こんにちは、焼鳥も大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
2021年10月に初めてお伺いした「YAKITORI燃es」さん。
今や予約を取りづらい人気店になりましたが、これは全てご主人の沼能 大輔さんの努力とセンスの賜物でしょう。
約2年の時を経て再訪しましたが、「高級焼鳥」あるいは「モダン焼鳥」のお店の中では圧倒的な実力です。
様々なお店を巡りましたが、正直レベチだと感じました。
沼能さんは焼鳥業界を盛り上げようと尽力されていますが、その甲斐がご自身の焼鳥にも如実に表れていると感じます。
沼能さんの焼鳥は通い続けて頂きたいと心から実感!
一つ一つの御料理が一流レストランレヴェルの味の、稀有な焼鳥コースです。
タップできる目次
「YAKITORI燃es」は「YAKITORI燃」の系列店です。
不思議な響きの店名ですが、オーナーの阿部敏昭さんが、然=シンプルなものを、火=愛と情熱で御料理へと昇華させる、と言う思いで名付けたそうです。
阿部さんはこの道30年近いキャリアを持つ焼鳥職人。
僕は柴田書店刊行の『やきとり 11店の技術と串バリエーション』でお名前を知りました。
阿部さんがお店をオープンしたのは2002年で、「YAKITORI燃es」の前進である「YAKITORI燃WEST」は2010年のオープン。
そして、2021年6月に「YAKITORI燃es」に生まれ変わりました。
「YAKITORI燃es」を人気店たらしめているのが、焼き手の沼能 大輔さんです。
沼能さんの焼きの技術については、初訪問時から大満足でした。
魅力をピックアップすると、下記のとおりです。
- 串打ちが巧み
- 振り塩が巧み
- 火入れが巧み
- 調味料使いにセンスがある
- 串以外の料理も美味しい
- 野菜を用いて季節感を楽しませてくれる
串ごとに食感のコントラストを強く感じ、香りや火入れ以外に食感も連続性に貢献していると感じました。
そして、コースの構成も巧みで、頂いていて最後までワクワク感やサプライズに満ちています。
「YAKITORI燃es」で使用する鶏は、愛媛県いなほ農園の「媛っこ地鶏」です。
性別はメスのみ。
「媛っこ地鶏」の出荷日齢は80日以上150日までで、飼育方法は平飼いもしくは放し飼い。
銘柄鶏ではなく、紛れも無い地鶏です。
さらに、出荷後に丸鶏のまま2週間ほど熟成させてから使用される模様。
時折熟成と言う手段に溺れて臭みを発生させているお店に遭遇しましたが、これは魚介と同様に辟易するところです。
しかし、沼能さんは全く問題無し。
旨味を引き出し、雑味を出さぬ熟成を実現されています。
その上で、意識的な串打ちと精度の高い火入れによって、多様な味覚と食感を楽しませてくれます。
包丁にしても火入れにしても、部位ごとの魅力を十分に引き出されています。
また、「媛っこ地鶏」以外についても、食材のクオリティが高く、野菜類も美味しいです。
野菜を巧みに用いて季節感を採り入れている点は、工夫があって嬉しいです。
「YAKITORI燃es」は基本的に10,000円の【おまかせコース】のみです(20:40入店の場合は6,000円のコース)。
お酒を飲んで1.5万円~2万円弱となるため、焼鳥店としては上位の高級店になります。
…が、内容的にはコストパフォーマンスが高いと感じました。
ひとえに焼鳥をコース料理として高度に表現しているためです。
焼鳥人気に乗じて値段を上げるお店や高坂鶏などのブランドに依存するようなお店に行くなら、こちらで頂いた方が圧倒的に幸福感が上を行きます。
また、ワインが日本ワイン主体であるところも素晴らしいです。
焼鳥とワインのお店で力強いフランスの赤ワインを出されて微妙な経験をした方は、是非ともおまかせで頂いてみてください。
個人的には、こちらはワインなどのお酒と共に楽しんだ確実に楽しいお店だと思います。
安心院スパークリングワイン2021
ハイビスカスの香りのメレンゲとフォアグラテリーヌ、スモークチキン、キノコのサブレと鶏のパテ。
テリーヌを挟むメレンゲはハイビスカスの香りが良く、嗅覚と味覚のバランスにおいて「群を抜いているな…」と一品で実感した。
他2品もバッチリ。
愛媛県の媛っこ地鶏と宮崎県の押岡地鶏を使用。
実に旨い。
澄んでいて、旨味がしっかりしている。
そして、塩気も良好だ。
焼鳥店の鶏スープは非常に高確率で塩辛い事が多い。
塩気と甘味の閾値は料理人や食べ手の味覚を表す指標である。
へべす、ラディッシュスプラウトと共に。
脂と胸特有の酸味を楽しめる。
皮はパリッと仕上げられていて、薫香も魅力。
薫香は藁で付加されていて、一ひねりある。
全ての野菜が美味しい!
そして、コースの構成が良いなあと実感。
写真では分かりづらいかもしれないが、味覚のメリハリの付け方が巧い。
笹身はふわんふわんで、食感が素晴らしい!
そしてジューシィ!
薫香も付けて大葉で爽やかにまとめる仕掛け。
これは抜群に美味い笹身だ…
合わせているのはマスタード。
脂のパンチを楽しませ、さらに皮の食感と肉の食感も組み合わせて堪らない美味しさだ。
咀嚼する喜びがある。
串打ちでパーツごとに味わいを変化させる仕事に妙がある。
鶏のビスク、ハナビラタケのソテーと共に。
とろんとろんな茶碗蒸しに鶏の旨味とハナビラタケの香りと食感、そして旨味が加わり贅沢な味わい。
卵のコクもあり、抜群に美味しい茶碗蒸し。
ねっちりした食感、香り、ホロ苦さが快感だ。
薫香を付けつつ、あくまでも火入れはふんわりジューシィに。
使用している玉ねぎはシャクシャク感があり、リズミカル。
本当に美味しいつくねを頂くと、塩が良いなあ!つくねは!と痛感する。
大衆店での香ばしいタレも大好きだが、あれは肉よりもタレと香ばしさを味わわせる調理法だろう。
一体感が素晴らしい。
上質に組み立てつつ、塩気とトウモロコシの香りから、ある種のジャンキーさを彷彿させる(とんがりコーン的な)。
懐かしい親しみのある味わいを上品に再構築した一品だ。
頬張る喜びがあるポーションの砂肝!
もぎゅもぎゅと食感が良く、香りも楽しませてくれる砂肝の仕事。
焼きで水分を飛ばしつつ、中はジューシィに仕上げている。
軽やかな印象の獅子唐。
「ただ焼きました」的な獅子唐が多いので、技術ならびに野菜愛を感じた次第。
キュウリ。
品種は加賀太きゅうりか?
メロン的な香りとオリーブオイルの香りで口直し。
ひたすらとろんとろんで、コクがたっぷりなレバー。
臭味は皆無であっても香りとして楽しませてくれる。
マスカットベーリーAと相性バッチリ!
厚みがあり、エキスがたっぷり!
香りと旨味の余韻が良い。
特に香りが非常に長く持続する。
ねぎまがラストとはストイシズムがある構成。
鶏は押岡地鶏で、部位はもも肉。
みっちりしていて繊維質のほどけが良い。
ジューシィで旨味がありつつ、脂は控えめで食後感が軽やかだ。
ネギも焦げなく甘味をたっぷりと感じさせてくれる。
この度頂き、ねぎまのネギは甘くないとダメだと認識させて頂いた。
高度な調理はインスピレーション、学びに満ちている。
以下追加3本。
そして、丸ごと国産レモンサワー900円をオーダー。
コリッコリ!
そしてプツッと切れる食感が快感だ!
葉ニンニクの香りが良い。
はらみは脂とコリコリ食感が魅力。
これは良い表現だ。
皮を下にして鶏自らの脂でバリッと仕上げる。
あたかも鮎の塩焼き。
胸はむっちりしていながら最後にホロリとした食感。
これもネギが甘くて嬉しい。
過去からバージョンアップ。
鶏の旨味とコク、香りが凝縮している!
麺は角が立ちつつ歯切れが良い。
卵のコクもあるように感じる。
とにかくスープに満ちた旨味とゼラチン質に恍惚となる。
2021年10月に頂いた内容は下記のとおりです。
この度頂いたお酒
- スノーブロンシュ・ジャパン・ホワイトエール
- Vinoble Vineyard Sauvignon Blanc 2020
- Tsuno Wine Makiuchi Vineyard Unfiltered Chardonnay #6-B
- 小布施ワイナリーSogga Pere et Fils Syrah et Pinot Noir 2019
- 而今、純米吟醸
- 若駒、美山錦70 無加圧採り 無濾過生原酒 2020BY
ペアリングコースは用意されていませんが、おまかせで頂くのが面白いです。
お酒がお好きな方は、ご相談してみると楽しいかと思います。
下手なペアリングコースのお店よりも、よっぽど精度が高くて個性的なペアリングを行ってくださります。
スノーブロンシュ・ジャパン・ホワイトエール
前菜
右から、炭のグリッシーニとジャガイモと鶏のテリーヌ、チキンのビスケット、ブーダンノワールとアマゾンカカオのビスケット。
コース主体の焼鳥店としては申し分ない前菜の盛り合わせ!
見た目、ポーション、個性の全てを揃えている。
テリーヌはジャガイモも鶏も風味があって、香りで食欲を刺激する。
チキンのビスケットも香ばしく、これは「大人の高級おっとっと」と言うべき逸品(笑)
ブーダンノワールはコクがあり、香りも上品で、ビスケットとの相性も良い。
前菜を頂き、並の高級焼き鳥店でないことが歴然であると分かる。
媛っこ地鶏のコンソメ
ベタ付かず、クリアながらに旨味があり、酸味が個性的なコンソメだ。
同時に鶏の香りも漂わせ、焼鳥店として良い助走の付け方だと感じる。
媛っこ地鶏のもも肉
タタキ状に焼いている。
炭火焼きに加えて、藁で即席のスモークを掛けているようだ。
皮はカリリと食感良好、スモーキーフレーバーもあり、五感に訴えかける。
赤身は柔らかく、脂はとろり。
そして、酸味と野趣がじわりじわりと味を引き締める。
見た目以上に考えられている御料理で、食材の選択と調理の選択が合致している。
サラダ
認識できた範囲で、ロマネスコ、ミニトマト、モロッコインゲン、落花生、紫人参、素揚げのカボチャ、ナスタチウム、パプリカ、エディブルフラワー、ナス、サツマイモ、むかご!
種類豊富!
白ワインビネガーベースのフレンチドレッシングも美味。
ここでお待ちかねの串が登場する。
媛っこ地鶏のせせり
くにゅっくにゅっと食感をムチャクチャ活かしている火入れだ!
脂がありつつ、サラリと流れる脂の質。
ごく軽く山椒を振っているようで、軽いピリリとした痺れがある。
ぼんじり
カリッ、じゅわっと裏切らない味。
やはり脂のクドさがないので、序盤でも嫌味にならないぼんじりだ。
茶碗蒸し
出汁の香りと具の選択が魅力で、白マイタケ、ハナビラタケ、菊花。
超滑らかな口当たりで、とろっとろ。
鶏のゼラチン質が出ていて、塩気は穏やかで旨味を活かしている。
ねぎま
もも肉とネギを皮でくるんで焼いている。
オーソドックスな【ねぎま】を料理として再構築している点が素晴らしい。
しかも、バランスが良い。
火が当たる範囲を調整することでネギの甘みと香り、食感が活きる。
そして、皮のホロ苦さが上品に引き締める。
Vinoble Vineyard Sauvignon Blancの後に登場した、Tsuno Wine Makiuchi Vineyard Unfiltered Chardonnayとの相性も良い。
新銀杏
もっちりと食感が良く、香ばしくて甘い。
つくね
媛っこ地鶏と七谷鴨のブレンド。
甘みと酸味に脂が混ざり、噛み締めるほどに乳化するつくねだ。
火入れはミディアムレア。
表面はカリッとしている。
斬新なつくねに心が躍る。
クリームチーズとフレッシュいぶりがっこ
いぶりがっこではなく、大根の漬物に燻製オリーブオイルを掛けている!
なんてお洒落な。
良い香りだし、新鮮な楽しさがある。
レバー
ぷつっと弾け、とろりととろける。
香りも血の味も濃くない。
クセが無いのにコクがあるレバー。
鶉の卵
出汁が利かされていて、これは「超トロトロな味玉」だ。
小布施ワイナリーSogga Pere et Fils Syrah et Pinot Noir 2019
レバーパテ
洋梨のコンフィチュールとともに。
メチャクチャ美味しいレバーパテ!
コクが強く、クセが無く、それでいて血の香りはふんわりと楽しませてくれる。
スパイスも良い塩梅だ。
笹身の紫蘇巻き
叩き梅を乗せて。
しっとり、ほろり、じゅわり。
笹身の味が薬味の香りと一体化して爽やかな串に仕上げている。
低温でじっくりと火入れしている模様。
日本酒にスイッチ。
而今、純米吟醸から。
椎茸
じゅわっとエキスが滲み、スッキリ目の椎茸。
旨く、香りを穏やかに楽しませる。
炭の香りも良い。
火入れで水分を飛ばしすぎていない椎茸の仕事。
ここで、追加オーダータイム。
本数を指定しておまかせで追加する。
2本頂いた。
七谷鴨のロース
肉質がしっかりしていて、上品な香り。
…だが、炭の香りの後に鴨の香りが追い掛けてくる。
鴨好きには嬉しい美味しさ。
砂肝
巨大!
じゅわっ、コリッコリっと、これは美味しい。
臭みは無し。
快感こそが砂肝の魅力だと気付かせてくれる切りつけと火入れである。
ホロホロ鳥の振り袖
ガリッガリに焼き込み、噛みしめると脂がじゅわっと溢れ出る。
そして、身はしっとり、ホロホロ。
付け合わせは柚子胡椒味噌か?
鶏ラーメン
秀逸な味わいで、下手なラーメン店を凌ぐ美味しさ。
もの凄いゼラチン質と旨味だ!
調味料は白醤油か?味付けも良い。
麺はふにゅっとして反発を見せる、媚びない感じの麺。
スープの奥深さと麺の個性が焼鳥店のラーメンを超越している。
そして、何よりも塩分濃度と油量に関しては、バランスを崩している淡麗ラーメンの人気店よりも上だ。
お店は六本木交差点からほど近い場所にありますが、路地裏なので静かで落ち着いています。
そして、明かりがついていないと、お店だと分からない外観です。
店内には重厚感が漂い、ゆとりある席の配置です。
焼き鳥店離れしたラグジュアリー空間で驚きました。
あたかもステーキ屋さんのようなので。
高級焼き鳥店は割烹風にすることが多いので、個性を感じる内装です。
BGMは無く、その点においても上質な空間です。
シックにまとめられていますが、温かみもあり、それはスタッフの方々の接客の賜物だと思います。
「YAKITORI燃es」のWEB予約は、OMAKASE経由で可能です。
店名:YAKITORI燃es(やきとり もえ えす)
予算の目安:コース8,800円
TEL:03-6455-4554
住所:東京都港区六本木7-13-10 宮下ビル1F
最寄駅:六本木駅から150m
営業時間:18:00~23:00
定休日:日曜、不定休
※完全予約制です
関連する記事
独創性の高い焼き鳥コースなら、江戸川橋の茜さんもオススメ
鮨と同じく職人技術を感じる焼鳥が大好きな、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事のリンクには広告がふくまれています。