こんにちは、鮨ブロガーの、すしログ(@sushilog01)です。
本記事は「旬の魚」をご紹介する「旬魚の世界シリーズ」です。
当シリーズでは、旬の魚の魅力を鮨ブロガーならではな目線で解説していきます。
今回は「はつがつお(初鰹)」についてご紹介します。
すしログ
楽しんで頂ければ幸いです。
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はつがつお(初鰹)の基本情報と旬は?
標準和名:かつお(鰹)
通称・別称:はつがつお(初鰹)=のぼりがつお(上り鰹)
英語名:Hatsugatsuo, the first bonito of season
旬:4月~5月
はつがつお(初鰹)についてのすしログ的コメント
「鰹の旬」と言えば、多くの方が秋を頭に浮かべるのではないでしょうか?
それは確かに間違いなく、脂が乗った「戻り鰹」の旬となります(10月〜)。
しかし、春先から初春の「初鰹(上り鰹)」は別の魅力を持つ、もう一つの旬。
その理由は、味。
明らかに味が異なるので、春と秋で別々に楽しむべきなのです!
脂嗜好の現代では「戻り鰹」の方が人気ですが、握り鮨を愛した江戸ッ子が好んだのは「初鰹」です。
江戸ッ子は、初鰹を「勝男」と呼んで縁起物とみなし、「まな板に 小判一枚 初鰹」と読んだり、トドメは「女房を 質に入れても 初鰹」と揶揄したり。
高値が付く初物を無理してでも買う事が粋=格好良いとみなされました。
しかし、個人的な推測となりますが、「戻り鰹」よりもアッサリした「初鰹」の味わいは、当時の嗜好に合っていたのかもしれません。
「初鰹」は脂こそ「戻り鰹」に負けますが、酸味とキレのある鉄の香りは春の旬魚の中でも独特の味わいを有しています。
そんな爽やかな「初鰹」を稲藁で炙ると、即席の燻香が付加され食欲を刺激します。
藁炙りと言えば、土佐(高知県)の【鰹のタタキ】。
これを鮨に応用したすきやばし次郎・小野二郎氏の仕事は、今では幅広く普及しています。
ちなみに、「初鰹」と「戻り鰹」以外に、「もう一つの鰹」が存在するのはご存知でしょうか?
その鰹とは…人呼んで「迷い鰹」。
黒潮に乗って九州から東北まで太平洋沿岸を北上してゆくのが「初鰹」。
秋以降に南下してくるのが「戻り鰹」。
「迷い鰹」は両方の旬から外れる1月頃に獲れる鰹で、芳醇な脂と引き締まった身質、強い香りを有する鰹となります。
対馬海流に乗って泳ぐため、産地としては九州北部、山陰、若狭、能登、富山湾などとなります。
産地と時期による差は勿論ありますが、ベストのモノは「初鰹」とも「戻り鰹」とも異なります。
出すお店が少ないので「迷い鰹」で旬魚コラムを書く事が出来ないため、本稿にて言及させて頂きました。
ちなみに、現在は2月下旬~3月に九州南部で獲れたものが空輸されていますが、江戸時代の「初鰹」は5月(旧暦4月)に相模湾で獲れたものを指します。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」
江戸中期の俳人・山口素堂の句は有名で、何とも爽やかですね。
なので、本物の鮨好きであれば、初鰹を言われたものの「5月の相模湾モノ」でない場合、「初鰹じゃない!」とブチ切れないといけません(笑) ※もちろん冗談です
はつがつお(初鰹)の鮨における仕事(調理法)
はつがつお(初鰹)の鮨における仕事(調理法)は以下の通りです。
- 目利き
- 軽い漬け
- 炙り
鰹は多くの魚の中で目利きが難しい魚だと言われております。名だたる名職人の方々も選別の難しさを明言されていて、「開いてみないと分からない」と言う方も。だからこそ、開いてみてピンではなかった場合、仕事がより一層重要になるように思います。
軽い漬けで味を凝縮する方法や、塩で脱水する方法があるかと思いますが、〆るほどに塩を使うのは「初鰹」には向いてないように感じます。脂の含有量が「初鰹」の12倍以上ある「戻り鰹」については〆が活きますが。
炙りの熱源については、ガス火<炭火<藁火の順に好ましいと思います。香りと温度の問題により。また、藁については無農薬の藁を調達する事が必須と言えるでしょう。
食べる時はここに注目!
鮨で初鰹を食べる時に注目するポイントはこちら!
- 香り
- 酸味
- 合わせる薬味や調味料
「初鰹」は繰り返しになりますが脂が穏やかな鰹です。なので、「パンチ」を求めるものではなく、「爽やかさ」を求めるもの。よって、鰹の血の香りと酸味が持ち味となります。
「戻り鰹」のような「脂のパンチ」は誰もにとって非常に分かり易い味ですが、「初鰹」の味わいは繊細で、楽しむ為には食べ手の経験も必要かもしれません。「初鰹」には白身魚とは異なる大味必淡の面白さがあるように感じます。
だからこそ、使用する調味料の選択は重要。職人の味覚を試されます。
比較的強い味の「初鰹」であれば薬味や和芥子を用いても死にませんが、いかにも「初鰹」らしい淡い味の場合には同量の薬味を用いると、「初鰹」らしさが死んでしまう結果となります。「初鰹」の香りと酸味を活かしているかどうか?が注目ポイントだと思います。
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鮨と魚をこよなく愛する、鮨ブロガーのすしログ(@sushilog01)でした。
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