こんにちは、歴史的なお店が好きな、すしログ(@sushilog01)です。
今回ご紹介する大阪の「蘆月」さんは、なんと「紙でできた鍋」が名物の料亭です。
こちらのお店は、かつて『定本日本料理』(主婦の友社、1979)の「名物」の巻で知り、無性に気になった次第です。
ただ、高級料亭であり、2名以上での訪問となるため、中々お伺い出来ませんでした…。
今回、長年の期待を込めてお伺いしたところ期待以上の美味しさ!
紙製のメリットを活かした、他にはない鍋料理を満喫できます。
紙の鍋なのに何故燃えないの!?と驚くばかりです。
食べログでは僅か3.05のスコアですが、下手な予約困難店よりも遥かに楽しく美味しいのでオススメです!
「紙なべ蘆月」さんは大阪の北新地にある、1927年(昭和2年)創業の料亭です。
「天下の台所」であり「くいだおれの街」である大阪において、創業100年に迫る老舗となります。
今回お伺いしてみて、ビルの立派さに驚きました。
下世話な話で恐縮ですが、このビルだけで資産価値は何10億円なんだろうか…と思いつつ、店内の雰囲気が心配になりました。
しかし、結果的に杞憂に終わりました。
店構えも内観も上質で、「北新地のビル」から彷彿されるケバケバしさは皆無です。
むしろ非常に落ち着きます。
そして、女将さん、中居さんの接客も料亭のそれであり、格式の高さを実感できる雰囲気と接客だと言えます。
こちらで頂くべきは、言わずもがな再三口にしている【紙なべ】。
なんと、炭火に乗せても燃えない和紙の鍋で頂く【魚すき】です。
【紙なべ】は美濃紙を独自加工して作ってもらっているそうで、炭火に掛けても燃えないのは摩訶不思議!
大阪には名物の鍋料理が多々あり、全てが出汁の魅力を伝えてくれる名作ばかりです。
【てっちり】、【ハリハリ鍋】、【うどんすき】など。
【紙なべ】は知名度こそ低いものの、これら有名な鍋と比べても遜色ない名作だと感じます。
伝統的な【魚すき】を進歩させた創作鍋料理です。
【紙なべ】に使用される具は、「魚7種類、野菜40~50種類」との事ですが、実際には野菜50種類以上でした。
そして、出汁は昆布と野菜出汁!
和紙の鍋を使うため、アクが全く出ないところが印象的です。
前述の『定本日本料理』によると、【紙なべ】は初代の女将さんが考案した料理で、料理とは関係のない仕事をされていたところ食道楽が高じて料亭を始められたとの事で驚きです。
そして、味付けの調味料は大阪らしい淡口醤油で、隠し味に砂糖を極少量用いるとの談です。
ちなみに、熱源となる炭はウバメガシの白炭なので、のっけからテンションが上がります!
「紙なべ蘆月」さんのコースは主に2つで、【紙なべコース】19,800円と【紙なべ会席コース】24,200円となります。
両者の違いはお造りの有無。
予約は2人以上の完全予約制で、別途お部屋代3,000円が別途掛かります。
・前菜2品
・お造り
・紙なべ
・おじや
・水菓子
コース自体はシンプルで、ひたすら鍋を育てていくスタイルです。
好印象ですね。
なお、日本酒は幾つかありますが、4合瓶が主体。
僕は1合単位で頂ける大阪府池田市の酒蔵【呉春】2,000円を2合頂きました。
季節感を表し、涼やかな素敵な先付に癒される。
むっちりとした食感で、小豆の香りが実に良い。
さらに、じゅんさいにより清涼感が向上。
山葵はバッチリ本山葵で、香り良く辛い。
玉蜀黍のかき揚げ、鮎の一夜干し、鱧子と長芋酢橘、一寸豆の白酢和え、鱧鮓。
正直なところ鍋料理屋さんなので八寸は期待していなかったが、全て期待以上で、繊細に旬の味を楽しませてくれる佳肴ばかりである。
【紙なべ】の具は非常に豪華だ。
種々多様な旬野菜と魚介を頂く趣向だ。
・鯛、海老、わかめ、蕗、空豆、青ずいき、サツマイモ、しめじ、牛蒡、百合根、湯葉、芽キャベツ、粟麩、玉蜀黍、甘鯛、インゲン、ピーマン、アスパラガス、丁字麩、鱧、茗荷、紫カイワレ、マッシュルーム、ゼンマイ、ねぎ、蕪、エノキ、ブロッコリー、三ツ葉、カリフラワー、菊菜、白滝、蓮根、アコウ、おかひじき、海老芋、焼き豆腐、ほうれん草、イカ、素麺南瓜、穴子、人参、椎茸、九条葱、南瓜、金目鯛、小玉葱
※上記は頂いた順番通り
これらの具をポン酢もしくは胡麻ダレで頂く。
初手の鯛は肉厚で、中心にぷるっとした食感を残している点が良い。
鍋料理の80%、即ち出汁は厨房で完成する。
残りの20%は火入れで決まるわけだが、ここを落とすと価値がゼロになる。
故に「蘆月」さんは鍋料理専門店として中居さんのトレーニングがバッチリである、と信頼を高めた。
出汁が旨いと野菜によって様々な表情を見せる。
出汁がダメな鍋や調味料が勝ちすぎる鍋は、何を食べても同じになるので失敗作だ。
わかめなどは鍋の出汁を吟味する上でうってつけの食材。
比較的前半で甘味が強いサツマイモが登場したが、これもまた出汁が旨いので舌に媚びる事が無い。
鱧と金沢の丁字麩、アスパラガス。
関西らしさを感じさせると共に雅な印象を与えてくれる取り合わせだ。
鱧の火入れも秀逸。
また、甘鯛については一塩して焼いてから使用している点が面白い。
京料理の伝統を採り入れてオリジナルの鍋に仕上げている点に調理のセンスを感じるばかりだ。
このような選択こそ換骨奪胎であり、文化の進歩だと言える。
表面的なパクリが横行する現代において、全ての料理人に得て頂きたい感受性だ。
紫カイワレとマッシュルーム。
アコウ(キジハタ)と、おかひじき。
なお、アコウの後の魚介の提供順序も良かった。
甘味が強い烏賊(恐らくアオリイカ)を出し、素麺南瓜の後に穴子、人参、椎茸、九条葱、南瓜と続き、最後の魚介は金目鯛。
味が分かる方ならば同意頂ける事だろう。
九条葱。
鍋の締めはおじや(雑炊)だ。
味付けが繊細であると同時に、薬味の切りつけも繊細である点が素晴らしい。
泉州水茄子とは、夏場の大阪らしい。
美味しい鍋料理の締めの雑炊は格別だ。
老舗料亭の水菓子がフルーツではなく、かき氷とは嬉しい心配り。
「紙なべ蘆月」のお店情報・予約方法
「紙なべ蘆月」さんは料亭としては珍しく、「ぐるなび」経由でWEB予約が可能です。
店名:紙なべ蘆月(かみなべ ろげつ)
予算の目安:【紙なべコース】19,800円など
TEL:06-6341-6351
住所:大阪府大阪市北区曽根崎新地1-7-10 蘆月ビル
最寄駅:北新地駅から350m
営業時間:12:00~22:00
定休日:日曜
【ハリハリ鍋】が美味しいクジラ料理の、どおぞのさん
すしログ日本料理編 No. 56 どおぞの@北新地(大阪府)大阪らしい鮓、たこ竹さん
190年受け継がれる絶品大阪すし!復活の「た古竹(たこ竹)」(大阪天満宮)関西鮓の特集記事もあります。
握りとはちゃうで!実はおもろい関西寿司の世界!
大阪らしい御料理に感動する、すしログ(@sushilog01)でした。
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