こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
こちらは2021年11月にオープンして以来、早々に人気店に躍り出る鮨店です(2022年5月時点で食べログ3.79)。
ご主人の野口親方は、東京で絶大な人気を誇る「鮨はしもと」出身。
つまり、「日本橋蛎殻町すぎた」の系譜です。
しかも「鮨はしもと」の前は今は無き名店「鮨 水谷」で修業されていたそうです。
すしログ
僕は、横浜の「常盤鮨」の林ノ内親方(「鮨 水谷」の二番手)からのオススメで訪問しました。
結果的にオープンして1年も経っていないとは思えない程の握りで、心より楽しませて頂きました!
福岡の鮨シーンを変えうる、期待度大な一軒です!
福岡「枯淡(こたん)」の魅力とは?
福岡の鮨店「枯淡」は、2021年11月に野口和暉親方がオープンされた鮨店です。
野口親方は「鮨 水谷」で2年修業された後、「鮨はしもと」で10年間の研鑽を積まれました。
修行先の「鮨はしもと」は、「日本橋橘町都寿司」(現「日本橋蛎殻町すぎた」)で修業された橋本裕幸親方が2014年にオープンされたお店です。
オープン早々に訪問したところ気になるところがあったので、時を置いて再訪しようと思っていましたが、あまりにも予約困難になったので再訪できずじまいです。
ただ、読者さんから魅力を伺っているので、今や名実兼ね揃えたお店なのだと思います。
野口親方は2022年4月時点で28歳との事ですが、貫禄バッチリで、握りだけでなく接客にも安定感があります。
それゆえに、既にリピーターを生み出していて、上品はお客さんに愛されているようです。
東京だと乗っけからシャンパンを頼んで「行った自慢」大会をするお客が多いので、これからも素敵な方々に愛されて欲しいと強く感じました。
シャリは赤酢で、もっちり感を感じさせつつ、ぱらりとほどけ、温度は温かめです。
1貫目から美味い、と感じさせるシャリ。
酸味はふんわりと穏やかで、塩気も同様に穏やか。
お米の性質と味付けの双方によって、咀嚼する時にお米の甘みを楽しませるシャリです。
粒が大きめに感じ、特徴的なお米だったので品種を伺ったところ、やはり珍しく「あいちのかおり」でした。
選んだ理由は、やはり粒感で大きめだから選ばれたそうです。
使用される魚介については、九州のものと全国のものを巧みに組み合わせておられます。
鮪の仕入れは豊洲「石司」で、仕入れは長浜と柳橋で行っているそう。
「市場に毎日行くのは当たり前」と考えておられ、職人魂を感じます。
仕入れ的に地元の人も、旅行客も楽しめるラインナップで、全方位死角無しなご当地江戸前鮨店だと感じます。
唯一、気になった点は白身魚の仕事。
割と寝かせる方向性なので、日数を短くしても良いように感じました。
食感を残しつつ旨味を引き出す寝かせの仕事があると、バリエーションが広がるのは間違いありません。
なお、店名の「枯淡」は茶道の言葉です。
『デジタル大辞泉(小学館)』によると、その意味は以下の通りです。
人柄・性質などがあっさりしていて、しつこくないこと。
世俗的な名利にとらわれないで、さっぱりしていること。また、そのさま。
今の時代に崇高な志です。
店名をお伺いした時の親方の表情も含めて、記憶に残りました。
独自の道を究めて頂きたいと感じます。
「枯淡(こたん)」のおまかせの詳細
以下に「枯淡」さんのおまかせの詳細をご紹介します。
「枯淡」さんのおまかせは18,000円で、お昼は握りのみ8,000円とのことです。
この度頂いたお酒
- 山形正宗、純米吟醸 雄町
- 三諸杉、特別純米
- 若波、純米吟醸
なお、「枯淡」さんの酒器は非常にセンスが良いです。
酒器が良いと、お酒が進んでしまいますね。
もちろん、味覚・嗅覚に影響を及ぼさない範囲で留めますが。
ヒラスズキ、蛸
ヒラスズキは結構寝かせていて、しっとりした食感で、酸味が爽やか。
蛸は塩気をしっかりと利かせていて、むにゅっとした食感を楽しませる。
ヤイト
標準和名はスマで、関東にはあまり入荷しない魚だ。
思わずテンションが上がった。
脂が乗っていて、身質はむっちりしつつ、繊維はきめ細かくほどける。
その過程で旨味と鉄の酸味、そして香りが広がる。
もずく
石川県産の新モノ。
糸もずくなので繊細ながらに力強い食感が魅力だ。
ホタルイカの味噌漬け
強めに味噌と塩気を浸透させ、日本酒の酒肴仕様に仕上げている。
車の運転が無くて良かった…と思う味付けだ。
毛蟹と海胆
北海道産で、同様に北海道の無添加のバフン海胆を添えて。
甘みと甘みの相乗効果が安定感のある酒肴。
甘鯛の酒蒸し
長崎県平戸産で、葱醤油とともに。
これは旨い。
モノ自体も美味しいが、火入れも良く、ホロホロではなくぷりっとした反発の食感に仕上げている点が素晴らしい。
ホロホロ、トロトロには誰でも出来るので、食感の調整にはセンスが表れる次第だ。
ガリ
甘みがありつつ、酸味がキリッと利いていて、辛味はふんわり。
シャキシャキした食感が気持ち良いガリ。
小鰭
杉田親方の系譜らしい名刺代わりの一貫目!
この系譜では、一貫目が100%小鰭で、師匠への敬意を感じる。
産地は天草産。
みちっと〆つつ、奥からじわじわと瑞々しさが滲む。
そして、凝縮されていた旨味が高まり、香りを上品に楽しませる。
酢も割としっかり浸透させているので、爽やかだ。
ただ、シャリと相まって旨味を強く感じる小鰭。
真鯛
若手なのに皮付きとは素晴らしい。
この真鯛の仕事に「枯淡」を見る。
身は寝かせているため、しっとりしていて、皮目から穏やかな脂と香りが滲む。
爽やかな味なので肉厚な切りつけで提供するところは良い。
北寄貝
厚みがあり、甘みが強い北寄貝だ。
柔らかさと同時に歯応えも楽しめ、しゃくしゃく、とろりととろける。
黒ムツ
脂がしっかり乗っているものを極厚切りにしている。
よって、強いパンチがある。
寝かせているため、しっとりとほどける。
鮪赤身
舞鶴産の80キロ。
爽やかな酸味が持ち味で、鉄っぽい香りは無い。
このあたりは魚体ゆえの個性だろう。
スッキリしていて、食感がぷっちりと小気味良い。
鮪中トロ
赤身優先の中トロかと思いきや、途中から脂がじわじわと高まり、味わい甲斐のある中トロ。
鮪大トロ
非常に柔らかく、とろりととろける。
蛇腹だがサッパリした脂で、最後に香りがふわっと軽く漂う。
墨烏賊
かなり肉厚で、バツバツした食感の後、とろりととろける。
使用している塩が美味しく、酢橘は極少量でセンスがある。
塩は「糸島の藻塩」との事だったので、工房とったん(またいちの塩)製だろうか?
トリ貝
香り良くて、甘い!
香りが遅れて来るので上品な印象のトリ貝だ。
ヒラマサ
和芥子を添えて。
むちっ、みちっ、ぶちりと、これは歯応えがある仕事。
脂が乗っていて、軽い漬け感も絶妙な塩梅。
車海老
茹で上げで、温か目。
ゆえに甘みをしっかりと楽しませる。
海胆軍艦
青森県産。
スッキリしつつ美味い。
冷たいけれど甘みを感じる事が出来るのは、シャリ温を上げてバランシングしているためだ。
穴子
ふわんふわん、しっとりだけど、トロトロではないところが粋。
甘みも軽めなので、個人的に好みの方向性。
干瓢巻き 追加
食感は強いが、「ゴリゴリ」の手前くらいのコリコリ。
醤油はしっかり利かせていて、甘みよりも醤油が優先の味付け。
これはクラシカルで良い。
玉子
均一にきめ細かく、しっとりしている。
表面は香ばしく、記憶に残る味わいの玉子だ。
「枯淡(こたん)」の立地と雰囲気
お店は桜坂駅から180mほどの場所にあり、閑静な一角です。
他のお客さんがいらっしゃったので、外観の写真は撮りませんでした。
暖簾には店名が掛かれておらず、瀟洒な雰囲気は鮨店らしくありません。
むしろ会席料理店のような風情が漂い、店名と合っている…と入店前から感じました。
店内の壁は打ち放しコンクリートでモダンですが、正面の漬け場は数寄屋造り風で渋い方向性です。
伝統と進化をコンセプトにしたような意匠で、親方と建築家の意図が合致していると感じます。
「枯淡(こたん)」のお店情報と予約方法
「枯淡」さんの予約は、お電話のみになります。
異様なスピードで人気が高まっているので、予約のお電話は早めが鉄則です。
店名:枯淡(こたん)
シャリの特徴:大粒のお米を巧みに炊き、酸味も塩気も穏やかで、1貫目から美味いと感じさせるシャリ
予算の目安:お昼握りのみ8,000円、夜はおまかせ18,000円
TEL:092-600-9478
住所:福岡県福岡市中央区桜坂1-5-15
最寄駅:桜坂駅から160m
営業時間:11:30~、17:30~
定休日:不定休
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