だけでなく旨味や香りも強い鯖である。
しっかりと〆つつ、身はしっとり、ほろりとほどける。
確かに旨い。
柔らかさと旨味の強さが印象的な赤身だ。
噴火湾の定置網との事である。
脂ノリノリでコクと香りが良い。
そして、余韻も長く、強い中トロだ。
脂が濃厚。
これも香りが長くどっしりと続く。
岩手県山田漁港のものもあるとの事でお願いする。
じゅわっととろける脂が鮮烈。
なお、親方と漁法の話になったが、「やま幸」の山口社長は定置網を至上だと考えておられるそうだ。
皮も身も柔らかい。
〆つつ身を柔らかく維持する寝かせで、旨味と香りを楽しませる塩梅に仕上げている。
オボロを噛ませて、シャリの塩気を「調味料的」に合わせるバランス。
茹でから寝かせて甘味を感じさせる仕事。
煮ツメは塗らず、漬け込みの仕事で味を伝え、温かくして提供する。
八幡浜産。
身が非常に柔らかく、しっとり。
香りが強くて、甘味もしっかり。
味わい深さに驚いたが、中でも香りが素晴らしい蝦蛄であった。
「出汁巻きと芝海老を使用したものは、どちらにしますか?」との事で後者を、つまり「カステラ玉子」を所望した。
スフレ状でしゅわん、ふわん食感。
甘味は上品で、海老の香りもふんわりと用いる範疇。
「なか條」さんは関内駅、日本大通り駅から近い場所にあり、重厚感が漂う外観です。
店内も高級感がありますが、緊張するような雰囲気ではないので、リラックスできます。
席の間隔も、背面のスペースも広いので、ゆったり出来る贅沢な空間です。
「なか條」さんの予約については、お電話とOMAKASEとなります。
カスタマイズが前提のお店なので、お電話がベターだと感じました。
店名:なか條(なかじょう)
シャリの特徴:赤酢主体、米酢主体のシャリの2種類で、赤酢のシャリの方がまろやかな方向性です。
予算の目安:お酒をセーブして、40,000円〜50,000円
TEL:045-671-9300
住所:神奈川県横浜市中区住吉町3-29 関内住吉ビル1F
最寄駅:関内駅から220m、日本大通り駅から550m
営業時間:17:30~22:30
定休日:第3・5日曜
中條親方と親交があり、同じく「やま幸」の上位鮪を入れる館林「おばな」さん
仕入れ力とオリジナリティを合わせ持つ鮨店!群馬県館林の「鮨おばな」お近くにある林ノ内勇樹さんの「常盤鮨」→2024年3月に都内移転予定
遠方から通う価値のある抜群に美味しい鮨!横浜関内の「常盤鮨」
「現代的なパンチある鮨」の最高峰だと感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
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