すしログ No. 152 姫沙羅@札幌(北海道)

f:id:edomae-sushi:20160626174739j:plain

※お店移転前の記事となります

とある鮨職人さんにオススメされ、課題としていたお店。

この度、北海道に行く事が決まったタイミングで真っ先に予約しました。

 

お店はすすきのにあり、すすきのらしいお店が密集する雑居ビルに入っております。

ロケーションからやや不安を懐きますが、銀座の超人気店・とかみさんも同じようなビルに入っておりますし(笑)

EVに乗り、お店の前に移動します。

f:id:edomae-sushi:20160626174738j:plain

お店の入り口には写真撮影禁止のプラカードが掲げられれており、発する雰囲気も鮨店らしくありません。

そして、店内はスナックの居抜きのような印象を与え、飾られた花は造花。

不安が最大値に到達し、少し怖くなってきました(笑)

料理を頂くと、全て杞憂だった事が分かるのですが、

雰囲気と味のギャップが大き過ぎです(笑)

その辺りも含めて極めてマニアックなお店だと感じました。

 

こちらの鮨は熟成を駆使し、北海道産の食材を主に使用する。

北海道産の食材に江戸前の仕事を掛け算した「蝦夷前鮨」に、更に現在東京で流行している熟成の技法を掛け算した、新たなる北海道の鮨だと感じます。

和喜智さんよりも更に「北海道らしさ」を前面に出した構成です。

 

また、同じタイミングで一幸さんを訪問しましたが、お互い完全に別方向であるところが面白く、両店を同じタイミングで訪問して良かったと感じました。

仕事もシャリの味わいも、雰囲気やご主人のキャラクターまで真逆です(笑)

 

こちらのシャリは赤酢を用いて硬めに仕上げております。

酸味や塩気はやや強めに使いつつ、そこまで尖らせておらず、赤酢の酸味で言うと和喜智さんが上。

タネへの仕事(味付け)とシャリの味付けのバランスは良好。

ほどけ加減は良く、パラッとほどけます。

温度も安定しており、ムラが無かった。

 

熟成の塩梅はかなり良く、食感を強く残しているタネもあれば、柔らかくし旨味を強調しているタネもありますが、シャリとのバランス、融合を最重要視されているので、嫌味にならない次第です。

ご主人は熟成によって、旨味、香り、食感を一体化させる事を目指しておられ、熟成が流行る前から熟成を試行錯誤して現在に辿り着いたとの事ですが、その足跡を感じさせる、実に説得力のある仕事でした。

 

雰囲気が昭和の会員制鮨店のような点や、ご主人の押し出しの強さは人によっては苦手かもしれませんが、僕はそれで良いと思います。

こちらの仕事が気に入る人が通い続けられれば良いのではないかと。

僕個人としては、次回北海道を訪問する時には再訪しようと感じました。

 

尚、看板にある「すし」の字は魚偏に「米」と「旨」を付けた造語。

「鮨」に「米」を挟んだ、とも言えます。

商標登録を取っておられるそうで、SATOブリアンさんに次いで驚きました(笑)

 

頂いた酒肴、握りは下記の通りです。

また、日本酒の品揃えも多く、少しづつお任せで頂くのが良いかと思います。

この度頂いたお酒は、豊盃、美丈夫、紀土、日高見純米、伯楽星。

握りにも相性を合わせて頂けるので、お酒を呑める方であれば是非。

(と言うか、下戸の方だとお店の魅力が伝わりにくいかも…)

 

先付

小樽産の岩もずく、長芋と海胆の出汁掛け。

ともに細い料理だが、箸が扱い易い極細なので助かる。

鮨店、日本料理店の箸は極細に限る。

清涼感を感じさせる先付で、こちらの定番との事。

 

春子お造り

提供前に赤酢をスプレーで振り掛けられる。

ご主人いわく「オーデコロン」。

〆加減が良く、期待が高まる。

 

ガリ

甘みがありつつ、赤酢由来の旨味が強く、シャキシャキした食感。

癖になる味わいのガリ。

 

海苔巻き

赤酢のシャリと有明の一番海苔を合わせたシンプルな巻物。

一貫目に酢飯と海苔を味わわせるとは、面白い。

シャリと海苔のバランスが良く、海苔は圧倒的な香りで厚いのに歯切れが良い。

 

キス

昆布で〆ているが浅めの〆加減で、香り、昆布の旨味を程良く移している。

酢橘を絞っているが、嫌味にならない範囲。

 

イサキ

10日熟成した上に漬けにしたイサキ。

熟成をかけつつ食感を残しており、イサキの旨味も申し分無し。

和芥子と合わせている。

 

桜鱒のハラスの漬け

2週間熟成しているので身質は柔らかだが、シャリと融合し、甘みとともに消え去る仕事、一体感。

 

春子

お造りの春子と異なりしっとりした〆加減。

 

鮪小トロの漬け

脂のみならず香りもあり、非常に美味。

モノの美味しさだけでなく、漬けの技術が高い。

しっとりした食感で、煮キリの塩分も高すぎない。

 

トロタク

沢庵は微塵切りにしており、鮪の甘みが横溢する。

 

ボタン海老

卓越した意匠を誇る、唯一無二の握り。

シャリの上に、クルッと巻いた海老の身を乗せ、エビ味噌を噛ませ、トップにはエメラルドグリーンの卵をトッピング。

食感、甘み、旨味の全てが一体化する、見た目以上の味わいを有する逸品。

 

酒肴の盛り合わせ(10品?)

じゅんさい、もずく、ホタルイカいしる漬け、野菜の漬け物(ヤングコーン、蕪、夕張メロン、らっきょ、ヤマブトウ)、毛蟹のほぐし身、イバラ蟹の内子、タラバ蟹の外子、時鮭の子、時鮭ハラス、鮟肝。

 

石鯛

握りに戻ります。

10日熟成し、熟成らしいねっちりした食感の中にみっちりした食感もある。

独特の食感に加えて凝縮された旨味があり、甘みと酸味がバシバシと到達する。

これもまたシャリとのバランスに優れた熟成仕事。

 

北寄貝

裏表で温度を変え、異なる火入れを行った上、包丁を細かく入れている。

それにより甘みがダイレクトに感じる事が出来、食感は細かくほどけ舌にまとわり付くよう。

非常にドラマティックな味わいの北寄貝。

 

カワハギ

芽ネギに肝醤油を添え、最後にポン酢を軽く。

 

海胆

たっぷり山盛りで嬉しい。

 

アラから出汁を取った、アオサの味噌汁。

鮨店では味噌汁よりも潮汁の方がどちらかと言えば好みだが、ベースの旨味がしっかりしており、味噌の使い方が上品なので、嫌味にならず。

 

当初の計画とは裏腹にお酒を結構飲んで、2万円前半。

途中、ちょっと覚悟していたので、嬉しい誤算です。

内容を考慮すると、非常に満足度が高いかと思います。

道外から訪問する方は勿論、道内の鮨好きの方であっても、個性的な握りが好きな方、赤酢のシャリが好きな方であれば琴線に触れる事かと思います。

ネット上の情報は限りなく少ないですが、まだまだ名店があるもの。

地方の鮨店は創意工夫によって新たなる江戸前の可能性を試されているのが、実に面白いです。

 

店名:姫沙羅(ひめしゃら)

シャリの特徴:赤酢と塩を利かせつつ、仕事と高度に調和するシャリ。

予算の目安:20,000円〜 →移転後、おまかせ22,000円となったようです

最寄駅:すすきの駅から300m

→移転後:西線9条旭山公園通駅から650m

TEL:090-6992-3247

住所:北海道札幌市中央区南六条西4丁目1-1 プラザ6・4ビル4F

→移転:札幌市中央区南8条西20-1-2

営業時間:[一部]17:00-19:00、[二部]19:30-21:30

定休日:水曜

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA