
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
昔から鮨を食べている人や全国を食べ歩いている人ならば、「岡山の鮨の名店」と聞いたら「魚正」の名が頭に浮かぶと思います。
一昔前ならば、間違いなく「西の横綱」であったと個人的に思います(他にも「横綱」と呼ばれるお店2軒にもお伺いしましたが、技量の差が歴然でした)。
再訪したいと思っていた名店なので、お店を閉じたと聞いた時はショッキングでした。
しかし、息子さんが戻られ、暖簾が守られました。


名店の伝統が継がれて心から嬉しく思います!
そして、お味の方は神がかっていて、感銘を覚えました!

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「魚正 山本淳」は、「山もと」の親方をされていた山本 淳さんが「魚正」の3代目として2022年1月にオープンされた鮨店です。
「魚正」は創業を1946年にさかのぼる岡山屈指の名店でしたが、2019年に敢え無く閉店されました。
2代目親方・山本洋子さんの手による「魚正」の鮨は鮮烈な印象を与えてくれたので、山本 淳さんが屋号を継がれたのは、遠く離れた東京の土地でも嬉しく感じた次第です。

お店の最大の特徴としては、技術で語ることに尽きます。
親方は寡黙で、人によってはスパルタンだと感じるかもしれませんが、手元と立ち居振る舞いに目を配らせれば、分かる人にとっては多弁です。
決して言葉ではなく、技術が。
イカの薄造りや、精確かつ高速な切りつけ、一斉スタートながら握るタイミングを見計らって個々に切る配慮など、語らずとも分かる技術こそ鮨の粋だと感じます。
作り手も食べ手も能弁になりがちなご時世だからこそ、このような「黙して語る」粋な職人さんは若い職人さんにも刺激があると思います。

シャリについては、味付けは優しい方向性です。
酸味がじんわりと広がり、塩気は穏やかで、砂糖は不使用かと思われます。
そして、老舗に当たるお店ながら温かいです。
さらに着目すべきはシャリの交換。
非常に細やかで、しかも前のシャリと決して混ざらないよう網布で包んで交換されています。
結果的に、シャリの安定感は高く、シャリは鮨の生命線であることを実感した次第です。

お昼は12時一斉スタートで、夜は18時一斉スタートのようです。
昼であってもカウンター10席は全て満席で、夏らしく鱧の骨切りからスタートされました。
山葵は本山葵で、銅のおろし金を使用されています。
お昼の握りおまかせは9,000円となりますが、味を考えるとものすごいコストパフォーマンスで個人的には驚嘆しました。
なお、夜も16,500円で良心的な価格のようです。


柑橘を加えて爽やかな味付け。

ふわんふわんに仕上げられた鱧にちり酢を加えてピリ辛爽快。

辛味がバシッと効いている、砂糖控えめで硬派なガリ。薄切りでシャキシャキした食感。

極薄かつ極細切りで、ケンサキイカの甘味を楽しませる。包丁による味の昇華。

9分ほどの漬け。さっくりした食感で香りと鉄分をじんわりと楽しませてくれる漬け仕事だ。

昆布〆ながら昆布の香りも旨味も巧みなバランス。身はむっちりしている。春子の甘味を引き立てる仕事だ。酢橘を使用するも2滴ほどで、これもバランスが良い。

さっくりした食感の中に脂が乗りつつも後味が軽い。夏らしさを感じる。香りは上品だ。

軽く炙って温めての提供。クラシックながら配慮ある仕事だ。甘味とホロ苦さ、コハク酸の旨味が広がる。

イチカワの海胆。甘味が濃厚。シャリを効果的なタイミングで交換して、温かいシャリをあわせることで海胆の油脂の甘味を最大化。海苔も直前に用意。酢橘を使用する点は珍しい。

酢洗いの鯵。白眉である。脂が乗っていて香りがあり、旨い。それでいて脂の質は重たくない。このような脂は食欲を刺激してくれる。

岡山らしいタネ。コリコリの身から香りと旨味が広がる。中はトロトロで食感のコントラストがキャッチーだ。木ノ芽の清涼感が相性抜群!

この価格帯で蛇腹とは!力強い味わいだが、脂は重くなく、それでいて味わいと香りに存在感を感じつ大トロだ。

脂の甘味を活かす仕事。酢橘を絞りつつ酢〆とのバランスが高いので活きる。どうしても小鰭に酢橘(あるいは柚子)の果汁を用いられると、バランスを崩している確率が圧倒的に高いので、惚れ惚れする仕事だ。夏場の小鰭にして魅力的な味わいである!

出汁をキリッと効かせつつ甘味がありまろやかな味噌と合わせる。

茹で上げでしっとりした繊維質。甘味が広がる。味噌付きで、尾から口に入れる置き方が珍しい。

肉厚に切っても繊維がしっとりとほどける煮方だ。吸盤は食感がありつつ、香りを楽しませる。

軍艦にはバフン海胆を使用。油脂の甘味をより感じる海胆だ。

炭火焼きの焼き穴子とは痺れるぜ!香りが実に良いなあ…。これは全穴子好きが悶絶する!本当に素晴らしい香りと味わいで、穴子らしさを満喫できる逸品!!個人的に先代よりもさらに美味しく仕上げられていると感じた。

熱々の薄焼き玉子。切断面が実に滑らかで、包丁の研ぎの技術を実感する。甘味があり、香ばしくて良い締めになる。
「魚正 山本淳」さんについては、お電話のみの予約となります。
店名:魚正 山本淳(うおしょう やまもとじゅん)
シャリの特徴:シャリは上品な味付けで万能タイプ。温度管理やシャリ交換が素晴らしい。
予算の目安:お昼9,000円、夜16,500円
最寄駅:大雲寺前駅から260m
TEL:086-222-3505
住所:岡山県岡山市北区中央町7-5
営業時間:12:00~14:00、18:00~21:30 ※一斉スタートです
定休日:日曜、祝日
岡山の鮨店


粋な職人に出会うと鮨好きで良かったと痛感する、すしログ(@sushilog01)でした。
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