
こんにちは、鮨を愛する鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
さて、泉岳寺(高輪ゲートウェイ)にある「鮨 にし岡」さんは、他のどのお店とも異なる新進気鋭の鮨店です。
親方の類まれなる求道的な試みが独自性と美味しさに奏功。
鮨や魚を食べこんでいる人ほど、口にした時のインパクトが大きい鮨です。

キレイな味で、存在感が強い鮨。

これから間違いなく注目を集める職人さんだと確信します。
理由については、この後の異常にマニアックな本文をご参照ください!
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「鮨 にし岡」の親方、西岡 洋介さんは2021年3月に経堂でオープンされた後、2023年6月に現在の場所に移転されました。
移転前は津本式を使用されて熟成鮨を売りにしていたようですが、現在は方向転換されていて、仕入れの主力は徳島県鳴門の村さん、神奈川県長井の「さかな人」長谷川さん、愛媛県伯方島の藤本さんなどのようです。
食好きならば今や誰もが知る漁業関係者の方々ですね。
西岡親方は豊洲から仕入れるよりも、各地の漁業者と協業するスタンスを取られています(豊洲で仕入れる魚は鮪、小鰭、穴子くらいだそうです)。
結果として、仕入れの時点で個性が表れています。

仕事の魅力としては、各地のエリート漁業者の魚をお客への提供のタイミングを見極めてピンポイントで仕入れ&仕事されている点が挙げられます。
僕が訪問した時も当日締めの明石の魚などが、なんとランチ営業で提供されて驚きました。
同時に、鮨を江戸前鮨たらしめる〆る、煮ると言った古典的な仕事も押さえています。
それによって鮮度と仕事という、江戸前鮨においていわば相反する要素をハイブリッドして、独自の世界観を表現することに成功しています。
魚を食べこんでいる方ならば、一口、いや口にする前のサクの状態を見た時や口に運ぶ際の香りで凄さを実感すると思います。

西岡親方が実践する、魚のクリアーな香りや旨味を表現する仕事は見事です。
それによって、誰もが知る魚であっても異なる印象を与えてくれるはずです。
それを実現しているのは、魚が持つ主要な特徴あるいは一般的に着目される特徴以外の要素も引き出している為です。
結果として、上品でありながら存在感のある魚味なので、魚が雄弁に語りかけてくれます。
また、海水で味付けを行うなどの実験的な試みもされていて、未だ試みの過程であっても既に一定の成果を実感します。
海水の場合、煮キリ醤油が持つ旨味(グルタミン酸)やメイラード反応による香ばしさ、マスキング効果などは使用できないので、魚の純粋性が一層問われることになります。
このあたりの違いから生まれる差分を調整されれば、江戸前鮨の歴史に新たなページを刻むはずだ、と確信しました。
最後に、生命線であるシャリについては、温度管理が良好です。
味付けについても優秀で、塩気は穏やかで酸味も尖りすぎておらず、タネによって酸味をキリッと感じさせる塩梅です。
米粒はもっちり感がありつつタネと融合する良い食感。
ただ、少しばかりムラがあり、加水率が高めの米粒や表面にザラつきのある米粒が気になったので、浸漬を調整されればベストの米粒が増えるように感じました。
言うまでもなく如何に上質な魚であっても受け止めるのはシャリであり、ブレのないシャリを切れる職人イコール名人なので、若く才能のある職人さんこそ「シャリ一生」の心意気で探求し続けて欲しいと思う次第です。
(僕は「握り3年、仕込み8年、シャリ一生」と考えるほどにシャリを重視していて、鮨を食べれば食べるほど「美味しいシャリ」を切れる職人さんは限られていることを実感し、「美味しいシャリ」の職人さんのお店こそ通う価値があるお店だと確信しています!)
「鮨 にし岡」さんは、【おまかせコース】27,500円と【日曜日 握りおまかせコース】18,000円を提供されています(別途サービス料10%)。
初訪問時なので、妻とともに【日曜日 握りおまかせコース】をいただきました。
2025年12月にいただいたお昼のコースの内容です。
お酒はおまかせでいただきました。
- 吉田蔵u 石川門
- 而今 特別純米にごり
- 紗利 五割諸白 純米大吟醸
- 甍 銀・黒 ひとごこち

酒器は酒碗を使用されています。

長谷川さん仕入れの神経〆のキハダ。部位は天身と背トロ、大トロ。これは実に旨い。脂に頼らない旨味と香りのある赤身で一口目から印象深い。脂もあるけれど、旨味が強い。背トロも大トロもバッチリ。大トロは脂が乗りつつ温度を高めすぎていないので、先付けでも口中が重たくならない。全てピュアな香りで、寝かせの期間が長くなくとも旨味でしっかりと堪能させてくれるキハダ。

明石からの直送で、なんと今朝締め!凄いタイミングだ…まして日曜なのに。身以外に皮、内臓、肝を使用している。これが本当に驚くべき鮮度だ。鮮度が高いだけでなく、噛み締めるや否や脂が滲む。そして、脂だけでなく香りも高まる。低温でも噛み締めるとほどに味わいの変化を十分に楽しめる範疇の温度帯。味わい深くとも余韻は極めて上品で、この余韻の清涼感が印象深い!このようなオコゼを厚切りで提供いただけるのが嬉しい。

神経締めで1日寝かせたスマガツオ。皮目を炙って提供。脂ノリノリながら酸味もあり、スッキリしつつ甘い。複雑な味わいだ。

ソースも野菜(蓮根)の粘度を活かしている点が実にスタイリッシュ。油脂や乳脂肪を用いない選択肢は親方の味覚とセンスの証左である。白味噌の香りや甘味、塩味の塩梅も良い。

そして、ペアリングもバッチリ!スマガツオの酸味を受け止める効果があり、同時に、甘味とも同調し、テクスチャーの面でも蓮根や脂と合う。シンクロ率が高いペアリングだ。

酸味を効かせて甘味は上品。旨味も乗せているガリだ。

明石。身は柔らかく、脂が乗りつつ酸化ゼロで香りもピュア。サゴシサイズの鰆の鮨を、ことさら繊細に表現している。

明石。なんと塩ではなく海水での調味!しかも、高知の天日で凝縮させたものを仕入れ、店舗で火入れして使っているそうだ。食感はむっちり寄りの墨烏賊で、パツパツ感は穏やか。軽くごわりとしつつ、とろける食感。かなり「渋い」方向性で独自の食感を表現している。この食感の変化に気付ける方は相当の江戸前鮨好きだ。食感の変化とともに甘味が高まる仕事。

長井。部位違いの2枚づけで脂と食感の多層感を表現している。プチプチしつつとろけて融合する。浅葱を噛ませつつ、味わいのバランスが良い。薬味を用いつつキレイな味わいに落とし込める職人さんはセンスが良い証拠だ。

松前。濃密な旨味と香りで味が濃い赤身!血の香りとコクが長く残る。これは鮪好きには堪らないはずだ。

松前。小トロ。脂がありつつ香りと酸味も楽しめるトロ。天身と背トロについては、部位指定で購入しているそう。仕入価格は上がるものの、ご自身がやりたい表現は徹底できる。

天草。クラシックな方向性の〆の仕事で、塩で脱水して酸味もそこそこ入れて3日以上寝かせている模様。

明石。これも朝締めとのことで、圧巻の鮮度。白眉だ。肝の香りをピュアに楽しませてくれて、脂が溶けるスピードは驚嘆に値する。油脂による「ソース感」はもちろんのこと、香りや油脂が洗練されている点において強い印象を残す。海水をキンキンに冷やして肝を凝縮させているそうで、鮮度のみならず仕事も活きている。

長井。むっちりしつつ滑らかにほどける繊維。これは黒鯥であるにも関わらず、もしも脂が無かったとしても美味しいのではないか?と思うほどに印象的な黒鯥であった(言わずもがな黒鯥の一般的な持ち味は脂なので、このように感じさせる黒鯥は凄い)。多様な味わいが広がり、余韻にしみじみと浸れる黒鯥だ。

子安。極めて珍しい江戸前の神経締め。皮目の繊維のほどけ方や脂が溶ける感覚と、身のむっちり感のコントラストが凄い。そして、海苔が自然に馴染む。これも香りに雑な成分がゼロだ。太刀魚の脂や柔らかさに頼り切らず、その他の要素を活かす仕事が素晴らしい。

昆布森。ピュアな甘味と香りで、ネガティブな要素はゼロ。あたかもフルーツのようである。

産地は対馬だが、「めそっ子」サイズ。食感はホロッホロ、トロトロながら、穴子の香りと脂の甘味を味わわせる穴子。ツメは重くなく、穴子の香りが凝縮されている。

赤出汁で、藤本さん仕入れのアコヤガイを使用。肉質がしっかりしていて、甘味があるので赤出汁に合う。

栃木。巻き簾を用いず手で巻く細巻き!干瓢はしっとりときめ細かいが、シャクッと弾力を感じさせた後にホロホロとほどける。甘味が程良く、海苔の旨味やシャリの酸味と活きる塩梅も魅力だ。

ペアリングで鳳凰山のお茶を提供され、これが海苔の香りと調和する。
「鮨 にし岡」さんについては、下記の食べログのリンクからWEB予約が可能です。
店名:鮨 にし岡(すし にしおか)
シャリの特徴:塩気は穏やかで、酸味も尖りすぎておらず、タネによって酸味をキリッと感じさせる塩梅。温度管理が良好。
予算の目安:【おまかせコース】27,500円、【日曜日 握りおまかせコース】18,000円 ※別途サービス料10%
最寄駅:泉岳寺駅から300m、高輪ゲートウェイ駅から500m
TEL:050-3091-0909
住所:東京都港区高輪2-14-17 グレイス高輪 B-102
営業時間:18:30一斉スタート、日曜12:30一斉スタート
定休日:不定休
西岡親方と親交があり、僕も長年推している「鮨ゆうき」さん
鮨の未来が楽しみな、すしログ(@sushilog01)でした。
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