
こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
2018年に初めてお伺いして以来、応援し続けている職人さんが林ノ内 勇樹さんです。
横浜「常盤鮨」時代から通い続けているので毎回投稿をしていませんが、林ノ内親方が凄いのは移転してからも常に改良を続けて、着実に味を向上されている点です。
それが奏功してミシュランの星の獲得に繋がったのは僕も望外の喜びでした。
ミシュランの星自体が素晴らしいわけではなく、権威性が高く、それでいて鮨や和食に対してシビアなミシュランが味を認めたという点が。

そして、鮨の生命線であるシャリについても改良を重ねられているところも素晴らしいです。
粒感がありつつ決して硬いわけではなく、もっちりして酸と塩気に合うシャリに仕上げています。

伺う度に今後が楽しみになる鮨店です。
常に自己客観視と改良を止めない姿勢に、人として尊敬する次第です。
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広尾「鮨ゆうき」の林ノ内親方は、今は無き名店「水谷」の二番手を務めていた方です。
同業の鮨職人からの人望も厚く、今や誰もが知るようになった鮪の仲卸である「結乃花」の井出社長からの信頼も強く、「鮨職人の粋」を感じさせてくれる方です。
経歴などの詳細は過去の「常盤鮨」の記事を見て頂くとして、本記事では移転後の魅力について端的に表現します。

移転後に改めて感じた魅力
- 握りが主役のコースの仕立て
- 王道の鮨種を用いてシャリで魅せる粋
- シャリの明確な個性
- 魚の美点を活かす酒肴
1〜3を成り立たせているのが鮨の生命線であるシャリである事は言うまでもありません。
移転直後に親方は「横浜時代と同じことをしているだけですよ」と仰るものの、個人的には心なし更に美味しくなったと感じました。
米酢のみを用いる系譜ならではのシャリは、酸味が強めながらに塩分濃度は抑え目。
酸が立ちつつ喉が渇かない良いバランスです。
そして、大ぶり。
硬さも温度も申し分無く健在。
林ノ内親方のシャリは、「すきやばし次郎」の系譜の中でも明確な個性を持っています。
なお、ちょっと余談になりますが、僕は基本的に新規店には開店直後に訪問しないようにしています。
何故なら経験則で新規店はムラが大きすぎる為です。
新しい設備や動線に慣れていないためか、職人さんの真骨頂を感じられない事が多いので、親交のある方のお店以外、新規店のお誘いは断っている次第です。
特にシャリについては新規店で感心するケースは少なく、今や予約困難となっているお店でも疑問符を感じた事があります(特に加水率、粘度については難しく、硬く炊きすぎていても疑問が残ります)。
そのような状況で訪問しては職人さんに失礼だと思うようになり、落ちついたタイミングでの訪問を心がけるようになりました(結果的に、初速で予約難易度が高まるお店に伺えない状況となりましたが…)。
故に、移転早々の難しさは実感するところですが、林ノ内親方は難なくクリアされていて、この点に実力を再認識した次第です。
今後、東京を代表する一軒となるはずなので、鮨好きは是非とも訪問してみてください!
→2025年時点で実際に「東京を代表する鮨店」となりました。
「鮨ゆうき」のコースについては、ランチおまかせ握り17,600 19,800円、ランチ/ディナーおまかせコース28,600 33,000円です。
【ディナーおまかせコース】の内容としては酒肴7品、握り12貫、椀、巻物、玉子。
酒肴が多いと思われるかもしれませんが、少量であり、鮨店らしい範疇の酒肴を作られているので、一連の流れで頂くと握りが主役と感じる構成です。
きっちり、追加のタネも多々仕込んでおられ、干瓢もバッチリあります(と書かないといけないくらい仕込んでいないお店に遭遇するため)。
ちなみに、「常盤鮨」では玉子がカステラではなく出汁巻きでしたので、移転後どうなるか個人的に興味津々でしたが、蓋を開けてみると両方用意されていました(笑)
2025年9月に頂いた内容です。

石鎚酒造が醸す「結乃花」と「鮨ゆうき」の名を表記する希少なお酒で、袋吊りの純米大吟醸酒。


華やか系の吟醸酒で、甘味がありつつキリッとした範疇の苦味が後味を引き締める。

新銀杏に期待するもっちりした食感で、香ばしく、ホロ苦くて甘い。

愛媛で厳選し、神経締めの後に凍結して出荷されている蛸。むっちり、ぷつぷつと、実に気持ち良い歯切れだ!さらに、反発だけでなく、しっとりしつつホロリとほどけ、その過程で馥郁たる香りを広げる。さらに、ゼラチン質もたっぷり残す茹で加減で仕事も奏功している。かなり独自の食感に仕上げている、

本アラは石川で、ボタンエビが千葉。本アラは寝かせているため繊維質はしっとりほどけるが、むっちり感を十分に楽しめる食感の残し方で、余韻には強烈な脂が残る。力強い香りも残る。ボタンエビは炙ってほろりとした食感に仕上げ、甘味も感知しやすい仕事。海老の強い甘味に雲外蒼天のようなタイプのお避けを同調させるのはアリだと実感した。


いただく前から肝のニュアンスを楽しませる。いざいただけば脂を軽やかに表現されているのが分かる秋刀魚の焼きものだ。

むっちりした歯ごたえが良く、香りに妙ある鮑。蒸し汁の餡仕立ては良い発想だ。千葉の名残の鮑を最大化する仕事である。
鮑の肝の醤油漬け

凝縮感が良い仕事。

藤本さんから仕入れた伊東のものとのこと。神経〆が活きている。部位は腹周りで、湯引きでの提供。これはもの凄い存在感だ。甘味が強く、酸味がほんのり漂う。そして、香りがどんどん広がる。腹はペースト的な脂がありつつ歯応えも楽しめる。寝かせずに湯霜だろうか?面白い引き出し方だ。

酢〆から炙り、調味料は葱醤油。脂がノリノリなので酢〆の仕事は味覚のバランサーとして活きる。葱の使い方も上品だ。


パンチある仕事。皮を引きつつ脂と香りを活かす。シャリの酸味も計算されたバランス。

ぱっつりしつつ甘味もばっちり楽しめる。これは包丁のみならずシャリによって感覚が高まる次第。

脂系のタネである黒鯥を炙りながら、むっちり感がある。紋切り型のように脂を溶かしてトロットロにさせないところが素晴らしい。浅葱も合う。

愛知。〆が素晴らしく、鰯の魅力を凝縮している。当たり葱を噛ませ、シャリの酸味と塩気も相まって唯一無二の鰯の握り。


塩釜。旨味が先行する赤身で、脂は穏やか。酸味も少し落ち着いている。季節変化を実感させてくれる赤身。

トロも脂先行ではなく赤身らしさも持っている。

シャリの酸味と相まってかなりのパンチを感じる小鰭の仕事だ。オボロを噛ませても良さそうなのに、敢えて噛まさず、噛み締める事で確かな甘味を実感させる〆の仕事だ。

橙酢の香りを前よりも強めに乗せている。脂を活かす〆なので春子の味も楽しめる。

軽くむっちりしてトロトロ。大トロは脂が濃厚で、まろやかな香りがこみ上げる。

甘味が鮮烈に活きるのは茹で上げの仕事だけでなく、シャリの味覚のため。

醤油が軽やかで、魚卵の油脂を感じさせる漬け加減だ。

天草。甘味が非常に強く、爽やかな香りの後に甘味が込み上げてくるほど。


甘味の塩梅が良い。対馬の穴子の活かし方として、実に良い。

出汁巻きのみとは懐かしい。

香ばしい煮蛤。甘味もバランス良し。
干瓢巻き 追加

甘味、山葵、シャリの酸味、海苔の香りが活きる干瓢巻き。巻物であるが最後にいただくことで「鮨を食べた!」という充足感を感じられる。
2024年6月に頂いた内容です。

水茄子のスッキリした味に焼きの香ばしさが滲み、初夏らしい嬉しさを実感。

さっとしゃぶしゃぶ状に火を入れている。
初手はポン酢の酸味が広がるものの、切りつけに厚みがあるため、噛みしめると酸味を超える旨味が横溢する。
これは旨い。

刺身の体を取っているが、全て仕事を施した酒肴である点が着目すべきところ。
サゴシは酢〆に、蝦蛄は勿論煮ていて雄を使用。
味わいのコントラストがあり、楽しい一皿。
刺身で楽しさを与えてくれるのは素晴らしい。

酒と昆布水に漬けて焼いている。
これは大変魅力的な調理法の探求であり、魚味を活かしている。
日本料理で定番の西京焼きを鮨店で出さなくても良い、と言う一つの結論を明確な味を以て提示している。

これまた魅力的な食材だ。
香りと苦味が良い。
味わいだけでなく、古典的な江戸料理らしい食材を高級店で臆さずに使用する点が良い。

東京湾産!
肉厚で脂が乗っているので酢〆が奏功している。

これも魅力的な調理であり、握りに入る前に提供する構成も良い。

〆による脱水の加減が良い。
細切りの酢橘皮を噛ませて、コリッとした食感と爽やかな香りを嫌味なく調和させている。
苦味は無い。
バランスが良い昆布〆で90分ほどにしては上品である。

力強い脂が滲む!
寝かせているようで、食感をねっちり、とろりとさせ、シャリとの一体感が高い!

酢〆にして軽く炙っている。
これもシャリとの一体感が高い。

内側の片面炙りによる香りをしっかりと付け、内側を表面にして握っているが、バランスは良好でトロトロしつつ甘味が強いので違和感が無い。
北寄貝で炙りによる違和感を感じたり強すぎたりする仕事は二流なので、流石に一流の仕事を見る。
やはり抜群に美味い「鮨みずかみ」さんとは異なる方向性で美味を表現している。

境港。
血の香りがありつつ旨味があり、むっちりと食感が強い赤身。
「結乃花」仕入らしい夏鮪である。
鮪への殊更の愛情を持って食すべき産地、夏の境港。
仲卸と職人の二人三脚が味を昇華させている。

これも香りが良く、美味い。
香りが良い中トロは印象に残る。


夏場なのに良い型を仕入れておられビックリ。
仕事はいつも通りのしっかり〆で、旨い。
時期を考慮すると素晴らしい仕入れと仕事である。
見た目的に分かりやすい走りの新子よりも遥かに嬉しい出会いだ。

濃厚な脂!
系譜どおりの鮪連発からの小鰭ではなく敢えての構成が奏功している。
中トロの後よりも鮮烈な印象であったし、小鰭の味も大トロの後よりも活きると感じる。

時期的に脂が強くなっていて、香りもしっかりある。
当たり葱の風味を調和させる味の濃さだ。

茹で上げを寝かせて、プリプリ、しっとりした食感。
比較的生っぽさを残しつつ加熱して甘味を活かす茹で加減。

爽快ながら甘味を楽しませてくれる紫海胆。

繊維のホロホロ感とふんわりした食感のバランスが良い穴子。
甘味の塩梅も良い。

炙りの香りが良く、スッキリした酸味を楽しめる鰹。
「常盤鮨」時代、最後に共に訪問した鮨好きのブルワリー経営者友達への敬意を表して注文した。

何よりも蛤の香りを抜群に活かしている点が素晴らしい漬け込みだ。
塩梅が秀逸。
蛤の味と香りを満喫させて頂いた!
追加して大正解。

すっかり馴染んだ感のあるカステラ玉子(常盤鮨時代は出汁巻きであった由)。

お茶も美味。
2024年3月9日のオープン日に頂いた内容です。

香り良く甘味を楽しめる。
先付が野菜とは嬉しい。

鮃は青森。
肉厚な切りつけだ。
初手よりも中盤から旨味が高まり香りが抜けてくる。
寝かせずとも高まる味わいに、厚切りなのが嬉しい限りだと実感する。
トリ貝は室津。
甘味もトロピカル香も申し分無し。
酢酸イソアミル系の酵母を用いた磯自慢とピッタリ合う。

鹿児島、横山さんの鰻。
脂が乗り、食感はぷりっとしている。
肉厚なのを焼き込んで焼き物として提示するが故に鮨店で出す必然性がある。
漬け地の香ばしさも食欲を一気に増進させる。

室津。
大ぶりの牡蠣を火入れしつつぷりっとしてしっとり。
これは相変わらず良い仕事である。
牡蠣の旨味、甘味、風味をバッチリと楽しませてくれる。

ねっちりとしていて、旨味がありつつ酸味も感じさせる。
戻りよりも初に近い味わいの迷いだろうか。
漬けでも鰹の味を感じられるのは酸味のお陰。
香りも楽しめる。

富山。
中をレアに仕上げている。
生っぽくも加熱されているバランス感覚。
小皿ながら温めているのも良い。

青森。
むちっ、みしっとしていてコリコリ。
あたかもナタデココのような食感に仕上げていて魅了。
出汁を効かせた土佐酢で提供。

薄切りでシャキシャキした食感。
酸味と辛味がありつつモダンなお店としてはやや強めに甘味を用いて、シャリの味覚とのバランスを取っている。

ぷりっとした針魚に海苔を合わせ、更にシャリの酸味をアクセントに効かせる仕事。
かなり個性的な名刺代わりの一貫目だ。
タネのみならずシャリの方向性を示す。

肉厚でむっちりしている鯛を昆布〆。
厚み故に春子の味を楽しませて、少し遅れて昆布の旨味がアシストし、途中から昆布の香りが高まる。
初手から昆布の旨味と香りを感じさせる春子の仕事は無粋なので、これは良いバランスだ(無粋たる理由は春子は昆布を用いずとも〆の仕事で昆布様の風味を感じさせられる為だ)。

脱水してむちっとした食感で、初手で強い脂を出さぬのが良い。
金目鯛の調理で重要なのは、あざとさの有無だ。
要は脂を強烈に感じさせるか否か。
脂が前面に出すぎると、金目鯛は途端に野暮ッたくなり、上質なお店よりも大衆店を想起させる。
林ノ内親方の金目鯛は噛み締めると脂が高まり、更にシャリの酸味と合致する。
食後感が良い。

香り、酸味、旨味のバランスが良く、柔らかい赤身。
血の香りがじんわりと高まる美味しい赤身。
ちなみに、林ノ内親方は豊洲の鮪仲卸「結乃花」さんの鮪を非常に早い段階で使い始めた方。
今や使用する鮨店が増えており、陰ながら応援している自分としても嬉しい限りだ。


閖上。
香りは上品だが途中からふんわり、甘味が先行して旨味がじゅわりと高まる。
しかしながら、他店も同様であるが、閖上の赤貝は本当に弱くなった。
かつての趣を感じる機会が極端に少ない。
和牛や他の畜産肉とは異なり、基本的に全て天然モノの魚の産地ブランドが通用しないことを痛感する。

柔らかく滑らか。
脂と香りが印象的。

乗りつつ重たくない。
また、香りがある大トロ。
シャリの酸味が活きる。

みしっと〆つつ旨味も香りも良い。
喉で旨味を感じる小鰭(すきやばし次郎の小野二郎親方が理想とする小鰭は「喉が鳴く」小鰭だ)。

甘味たっぷりでシャリの酸味で引き締める。
そして、甘味がまた超えてくる。

みっちり〆つつ中心部からしっとり感が広がり、脂と香りもまた広がる。〆加減だけでなく、鯖の香りを活かしているのが実に良い。あたかも良質な鰹の鰹節様の香りの如し。

漬け込みで味を強めに含ませつつ、咀嚼して蛤の風味を高める仕事。

甘味だけでなく香りがあるのが嬉しい海胆!
紫系で個性を感じさせる軍艦に仕上げているのは良い。

酢〆しっかり!
脂が乗った鰯をここまでしっかり塩と酢で凝縮するのは今の時代に良いなあ。

ふわんふわんとろり。
しかしながら穴子の香りを楽しませる。

甘味と醤油を効かせつつシャリの酸味を強く感じさせる!
山葵入りの鉄砲が合う干瓢であり、山葵の辛味や香りが全く蛇足では無い。

みっちりしつて、しゅわりとしたテクスチャー。
芝海老の香りを楽しませる。
甘味はやや強めなので、デザート的に頂ける。
「鮨ゆうき」は広尾駅から徒歩至近距離にあり、交通至便です。
広尾駅周辺よりも落ち着いた一角なので、なんとなく落ち着きます。

開店時の大輪の花。

店内は間口から想像出来ないほどに広いです。
お店を入ったら個室があり、奥には8席のカウンター。
横一列のカウンターが硬派に感じます。
席の間隔も取られているので、非常に寛げる上質なお店です。
「鮨ゆうき」の予約については、OMAKASE経由で可能です。
予約システムについては、完全に回転制にされていないのが良いです。
17時以降に予約を取り、19時半~20時までなら大丈夫というスタンス。
17時や17時半スタートは厳しいので、これは助かります。
店名:鮨ゆうき(すしゆうき)
シャリの特徴:酸味、塩気、温度、粘度の全てがバランス良く、ミツカンの白菊を使用する米酢のシャリとしてはトップクラス
予算の目安:ランチおまかせ握り17,600円、ランチ/ディナーおまかせコース28,600円
TEL:03-6277-0468
住所:東京都渋谷区広尾5-17-4 1F
最寄駅:広尾駅から300m
営業時間:ランチ(火・土・日・祝のみ)12:00~、夜17:00~
定休日:不定休
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