こんにちは、蕎麦の人気を高めたい!すしログ(@sushilog01)です。
この度ご紹介する京王堀之内の「手打そば 車家」さんは、東京で非日常を味わえる稀有な蕎麦店です。
威風堂々たる外観の古民家は築160年を超え、提供する蕎麦は名店「一茶庵」を継ぎます。
それでいて、格式が高そうなのに、老若男女を問わず受け入れる間口の広さが癒やしを呼びます。
都心や他県からはちょっと訪問しづらい場所にありますが、蕎麦好きであれば訪問する価値のある一軒です。
京王堀之内「手打そば 車家」とは?
「手打そば 車家」は、初代ご主人の小川修さんによって、1972年にオープンしたお蕎麦屋さんです。
1986年に古民家を移築し、1992年から自家製粉を開始。
小川修さんはオープン後の1975年から21年もの間、名店「一茶庵」の片倉康雄氏に師事されました。
「一茶庵」の片倉康雄氏は「手打ち・石臼挽き・自家製粉」と言う、現代では主流となった手法を編み出した現代蕎麦の偉人と言える職人さんです。
小川修さんが試行錯誤の結果、生み出した蕎麦の傑作は【さらしなの生一本】。
師匠の片倉氏をして以下のように言わしめました。
さらしなの生一本こそは洗練の極致にある蕎麦。これほど色が白く、これほど食べ味の軽い、さやわかな蕎麦はない。また、これほど難しい蕎麦もない。最高のさらしな粉が必要だし、そば打ち技術も難中の難だ。
かつて小川さんは「車家」を作る際、「ここに小さな田舎を作りたい」と言ったそうです。
小川さんは1941年に「車家」から近い場所の農家に生まれ、6人兄弟の3男だったそうです。
勉強に精を出すと、お祖父さんから「百姓に学問はいらない」と叱責されたとのこと。
今や「多摩ニュータウン」となった、南多摩郡由木村の原風景が憧憬として込められているのが、「車家」なのかもしれません。
お店に入る前から期待が高まる家屋は、福島県只見から移築された、本物の田舎家です。
立派な切妻屋根は、今やなかなか見ることができません。
外観のみならず暖簾、アプローチも魅力的。
すしログ
次に、頂い御料理をご紹介します。
京王堀之内「手打そば 車家」の美味しさと魅力
「手打そば 車家」には魅力的なメニューが多数あります。
この度頂いたものは以下のとおりです。
- 本日の前菜1,100円
- 蕗の薹と鰆の天ぷら1,100円
- 三色せいろ1,650円
- 蕎麦ぜんざい858円
- ドライゼロ495円
本当は蕎麦だけの予定だったですが、入口に書かれていた【本日の前菜】が「鯛の子と粟麩の炊き合わせ、菜の花」だったので、頼まずにはいられませんでした。
天麩羅も頼むことを想定していませんでしたが、「蕗の薹と鰆の天ぷら」とは抗いがたい魅力があります。
お蕎麦屋さんで旬を強烈に意識した御料理を用意し、しかも素朴であるところが素敵です。
そして、素朴なのに奥深さがあり、良いものをサラッと出す姿勢に感銘を覚えました。
「映え」を求めるタイプの人には美点を見つけることは難しい御料理ですが、食べ込んでいる人の琴線に触れると感じます。
ドライゼロ
流石にお茶では気分が盛り上がらないなと、オーダー。
本日の前菜
鯛の子と粟麩の炊き合わせ、菜の花。
2月末に、なんて気の利いた、嬉しい取り合わせだろうか。
しかもボリュームがハンパない(笑)
鯛の子はしっとりしていて、軽やかな食感。
出汁は穏やかで、軽い甘みのある素朴な味付けが好印象だ。
実にほっこりする味わいである。
蕗の薹と鰆の天ぷら
天ぷらは薄衣で、非常にサクサク。
やや油切れが気になるが、お蕎麦屋さんの天麩羅としては上々だ。
ツユには最初から大根おろしと生姜が溶いてある。
付け合わせの塩が工夫されていて、独特の香りがある。
煎った蕎麦の実を僅かに混ぜている点が心憎い演出だ。
三色せいろ
訪問当日の「三色」は、ダッタンそば、さらしなの生一本、おせいろ。
【ダッタンそば】は、通常の蕎麦よりもルチンが50倍多い蕎麦で、石臼挽き自家製粉しているお店は東京で唯一(と思われるそうだ)。
【さらしなの生一本】は、蕎麦の実の中心部のみを使用した蕎麦。
【おせいろ】は、契約農家から仕入れる蕎麦を毎朝自家製粉している外一の蕎麦。
まずは繊細で、麺の寿命が短い【さらしなの生一本】から頂く。
香りが上品で、甘みも楽しませる更科である。
舌よりも喉で旨いと感じる、極細の更科。
口の中でバラッとほどけ、プチプチと弾ける口当たりと食感が魅力的。
【おせいろ】は、力強い食感に瑞々しさがあり、香りが抜群だ。
細いのに味わい深い。
食感と口当たりは滑らかで、実に美味しい。
飲み込んだ後も香り立つところも印象深い。
「車家が特に力を入れているメニュー」との言葉にふさわしい。
【ダッタンそば】は、もぎゅもぎゅした食感が独特である。
そして、他の蕎麦を食べた後に頂くと、軽い苦みを感じる。
大人好みの蕎麦で、なかなかの個性派だ。
こちらのツユはコクがあり、醤油と甘みの塩梅はまろやかだ。
鰹は薫香と酸味が利いていて、コクのあるかえしをキリリと引き締める。
薬味は葱が見事に瑞々しく切断されている。
本山葵には少量の砂糖を入れている模様。
大根は辛味大根ではないが、辛味が強いものを使用している。
蕎麦湯は蕎麦粉を添加していないナチュラルタイプ。
ただ、夕刻の訪問ゆえか、とろっとしていて甘みも強めだ。
甘味の誘惑も断ち切ることが出来ず、欲望のままに頼む。
蕎麦ぜんざい
出来立ての蕎麦がきに田舎餡を使用、とのこと。
餡は丹波産大納言小豆と和三盆で作られている。
蕎麦がきはねっちり、とろりとした食感で、甘みと香りが十分にある。
小豆は食感が軽く残されていて、甘みが上品だ。
ベッタリ残らずサラッと流れる甘みで、蕎麦がきを汚さない甘みと見た。
甘味に、超極細切りの昆布の佃煮を添えるセンスが卓越している。
旨い。
少量の胡麻もアクセントとなり、細部への配慮も感じる。
これは頼んで大正解のだ。
素晴らしい美味しさの蕎麦屋スイーツを堪能させて頂いた。
京王堀之内「手打そば 車家」のお店情報と予約方法
予約については、お電話のみとなります。
そして、席のみの予約は平日の夜だけ可能で、休日はコース料理の予約となります。
また、コースは2名以上、3日前までの予約制です。
店名:手打そば 車家(てうちそば くるまや)
予算の目安:1,210円〜
TEL:0426-76-9505
住所:東京都八王子市越野3-10
最寄駅:京王堀之内駅から1,700m
営業時間:11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~20:30(L.O.20:00)
定休日:火曜の夜、水曜、第3木曜
本記事は、宮下裕史氏の『そば名人』を参考にさせて頂きました。
素晴らしい文章でグルメガイドとは次元が違うので、未読の方は是非ともお手に取って見てください。
蕎麦に日本食の美を感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
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