こちらは1624年(寛永元年)創業と言う、京都でも古い歴史を持つ老舗です。
変わった店名の由来は、戦国の世に豊臣秀吉が此処でわらじを脱いだと言うもの。
本当かどうか分かりませんが、その歴史と近くに豊国神社がある事を考えると、もしかすると本当かも…と感じてしまいます。
お店の外には巨大なわらじが掲げられており、一発で分かります。
名物は【うなべ(鰻鍋)】と【うぞうすい(鰻雑炊)】。
極めて潔く、中途半端な料理やコースを作らず、メニューは【うぞうすい】6,706円のコースのみ。
先付や水菓子に特筆すべき点は無いものの、【うなべ(鰻鍋)】は透徹した存在感を放つ秀逸な料理となります。
鍋を引き立てるために敢えて先付が凡庸なのでは?と感じてしまう程(笑)
鰻好き、料理好き、歴史好きは、一度頂いて決して損の無い名物料理だと思います。
お店には昔ながらの座敷席とモダンに改修したテーブル席があり、現代人のニーズにも対応。
そして、初々しい仲居さんの笑顔が素敵でした。
お薄、干菓子
干菓子は「わらじや」の文字が刻まれた独自のもの。
先付
これは見た目通りに平々凡々。
うなべ
上記の通り白眉!
具は鰻に加えて、庄内麩、九条ネギ、春雨。
まず、鍋の生命線である出汁が旨い。
強い出汁に生姜も利かせており単体だと荒さがあるが、鰻の風味と合わさる事で唯一の味わいへと昇華される。
これは最後の一滴まで余すところなく飲みたくなる。
鰻は焼き上げた上で中骨を抜いてから煮ている。
この、割かずに焼く「筒焼き」の仕事こそが、こちらの最大の見せ所。
鰻はふんわりと柔らかな身で、雄々しい香りが立ち上がり、旨味が滲む。
そして、皮は独特の食感となっており、ブニュブニュ感は無く楽しめる。
いわば、ふわっと、くにゅっと。
食感の面において老舗の仕事を体感した次第。
うぞうすい
頂く前から牛蒡の香りが鼻孔をくすぐる。
具は人参、椎茸、餅。
鰻は白焼きにてシンプルに提供。
こちらの出汁は穏やかで、卵の風味ならびに甘みが滲む。
人参は極細切りで、牛蒡は薄い笹掻き。
このあたりの食感の調整は好感を持てる。
最後は煮詰まって濃くなり飽きさせないのは雑炊ならではの魅力。
同時に米もグダグダにならず、良い塩梅。
ただ、うなべに比べると存在感は弱く、鰻の量が少ない点がネックか。
味覚の一体感に於いてもうなべが上を行く。
こちらの山椒は香り良く、ピリリとした痺れも良い(鰻専門店での評価ポイント)。
全体的に想像よりもボリュームがあり、鰻を食べた満足感も一定量あるので満足出来るかと感じました。
鰻の香りを強く提示する仕事が奏功している印象です。
個人的に、個性を宿す老舗には、食べログのハイスコア店やミシュラン星店よりも先に訪問する価値があるように感じます。
西でも東でも予約困難店を行脚する事が食通の証のように思われがちですが、伝統的調理法を知らずして通人ぶるのは無知の無知。
本質を掴むために意識的な食べ歩きをせねば…と再認識しつつお店を出ました。
店名:わらじや
食べるべき料理:400年近い歴史を持つうなべとうぞうすい。
予算の目安:【うぞうすい】コース6,706円
最寄駅:七条駅から260m
TEL:075-561-1290
住所:京都府京都市東山区七条通本町東入ル西之門町555
営業時間:月~金11:30~14:00、16:00~20:00、土・日・祝11:30~20:00
定休日:火曜
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