すしログ:溝の口の「変態」職人!?異色の経歴を誇る個性派「鮨すがひさ」さんの世界

こんにちは、鮨を愛する鮨ブロガーのすしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

現在、神奈川県・溝の口に、食好きの興味を惹きつけている鮨店があります。

お店の名は「鮨すがひさ」。

鮨すがひさ暖簾

親方の通り名は「変態職人」あるいは「変タイ職人」。

鮨とタイ料理のハイブリッドを行う創作鮨で一気に脚光を浴びておられます。

しかし、僕が知ったきっかけは「タイ鮨」ではなく、「津本式」で〆た魚を用いると言う情報です。

「津本式」は魚を美味しく食べさせる非常に先進的な〆方で、熟成に向いています。

これは独自性の高い職人さんだろうとアタリを付けて調べてみたところ、鮨職人離れした異色の経歴で興味津々。

訪問の結果として、「変タイ」と言われ過ぎなのも如何なものか?と感じました。

江戸前鮨でもバッチリ個性を模索されていて、既に個性的な仕事を編み出されており、今後の伸び代が十分なので!

つきましては、鮨マニアの目線で、今回お届けしたいと思います。

すしログ

ちなみに、日テレ「新日本男児と中居」で共演させて頂いた高嶋政宏さんが行きつけのお店と知り、感慨深く感じました(笑)

親方・菅正博さんについて

親方の菅正博(かんまさひろ)さんは、およそ鮨職人らしからぬ経歴の持ち主です。

北海道で酪農学園大学を卒業した後、青年海外協力隊でパナマ共和国に2年間居住し、任期終了後は東京で大手レコード会社とリクルートに勤務され、その後、タイ料理店で働いた後に鮨職人になられたそうです。

鮨職人を目指した理由は、専門料理を志向されて学んでみたところ「面白くてハマった」ためとの事です。

そして、選んだ選択肢は鮨の専門学校である「飲食人大学」。

「鮨マイスター専科」の受講期間は3ヶ月間ですが、それだけでは不十分であったため、「飲食人大学」が運営する鮨店「千陽(ちはる)」で2ヶ月間勤務されたそうです。

 

ちなみに、「飲食人大学」は関西で勢いのある鮨専門学校です。

話題に上がる事が多いので、僕もWEBフォームより資料を取り寄せました。

もちろん鮨職人に転職するためではなく、鮨マニアの参考資料として(笑)

 

「飲食人大学」を卒業された菅親方は、満を持して2017年4月1日に「すがひさ」を開店されたそうです。

3年強でやっと自分の握りを出来るようになったとの事ですので、これからが親方の仕事の真骨頂。

異なるジャンルの料理人・シェフとの交流も広い方なので、今後が大いに楽しみです。

 

「鮨すがひさ」の立地と雰囲気

お店は溝の口駅から徒歩5分の場所にある「フィオーレの森」にあります。

「フィオーレの森」は集合住宅とレストラン、カフェ、ショップやウェディングサロン、ガーデンハウスなどの施設からなる複合施設です。

…が、駅から向かうと複合施設感がゼロに等しく、隣りにある久本神社の方が印象深いです。

神社がお店へのアプローチの良い借景になっていると感じました。

 

店内は若い方でも肩肘張らずに寛げる雰囲気があり、都心のお店ではないので、それが良いなと感じました。

それでいてカウンターは白木なので、しっかり「鮨店を訪問した」と言う実感を感じさせてくれます。

おまかせコースの概要

ランチも夜もリーズナブルなお決まりを出されていますが、基本的には10,000円のおまかせ一本推奨です。

お酒を飲んで税サ込15,000円以内と言う予算です。

訪問時のおまかせコースは酒肴7品、握り14貫、巻物、椀、玉子で構成されていて、食べごたえは抜群。

メニューには「握り11貫」と記載されていますが、親方は「最低11貫と言う意味です(笑)」と仰られており、鮨がお好きなんだなあと鮨好きとして好感を持ちました。

握り主体である点も魅力ですね。

酒肴については工夫が見られ、他店で開発されて普及した酒肴でもオリジナリティを出されています。

ただ、握りと比べると技術的に弱い印象なので、更に良くなる伸び代は十分だと実感しました。

 

シャリについては飯尾醸造のお酢を使用されています。

なので、赤酢プレミアム、富士酢プレミアム、純米富士酢のブレンドです。

当初はミツカン(恐らく三ツ判山吹)を使用されていて、さらにはヨコ井も試したそうですが、「尖っておらず、旨味の強いお酢」として飯尾さんのものがご自身のイメージに合致されたそうです。

なお、飯尾さんのお酢については、一般入手不可の赤酢プレミアムを含めて飲み比べをしましたので、ご関心のある方は後述のリンクをご参照ください。

 

シャリのテイストとしては、酸味は当初は穏やかと思いきやそれなりに利かせていて、タネの味わい的にコントラストを示してくれる良いバランス。

塩気は比較的穏やかで、炊き加減はやや硬めでぱらりとほどける。

温度はやや低めですが、恐らく意図的にこの温度帯に調整されている模様。

個人的に塩気をもう少し強めるとより広い層に印象を残すシャリになるかと思いましたが、温度帯が低めなので、バランスは決して悪くはありません。

 

そして、タネについては冒頭に記載した通り津本式の魚を熟成させて使用されています。

しかし、個人的に感銘を覚えたのは、親方のセリフ。

熟成魚一辺倒だと同じ方向性の味になってしまうので、コースの中で2〜3品に留めているとの談。

これには完全に同意するところです。

魚の香りと旨味を考慮すると、熟成ばかりでは「単調な味」あるいは「分かり易すぎる味」になってしまうので、実はリスキーだと言えます。

「熟成鮨」を謳うお店はブームが去ると厳しいでしょう。

 

ちなみに、ちょっとだけブラックな余談となりますが…

タイ鮨は常連限定で月2日限定にもかかわらず、各種メディアでそればかり宣伝されるのには、トリックがあります。

これは、タイ鮨イベントの枠を押さえた人が周囲の「食の著名人」たちを呼んで会を行い、著名人が情報を拡散。

結果的にネット上にはタイ鮨の情報ばかりになるロジック。

しかし、タイ鮨で訪問した方の再訪率は10%以下との事!

これはハッキリ言って、世の「グルメ」や「フーディー」の悪癖だと感じます。

料理を表層的に楽しむのではなく、文化的に楽しむ「グルメ」や「フーディー」が増える事を切望するばかりです。

「変わっていればバズる」と言う風潮は、昭和のグルメブームから続く、ある意味「食文化」ですが…軽薄ですよね。

とりあえず、すがひささんについては、表層ではなく味の本質を楽しめる方ならば、再訪したいと思うはずです。

おまかせコースの詳細(酒肴と握りの詳細)

2020年11月訪問

【酒肴】

  • 赤貝のヒモのぬた
  • 自家製塩辛
  • 岩もずくと食用菊の酢の物
  • 牡蠣
  • 鮟肝
  • ボラの白子と百合根の茶碗蒸し、いくら掛け
  • 真蛸の刺身

【握り】

  • 石垣鯛
  • 縞鯵
  • 小鰭
  • 鮪赤身
  • 鮪中トロ
  • 太刀魚
  • 鮪漬け
  • 車海老
  • 鮪大トロ
  • 海胆
  • 穴子
  • 鉄火巻
  • 潮汁
  • 玉子

【頂いたお酒(半合ずつ)】

酒器

喜久酔・特別純米、上喜元・超辛純米吟醸、みむろ杉・純米大吟醸、日高見・芳醇辛口純米吟醸弥助

 

赤貝のヒモのぬた・自家製塩辛

赤貝のヒモのぬた、自家製塩辛

先付けがストレートな酒肴でビックリ!
初手からお酒が進んだ。

岩もずくと食用菊の酢の物

岩もずくと食用菊の酢の物

食用菊は秋に新潟で好まれる食材で、通称「かきのもと」。
食感が良い食材なので、岩もずくの食感と好対照。
酢の酸味や甘みが上品で良い塩梅。
珍味の後に良い口直しとなる。

牡蠣

牡蠣

しっかりと火を入れて凝縮している。
余計な味付けを行っていない点が好ましい。

鮟肝

鮟肝

非常に肉厚な切りつけ!
奈良漬けと合わせる提供方法は「すし匠」の中澤親方が広めた料理だが、管親方は独自性を出している。
鮟肝の下味がごくごく弱いので、奈良漬けと調和する。
聞けば、塩麹で味付けを行っているそうで、細部への工夫を感じた。

ボラの白子と百合根の茶碗蒸し

ボラの白子と百合根の茶碗蒸し、いくら掛け

ボラの白子のコクと百合根の甘みを用い、しっかりと味付けしたいくらをソース的に用いる方法。
オリジナリティがあって良い。
惜しむらくは固くなり「す」が入っていた点。
卵の溶き加減よりも調理温度が要因かと思われるので、より低温で火を入れれば解消される筈。

真蛸の刺身

真蛸の刺身

分厚いので水ダコだと思ったが、実際は4キロアップの大きな真蛸!
程良く火を入れて、歯切れが良くとも柔らかすぎず、タコの食感を楽しませる火入れで好み。

 

この後、握りに移行します。

ガリ

ガリ

甘酸っぱさの中に塩気を利かせているのが印象的で、辛味がある。
割と甘みは強めだが塩気故にバランスが取れている。

石垣鯛

石垣鯛

身はとろっととろけ、ペースト的にシャリに絡み、旨味が強烈な仕事。
熟成させている事は明白で、聞けば一週間。
名刺代わりの一貫目は、当世流行りの方向性の白身魚。

縞鯵

縞鯵

むちっぱつっとほどける身は石垣鯛とのコントラストを楽しませる。
香りは非常に上品でサッパリな縞鯵。

小鰭

小鰭

超しっとりな〆加減。
身は柔らかいが、臭みを出しておらず、軽やかな味わい。
香りがふわっと立ち上がる。
優しい食感と味わいの小鰭を二枚漬けにして、更に印象を強める仕事。
柔らか系の小鰭で個性を確立されていて、職人としての試行錯誤を実感する小鰭である。

鰤

昆布〆で、これが良い感じ!
むしろ昆布〆によって鰤らしさを引き立てる昆布の塩梅。
食感はみっしりしていて、脂が徐々に強まり高みに上る。
鰤の香りも楽しめ、個性的な仕事。

鮪赤身

鮪赤身

脂は弱いが、香りが印象的で爽やかな酸味を持つ赤身。
後の大トロの際に産地を伺い戸井との事であったが、晩秋の戸井としては上品な味わいの赤身だ。

太刀魚

太刀魚

鮨種としては珍しい太刀魚だが、仕事も独特で、これも頂いてサプライズがあった。
軽く塩を当てて脱水しているようで、ぷっちりぱつりと小気味よく弾ける。
食感に加えて脂が絶妙にシャリの酸味に合わさり、味覚的なコントラストも良い。

鮪中トロ

鮪中トロ

鮪を他のタネの間に用い、アクセント的にギアを上げてくれる。

鯖

小鰭同様に二枚漬けで、食べ応え抜群!
小鰭とは裏腹にしっかりと〆て、香りと脂を楽しませつつ、クドくない。

鰆

鰆も今や人気の鮨種だが、幽庵漬けにされて個性を出す。
寝かせてとろりとした食感を生み出し、炙りで皮をパリッと仕上げて、食感の二重奏が味覚とともに面白い。
これも個性を確立している仕事。

鮪漬け

鮪漬け

古典的な仕事を挟まれるところが心ニクい演出。
芥子と頂く食べ方も江戸流。

車海老

車海老

むっちりした身は柔らかく、甘みがふんわりと広がる。
標準的な車海老を仕事によって魅力をアップさせていて好感。

鮪大トロ

鮪大トロ

塩で頂く斬新な提供方法で、ダイレクトに脂の魅力を楽しめて良い!
この時期の鮪の大トロならではな魅力を楽しめる。

海胆

海胆

温度が冷たいものの、口どけが良いので、甘く爽やかな印象を与えてくれる。

穴子

穴子

笹の葉を用いて炙るため、笹の葉の香りがしっかり乗っていて、香ばしい。
穴子はトロトロな煮加減。

鉄火巻

鉄火巻

通常は干瓢巻との事だが、実はノーショウが発生したため、鮪たっぷりバージョンで頂いた。
干瓢巻はお店の個性が現れるので別の機会に頂こう。

潮汁

潮汁

魚介の旨味がたっぷりな潮汁にアオサ。

玉子

玉子

醤油と砂糖のみで仕上げたデザート志向の玉子焼き。
海老を用いない理由として、最後にサッパリと提供するためと、甲殻類アレルギーの人でも最後に楽しんで頂くためとの事。

店舗情報と予約方法

予約についてはお電話はもちろん、WEB予約にも対応されています。

コロナ下で「Go To Eatキャンペーン」や「川崎じもと応援券」にも対応されている点についても、消費者として嬉しいところです。

特に高級なお料理だと、ご対応されていると嬉しいですよね。

…僕は一人なので対象外でしたがw

二名以上の方、「Go To Eatキャンペーン」の駆け込みで是非とも訪問されてみてください!

鮨 すがひさ(一休のリンク)

シャリの特徴:飯尾醸造の3種類ブレンドで、酸味は少し強めで、塩気は穏やか。冷めても美味しいシャリを志向。
予算の目安:12,000〜16,000円(お酒の量次第です)
電話番号: 044-750-7369
住所:神奈川県川崎市高津区久本1-16-15

最寄駅:溝の口駅 から450m
営業時間:11:30~14:00、17:00~23:00
定休日:日曜

【参考記事のリンク】

鮨 千陽(ちはる)さん

すしログ No. 191 鮨千陽@福島(大阪府)

津本式

すしコラム No. 7 話題の「津本式・究極の血抜き」を施した「熟成魚」を頂いてみました(前編)

飯尾醸造さんのお酢の飲み比べ

すしコラム No. 10 飯尾醸造「富士酢プレミアム」「赤酢プレミアム」を飲み比べしてみました

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