
こんにちは、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)です。
熊本市の「鮨 中村」さんは、技術と土地らしさを兼ねそろえた素晴らしい鮨店です。
熊本を代表する鮨店「仙八」さんが福岡に移転された今、熊本で鮨ならば中村さんだと感じました。


力強い味わいの天草の魚を上品な味付けで活かす手腕!
香りを中心とした魚味の活かし方が巧みなので、「魚って美味しいなあ…!」と思わせてくれます。
確実に、今後さらに美味しく楽しくなる鮨店だ!と確信しました。

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「鮨 中村」さんは、2023年4月に今の場所に移転されて、2025年で2年目を迎えるそうです。
一軒家の落ち着いた雰囲気で、カウンターの間に柱があるのが珍しい内装です。
しかし、それが独特の魅力となっています。
モダンな印象のウッディな内装なので寛げます。
魚は天草の魚屋「本田屋」さんから仕入れているそうで、特に漁師「安栄丸」さんのお話が印象に残りました。
と言うのも、魚の状態、手当を重視されていて、料理店向けの高級魚は一尾獲って陸に戻るそうです。
ご存知のとおり燃料代も高騰していて、手間もかかる中、なんて魚への向き合い方。
なかなか変態的な漁師さんがいらっしゃるものです。
やはり、今後の漁業はサステナビリティと漁師さんの利益があってこそですね。
上質かつ高単価な魚を腕が立つお店に流し、それを価値としてみなす消費者が享受することで日本の一次産業が成り立つはずです。

中村親方は見事に天草の魚の味を活かすことに成功されていて、一貫一貫が味わい深く、いただく連続性が非常に高い鮨のコースとなっています。
全体を通して魚の香りを楽しませる仕事が素晴らしく、これは親方が語らずとも魚愛と味覚、嗅覚が確かであることを感じ取りました。
みだりに魚の情報を聞く人もいますが、聞かずとも味から読み取れる情報は非常に多く存在します。
なお、今回は〆た光り物が無かったのは後になって気づき、生粋の鮨好きとして残念に思いました。
しかしながら、いただいている最中は違和感を覚えないほどの仕事と構成力でしたので、これは今後に期待と言ったところです。
一般的に指摘する人は少ないものの、根っからの江戸前鮨好きは光り物の有無を非常に重視しますので…!

そして、生命線のシャリについては、大変バランスが良いです。
酸味を効かせていますが、塩気を穏やかにしつつ酸味がじんわりと広がる良い塩梅です。
赤酢を上品に用いて旨味を活かすお酢の使い方だと感じました。
いただいた後にお話を伺ったところでは、飯尾醸造「富士酢プレミアム」とミツカン「三ツ判山吹」のブレンドとのことでした。
温度は温かくて良い温度帯で、硬さもお米の甘味を活かすためにちょうど良い塩梅です。
タネもシャリも大ぶりで男らしい鮨ですが、シャリが良いので最後までハイテンションで楽しめる鮨です。
「鮨 中村」さんのコースについては、お昼のおまかせ14,300円(日・火・水)、夜のおまかせ22,000円(金・土)となっています。
ご覧の通り、なかなかユニークな営業形態です。
2025年6月にいただいた内容です。
僕は車なので烏龍茶をいただきましたが、熊本の魅力的な地酒を多数置いておられます。


天草産。しっとり、ふっくら焼き上げていて、厚みがある美味しい真魚鰹だ。名残とのことで脂は多少落ちているようだが、旨味があり、余韻を楽しめる。

酸味と甘味のバランスがフルーティーで、あたかもラムネのようなガリ。

腹のど真ん中をサッと炙っている。一週間ほど寝かせているそうだが、薄切りにしても弾力があり、脂乗っていて実に美味い。炙りによる香りをものともしない味わいで、魚味の見極めと調理、調味のバランスが非常に良い。

10日熟成。九絵と同じ牛深(天草の最南端)の延縄。昆布〆を施しながら、何てパンチのある味わいだ!これは驚きの味わい。旨味と甘味が強烈で、余韻も長い。そし、香りも良い。白身魚の2連発で鮮烈な印象を与えられた。

肉厚で、これまた味わいが濃い。塩気も良く、繊維はホロホロとほどけながら旨味と脂の甘味、香りが一気に開いてゆく。1.7キロ。

アオリイカながらプチプチした感を出す包丁だ。プチプチした食感を楽しんでいたところ、自然に甘味に変化する。ダイレクトに甘味でない点が魅力だ。香りもふわりと漂い、良いフィニッシュ。かなり魅力的なアオリイカの仕事である。

有明海の釣りもの。肉厚で、ぱつりと弾けてねっちりした食感の身。脂の甘味を楽しませつつ、酸味と生姜、浅葱の風味が順に広がる。当たり葱ではなく、生姜はすりおろし、浅葱は小口切りで使用していて、それゆえにそれぞれの香りを活かす薬味使いだ。当たり葱が一辺倒になっているものの、別々に使うメリットはあるので、鮨職人の方は鯵の味を意識して使い分けるのが良い(もちろん薬味無しも選択肢の一つ)。

牛深の定置網。脂が乗っているものを室温で溶かしてから握る。故に脂と酸味の乳化を楽しめる。香りも良い!

これは硬派な茶碗蒸し!出汁も味付けも控えめで、卵の味を活かす仕事だ。餅と百合根を使用している点がユニーク。卵の味わいの中で百合根の強い甘味が浮かない味覚設計なのも良い。

天然モノとのことで嬉しい限り。甘味と香りが実に良い。特に香りは天然モノらしい。良い意味で、鼻に残る!

天草五和町の深層で獲れる海胆だそう。

甘味が濃厚で香りも濃密。甘味の持続性がかなりのものだ。

長崎県産(壱岐か)。薄切りを重ねて、とにかく口どけと一体感を高める仕事だ。濃密な脂が広がる!甘味が実に強い。

魚の旨味だけでなく、風味も溶け込んだ潮汁ベースの味噌汁。

長崎県産の伝助穴子。肉厚なものをまさかの2切れ使用。皮はパリッと仕上げつつ、身はとろとろ。下味は穏やかで、穴子の風味を活かす。骨は完全に除去されていて、小骨ひとつとして当たらなかった。

海苔は河内町船津地区のもの。香り良く、厚みがありつつ歯切れが抜群で、旨味もある海苔だ。干瓢は柔らかすぎず硬すぎず、柔らかくコリッと感を楽しませる煮加減。

きめ細かくしゅわしゅわ、しっとり。なんと芝海老ではなく九絵を使用!親方はハタ系の魚の身を用いるのが好きだそう。甘味は上品で、魚のネガティブな香りは皆無。しゅわしゅわ感が実に良い玉子である。
「鮨 中村」さんについては、公式サイトのリンクよりWEB予約が可能です。
店名:鮨 中村(すし なかむら)
シャリの特徴:赤酢を上品に用いて旨味を活かすシャリ、温度や硬さはバッチリ。
予算の目安:お昼のおまかせ14,300円、夜のおまかせ22,000円
最寄駅:藤崎宮前駅から400m
TEL:096-277-4710
住所:熊本県熊本市中央区坪井1-4-21
営業時間:火・水・日12:00~14:00、金・土18:00~22:00
定休日:月曜、木曜
熊本の鮨店


存在感のある鮨にうなる、すしログ(@sushilog01)でした。
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