すしログ No. 342 奈可久@六本木

「銀座の御三家」奈可田の技を継承する名職人

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こちらは、かつての「銀座の御三家」の系譜にある親方のお店です。

「銀座の御三家」とは、京橋与志乃、久兵衛、奈可田。

店名より容易に推察出来る通り、奈可久さんの修行先は「奈可田」です。

しかし、京橋与志乃と奈可田が敢え無く閉店した現在、残るのは「企業」として成功した久兵衛のみ。

久兵衛は今や一つの流派になっています。

2店が閉店した現在となっては、「銀座の御三家」の呼び名も完全に死語かもしれません。

まして、系譜を追うよりもインスタのタイムラインを追う鮨の食べ手の方が多くなった現在。

このような世の中では、老練の職人さんのお店やその系譜を巡る人こそ、本物の鮨好きだと個人的には感じます。

老練の職人さんの握りには、確かな個性が宿っていて、江戸前仕事の凄味を感じさせてくれますので!

なお、こちら奈可久さんご出身で有名なお店は「材木町 鮨 奈可久」と「鮨 奈可久 星野」がありますね。

 

奈可久・鈴木親方の比類ない魅力

親方の鈴木隆久さんは老境に入ってもおごるところが全く無く、温和な方です。

一見の若いカップルにも優しい接客を行っておられ、その心は、文化の伝達。

文化を伝えたいと言う想いが強い方なので、温故知新の面白さを吟味できる方であれば年齢は問わず、楽しませて頂けます。

六本木で40年と言うキャリアは、簡単には言い表せない「人生の密度」があると思います。

お店は今でこそミッドタウンの前にありますが、かつては防衛庁本庁の脇にあり、静かであったそうです。

お店に入ると奈可田の系譜のアイコンである「氷柱」が佇み、カウンターは20年モノの木曽ヒノキを用いた立派な白木のカウンターです。

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20年前に現在の地に移転した際、敢え無く切らなければならなかったそうですが、もともとは一枚板と言うので、今では作る事が難しいカウンターでしょう。

 

そして、鈴木親方の仕事は堂に入っていて、唯一無二です。

今や多くの若手職人さんが使う数々の仕事を考案したのも鈴木親方の功績…

例えば、車海老の黄身酢オボロ漬け、薄切りにした鯖の3枚づけ(握り)、コノシロの雪花菜漬けなど。

ご存知の通り、【車海老の黄身酢オボロ漬け】はすし匠の中澤圭二親方が得意とされていて、実際に奈可久さんに食べに来られたそうです。

なので、奈可久の鈴木親方が編み出した仕事である事を知らずに自ら用いる職人さんも多いはず。

いや、知らずして用いるは決して邪道でなく正道。

これこそが文化の伝承であり普及してこその文化。

これぞ、偉業ですね。

有名仲卸から言われるがままに高級タネを仕入れ、高額なおまかせ一本で繁盛していながら、個性の表現に迷っている職人さんは、一度鈴木親方の仕事を体感されると良いかと思います。

これが鮨だと原点回帰し、初心を思い出せる事でしょう。

そして、自らの「次世代の仕事」を編み出せるかと思います。

 

鈴木親方のシャリは米酢のみで、酸味を立てつつ砂糖を少量使用したもの。

現代のトレンドである「赤酢、砂糖不使用、塩強め、硬め」のシャリとは異なりますが、見事にほどけます。

銀座ほかけの矢﨑桂親方の握りも同様ですが、必ずしも「見た目」にこだわった握りではないのに、見事にほどけるのは凄いと感じます。

そうそう、こちらのお店でもう一つ特筆すべきは、お酒の楽しませ方です。

銘柄は白鷹の純米1種類のみなのですが、3種類の飲み方で提供されています。

ひや(常温)と燗に加えて、マイナス30℃でシャーベット状に氷結させたもの。

これが面白い。

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シャーベット状なのにアルコールが分離しておらず、きっちり日本酒の旨味と香りを楽しめるのが独特です。

親方が試行錯誤して開発されたそうです。

コロナ禍で東京から撤退してしまった美々卯でも【凍結酒】を出されていますが、それとは異なる塩梅で、親方の工夫を感じさせる妙があります。

 

またお伺いして、違う仕事に魅せられたいと強く感じました。

この度頂いた酒肴は下記の通りです。

奈可久さんの酒肴と握りの詳細

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煮蛸

食感が独特。

しっとりした身はむぎゅむぎゅっと凝縮感のある反発を示し、ほろっとほどける。

柔らかくする蛸の煮仕事とは異なる独自性のある仕事。

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真鯛、鮃

握り用ではない魚を刺身に。

真鯛は皮を軽い湯霜にしている。

鮃も香り良く、ともに美味しい。

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青柳の仲間、イシガキガイ(エゾイシカゲガイ)、タイラギ、

夏が旬のイシガキガイは甘みが強く、香り実に爽やか。

また、タイラギは旨味と繊維質が引き締まった、みっちりした味わい。

さらっと出される刺身に個性があると、大変嬉しい。

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鯵の焼きもの

「どんちっちアジ」との事なので、産地は浜田!

脂の乗りが良く、ベテラン職人さんから愛されるブランド産地。

銀座わたなべの渡部親方も大好きな産地だ。

すしログ No. 286 銀座 鮨 わたなべ

鯵の中心はレアに仕上げ、ぷるんと活き活きした身から脂がジューシィに溢れ出て、香りも良い意味で鯵らしい。

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小蛤の酒蒸し

滋味深い!小ぶりなれど甘み、旨味、香りは紛れも無く蛤。

握りの前に嬉しい一皿。

 

この度頂いた握り

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ガリ

スッキリ味のガリで、酸味に程良い甘みがあり、食感はシャキシャキ。

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新烏賊

かなり柔らかい食感の新烏賊。

しかも、とろりではなく、くにゅりとした柔らかさ。

墨烏賊らしさは強くなく幼い新烏賊か。

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真鯛

昆布〆が凄い。

昆布の香りを上品に移しつつ、〆加減(脱水)と昆布の旨味は上品。

食感はしっとり。

この塩梅は他には無い。

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小柱軍艦

小柱の美味しさもさる事ながら、海苔の口溶けや風味が面白いと感じて伺ったところ、船橋三番瀬の海苔であり、驚く。

これぞ江戸前海苔で、スサビノリではないアサクサノリ。

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しっかり〆て、脂を楽しませつつ身に回った酢により爽やかに楽しませる。

なお、親方の好きな産地を伺ったところ、予想通り岸和田であった。

光物の〆加減で、なんとなく好きな産地が分かる。

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海胆軍艦

実に甘い!ミョウバンの収斂味は殆ど無い。

通常は無添加の塩水のみを昔から使用されてきたそうだが、今回は浜中・小川のうに。

窒素水を用いて海胆の酸化を抑制し、鮮度の高い状態で出荷出来る会社のもの。

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エボダイ

これも〆加減が良く、ぷりっとした身はパツッと弾けて美味い。

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北寄貝

切り付けが美しい。

ぷりぷりした身は大変甘く、食感もシャクシャクと気持ち良い。

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車海老

これが冒頭の【車海老の黄身酢オボロ漬け】。

味が刻一刻と変化する魅力がある。

オボロの甘みと車海老の甘みを別々に感じてしまうオボロ漬けもあるが、一体感が高く、美味しい。

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鮪赤身

漬け。サクではなく切り身を漬けた後、寝かせている。

その結果、食感が非常にこなれて、ペースト的ねっちり感を楽しませてくれる。

その上、夏鮪の赤身らしい爽やかさがあり、穏やかな脂も確かに楽しませる仕事。

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鮪トロ

穏やかな味わいの中トロ。

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穴子

これまたメチャクチャ美味しい。

ホロホロ、しっとりとと繊維質がほどけ、穴子の風味を楽しませてくれる。

濃い味の煮ツメも魅力。

穴子の質感と風味から江戸前ですか?と聞いたところ、正解であった。

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玉子

みっしり感があり、どっしりした玉子。

 

最後に世の中に出回っていない米焼酎を頂いていると、酒肴を出して頂きました。

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珍味系煮物の持ち合わせで、煮ツメで頂く。

鮃の肝と卵、蛸の卵。

全てが手抜かり無く、キッチリと仕込まれている煮もの。

最後に頂き、凄味を再認識した次第です。

 

店名:奈可久(なかひさ)

シャリの特徴:米酢のみを使用し、酸味を立てて砂糖を上品に使用したシャリ。

予算の目安:ひと通り頂き、お酒を飲んで20,000円〜23,000円くらい

最寄駅:六本木駅から350m

TEL:03-3475-0252

住所:東京都港区六本木7-8-4 銀嶺ビルB1F

営業時間:17:00~22:00

定休日:日曜、祝日

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