すしログ
明けましておめでとうございます。
2020年はコロナのせいで食べ歩きが思うように出来ませんでしたね。
2021年は状況が少しでも良くなり、食べたいものを食べたい時に頂ける生活が戻ること、そして、飲食業界が活況を帯びることを心から願っています!
さて、今回ご紹介するお店は、実は2020年の鮨納めでお伺いしました。
年末の慌ただしい雰囲気が漂う日本橋を抜けて、自転車での訪問。
途中、高島屋でお買い物をしたので吉野鮨さんにも立ち寄ろうとしたのですが、折り詰めの準備で暖簾を上げられない状況とのことで、立地ならではな忙しさを感じました。
立ち寄ることは出来ませんでしたが、昔から贔屓にしている企業がたくさんあるんだろうな…と想像すると、コロナ禍のアオリを食らった年の年末に、ほっこりした気持ちになりました。
そして、訪問した六兵衛さんで、さらに穏やかな気持ちになり、良い鮨納めとなった次第です。
予約無しで伺い、自分のペースで好きなタネを頂ける鮨店は素晴らしいな…と実感しました。
おまかせ一本がスタンダードになった現在において、「鮨の醍醐味」を感じさせてくれるお店は、六兵衛さんのようなお店ではないでしょうか?
人形町・水天宮前の六兵衛とは?
六兵衛さんは戦後間もない1948年(昭和23年)に創業を遡る老舗で、現在は3代目親方の森隆嗣さんが暖簾を守っておられます。
お歳は伺っていませんが、恐らく70代前半でしょうか…二番手さんも同じくベテラン職人さんなので、穏やかな雰囲気が漂っています。
職人が放つ空気感とそれが織りなすお店の雰囲気も、若手職人さんのお店とは真逆と言えます(笑)
ちなみに、六兵衛さんご出身で有名な親方と言えば、鮨山沖の山沖新さんと、鮨一條の一條聡さんがいらっしゃいます。
一條さんは六兵衛さんで24年も修行されたそうなので、六兵衛さんの仕事を全て習得されたと言って過言ではないかと思います。
六兵衛の立地とお店の雰囲気
お店は人形町駅、水天宮前駅の両駅から徒歩2分程度の好立地にあります。
人形町は人形町通りや甘酒横丁はいつも賑わっていますが、道路を一本入ると旧に静けさが訪れ、時間の流れすら変わるような雰囲気なのが、良い。
六兵衛さんのある通りも落ち着いていて、実に昔ながらの鮨店の風情を保っています。
お店の内装はリニューアルされたと思われ、非常に綺麗で、香りも澄んでいます。
いくら風情があったとしても、魚の処理が甘かったり水回りの設備が悪かったりして、空気が悪いと残念ですよね。
六兵衛さんは全く心配する必要は無く、空気が良く、磨かれた白木のカウンターも凛々しさと清潔感に満ちています。
お店の雰囲気は家庭的ですが、定食を出す食堂や割烹とは異なり、ある種の緊張感を微妙にたたえた良い空気感があります。
とは言え、緊張を覚える必要は全く無く、近場の老舗である㐂寿司(喜寿司 /きずし)さんに比べるとハードルは低いです。
なにせ、常連さんと親方のトークが渋く、「気づいたら、もうこんな歳だねえ。あっという間だねえ」なんて親方が話したと思えば、常連さんが友人に電話をし始めて、開口一番「おーい、生きてるかー?俺は今、六兵衛さんだよ。ん?鮨食べてるの」。
こう言った雰囲気が好きな人で、昔ながらの確かな江戸前仕事を求める方ならば、確実にヒットする名店が六兵衛さんです。
六兵衛のメニューと頼み方(実際に頂いたもの)
最初からお好みで行く手もありますが、「好きなものを食べる」よりも「お腹にためたい」時は、お決まりにお好みで追加するスタイルをオススメします。
老舗だとお好みが大変リーズナブルなので、お腹いっぱいになり、且つ好きなものも食べられます。
なので、「まずは、一人前をお願いします」と頼むのが良いでしょう。
シャリについては、米酢と砂糖を用いた戦後開店らしい昔ながらのものですが、温度や硬さは中々に良好です。
老舗だと「粘度が強い」あるいは「温度が低い」こともしばしばありますが、こちらは問題なし。
温かみがあり、ほろっとほどけるシャリは誰しもが美味しいと感じるであろう、「回らない鮨店」であるべき姿のシャリです。
タネは当世流とは異なり冷たい状態で提供されますが、シャリが良いので致命的な瑕疵にはなりません。
とは言え、若手職人さんがシャリの温度のみならずタネの温度にまで気を払うのは、鮨において大変革新的なことであると実感します。
ある日のお決まりの内容
一人前は以下の内容でした。
- 鰹
- メジマグロ
- 鰤
- 墨烏賊
- 車海老
- 玉子(鞍掛け)
- 鮃
- カッパ巻き
- つみれ汁
そして、以下を追加しました。
- 小鰭
- 鯖
- 蛤
- 穴子
お会計は5,500円。
内容は満足度が高く、特に追加した仕事系のタネは抜群の美味しさでした。
ガリ
クラシカルなガリだが、甘すぎず好印象。
鰹
一貫目が鰹とは意表を突かれつつ、脂が乗っていて旨い。
時期的に迷い鰹だろうか。
メジマグロ
鰤
筋はあるものの、脂も香りも楽しめせてくれる鰤。
墨烏賊
隠し包丁なしなので、ひたすらバツバツした食感を楽しませてくれ、噛み締めているととろりととろける。
このハードな食感は江戸前鮨らしくて大好きだ。
車海老
茹で置きでも、甘みをしっかりと楽しませてくれる茹で加減。
鮃
寝かせてあり、ほろっとほどける繊維。
この寝かせは意図した仕事と言うよりも年末ゆえだろう。
玉子
鞍掛けスタイルが泣かせる。
玉子はみっしりした食感で、甘みのあるカステラ玉子。
つみれ汁
塩気が利いた、イワシのつみれ汁。
カッパ巻き
本山葵を使用しているので、爽やか。
牛蒡の漬物
以下が追加したタネとなります。
小鰭
みっしりした食感で、塩も酢も強めに利かせた〆加減。
鯖
小鰭とは対照的にしっとりした食感で、〆はバシッと利かせているが、艶めかしい食感を楽しませてくれる。
生姜と浅葱を噛ませている。
蛤
見事!漬け込みと煮ツメのバランスが神がかり的。
蛤の身は柔らかく、しっとりととろけ、これは絶妙な火入れと漬け込み。
そして、超濃厚な味の煮ツメが旨い。
2020年に頂いた煮ものの中で一番美味しかった。
穴子
これも魅力的。しっかり味を含めて煮た穴子を、丁寧に皮パリに炙って、濃厚な煮ツメと合わせる。
味わいの妙、食感の妙を楽しませてくれる穴子。
対馬の穴子で皆と同じような仕事を施す若手職人さんは食べるべき穴子だ。
「脂が乗っている対馬(と言う名の韓国産)の穴子を甘くトロトロに煮て、薄味の煮ツメをあわせる仕事」は、皆が足並みをそろえて行わなくても良いと感じている。
煮加減(火入れ=食感)、下味の塩梅、直前に炙るか否か、煮ツメをバランス良く考えて組み立てた穴子こそが、今後食べたい穴子ではないだろうか?
六兵衛のお店情報・予約方法
年末の平日お昼にふらっと立ち寄って頂きましたが、遠方から足を運ばれる方は予約した方がベターかと思います(複数名の場合は特に)。
老舗なので、予約はお電話のみです、もちろん(笑)
店名:鮨處 六兵衛(すしどころ ろくべい)
シャリの特徴:米酢を用い、甘みを付けたシャリで、硬さや温度は良好。
予算の目安:昼おきまり+4貫追加で5,500円
TEL:03-3666-7543
住所:東京都中央区日本橋人形町2-13-10
最寄駅:人形駅、水天宮前駅から150m
営業時間:11:30〜14:00、17:00〜21:30
定休日:日曜、祝日
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六兵衛さん出身の鮨一條さん
同じく人形町にある、老舗中の老舗・喜寿司
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いつも貴重な情報をありがとうございます。六兵衛さんは時々店の前を通るのですが、未訪でした。今度伺ってみます。
ところで、記事のなかでお書きになっていた鮨山沖の親方のお名前ですが、「山沖新」さんが正しいです。
バードさま
いつも読んで頂いているとは、嬉しいお言葉です!
また、ご指摘についても大変助かります。
こちらは鮨好きであれば〆もの、煮ものに絞っても良いかもしれません。