「創作鮨」を前面に出し個性を確立する鮨店!東中野「鮨くにみつ」

鮨くにみつ看板

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。

こちらは2022年8月に東中野にオープンした鮨店です。

コストパフォーマンスが高く、鮨店としては珍しいお酢を使用していると聞いてブックマークしていました。

訪問した結論としては、「創作鮨」を打ち出すお店としては満足度が高く、創作性を上品に表現している点が魅力だと感じました。

古典的な仕事を求める人には合わないと思いますが、鮨の可能性を楽しめる方ならきっと楽しめるお店です!

すしログについて
★全国6,000軒以上を食べ歩く食好き
☆鮨の食べ歩きは15年以上のキャリア
Twitterでは幅広く、インスタでは鮨・魚介料理日本酒
☆「すしログ鮨会」のご案内は、すしログの公式LINEにて
★noteに、各種グルメマガジンを連載しています!
Substackでは、英語で鮨の魅力を発信中!

東中野「鮨くにみつ」の魅力とは?

東中野「鮨くにみつ」の親方である阿部 国充くにみつさんは、麻布十番の「すし屋のまつ勘」で修業をスタートされた方です。

その後、海外の鮨店や和食のお店を転々とされたそう。

アメリカに渡った時は薄給で握りながら英語を学ばれたそうで、中々の苦労人のようです。

その甲斐あってかコミュ力は非常に高く、34歳とは思えない客あしらいが素晴らしいと感じました。

 

また、海外経験と和食のキャリアも活きていて、ガチガチな江戸前鮨ではなく、創作的な鮨の方向性で既に個性を確立しています。

調味料や薬味を多用する点が特徴となるものの、上品にまとめている点が好印象です。

足し引きのメリハリが効いているので、一連の流れの中で独自性を嫌味なく楽しめます。

すしログ

個人的には、〆た光ものや煮ものをもっと増やした方がベターだと感じますが、構成的には圧倒的多数の人が満足する設計です。

親方は「自分の鮨は江戸前鮨ではない」と仰っており、これはかつて(バブリーになる前の)「初音鮨」の中治親方も同様の事を仰っていましたが、独創的であっても〆る、煮ると言った江戸前仕事を用いれば江戸前鮨になり得る、と僕は考えています。

実験的な試みによって鮨は深化あるいは多様化してきたので、創作を否定する事は鮨の進化を否定する事に繋がると信じる次第です。

ただし、創作的な仕事はセンスをシビアに問われるので、諸刃の剣にもなり得ます。

江戸前鮨の基礎に向き合いつつ、創作的な仕事を増やす職人さんならば、ウェルカムです。

 

ちなみに、余談になりますが、「すし屋の〇〇」と言う屋号のお店が多いな…と感じた事はありませんか?

かなりの軒数があるので、気になった方は多いのではないかと思います。

これは阿部親方が修業された「すし屋のまつ勘(1978年創業)」の源流である、「寿し屋の勘八(1953年創業)」の系譜のお店が多いためです。

「すし屋の〇〇」、「〇勘」、「勘〇」の多くは、「寿し屋の勘八」の系譜です。

どちらかと言うとカジュアルな街場寄りのお店が多いのですが、「すし屋のまつ勘」と「寿司いずみ」は同門です。

そして、「寿司いずみ」の系譜として、「鎌倉以ず美」、「あら輝」などの有名店が続き、高級店を展開する孫弟子も輩出しているので、鮨の歴史を考えると影響力が大きい流派だと言えます。

実は。

 

閑話休題。

「鮨くにみつ」さんの話に戻すと、シャリが非常に特徴的で、「独自性」に意識的に向き合っている事が分かります。

即ち、使用するお米は岩手県産の「銀河のしずく」で、お酢は福井県小浜の「とば屋の壺之酢」。

塩も10数種類試して研究中との事。

 

米にはハリがあり、もっちり感があり、硬めに炊いていても歯応えが良いです。

お米自体の甘味を引き出し、塩と酸味は上品ながら適切。

酸味は主張し過ぎずにタネによっては味覚を支える塩梅で、確かに酸味を感じます。

全体的な温度感は高すぎず、低すぎず、今のスタンダードから比べると少し低めですが、低温であっても美味しいと感じるシャリです。

 

シャリは鮨の生命線。

創作的な仕事を多用されていても、シャリが美味しいと鮨の魅力が大きく底上げされます。

王道の江戸前鮨であってもシャリが微妙だと満足度が大きく下がるものですから。

 

ちなみに、お店が掲げるコンセプトとしては「地元の方に愛されるコスパ最強の鮨」、「最高の20品を驚きの料金にてご提供」との事です。

おまかせコースの価格は15,400円。

流石に「コスパ最強」や「最高の20品を驚きの料金」とは言い過ぎなきらいがあり、そこまで豪語するならばコース価格は12,100円〜13,200円くらいが妥当かな…?とは感じますが、独自性が高いので満足出来る一軒です。

自身が通っている「鮨處やまだ」さんは珠玉の握り15貫で16,500円なので、ついつい比較してしまいます。

とは言え、タネのクオリティよりも仕事で魚を旨くする方向性なので、是非ともブレずに頑張って頂きたいと思います。

「鮨くにみつ」のおまかせコースの詳細

「鮨くにみつ」さんのメニュー構成について、シンプルです。

  • 鮨くにみつランチコース11,000円
  • 鮨くにみつコース15,400円
  • 日本酒ペアリング5,500円

【日本酒ペアリング】については、「ファーストドリンク+プレミア限定酒(60ml)5種」で構成されます。

ファーストドリンクは日本酒も可能なので、6種類頂けます。

頂いた日本酒は下記のとおりです。

  • 菊の里酒造 大那 大辛口純米吟醸 キレッキレ(五百万石、60%)
  • 上原酒造 純米吟醸 杣の道 生原酒 天秤搾り(山田錦、59%)
  • 西酒造 天賦 初音 純米(あきほなみ、60%)
  • 森島酒造 森嶋 純米大吟醸(雄町、50%)
  • 木屋正酒造 而今 純米吟醸(山田錦、50%)
  • 宮泉銘醸 會津 宮泉 貴醸酒(五百万石、50%)

阿部親方は利き酒の勉強は独学との事ですが、チョイスが良いです。

香り酵母系のお酒が3種類続く点は調整された方が良く、プレミアに寄せずもう少し廉価なコースも設けた方が数が出るとは思いますが、親方のペアリングのセンスを実感します。

さらに、お酒の性質によって酒器を使い分けておられる点も素晴らしいです。

日本酒は通ぶっている人ほど好みの幅が狭く、自身の好みを押し付けがちですが、好みの幅が広い方はペアリングをお願いすると体験価値が上がる事は間違いありません。

この点については、酒ディプロマの自分が保証します。

 

それでは、頂いたコースの詳細をご紹介します。

 

菊の里酒造 大那 大辛口純米吟醸 キレッキレ

菊の里酒造大那大辛口純米吟醸キレッキレ

酒米が五百万石で、いわゆる「辛口」のお酒でありながら、きっちり奥行きも感じられる。

一杯目に頂くには多くの人にとって相応しく、素敵な選択だ。

さらに、新中野の「柴田屋酒店」さんの委託醸造PBであると言う希少性も嬉しいところ。

ガリ

ガリ

辛味は非常に穏やかで、酸味がキリッと効いていて、酸味が甘味を切る味付け。

旨味もある。

白海老の茶葉〆

白海老の茶葉〆

名刺代わりの一貫目はキャッチーで魅力的な創作鮨。

親方独自の「茶葉〆」との事。

〆と言う事は茶葉により白海老を脱水しているのだろうか。

お茶は静岡の「山の息吹」を使用している。

白海老の甘味と香りを活かしつつ、お茶の風味を上品に乗せる仕事に好感を抱く。

さくらさくら

さくらさくら

新タマネギのすり流しで、桜海老、アスパラガスを合わせ、桜花をあしらっている。

新タマネギの甘味と白味噌のコクや香りが中々の一体感。

複数の食材の香ばしさと食感を組み合わせている点が魅力だ。

豆乳も用いているが、自然に馴染んでいる。

真鯛

真鯛

5日の熟成を掛けて、皮目は焼き霜造りにして、湘南ゴールドを軽く搾る。

寝かせて旨味を強め、強い脂を回しつつ、食感はみちっとしている点が良い。

さらに、皮目の脂や旨味も活かしてる。

しっとりしつつぷちりと弾ける食感で、味わいが強いので、湘南ゴールドも嫌み無く調和する。

鰤フィーユ

鰤フィーユ

名前がチャラいので心配を覚えるが、組み合わせとしては完成度が高い。

鰤に酢漬けの大根の薄切りを挟んでいる。

大根の薄切りは食感が良いばかりでなく、酸味があるので鰤の脂と乳化させる試みだ。

工夫が光っていて、大根おろしよりも格段に良い仕事だ。

ヤシオマス

ヤシオマス

栃木県の養殖モノながら、「繊維質がマッチョ」なため使用されているそうだ。

3日寝かせて、昆布〆を行っている。

ヤシオマスは脂が乗りつつ、食感がもっちりしている。

香りがふわっと漂い、脂がこみ上げてくる。

〆に用いる昆布も香りならびに旨味の両面で魚魚を邪魔しない使い方だ。

杣の道

以上の3品に【上原酒造 純米吟醸 杣の道】を合わせられたが、タネの脂を切る方向性で、お酒の選択が良いと感じた。

このお酒は酵母無添加で、上原酒造らしい渋い香りがお酒だ。

根ボッケの春巻き

根ボッケの春巻き

根ボッケと根ミツバを合わせた春巻き。

根ボッケは脂が凄い!

根ボッケの春巻き02

しかし、魚の脂なので罪悪感は無い。

鮨店における油ものの使用は評価が分かれるところだが、名店「奈可久」さんでも出されるので、個人的には抵抗感が弱い。

…とは言え、前後の構成における味の濃淡の調整は必須である。

天賦初音

合わせるお酒、西酒造さんの【天賦 初音 純米】は恐らく自社培養酵母だが、酢酸イソアミル系のバナナやメロンの香りが春巻きに合う。

更に酒器の杉香も加わり、良い。

エシャトロ巻き

エシャトロ巻き

これまた奇抜なネーミングだが、エシャレットが思いのほか好相性だ。

トロは濃厚なコクを持つものなので、エシャレットの香りが上品な印象を与える。

トロのパンチを上品に流す塩梅で、シャリッとした食感もリズムを生み出すので良い。

エシャレットは茨城県産のものを使用し、煮キリに漬けて辛味を飛ばしているそうだ。

海苔は築地林屋から仕入れていて、青飛びのようだ。

なお、「エシャロット」と「エシャレット」を混同している人は多いが、完全に別物である。

鰯

脂が乗っている鰯をきっちり、バッチリ封印する〆加減。

シャリとのバランスが実に良い。

この度は〆ものが一つだけであったが、やはり光物が一番酢飯に合う。

森嶋

華やかで甘味のある森嶋とともに。

北寄貝

北寄貝

低温調理を行っていて、48℃で32分。

これは低温調理を行っている人なら、「おお!」と思う設定だ。

数値から予測した通り秀逸な完成度で、非常に甘く、食感がなまめかしい!

限り無く生に近い食感だが、みちっとした極々軽い凝縮感もあり、低温調理の意義を感じる。

産地は苫小牧。

ホタルイカのなめろう

ホタルイカのなめろう

多くの若手職人が使うようになった仕事。

アレンジのセンスに妙があり、すり胡麻を混ぜて、あしらった煎り玄米の香りが良く、食感も然り。

ゲソ部分は叩かずに食感を活かしている点も良く、食感のランダム性が魅力となる。

七味を少量用い、ほんのりとピリ辛を加えている。

車海老

車海老

活の状態から蒸している。

むっちりしていて非常に甘い車海老だが、蒸してから温度を結構落としていて、寝かせの間が奏功している。

産地は鹿児島県。

而今

鮪赤身

鮪赤身

赤身の旨味を意識して、あえてインド鮪(ミナミマグロ)を使用しているそうだ(太平洋クロマグロではなく)。

サク漬けで食感はもっちりしていて、噛みしめると旨味が高まり、喉にも余韻として残る。

やや多めの芥子でバランスを取る。

価格的に良い工夫だ。

海胆

海胆

岩手県洋野の「うに牧場」の塩水海胆。

口どけが秀逸で、サラッととろけて、甘くて香りが抜群に良い。

甘くて爽やかな紫海胆である。

ノドグロの小丼

ノドグロの小丼

自家製の行者にんにく味噌を使用されていて、その点については魅力的であるが、個人的に「多くのお店が出している分かりやすい品」は不要だと思う。

コースの中における、1貫(1品)が勿体無い。

発祥である「佐たけ」さんを凌駕する【ノドグロの小丼】であれば是非とも頂きたいが、どのお店も超える事が無いので、むしろ出さない方が良い。

これについては筆者が、ノドグロは「旨い魚」ではなく「脂が多い魚」なので、最適な調理法は焼き魚であると確信している事も一因だ。

鮨店では、「脂が多い魚」ではなく、仕事で旨くした魚の方が粋である。

会津宮泉

後半戦の選択に貴醸酒とは見事!

この後の握りにバッチリ合わせられる選択肢で、多くの職人さんは選ばないので、センスを感じた次第だ。

自身もペアリング会で煮ものには貴醸酒を合わせて、相性の良さは参加者の皆さまの笑顔で実感した。

椀

能登産の新もずく。

頂く前から鰹出汁の香りがバシッと広がる。

そして、飲んでもキリリと鰹出汁だ。

日本料理の椀であれば鰹節が香り過ぎるのは下世話であるが、鮨店においては鰹出汁がキリッと効いた椀が魅力的なものである。

新もずくの食感も良好で、とろりとしつつ、ジャクジャクと気持ち良い。

牡蠣

牡蠣

大船渡産。

85℃、20分の低温法理を施していて、煮ツメではなく牡蠣の煮汁を煮詰めたオイスターソースを合わせる。

大ぶりの牡蠣は、とろっときめ細かく溶けてゆく。

絶妙な低温調理による火入れだ。

オイスターソースは牡蠣の香りが濃密で、旨い。

カッパ巻きとキロ6万円の緑茶

キロ6万円の緑茶

高級な茶葉を氷出しで淹れている。

旨味が強烈で、調味料的にカッパ巻きに合い、香りも同調する。

カッパ巻き

極細切りのカッパ巻きは爽やかだ。

なお、最初の白海老と同じ塩を使用していて、マルドンのピラミッドソルトとの事である。

そして、国産フレーク塩の話になったため、「塩竃の藻塩フラワーソルト」をお伝えした。

干瓢巻き

干瓢巻き

甘味が軽やかで、醤油を効かせながら強すぎず、まろやかだ。

干瓢はコリッとした食感と、しっとり感がある。

きっちり干瓢を仕込んでいるのが嬉しい。

個人的には手巻きよりも簾巻きの方が鮨店らしいと考えるが、最近の若手職人さんは手巻きを多用する事が増えている。

よって、若手職人さんは是非とも簾巻きをデフォルトにして欲しいと感じている。

何故なら、干瓢やオボロと言った古典的な巻物はお店のシャリの味を強く感じさせてくれるので、実に鮨らしいと感じるのだ。

阿部親方は簾巻きの技術も高いので、技術を前面に出して頂きたい!

水菓子

水菓子

非加熱の生プリン、日向夏とブドウの二色寒天、焙じ茶のパウンドケーキ、北海道「月のチーズ」のフロマージュブラン。

水菓子は別室で頂くスタイル。

個人的には移動を伴うなら水菓子は不要ではないかと感じる。

まあ、これについては個人的な好みなので、喜ぶお客さんの方が多いならば続ける方が正解だろうが。

「鮨くにみつ」の立地と雰囲気

お店は「意外性100%」と言うべき場所にあります。

なにせ東中野であるばかりか、唐揚げ屋さんの2階なので。

鮨くにみつ外観

さらに、階段は古めかしい雑居ビルのそれなので、初訪問の際には「大丈夫か?」と不安になるはず。

鮨くにみつ看板

しかし、店内の空気は清浄なので杞憂です。

内装はカジュアルながら、スッキリしていて上品です。

普段使いを意識したカジュアルな雰囲気です。

「鮨くにみつ」のお店情報と予約方法

WEB予約については、食べログ経由で可能です。

 

鮨くにみつ(食べログのリンク)

店名:鮨くにみつ

予算の目安:ランチコース11,000円、夜おまかせ15,400円、日本酒ペアリング5,500円

TEL:03-5989-1433

住所:東京都中野区東中野5-3-6 東中野トーシンビル2F

最寄駅:東中野駅から350m

営業時間:17:30~、20:00~の2回転制、ランチは日曜祝日の12:00~

定休日:月曜

 

オリジナリティの高い職人さんにテンションが上がる、すしログ(@sushilog01)でした。

▲目次へ戻る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA