こんにちは、蕎麦の人気を高めたい、すしログ(@sushilog01)です。
こちらは、「えっ!?こんな場所に??」という立地にある、実力派の蕎麦店です。
水戸駅からバスに乗る事20数分…離れた場所にあるため、車での訪問が半ば前提となりますが、バスを選んだ理由はお酒です(キリッ)。
こちらはなんと南米料理も出されていて、南米のワインと合わせることを提案されています。
蕎麦は希少性が非常に高い品種を使われているところ。
突出した個性を予感して訪問したのですが、その予測に狂いはありませんでした。
すしログ
水戸「手打ちそば にのまえ」の魅力とは?
「手打そば にのまえ」のご主人は、蕎麦好きが高じて蕎麦職人になった方です。
ひたちなか市の某店(今は閉業)に、お客として通っていたところ、なんと親方から修行を進められたそうです。
そして、修業に入り、独立して15年が経過するベテランです。
今回、他のお客さんが帰られた後、幸運にもご主人とお話をする時間がありました。
そこで伺ったお話は興味深く、ご主人は明確な方針を持って蕎麦を打っていることが分かりました。
山葵を使わない理由は、ツユを活かすため。
もともと江戸時代の蕎麦ツユは鰹節が鰹臭さかったため、臭みを消すために山葵を使用した。
今や鰹臭さは無いので、蕎麦を楽しむためには不要と判断。
蕎麦湯には蕎麦粉を添加しない。
もともと江戸時代には、蕎麦湯の上澄みを飲むものだったので、サッパリ頂くのが粋である。
山葵と塩で食べさせるお店もあるが、親方は塩で食べさせない。
理由は「塩は自分の蕎麦には合わない」ため。
「お酒を飲める蕎麦屋」の場合、多くは蕎麦に足し算することが一つの手法になっています。
しかし、親方は引き算して、自分の蕎麦の味を高められています。
それが最も表現されているのが、後述する【すけもり】です。
使用している蕎麦粉は、常陸秋そば。
しかも、「常陸秋そばのふるさと」であり、「村屋東亭」の渡辺維新親方と「高橋名人」こと高橋邦弘親方が極上と考えた茨城県常陸太田市の金砂郷地区のものです。
さらに生産者さんを限定されていて、赤土町や水府地区の棚谷町のものだけを使用されています。
「地質に特徴のある山奥の斜面の畑」に限定し、手作業で収穫し、天日で乾かしたものに限定されています。
山の斜面の蕎麦粉は粘りが出る、との談です。
10数軒の契約農家に特注で作ってもらっている状況ですが、農家さんは80歳を過ぎた方がほとんどなので、将来的には無くなる可能性が高い蕎麦です。
親方は玄蕎麦を石臼でなく鉄の臼で挽きます。
その理由は、蕎麦の大敵である熱を放出するため。
熱伝導率が高く、すぐに放熱させるため、石ではなく鉄製の臼を使用して、蕎麦の香りが揮発しないよう気を付けているそうです。
そして、この度頂いて感銘を覚えたのが、お蕎麦の味に加えて、蕎麦ツユです。
「にのまえ」さんでは3種類のツユを用意されていて、冷たいお蕎麦には【もりそば用】と【すけもり用】の2種類が使用されます。
【もりそば用】のツユも完成度の高い「辛汁」なのですが、【すけもり用】は白眉です。
蕎麦の香りを最大化するため、「醤油の香りがしないツユ」として編み出された【すけもり用】。
親方の思想が詰まった傑作だと感じます。
「手打ちそば にのまえ」の蕎麦と南米料理の魅力!
それでは、頂いた御料理をご紹介します。
この度頂いたもの
- 珍味盛り合わせ 400円
- ブラジルソーセージ 750円
- セビーチェ(要予約)
- 鴨肉のステーキ(要予約、2人前より) 1,250円
- 赤土十割もりそば(冬季限定) 1,100円
- 赤土十割すけもり(冬季限定) 1,200円
【赤土十割】は「冬季限定」とのことなので、事前に何月まで頂けるのか確認しました。
ご回答は「5月くらいまで」との事でしたが、余裕を持って春先までに訪問するのが良いと思います。
ただ、ご主人は熟成の技を磨かれていて、2~3年熟成した蕎麦も試行されているそうです。
今後も大いに楽しみです!
この度頂いたお酒
- 仙禽 立春朝絞り 純米吟醸生原酒
- Doña Paula Estate Torrontés 2010
ドニャ・パウラ・エステート(アルゼンチン)のワインは、ご主人がセラーで10年以上寝かせたもの!
ふくよかな香りと味わいで、甘みとジューシィさがありつつ、苦味がキリッと引き締める。
熟したパイナップルにトウモロコシを加えたような独特の香りで、大満足。
珍味盛り合わせ
腐乳、山葵の醤油漬け、生七味と、酒飲みならば大変魅力的な組み合わせ。
【腐乳】の中毒性は言わずもがな。
【山葵の醤油漬け】は極細の千切りなので、味が強すぎず、酒に寄り添う。
【生七味】は全て生の材料から作られている。
青唐辛子、柚子皮、実山椒に加えて、ケーパーも使用している点が個性的!
【ブラジルソーセージ】に使っても相性が良かった。
ブラジルソーセージ
ブラジル名リングイッサ。
これはオーダー必須。
豚の香りが良く、皮が弾けるや否や、脂の甘みがたっぷりと溢れ出る。
食感が肉肉しいところも魅力的だ。
付け合わせのソース、チミチュリも美味し。
セロリとコリアンダーが使用されているので爽やかで、辛みはないチミチュリだ。
生七味と頂くと、また違った楽しみがある。
セビーチェ
コリアンダーの香りが良い。
側に影響を及ぼさないハーブと酸味、辛味だ。
ペルーが懐かしくて事前に予約して頂いた。
鴨肉のステーキ
大変柔らかくて、美味しい。
ジューシィで、血の香りも楽しませる。
お湯に30分漬けて人肌程度に温め、中華鍋で仕上げるだけだそう。
非常に美味しく、トロンテスともバッチリ合った。
赤土十割もりそば
まず、香りが良い!
蕎麦の香りにひなびたような香ばしさがある。
しかし、「ひなびた」と言っても枯れ草などではなく青草の中に渋さのある香りで、幽玄と言える。
そして、食感も良い。
もぎゅりと歯に反発があり、非常に力強い食感だ。
同じ常陸秋そばでも「村屋東亭」のような、ねっちり感は無い。
端正な方向性に仕上げている。
「村屋東亭」はホシが入らない景色で、かたや「にのまえ」さんはホシが飛んでいるのに、味わいは逆をいくとは面白い。
ただ、端正ながら頂いていると、ざらりとした口当たりがある。
甘みや旨味がバシッと伝わるのではなく、バランスが良い蕎麦だと感じた。
紛れも無く、絶対的な個性のある蕎麦だ。
瑞々しさは無くとも、全く野暮ッたく無い。
むしろ研ぎ澄まされた素朴な粗野な美しさすら感じられ、蕎麦が育てられた風土に思いをはせる。
ツユは鰹と醤油が力強くせめぎ合い、絶妙なバランスを取っている。
香りが良く、食欲を刺激するツユだ。
赤土十割すけもり
【すけもり用】のツユは、前述の通り逸品。
鰹出汁が強く利いている。
しかし、出汁出汁しておらず、あくまでも蕎麦ツユとして完成されている。
白醤油と薄口醤油で調整しているのだろうか。
ご自身の蕎麦をさらに高める素晴らしい調理法を編み出されている、と感じる。
酒肴はバリエーション豊かに楽しく揃えつつ、蕎麦はストイックに追及されているところが、こちらの魅力だ。
薬味は甘みの強い大根おろし。
かえしの甘みが極弱いため、口の中で調和する。
蕎麦湯は前述の通り、蕎麦粉を添加しないナチュラルタイプ。
「手打ちそば にのまえ」の立地と雰囲気
お店は水戸駅から離れた場所にあり、しかも建物の2階です。
知っていないと、近所の人でも少し入りづらいかもしれません。
店内はカウンター8席と、4人掛けのテーブルが2台ある小上がり席。
パッと見は「蕎麦酒場」だが、随所に南米のエッセンスが点在していて、ユーモアを感じる。
カウンターには常連さんが穏やかにお酒を飲まれていて、実に雰囲気が良い。
「手打ちそば にのまえ」のお店情報と予約方法
「手打ちそば にのまえ」さんは、お電話のみの予約となります。
店名:手打ちそば にのまえ
予算の目安:お昼1,000円~、夜1,000円~ ※お酒と組み立て方次第!
TEL:029-303-6058
住所:茨城県水戸市末広町3-7-15-2F
最寄駅:水戸駅から3,700m
営業時間:11:30~14:00、17:00~20:00
定休日:月曜、火曜
関連する記事
その他の茨城の蕎麦の名店
常陸秋そばを全国に広めた、村屋東亭
絶品の【水腰そば】を打つ、笠間「仁べえ」
美味しいお蕎麦に出会うと心が洗われると感じる、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事のリンクには広告がふくまれています。