こちらは『神田鶴八鮨ばなし』で名前を知られている、「諸岡親方」が開いた鮨店です。
諸岡親方は1866年創業の浅草橋・美家古鮨で修行され、有名なお弟子さんには新橋鶴八の石丸久尊氏がいらっしゃいます。
そして、石丸久尊氏のお弟子さんには、「新橋鶴八」の2代目親方である五十嵐寛和氏や「新ばし しみづ」の清水邦浩氏がいます。
さらにその後に…複数のお弟子さんがおられ、系譜が脈々と受け継がれています。
こちらの神田鶴八は、現在、田島道弘氏が暖簾を守っておられ、昔ながらの風情ある建物は鮨好き、昭和好きにとって堪らない魅力があります。
※その後、石丸久尊氏が親方となり、田島道弘氏は2018年7月に鮨処はる駒を開店されました
そして、お店の雰囲気に違わず、こちらは「お好み」で頂くスタイルです。
鮨種は札に書いてあるので、初めての方でも安心です。
ただ、お店は狭く、カウンター8席(+小上がり)のみなので、少し独特の距離感・空気感があります。
また、全てのタネに自信を持っておられるため、「今日のお任せは?」と聞くのは昔はタブーだったようです。
田島氏の握りのスピードはかなり速く、自身の経験に限って言うと、西大島の與兵衛の鈴木氏に次ぐスピードです。
そして、こちらのシャリは先代の頃より古米に赤酢を使用しているそうです。
しかし、赤酢特有の香りやクセは殆ど無く、全体的に穏やかな味わい。
塩気は低く、やや甘みがあるように感じますが、これはどちらかと言うと米自体の甘みかと思われます。
温度が少し高く安定していないところは老舗ゆえの特徴でしょうか。
こちらは写真撮影NGなので、以下、文章でご紹介します。
アオリイカ
肉厚な切りつけで、とろっとした食感。
真子鰈
熟成はそこまで掛けておらず、白身の強い食感を前面に。
鯵
爽快な香りで中々。
しおむし(鮑)
こちらで評判の高い鮑の塩蒸し。
夏の風物詩なので頂きましたが、申し分なく旨い。
食感は柔らかく、甘みを引き出しており、鮑の香りが心地良い。
煮ツメは程良い甘みで、コクも深い。
春子
割と強めの〆加減ながら、しっとりとした食感が印象的。
訪問した日は小鰭が無かったのが残念です。
蝦蛄
柔らかく茹でており、ジューシィ。
軽やかな食感に加えて、香りが強く、素材を活かした仕事。
赤貝
香り、旨味がやや弱い。たまたまでしょうか。
これは食運次第なので、致し方なし。
穴子
ふわっふわに煮上げており、食感はとろり。
シャリとの相性が良く、しおむしと並んでヒット。
玉子
しっとりした食感。鞍掛けで握る。
干瓢巻
柔らかめながらに、決してブニュッとしておらず、小気味良い食感。
味付けも良く、個性的な干瓢。
田島氏いわく、「昔は玉子を焼けて、干瓢を上手く仕上げられるようになって初めて一人前と言われたものだけど、最近は自分とこでやらない店が増えちまって…」とのこと。
僕も全く同感で、自分でガリを作らないお店も論外だと感じます。
また、望むらくは「おまかせ」だけというのも止めて欲しい…
なお、お会計は上記9貫+巻物半分で8,500円。
内容を考えると、満足度は高いと思います。
何はともあれ、江戸弁を話される田島氏との会話も相まって、非常に印象深いお店です。
ご関心のある方は、下記の系譜の記事を御覧ください。
店名:鶴八(つるはち)
シャリの特長:赤酢を使用しつつクセを排除した穏やかな味わい。
予算の目安:9,000円〜
最寄り駅:神保町駅から30m
TEL: 03-3262-0665
住所: 東京都千代田区神田神保町2-4
営業時間:12:00~14:00、17:30~22:00
定休日:日曜
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