旬の魚をご紹介する当コーナー。
鮨店で使われる魚たちを順にご紹介していきます!
鮨が10倍楽しくなる!旬魚の世界 No. 1〜魚の旬とは?〜
今回はいつもと少し趣向を変えてお届けします。
新子と新イカについてのすしログ的コメント
江戸前鮨を代表するタネである、小鰭(コハダ)の幼魚である新子と、墨烏賊(スミイカ)の幼魚である新イカ。
新子は7月~8月、新イカは8月中旬〜9月頃に登場するため、「夏が旬」だと思われている方が多いように感じます。
ただ、忘れてはならないのは、これらは幼魚であり「旬の走り」である点。
走りの魚の持ち味は旨味や香りなどの魚味ではなく、あくまでも季節の一瞬を愛でる点が粋だと言えるでしょう。
前にお店で「やっぱり旬のシンコは旨い!」と絶賛されている年配の方がいらっしゃいました。
それ自体はその人にとっての喜びなので、他人がとやかく口を出す事ではありません。
ただ、部下もしくは取引先と思われる若い方に大声で「旬のシンコは特別に旨いだろう?」と旨味においてマウンティングされていたのは、当方若輩者ながら見ていて恥ずかしい気持ちになってしまいました。
旬の走りの素材を本質から外れて過剰に追い求めると、生態系の破壊や需給バランスの破壊に繋がってしまいます。
魚ではありませんが、春の花山椒は今や東京で過剰な人気となっており、もともと消費されていた関西では品薄や原価の高騰が引き起こされています。
花山椒は元々「薬味」であるところ鍋の「具」として用いる点が元凶なので少々話が異なるかもしれません。
しかし、素材の旬を知る事は自然への畏敬とサステイナビリティに繋がりますので、生命あるものを食す人間としては念頭に置く必要があると感じます。
少し堅苦しい話になってしまいましたが、新子と新イカに特有の魅力があるのは間違いありません。
前述の季節の一瞬を愛でる点に加えて、淡い香りや食感から成魚の姿と(本当の)旬の味に思いを馳せ、じんわりと、穏やかに気持ちに浸れる点は紛れもない魅力です。
その魅力を下記でお伝えしたいと思います。
新子の魅力!
・6枚づけや8枚づけなど、「数の多さ」を最良とするのは無粋。小鰭らしさを楽しむならば2枚、せいぜい3枚でないかと思います。ただ、決して6枚~8枚がダメと述べているわけではなく、枚数が多い新子は出してくれた親方の心意気を味わうものだと思います。驚くほど高値にも関わらず季節を味わわせるために手を出す親方は、江戸ッ子的な見栄と粋を感じさせてくれて、格好良いものです。
・また、訪問の時期や職人さんによっては、2枚づけの握りと小鰭(成魚)の握りを順に出される方もいらっしゃいます。これもまた粋ですね。
↓例1:福岡のさかいさん
↓例2:東京のすぎたさん
「小鰭の方が美味しい」と言い切るのは無粋でしょう。
新イカの魅力!
・アオリイカの記事で書きましたが、旨味はアオリイカに負けるものの、食感で勝るのがスミイカ(※個人的見解です)。パツッと切れるような食感に弾けるようなシャリが合わさると極めてリズミカルで快感です。
新イカで面白いのが、幼魚で身は成魚に比べると柔らかいのに、スミイカ特有の食感がある点です。アオリイカの後に登場するため、人によっては味気ないと感じられるかもしれませんが、これから登場するスミイカに思いを馳せ、あどけない食感の新イカを頂く喜びは、一年でもわずかな間だけです。
・なお、8月中旬に築地に行ったところキロ10,500円で、旬の鰯(岸和田の金太郎鰯、水氷)を凌ぐ価格でした。
掲載した写真のお店
・幸鮓(東京都) ※紹介は新イカですが、新子と小鰭の食べ比べも楽しめます