大分では非常に珍しい、江戸前仕事を用いた鮨店です。
大分は九州でも特に生の魚を貴ぶ傾向にあると感じますので、鮮度の高い生魚に仕事を施し、赤酢のシャリと合わせるご主人は、
結構な異端児だと思われているのではないでしょうか(もちろん良い意味で!)。
2016年で開業11年目、今の場所に移転してから7年目との事ですが、年季の入った個性的な仕事を感じる事が出来、試行錯誤を繰り返し今に至る事は一目瞭然です。
握りは5手ほどで精確に握られているし、包丁の切り付けも良い。
更に、使用される器のセンスも良いため、総合的に魅力ある鮨店です。
天井は打ち放しコンクリートで、BGMはノラ・ジョーンズだったりするので、デートで使用されても落ち着いて頂けるでしょう。
お値段も極めて良心的なので、若い方でも安心して使えます。
頂いた後、非常に高い満足感を感じる事が出来ました。
ただ、訪問していささか残念だった点もあり、是即ち隣のお客さん。
途中から来られた方の体臭が結構キツく、鮨を頂きつつ、鼻を閉じていなければならないのが心底辛かった…。
こちらはお任せのみのお店なのですが、その方はお好みで頼まれており、常連さんなのだと推察されましたが、それならば余計に改善すべきだと思います。
折角良いお店なのに、食の楽しみを奪われてしまった次第です。
鮨店に香水を付けてきたり、飲食途中に(店外であっても)煙草を吸うのと同様に、体臭については徹底的にケアするのが、他の人へのマナーです!
そんな感じの悲しい事件がありましたが、味は良いので、気を取り直して下記にご紹介いたします。
頂いた日本酒は鷹来屋 純米生酒 山田錦85。
酒肴が少なく、握り主体のコースでしたので、1合のみ頂きました。
初いくら
ご主人いわく、大分には中々初物のイクラ(筋子)が入ってこないらしい。
出汁が良い塩梅に利いており、良きスターター。
縞鯵
蒲江産。香りがしっかりあり、脂は上質。
噛み締めるごとに甘みを楽しめる。
槍烏賊
甘みが非常に強く、柔らかにとろける。
塩は糸満の塩を使用。
関サバ
生ゆえに食感ぷりぷりだが、しっかり甘みがある。
鯖特有の癖は皆無。
滑らかな繊維質は舌を愛撫し、ひたすらに甘やかす。
これは非常に旨く、現地ならではの至福。
鰹
鹿児島産の戻り鰹。
キッチリと藁火で炙っており、燻香が良い。
酸味は爽やか。
ちなみに、お造りの調味料。
手前はニンニク醤油、真ん中煮キリ、奥カボスポン酢。
鱈子の山葵漬け
オリジナリティ溢れる酒肴。
山葵の爽やかな香りとピリッとした自然な辛さが良い。
塩鱈子を山葵醤油に漬けているとの事。
人工的な味わいの鱈子が多いので、尚更印象深い。
この後、握りに移行します。
シャリは前述の通り米酢に加えて赤酢を使用。
ほのかな甘みがあり、酢は割と強め(都内の赤酢のシャリとは無論異なります)。
酸味が米粒をコーティングしており、タネ(仕事)との相性が良い。
米粒はパラッとほどけるし、美味しいシャリです。
国東の新米を使用しているそう。
新米ですが、粘度は気になりません。
ガリ
甘みを付けつつ、シャープな香りが持ち味。
関サバ
なんと生で!東京の感覚からすると、吃驚仰天。
しかし、魚の力が強いので、違和感が無く美味い。
切り付けの厚みが良い。
槍烏賊
烏賊の甘みがシャリに合う。
縞鯵の腹先
これも生。関鯖同様に脂が良いので、シャリと合う。
ミナミマグロ赤身
漬け加減が強めで、塩気が少し気になったが、生が続いた流れとしては、意表をついてアリかもしれない。
ミナミマグロ中トロ
強い脂の甘みがシャリとのバランス良好。
鰹
ニンニク醤油を使用されており、パンチの有る味わい。
しかし、カツオの風味がしっかり有るので嫌味にならない。
烏賊と鯛の真薯入り茶碗蒸し
鯛の香りを感じる、ふんわりジューシィな真薯が美味。
カマス
昆布で〆ており、これは素晴らしい仕事。
昆布〆の塩梅に加えて火入れも良く、中心部は生の食感を残しつつ、きっちり熱を加えて脂の旨味を活性化させている。
コノシロ
小鰭ではなくコノシロと言うのが九州っぽい(熊本県に郷土寿司がある)。
これもまた〆の塩梅が良く、コノシロといえども香りに嫌みが無く、旨味や甘みも十分楽しめる。
太刀魚
火入れが良く、サラッと消える繊維質。
煮キリはもう少し少なめでも良い気がした。
車海老
国東産。茹で置きであったが、甘みが強く、身の柔らかみも保持されている。
赤海胆軍艦
臼杵産。強い甘みを残し、溶ける。
臼杵の海胆は始めて頂いたが、非常に上質。
穴子
とろろんととろける食感で、これぞ江戸前の穴子。
甘みの塩梅も良く、シャリの塩気、酸味と合う。
玉子
芝海老、芋に加えて白身魚も使用している。
みっちり、しっとりした食感で、旨味が強い。
椀
味噌の風味が良い意味で強く、大分らしい椎茸の風味も奏功。
干瓢巻
干瓢は力強い歯応えで、好み。
甘みを利かせつつ醤油とのバランスが良い味付け。
山葵がキリリと引き締める。
上記の内容で1万円少々と言うのは、非常に満足度が高い。
使用するタネは大分らしい地物が中心で、仕事は精度の高い江戸前。
大分で鮨を食べたいと思われる方には、申し分無くオススメ出来る優良店です。
店名:月の木(つきのき)
シャリの特徴:米酢と赤酢をブレンドしつつ、クセが無く、タネとの相性が良いシャリ。
予算の目安:8,000円~12,000円
最寄駅:大分駅から700m
TEL:097-532-1738
住所:大分県大分市中央町3-5-16 wazawaza103
営業時間:19:00〜23:00
定休日:不定休
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