すしログ日本料理編 No. 73 懐石辻留@赤坂

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言わずと知れた茶懐石の名門であり、裏千家の料理番とも言える名店です。

創業は1902年(明治35年)に遡り、東京には1954年に進出しました。

(京都店は出張料理のみで、料理を頂けるのは東京店のみとなります)

現在は3代目の辻義一氏が暖簾を守っており、魯山人に師事した料理人となります。

懐石の真骨頂は総合芸術にあり、単に食するだけでは木を見て森を見ずに然り。

料理以外の教養と鑑賞眼も必要とされるので、20代の頃は訪問出来ずにおりました。

しかし、30を過ぎた今、「もう大丈夫だろうか?」と勝手に判断して訪問した次第です(笑)

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お店はビルの地階にありますが、店内はビル内とは思えない程に鄙びた風情があります。

客席は全て個室となり、調度品、美術品に目を瞠ります。

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当日のお部屋の掛け軸(有馬頼底の作)には、「柳は緑 花は紅」と春が表されており、和みました。

女将さん(若女将?)の接客は付かず離れず、そして笑顔があり、心地良い。

格式と雰囲気に比して、居心地の良い接客は、意外に思いつつも心から嬉しいおもてなしでした。

 

料理を頂いた感想としては、味わいの前に何よりも、料理によって器を活かしきっている点が見事だと感じました。

何も良い器を用いる事が活かす事ではありません。

良い器だろうが華美な器だろうが、扱うためには器が主張し過ぎては駄目です。

その点において、器に着られる料理ではなく、器を着る料理だなと感じました。

正しく魯山人の哲学が脈々と流れる料理だと思います。

 

味わいに対する感想としては、

1. 用いる技法は徹底的に古典的、

2. それでいて味覚的なバランスに個性があり飽きさせない、

3. 正統な京料理の味わいを満喫出来る。

東京の懐石料理店には無い魅力があり、個人的に琴線に触れました。

 

頂いた御料理
・向附:鮃の昆布〆
・椀盛:伊勢海老真薯
・煮合せ:筍、鯛子、蕗
・焼きもの:ぐじの幽庵焼き
・揚げもの:蕗の薹と白魚の霰揚げ
・進肴・浜防風と笹身の胡麻和え
・お食事:弥生ご飯、香の物
・水菓子
・お薄

 

頂いた日本酒

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・鄙願(ラベルは小林東五の揮毫)

 

尚、この日のお部屋に飾られていた画は魯山人の手によるもの。

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自身の赤絵の鉢の不出来を悔やみ、悔しさを具現化しており、一般的な魯山人のイメージとは異なり、面白い。

「この鉢の 赤と墨線の流れ 稍々(やや)わが意を得たり形は柔らかみ乏しく まねても~~駄目也」「魯 十六年十一月十八日朝」

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向附・魯山人作絵瀬戸長皿

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鮃の昆布〆。
しっかりと〆て脱水しているが、昆布の香りとグルタミン酸の沈着は弱く、上品。

鮃の旨味と香りは内在しており、技を感じさせる。

鮨好きな自分としては白身の昆布〆で過剰な仕事を嫌うが、こちらは〆る必然性を感じさせる味わい。

醤油、酒を煮切り柑橘と合わせた調味料も好バランスだったが、大半を付けずに頂いた。

旬を終える鮃の淡い香りにくすぐれながら。

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椀盛

「椀もの」ではなく「椀盛」。

こちらでは汁を主体とした一般的なお椀に対して、椀種を主としている次第。

椀種は伊勢海老の海老真薯、妻は嫁菜。

極めて完成度の高い吸い地。

ふくよかな甘みは旨味由来の甘みであり、柔らかく豊か。

塩気は削ぎ落としてるが、圧倒的な存在感を放つ吸い地。

出汁は利尻昆布と本枯節だが、鰹の香りは限り無く抑制されており、昆布も最後にかすかな香りを漂わせる程度。

伊勢海老の真薯が凡庸に感じる程の吸い地で、感銘を覚えた。

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煮合せ・古伊万里大聖寺焼

季節ものの鯛子と筍、フキ。

筍は敢え無く京都産には時期尚早であったが(福岡県・合馬産)、ほのかな苦味と甘みに加え、食感も引き出されていた。

フキも香りがきちっと残っている。

塩気を落とし、甘みを付けて炊いている点、生姜を割と利かせている点が意外であった。

勿論、穏やかな甘みでであり、ふんわりと漂う出汁こそが味のコアであったが。

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焼きもの・魯山人作黄瀬戸皿

若狭ぐじの幽庵焼き。

ふっくらと柔らかく、焼き上げて中心はしっとり。

見た目は火入れが強そうだが、食べ外のある加減。

反面、漬けはしっかり目で古典的。

味わいの強さは現在人の好みに依拠するだろう。

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揚げもの・魯山人作絵瀬戸四方皿

蕗の薹と白魚の霰揚げ。

サクサクと香ばしい。

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進肴・福森雅武作伊賀焼丸皿

浜防風と笹身の胡麻和え。

胡麻をしっかりと利かせ、淡白な笹身を引き立て、浜防風の軽い苦味で引き締める、気の利いた強肴。

さりげない素材を用いて印象深い味に仕上げている。

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お食事

弥生ご飯は熱々の蓋を開けた瞬間に出汁がふわっと香る。

オボロは車海老を用いており、ご飯は鯛ご飯だが、徹底的に穏やかで出汁との調和が取れている。

椎茸に甘みを付けていない点が好ましく、他の具の甘みを活かしている。

香の物の蕪は古漬けで酸味がしっかりしており、他の漬物も塩が強くパンチがある。

上記の弥生ご飯の味覚と合わせている。

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水菓子

赤坂にある和菓子店・塩野さんの【春の野辺】。

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お薄

裏千家の流儀に則り。

味わいに茶懐石の心を知る。

キリッと締まり、安らぎを抱き、もてなしの心に感謝。

流派のお話、菓子と茶のお話など、大変勉強になりました!

 

次回は鱧を頂きたいと感じます。

 

店名:懐石 辻留(かいせき つじとめ)

食べるべき逸品:季節折々の素材を用いた正統派の京料理。

予算の目安:お昼15,000円〜、夜25,000円〜 ※税サ別

最寄駅:赤坂見附駅から260m

TEL:03-3403-3984

住所:東京都港区元赤坂1-5-8 虎屋第2ビルB1F

営業時間:12:00~14:00、17:00~21:00

定休日:日曜

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