こんにちは、滋賀をこよなく愛する、すしログ(@sushilog01)です。
こちら湖里庵さんは滋賀県は高島市マキノにあって、鮒鮓・ナレズシ料理を得意とするお店です。
鮒鮓とは、古来より琵琶湖の特産であり、握り鮨(江戸前鮨)の源流。
湖里庵さんでは、鮒鮓を駆使し一連のコースとして構成する、類まれな【鮒寿し懐石】を頂けます。
僕は大好きな滋賀県の中でも特に愛するお店だったのですが、2018年9月に台風21号によって壊滅的な打撃を受けてしまいました。
ニュースを聞いた時は、思わず血の気が引きました。
ただ、不幸中の幸いにも人命には影響が無く、財産とも言える蔵(蔵持ちの菌)も生きていたと聞いて、心から安堵しました。
復活を信じて。
そして、2020年1月に応援のため、母体である魚治さんを訪問しました。
その時は「2020年中の再開を目指している」とお伺いしましたが、実際に再開したのは2021年4月。
長い長い再生の時を経て誕生した「新生・湖里庵」。
前にも増して輝きを放ち、日本全国、いや全世界に誇るべき日本の名店だと確信しました。
本記事では、その素晴らしい御料理と類まれなる景観の素晴らしさをご紹介します!
なお、びわ湖放送が2年8ヶ月の映像記録を作成されています。
ご関心のある方は、記事の後にご参照ください(記事の最後にもリンクを張ります)。
湖里庵さんの鮒鮓は、240年近く続く古典的な製法で作られ、木桶で仕込み、2年以上熟成した傑作です。
タップできる目次
滋賀が誇る名店中の名店「湖里庵(こりあん)」とは?
湖里庵さんの経営母体は、1784年(天明4年)創業の老舗鮒鮓店である魚治さんです。
魚治さんは、「鮒鮓に苦手意識がある人でも美味しい鮒鮓」として知られ、グルメ漫画の『美味しんぼ』にも紹介されました。
出典:『美味しんぼ』5巻/第5話「臭さの魅力」119ページより(1986)
本作では日本人とフランス人が食文化で衝突したものの、「臭い食品」を食べて両国の文化を認め合うと言うストーリー。
「臭さ」は「香り」であり、嗅覚は食文化において極めて重要なファクターである事を伝えてくれる傑作です。
『美味しんぼ』5巻
鮒鮓に抵抗感の強かった栗田さんが、【鮒寿し茶漬け】に喜ぶシーンは、印象的です。
出典:『美味しんぼ』5巻/第5話「臭さの魅力」122-123ページより(1986)
【鮒寿し茶漬け】は、今でも【鮒寿し懐石】のお食事として提供されていて、全国の「栗田さん」を虜にしています。
湖里庵さんが誕生したのは、『美味しんぼ』後の1989年(平成元年)。
先代が旅館(魚治 浜の家)を改築する際に、小説家・遠藤周作から「湖里庵」という屋号を授与されたそうです。
この屋号は文学に詳しい方ならすぐに分かる通り、遠藤周作の雅号である「狐狸庵山人」から文字られています。
さらに、遠藤周作は「湖里庵に来なければ食べられないものを名物料理として考えなさいよ」とアドバイスを行います。
その結果、鮒鮓と琵琶湖周辺の食材を用いた唯一無二の御料理が誕生しました。
【鮒寿し懐石】は、今も昔も「湖里庵に来なければ食べられない」珠玉の御料理です。
そして、【鮒寿し懐石】は、先代から当代に受け継がれました。
魚治の7代目・左嵜謙祐さんの仕事について
現在は7代目・左嵜謙祐さんが腕を奮っておられます(名跡は7代目「治右衛門」)。
左嵜謙祐さんの修行先は、日本屈指の料亭である嵐山吉兆です。
【鮒寿し懐石】と言う変則的なコースであっても、緻密な調理技術が遺憾なく発揮されています。
一家相伝の鮒鮓と郷土の食材を独創的な想像力で編み、先代とは異なる御料理に仕上げられています。
伝統だけでなく、モダンな感性も加えた御料理は、次世代に継承されるべき唯一無二の御料理です。
ただ、左嵜謙祐さんは代変わりされた際、従来のお客さんから手放しで褒められたわけではないのではないかと推察します。
なにせ歴史があり、先代が編み出した【鮒寿し懐石】が独創的だからこそ、代替わりの御負担は大きいはず。
ご苦労があったことでしょう。
しかし、僕個人としては、初めて訪問した際に、既に素晴らしい腕前と発想を体感しました。
座敷にお姿を現さないスタイルで、お話すらしなかったのに。
そして、今回の新生によって、更に美味しく、完成度を更に高めておられました。
調理技術や見せ方の面に一層の洗練が見られ、同時に「鮒鮓の味覚の活かし方」も向上。
鮒鮓が持つ旨味、酸味、香りを効果的に用いられていて、再訪であるにもかかわらず初訪問時を超える感動を与えてくれる御料理でした。
また、マニアックなポイントとしては、鮒鮓のご飯の部分である飯の美味しさを強く感じました。
飯に関しては日本で最も旨いと感じたので、即ち、トップクラスの鮒鮓であると断言出来ます。
米、水、発酵の技に加えて、左嵜謙祐さんの仕事が奏功している証左でしょう。
最後に、大きく変わったのは提供スタイル。
前述の通り、以前は厨房からお姿を現さず、座敷にお見えになるのは女将さんでした。
つまり、クラシカルな「お座敷会席」の提供方法です。
しかし、「新生・湖里庵」では、左嵜さん自らカウンターに立ち、接客とご提供を行うスタイルです。
目の前で仕上げる御料理も多々。
つまり、「カウンター割烹」のスタイルに変更されました。
この点に、左嵜さんの新たな意気込みを感じ、今まで以上に応援したい!と心底感じた次第です。
「湖里庵(こりあん)」の感動的なロケーションと雰囲気
湖里庵さんがあるマキノは琵琶湖の北西部に位置します。
滋賀の言葉で言うと「湖北」エリアです。
そして、湖岸に面していて、江戸時代由来の船着き場の風情が独特の景観を生み出しています。
落ち着いた湖の港町は、全国でも類を見ない景観です。
お店の目の前には琵琶湖の穏やかな水面が広がります。
さざ波の音、水鳥の鳴き声、波紋、刻一刻と表情を変える琵琶湖の水面。
眺めているだけで心が穏やかになり、伺って良かったと実感します。
「湖里庵(こりあん)」の宿泊について
お店からの眺めも素晴らしいのですが、宿泊して味わう風景は最高の贅沢です。
「マザーレイク」琵琶湖を愛する人間には、至福の時を過ごせます。
到着すると、上生菓子とお茶で歓待頂きます。
お部屋は非常に洗練されていて、優雅です。
お風呂からも琵琶湖を眺められ、時を忘れてしまいます。
夜空には綺羅星がひしめき合い、静寂の中で眺めていると大体の事が些事に思えてきます。
お食事のみが15,760円のところ、宿泊(朝夕食付)は1名54,450円で、予約は2名以上のため108,900円(価格は税サ込)かかります。
数字として見ると決して安くはありませんが、体験価値としては申し分ない満足度です。
琵琶湖を眺めながらお風呂に浸かり、素晴らしい御料理を頂き、すぐに寛げる体験は、他に代えがたい魅力があります。
それでは、お待ちかねの実際に頂いた御料理について、ご紹介していきます。
「湖里庵(こりあん)」が誇る【鮒ずし懐石】の詳細
では、湖里庵さんの御料理を順にご紹介していきます。
記事は3部で構成されています。
順に、新生湖里庵さんの御料理、鮒鮓出汁の鍋【醍醐鍋】、かつての御料理です。
すしログ
2022年1月に訪問した際の記事(夕食)
2022年1月に訪問した際に頂いた、夜のコースの詳細です。
コースの内容
- 先付:氷魚
- 八寸:鮒鮓のとも和え、鮒鮓の甘露漬け、琵琶鱒の蕪寿司、柚の酢和え、里芋、鴨ロース、手長海老、銀杏とむかごの白和え、紅白なます
- 椀:イワトコナマズ
- 造り:鯉のあらい
- 鮒鮓餅
- スジエビのかき揚げ
- 鮒鮓のパスタ
- 小吸物
- 諸子の焼きもの
- お食事:鮒寿し茶漬け、香の物
- 水菓子:富田酒造の酒粕を用いたアイスクリーム
この度頂いたお酒
- 萩乃露、雨垂れ石を穿つ 純米大吟醸
- 冨田酒造、七本鎗 純米吟醸
- 松の司、黒松 純米吟醸
酒器で魅せてくれるのも嬉しい。
先付
氷魚、七本鎗 awaibuki スパークリング。
ジュレは出汁と酸味の塩梅が良く、非常に上品。
だが、そこにオリーブオイルを軽く利かせている点が洒脱だ。
一品目から、以前にも増して洗練されていると実感する。
氷魚の味の輪郭を殺さぬ調理に感嘆を覚えた次第。
八寸
お正月の色合いを意識した八寸。
右奥から反時計回りに、マキノの名物である原木椎茸キノコ水菜の柚の酢和え、鮒鮓のとも和え、里芋、鴨ロース、手長海老、鮒鮓の甘露漬け、紅白なます、琵琶鱒の蕪寿司、真ん中銀杏とむかごの白和え。
【柚の酢和え】は旨味が利いていて、爽やか。
椎茸も香りが良い。
カサの周りに包丁を細かく入れていて、技あり。
【銀杏とむかごの白和え】は異なる香りと食感の違いを楽しませる!
このような組み合わせは実に良い!
【手長海老】は香りによって、めでたい気持ちになる。
そして、【琵琶鱒の蕪寿司】は琵琶鱒の旨味が活きている。
蕪の香りや軽いホロ苦さと調和する。
身のなまめかしい食感も魅力だ。
蕪のコリコリ食感とのコントラストが楽しい。
鮒鮓のとも和えは、初手こそ酸味が鋭く走る。
あたかも柑橘のようだ。
しかし、その後、強烈な旨味が広がる。
出汁を使っているかのような旨味で凄すぎると実感。
ここまで旨味が強く、他のものとは異なるとは驚嘆に値する。
【鮒鮓の甘露漬け】は殊に白眉である。
2年熟成した鮒鮓から飯を落とし、地元の酒蔵の酒粕で漬け込んだ、この土地特有の鮒鮓。
甘みと粕の香りが良い。
独特な趣向がある。
それでいて、ナレズシ特有の酸味もしっかりとある。
塩気は穏やかで、上品。
全体的に未体験の味覚の組み合わせだ。
これは素晴らしいナレズシ!
椀
椀種はイワトコナマズを使用した蕪蒸し。
イワトコナマズは聞きなれない名前だが、琵琶湖と余呉湖の固有種である。
とろとろと甘みのある蕪の奥からナマズの野趣が顔を現す。
ナマズは加熱すると鯖のような風味になる。
サプライズに満ちた椀は八寸の気持ちの高ぶりを決して冷まさない。
造り
鯉のあらい。
調味料は、ちり酢。
身はプリプリで、パッツリと切れる、良き冷水〆だ。
噛み締めると奥から脂と旨味が広がり、古来の高級魚たる所以を胃腑の底から実感させる。
味蕾を突き抜けて感じる旨味に陶然。
臭みは皆無だ。
ちり酢も良き選択で、醤油よりも格段に合う。
鮒鮓餅
唐墨のように提供する点がユニークだ。
鮒鮓の強い旨味は唐墨に負けてはおらず、逆に唐墨には無い酸味が実に面白い。
餅の甘みと補い合い、取り合わせの妙と必然性を実感させる。
決して、単純に「唐墨餅を鮒鮓に置き換えただけ」ではない。
鮎のナレズシ
鮎の香りが活きていて、酸味が爽やかなナレズシ。
飯の粒感もあり、リズミカルだ。
そして、旨味がこれまた強く、噛み締めていると旨味と香りがこみ上げてくる。
鮎でナレズシを作られた経緯が面白く、なんと、奈良のさる料理人が発端であった。
「白つくも」の西原理人にしはらまさとさんは嵐山吉兆の兄弟子とのことで、頼まれて作ったそう。
「白つくも」がある奈良県の吉野川の鮎、美吉野醸造・花巴はなともえの手水で仕込んだとの事で、物語が素敵。
県を超えて修行仲間が新たな価値を創出するなんて、美しいではないか。
スジエビのかき揚げ
「琵琶湖八珍」のスジエビを使用している。
つなぎ非常に少ない!
よって、香りが抜群な上に、一口目から甘みが広がり、最後はまた香りに魅了される!
実に力強い味わいだ。
世代が分かってしまうが、ドラゴンボールの「元気玉」のようなかき揚げだと実感。
1匹1匹は地味な存在かもしれないが、合わさることで完全な主役になっている。
鮒鮓のパスタ
これは意欲的な創作パスタで、完成度が抜群だ。
チーズの代わりに鮒鮓の飯を使用しているようで、コクがたっぷり。
乳化させたような粘度もあり、濃厚な味わいは正に和製カルボナーラ。
あまりにも濃厚なので生クリームを使用しているかと思ったが、実際は牛乳であった。
しかし、カルボナーラには無い味覚を用いているのが創作的に奏功している。
そう、酸味だ。
酸味が実に鮒鮓らしい。
チーズの酸味は加熱により急激に弱くなるが、鮒鮓は別であり、それが創作パスタとして有効に機能している。
当初はパンを出していなかったそうだが、常連さんの要望で出したところ、定着したそう。
常連さん、ありがとう!
小吸物
香ばしく旨い定番の吸物だ。
鰹節のスモーキーフレーバーが、後半に食欲を刺激し、炙った頭の部分が香ばしく、ゆるやかに脂と風味を滲ませてゆく。
諸子の焼きもの
琵琶湖の冬の味覚であるモロコ。
3種の味で頂く。
塩、生姜醤油、山椒醤油の漬け焼きだ。
塩で頂き、まずは香りを楽しむ。
甘みのある繊細な美味しさもまた、他の小型淡水魚に無い味わいだ。
そして、琵琶湖の伝統的な食仕方である生姜醤油で頂くと印象が大きく変わる。
味付けで魚の異なる表情を楽しめるのは嬉しい。
なお、使用する醤油は高島市の中村醤油店のものだそうだ。
最後に、山椒醤油の漬け焼き。
これまた印象が変わり、時に肝の苦味が活きると感じた。
塩焼きのモロコが子持ちであったので、嬉しい時期だなあと感じたところ、実は「1月上旬は宝くじ級の確率ですよ(笑)」との談で、至極ラッキーであったようだ。
香の物
鮒寿し茶漬け
これが冒頭でお伝えした名物。
湖里庵さんの【鮒寿し茶漬け】は、鮒鮓の総合力を心から感じさせてくれる。
一言で述べると、傑作だ。
鮒鮓の旨味、酸味、香り、食感などなど構成要素が見事に一致している。
旨い。
さらに、飯も加えて、発酵させた米とフレッシュな米との出会いも演出しているところが面白い!!
【鮒寿し茶漬け】は単純なようで鮒鮓が良くないと空中分解してしまう御料理だ。
水菓子
富田酒造の酒粕を用いたアイスクリーム、マキノ産イチゴ。
アイスクリームはチーズケーキのようなコクが素晴らしい。
湖里庵さんは先付から水菓子まで、終始「湖里庵に来なければ食べられないもの」を楽しませてくれます。
飾られているのは、岐阜の加藤亮太郎さんの茶碗。
エピソードが素敵なので、是非とも尋ねてみてください。
2022年1月に訪問した際の記事(朝食)
2022年1月に訪問した際に頂いた、朝ご飯の詳細です。
朝ご飯は少しゆっくり目の8時半からスタートです。
まず、朝から左嵜さんにお会いできるのが嬉しい(笑)
そして、ただでさえスペシャルなカウンターを独占できるのは、宿泊者だけの特権です。
朝ご飯はベーシックに見えるが、細部にプロの調理が光り、贅沢です。
味噌汁のシジミは琵琶湖固有種のセタシジミだろうか?
1粒あたりが大きい!
豆腐は地元の真面目な豆腐屋さんのものと思われ、絹ごし豆腐で大豆の味わいをしっかりと楽しませてくれる。
分厚い出汁巻き玉子は甘み無しの関西味。
ジューシィで、ふわんふわんな食感。
炊き合わせの出汁の含ませ方は正にプロの味。
お米は流石に米どころの滋賀で大変美味しく、水も良い土地なので、香りが良く、実に旨い。
土鍋は僕も愛用している彦根の「一志郎窯」のもの。
開店祝いの贈り物だそうだ。
頂くこちらも嬉しくなる。
一志郎窯の土鍋「見事飯鍋」は素人でも簡単に美味しく炊けるので、オススメです!
そして、魚治さんと言えばな湖魚の佃煮。
氷魚とゴリ。
魚治さんの佃煮は本当に美味しい。
味付けの塩梅が良く、柔らかさと言ったら、他にはない。
醤油が利いていて、甘みは控えめなので、魚の風味を楽しめる佃煮なのだ。
お食事を頂いた後は、チェックアウトの10時半までのんびりと過ごします。
湖と水鳥を見ているだけで、時間があっという間に過ぎていきます。
そして、名残惜しい気持ちを抱きつつ、お店を出ます。
即座にはす向かいの魚治さんに立ち寄り、佃煮と鮒鮓をお土産に頂きます。
買い忘れると絶対に後悔するので、お忘れなきよう!
それでは、次に、なんと鮒鮓を出汁に用いる鍋【醍醐鍋(だいごなべ)】をご紹介します。
すしログ
2018年1月に頂いた【醍醐鍋(だいごなべ)】の記事
湖里庵さんの鍋は、超個性派です。
鮒鮓を得意とする専門店だけあり、なんと鮒鮓を出汁に使っています!
そして、名前も素晴らしく、【醍醐鍋】。
「醍醐」とは、日本古来より伝わる乳製品です。
「最高に美味しいもの」とみなされ、今や誰もが知る「醍醐味」の語源です。
同じく乳酸発酵食品である鮒鮓を用いた最高峰の料理…
と言う高い志と自負心をもって、【醍醐鍋】と命名されたそうです。
頂いた結論から先に申し上げると、ひとえに珠玉の鍋であり、唯一無二。
鮒鮓に抵抗が無い方であれば、感動する事は間違いありません。
鮒鮓を一匹まるまる使っていると言うツユは、香りはナレズシそのもの。
しかし、味わい的には鰹などの旨味と風味が緩衝材となり、鮒鮓の酸味が爽やかで良い塩梅。
具は地鶏と野菜で、品数が豊富ではないのに全く飽きません。
鮒鮓の旨味や酸味などが複雑な味わいを構築する、世界に一つの鍋料理です。
この度頂いた日本酒
- マキノの酒蔵・吉田酒造、竹生島・純米大吟醸
- 冨田酒造、七本鎗 純米吟醸
- 上原酒造、不老泉山廃純米
頂いた御料理は下記の通りです。
香煎
ホッと安らぐ一杯。
鯉の洗い
臭みは皆無なので、苦手意識を持つ人でも美味しく頂ける筈。
鮒鮓のとも和え
実に旨い酒肴。
この後、すぐに鍋に移行します!
醍醐鍋
鶏は地鶏との事。
銘柄は伺わなかったが、近江軍鶏だろうか?
胸肉は歯応えがしっかりしていて、酸味に加えて旨味が強い。
もも肉も歯応えを十分楽しめ、旨味が強く、皮が旨い。
食感も良好で、ぷるんぷるんと反発した後、パツッと切れる。
旨い鶏は皮で判る。
出汁に鮒鮓を用いていると言っても、鍋のツユは澄んでいる。
冒頭の通りバランスが秀逸であり、鮒鮓由来のまろやかな酸味と強い旨味が具に精彩を加える。
塩気は穏やかで、次第に具材の旨味が付加され、どんどん旨味が濃密な鍋となる。
野菜で特に印象深かったのは、葱。
とにかく甘い!
冬の滋賀の葱は本当に格別だ。
醍醐鍋においては葱の甘みにスープの酸味が加わり贅沢な味わいになる。
大根も風味豊かで甘かった。
香の物
鮒寿し雑炊
これはもう濃密な鮒鮓!
全てが鮒鮓になる。
鮒鮓を凝縮したかのような雑炊で、通常の【鮒寿し茶漬け】よりも遥かにパンチがある。
様々な旨味が混然一体となり、もはや完成度の高い「料理」であると感じさせる雑炊だった。
水菓子
お近くの吉田酒造さんの「竹生嶋」の酒粕を用いたアイスクリーム。
酒粕が濃密で美味!
2017年9月に訪問した際の記事
2017年9月に訪問した際に頂いた、コースの詳細です。
台風前の店舗の雰囲気をご紹介…
この度頂いた日本酒
- マキノの酒蔵・吉田酒造さんの竹生島、純米大吟醸
- 冨田酒造、七本鎗純米吟醸
- 上原酒造、不老泉山廃純米
頂いた御料理は下記の通りです。
生菓子、お薄
ほっと安らぐおもてなし。
鮒鮓酒
鮒鮨のフレイバーを活かしたお酒で、旨味と酸味も滲み出ている。
炙ってクセを飛ばし、香ばしさを付加。
八寸
鮒鮓のとも和え、鮒鮓の甘露漬け、鮎の南蛮漬け、鴨肉ミンチ玉子、スモークビワマス、ビワマスの子、ゴリ山椒、鮒鮓の握り鮨、鮒鮓のチーズ包みなど。
ともあえは強い酸味が良い!
そして、圧倒的な旨味があり、飯(いい)に硬い粒も残っている点が面白い。
チーズ包みは鮒鮓の酸味とカマンベールチーズの酸味が合体。
チーズの方がまろやかな酸味で興味深い。
鮒鮓の握り鮨はもち米に甘みを付加した酢飯で味覚的バランスを取る。
ゴリ(とれ始め)はしっとりした食感で、山椒を強く利かせつつ、ゴリの風味を楽しませてくれる。
全て、創作性が光り、テンションが上がる八寸。
椀
鱸と冬瓜の椀。
吸い地はかなりスッキリした出汁で、塩分も控えめ。旨い。
ミョウガと芽葱の量も良い塩梅。
ただ、鮒鮓を駆使した八寸の後だと旨味的に弱く感じるので、口直し的な位置付けを感じさせる椀であった。
ビワマスのお造り
圧倒的な脂!
しかも、香りも楽しめる。
素晴らしいクオリティのビワマスで、感銘を覚えた。
鮒鮓の天麩羅
鮒の身だけでなく、飯も天麩羅に。
油と衣の小麦感が合わさり、西洋的な趣を得る。
飯は香りが強まり、酸味も強め。
チーズ的な印象が強まる。
衣代わりに使用するパンはサクサク、もっちりで美味。
徳山鮓でも同様の天麩羅を供されるが、調理法的にこちらの方が食感が加わり上を行くと私見。
鱧と胡瓜の酢のもの
鱧は中々の旨味。
酢の塩梅が良く、胡瓜の包丁も上々。
個人的にベタな梅肉餡は無くても構わないように思うけれども。
鮒鮓を用いた冷製パスタ
最も変化球的な料理ながら、バランス良くまとめている。
トマトは甘みが強く、酸味も爽快にサポート。
また、シャクシャクと食感があるところが面白い。
爽快感を向上させている。
ただ、鮒のカットがやや大きいため、皮のブニュっとした食感がリズムを損ねる点が課題かと感じた。
本式のパスタであれば食感の調整も行う筈。
鮒鮓の小吸物
鮒鮓は強めに炙り香ばしさを強め、鰹を強く利かせた出汁でまとめる。
鮒鮓の香りと旨味が活き活きと躍動し、強いパンチを持った逸品。
後半戦で鼓舞する吸いもの。
鮎の塩焼き
鮎はいかにも琵琶湖らしいテイストの鮎!
小さいので個体差が大きく現れ、モノによっては焼き込みが足りない点や振り塩が強い点が気になる。
最後に頂いた三匹目は肝の旨味が強く満足感を抱いた。
鮒寿し茶漬け
酸味が利いたお茶漬けで面白い。
そして、旨味もしっかりで、これは素晴らしい。
鮒鮓の魅力を十分に感じさせてくれる〆であった。
水菓子
抹茶の氷に練乳と小豆、白玉を添えて。
小豆は甘みがしっかり付けられ、濃い目の抹茶の苦味とピッタリ。
白玉は香りがあり、歯応えも良い。
「湖里庵(こりあん)」のお店情報と予約方法
湖里庵さんの予約は、お電話のみとなります。
訪問予定日の2ヶ月前から予約開始となりますので、計画的にお伺いしましょう。
特に宿泊の場合は、Googleカレンダーにリマインダー登録して、確実に予約するのが得策です。
ただ、お電話するお時間については、良識的な時間帯にしましょう。
店名:湖里庵(こりあん)
予算の目安:鮒寿し懐石8,000円~、近江懐石5,000円~、宿泊30,000円~ →鮒寿し懐石15,760円、宿泊(朝夕食付)1名54,450円・2名以上
TEL:0740-28-1010
住所:滋賀県高島市マキノ町海津2307
営業時間:11:30~13:00、17:00~18:30
最寄駅:マキノ駅から1,500m
定休日:火曜
※完全予約制です
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中島 春紫:日本の伝統 発酵の科学
レネ・レゼピ:ノーマの発酵ガイド
ナレズシのポテンシャルと湖魚の魅力を再認識する、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事はNo. 97(2017年9月)とNo. 124(2018年1月)をもとに、最新の情報を大幅に加えた記事になります。
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