すしコラム No. 7 話題の「津本式・究極の血抜き」を施した「熟成魚」を頂いてみました(前編)

こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(f:id:edomae-sushi:20201002142555p:plain@sushilog01)です。

本記事は「津本式・究極の血抜き&熟成」を施した魚の実食レポになります。

話題の津本式の熟成魚を、鮨ブロガーがレポートします。

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津本式・究極の血抜き&熟成とは?

宮崎県にある水産会社の営業部長でありながら、YouTuberである津本光弘(つもとみつひろ)さん。200本以上もの動画をアップし、チャンネル登録数16.5Kを誇っています。その集大成となるノウハウが2020年1月に書籍として刊行されました。

タイトルはズバリ、『魚食革命 津本式 究極の血抜き』。「革命」「究極」と威勢の良い言葉が踊っていますが、テーマは「魚の血抜き」とマニアック!刊行情報を知った時は、よくぞ一冊の本となり刊行されたな…と驚きました。

もちろん、鮨好き・魚好きとしては予約の上で発売日に入手して拝読したのですが、率直に言って、大変面白かったです。「津本式・究極の血抜き」とは、端的に述べると「魚の神経と血管に放水して、神経〆を行い、血を洗う」と言う手法。

聞いただけでは些かワイルドな荒ワザとなりますが、実際には精密な職人仕事であり、従来の「神経〆」と「熟成」を繋ぐ新たなアプローチになると予感しました。鮨職人や日本料理人で試される方も増えているので、今後さらに注目を集めるであろう技法だと思います(手法の詳細が気になる方は、オフィシャルサイトをご参照ください)。

なお、本記事を書くに当たりアマゾンで調べたところ、非常にマニアックな内容にもかかわらず、レビューが70件近く書かれており、しかも86%が星4と5で驚きました。あと、細かい話ですが、予想外に書籍単価が低く、このテーマの刷り部数で攻めているな〜と版元の姿勢に感心しました(笑)

→しかも、その後、続編が刊行されて二度ビックリ!

 

書籍を読み終えた時、処置を施して寝かせた魚を無性に実食したくなったので、そのためには機材(津本式ノヅル)を買って久々に釣りに行くしかないか??と思案。しかし、覚悟が割と必要だな〜と逡巡。そんなこんな考えている折に、幸運にも実食する機会に恵まれました。「津本式公認技師」である小野真裕さんと佐久間亮介さんのタッグが、豊洲から発送してくださると言う情報をゲット。新型コロナの影響で豊洲もダメージを被っているので、応援の意味も込めて2回発注致しました。

ついては、以下の流れで「津本式・究極の血抜き」の特徴や魅力について述べ、さらには今後の熟成について言及したいと思います。釣り人や料理人の方々の記事は既にネット上にありますので、あくまでも食べ歩き愛好者としての観点から。

率直に言って、津本式の凄さとは?

この度頂いた魚は下記の通りです。

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第1回目の魚:白寿真鯛、甲斐サーモンレッド、鰆(サワラ)

第2回目の魚:勘八(カンパチ)、鮎魚女(アイナメ)、九絵(クエ)

各回送料と税込みで9,706円となります(魚のみは税抜価格7,500円で、量は刺し身60切れ=12人前のイメージとの事です)。お値段は絶対額として見ると一般的には「高い」と思います。しかし、魚は「津本式・究極の血抜き」だけでなく、「脱水」と「1週間ほどの熟成」が掛けられており、骨抜きも施されているので、魚自体の価格に手間賃と付加価値が乗った価格となります。個人的に、何よりも「味」を考慮すると決して高くはないと感じました。いわば「ハイエンドな居酒屋や割烹、レストランや日本料理店で使われる魚」クラスの味を家で楽しめるならば、決して安くはないものの満足度は高いと思いました。

そして、早速結論を申し上げると、津本式を施した魚は寝かせても「臭み」が皆無で驚きました。一般的な熟成の場合でも血は一滴たりとも残さぬよう除去するものですが、血管内を浄化して寝かせると熟成の精度が上がるように感じました。また、ただでさえ脂の乗った魚に津本式の手当を行い、熟成を掛けると脂と旨味のパンチが圧倒的になると感じました。脂だけだと飽きがくるものですが、旨味が強化されているので牽引力が強く、特に鮨で頂くと更なる魔性を帯びると感じました。二子玉川の喜邑の木村さんのような熟成の魔術師にかかれば長期間寝かせて魚の魅力を引き出すことも可能ですが、安定感の高い熟成をかける場合、津本式が選択肢の一つとなることは間違いありません

自宅での最適な調理法について

魚は生(刺し身)、鮨、火入れの状態で食べてみました。「津本式・究極の血抜き」の効果と熟成の好相性を最も実感できる食べ方は言わずもがな、刺し身(生)でした。

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刺し身(生)で感じられる特徴

  • 臭みが皆無でありながら、魚の香りを楽しめる
  • 熟成により引き出された旨味

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そして、鮨についても、相性はバッチリ。シャリの酸味が熟成の旨味を引き締め引き立ててくれるので、「これは出来レースか!」ってくらいにバッチリでした。シャリの力でパクパクと頂いてしまいます。ただ、熟成魚については旨味=イノシン酸が高含有で共通しているため、メリハリをつけるべく「魚ごとにの良さを引き立てる仕事」を施すことが重要だと感じました。

鮨で感じられる特徴

  • 熟成により引き出された旨味と酢飯の相性の良さ
  • シャリの酸味によって魚の旨味や他の味覚が引き立つ

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最後に、火入れした味について。鰆(サワラ)とアイナメについては、100℃のオーブンで中心温度を40℃ほどに上げた後に表面を高温の香味油でサッと焼いてみました。いわば「魚のレア焼き」に。結果として、間違いなく美味しいのですが、生ほどには「津本式・究極の血抜き✗熟成」のインパクトを感じることが出来ませんでした。思うに、熱を加え、油や調味料で香りを付加すると、「魚の香り」が弱くなるためかもしれません。熟成魚の火入れについては、非常に高度な火入れが求められるので、個人的には腕の立つ料理人、シェフ向けかなと感じました。まあ、サク1本3,000円くらいの高級魚をバンバン使えるお金持ちであれば、焼き魚にしても申し分なく美味しく満足できると思いますが(笑)

火入れで感じられる特徴

  • 熟成により引き出された旨味
  • 高い調理技術を用いた際の驚きある味わい

上記の理由より、家庭で楽しむならばオーソドックスに刺し身、飽きてきたら鮨が良いかと思いました。握るのが難しい場合には、酢飯を用いて海鮮丼にするのも贅沢で美味しい食べ方かと思います。

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画像:甲斐サーモンレッドの酢〆と湯霜漬けの2色丼

ただし、その場合でも、山葵は必ず本山葵を使用するようにしてください!(チューブの混ぜ山葵だと山葵の甘みや香りが無く、折角丁寧に仕立てられたお魚が勿体無いので)

実食した魚の味わいについての詳細レポート(前編)

第1回目のセット

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白寿真鯛

愛媛県で鯛と鮃を養殖する赤坂水産さん渾身の養殖鯛、白寿真鯛(はくじゅまだい)。養殖ならではな脂の多さが特筆モノです。かと言って一般的な養殖鯛とは異なり、香りが芳醇。個人的には脂はもっと抑えめな鯛の方が(鯛らしくて)好みですが、初めて食す人の度肝を抜くことは間違いなし!熟成しがいのある鯛だと感じました。

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脂が強いので酸味を利かせた酢飯との相性が高いです。さらにシャリ温を通常よりも2〜3℃高くするとベストだと感じました。白身魚に温度帯の高いシャリを合わせるのはリスキーですが、この鯛と仕立てならばバッチリ合います。

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甲斐サーモンレッド

海なし県の山梨県が本気で取り組む養殖の大型ニジマス。腹回りと尾側で味が大きく異なりビックリしました。まさに「津本式・究極の血抜き」と「熟成」によって強いコントラストが生み出されているのかと思います。腹回りは写真の通り脂が強いので、煮キリに漬けると魅力が更に高まりました。

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【白寿真鯛】と同様にシャリ温を上げてみましが、影響度は低かったです。むしろ漬け+通常温から少し低めの温度帯のシャリとの取り合わせが魅力的だと感じました。

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鰆(サワラ)

第1回目のセットで唯一の天然モノとなり、これまた脂のノリが抜群。同時に、熟成によって旨味が最大化されているのでパンチのある味わい。よって強い味付け(赤酢)のシャリであっても十分に協奏してくれました。温度帯の高いシャリとの相性が最も良かったです。

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なお、(前述の通り)100℃のオーブンで10分強の火入れを行い、中心温度を40℃まで高めてから油で焼いてみましたが、鮨の方が美味しかったです。火入れする場合、よりダメージの少ない温度帯での調理(例えば真空低温調理)がベターかも?と感じました。京丹後にある名店・縄屋の吉岡さんのような凄腕料理人ならば炭火でレアに仕上げられますが、素人には難しすぎなので(笑)

この後、第2回目のセットについての感想とまとめがあるのですが、長文となってしまいましたので、読みやすさを考慮して前後編に分けたいと思います。

前編3,500字、後編2,800字ほどのボリュームとなります。

 

後編

参考資料

 

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2 COMMENTS

ゲスト

初めまして。どちらのサイトでご購入されたのか教えていただけますか?

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edomae-sushi

初めまして。facebookで小野真裕さん(肩書:Aging Fish Japan パーソナルシェフ & 津本式公認技師)の販売情報が流れてきて入手致しました!

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