こちらは1923年創業の江戸前鮨の老舗です。
握り鮨を考案した華屋與兵衛の流れを汲む、「三大始祖」の一つです。
また、それと同時に、僕にとっては、鮨の魅力を教えてくれたお店、幸鮓のご主人が修行されたお店でもあります。
お店は外観、内装ともに素晴らしい。
木造の一軒家には時の風情が積み重なり、ガラスの引き戸はノスタルジックな期待を高めます。
椅子に掛けられた白布のカヴァーも、これぞ鮨屋!と言った感。
昨今の鮨屋には失われつつある魅力が、鮨の欲求を入店直ぐに高めてくれます。
こちらは雰囲気のみならず、接客にも目を瞠るものがあります。
老舗ながら一見客であっても区別はしない。
適度な距離感。
油井隆一氏は長年付け場に立ち客あしらいをしてきた、
職人特有の凛とした雰囲気を持っておられます。
立ち居振る舞いが凛とした、粋な職人さんです。
再訪記事もございます。
シャリの酢加減、塩加減は大変良く、米の旨味もほのかに感じられます。
硬さも中々で、粒が立ち、良いほどけ具合。
温度が低いのが気になりましたが、それが合うタネもあり、不思議に感じます。
なお、古典でありながらシャリは大きくなく、人によって握り分けているようです。
油井氏の所作は流麗で精確。
ガリは恐らく赤酢を使った、キレのある味。
酢がキリッと走り、塩気もあって、歯ごたえ豊か。
甘みが低い、好みのガリです。
タネの切り付けが大ぶりなところもこちらの特徴。
そして、〆(シメ)、漬け(ヅケ)、煮るといった江戸前の伝統的な仕事を余すところなく楽しめます。
マカジキ
銚子産の極上品。
非常に良質な脂と繊維質で、とろりとほどけ、口の中に旨味が充満します。
鮪中トロ
細やかな脂の粒子がすぐに溶けて染み渡る。温度が丁度良いです。
赤貝
繊維のほどけ具合が良く、包丁の妙を感じます。
平貝
オボロを挟む独特な仕事。
生の方が好みですが、オボロ(甘み)、山葵(辛み)、海苔(磯の香)が調和しており面白い。
穴子
濃厚な煮ツメの旨味が淡白な煮仕事を活かします。
小鰭
巨大でありながら、食感がたじろがない。しっかりなのに瑞々しい〆加減。
鯖
これも食感的に軽やかな〆加減。
独特の切り付けで、浅葱を挟んでいるところが個性的です。
煮蛤
しっかりとした火入れに、濃いツメを合わせる古典的な仕事。
玉子
オボロをたっぷりと挟み、鞍掛にした、中々珍しい玉子。
こちらは鮨に興味のある人であれば、是非とも行ってみて欲しい一軒です。
老舗ゆえかお値段は少し張りますが、独自性の高い仕事には、見合った価値があるかと思います。
店名:喜寿司(㐂寿司、きずし)
シャリの特徴:米酢と赤酢を上品にブレンドし、全てのタネに寄り添うシャリ。
予算の目安:お昼おきまり(握り8貫と巻物3)3,500円、5,000円、夜のおきまりは同額で握り6貫に巻物6、おまかせ11貫は10,000円
最寄駅:人形町駅から140m
TEL:03-3666-1682
住所:東京都中央区日本橋人形町2-7-13
営業時間:月~金11:45~14:30、17:00~21:30、土11:45~21:00
定休日:日曜、祝日
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