こんにちは、鰻も大好きな、すしログ(@sushilog01)です。
さて、今回ご紹介する「横浜野田岩」さんは、麻布に店を構える「野田岩」の兄弟店です。
(麻布が長男で、横浜が三男となります)
麻布野田岩は寛政年間(1789年~1801年)に創業された、東京屈指の老舗。
やや余談となりますが、江戸前の鰻食は1700年代に完成したとされております。
1600年代にも【鰻の串焼き】は存在しましたが、そのころは塩や味噌で食されていた模様。
醤油ベースのタレを用い、蒸しの過程を加えた【蒲焼】は1700年中頃に屋台として生まれ、次第に店舗化、洗練されていったのではないかと思われます。
(このあたりは鮨の歴史に似た部分があります)
また、東京で現存する老舗を列挙すると、下記の通り。
- 柴又・川千家:安永年間(1772年~1781年)
- 浅草・やっ古:「野田岩」と同じく寛政年間
- 駒形・前川:文化・文政期(1804年~1830年)
- 江戸川橋・はし本:天保6年(1835年)
- 浅草・色川:文久元年(1861年)
これら以外にも、生き残りの過程で大規模店舗化したお店もある次第…
「野田岩」もまた、支店を展開し、日本橋髙島屋やパリにも出店している状況です。
僕は麻布・野田岩は未訪問ですが、友人から「支店」ではない横浜野田岩がオススメだと聞き、天然鰻のシーズンに合わせて訪問しました。
なお、鰻は腹開き・地焼きの「関西風」と背開き・蒸しの「江戸前」については、「○○の方が美味」と言う声が聴かれますが、僕は必ずしも調理法の優劣ではないと思います。
ひとえに、調理法に加えて調味法ならびに養殖か天然か、更には魚体のサイズで適切な調理法は変わると考える次第です。
敬愛する食通・北大路魯山人ですらミスを犯しており、「焼き方は地方の直焼きと東京の蒸し焼きがあるが一も二もなく東京の蒸し焼きがよい」と言っております(『魯山人味道』)。
閑話休題。
横浜野田岩の鰻の話に戻ります。
「野田岩」は昔から天然モノを売りにするお店です。
よって、天然モノがある時期に狙いを定めて訪問するのが吉。
こちらは流石に強い仕入ルートを確保されているようで、一般的な旬よりも少し長い5月から12月下旬まで天然モノを楽しめます。
最も、仕入は天候と運も作用するもの。
必ず狙うならば事前の電話は必須でしょう。
ちなみに、時期によって異なる産地のものが頂けるので、食運が良ければとんでもなく上質な鰻に出会う事も出来るようです。
この度の訪問時(2017年11月中旬)は、浜名湖産を頂きました。
海水と淡水の間くらにところで獲れた鰻との事で、7,000円~12,000円までのレンジがありました。
ある程度のサイズを頂きたいので、奮発して1万円のものをオーダーしました。
尚、養殖モノであれば【竹】2,600円~【桜】4,800円と、格式に対して比較的リーズナブルな価格で楽しめます。
蒲焼き重と志ら焼き(白焼き)が両方楽しめる【かさね】5,200円もあり、天然モノで頂けるか確認しましたが、サイズ的に厳しいとの事でしたので、この度は天然モノの蒲焼き重に決めた次第です。
キリンラガー640円を飲みながら、待ちます。
酒肴は縮緬山椒と、鰻店では珍しい。
歯応えがあるタイプなので酒肴になりました。
浜名湖産然モノの蒲焼き重
こちらの塗り物は見事!
頂いてみると、皮下に脂がねっちりと詰まっており、力強い風味。
蒸しても食感があり、流石天然モノだと感じる。
矢張り天然は一に香り、そして食感。
脂の含有量は個体によって大きく異なる印象である。
ただ、食感があると言っても地焼きのようにブリブリした雄々しい食感ではないので、蒸しの仕事によって程良く楽しませてくれる。
江戸前の仕事は天然モノで本来の威力を発揮すると感じる。
そして、炭の香りは上品で、ふんわりと漂う。
紀州備長炭の上物を使用しているようだが、強過ぎないので鰻の香りを満喫出来る。
タレは醤油の主張は鋭くなく、それなりに甘みを付加しつつ、上品な印象を与える良い味わい。
お米は硬めだがもっちりしており、加水の塩梅や香りから新米だと分かる。
ご指摘したところ、今年から佐渡産コシヒカリに変更されたとの事(今までは魚沼産)。
尚、こちらはオーダー後、かなり早めに供される。
オーダーから30分~1時間待つのが当たり前と思っている鰻好きは首を傾げるかもしれないが、「野田岩」の仕事は捌き、蒸しまで事前に行っておく模様。
それは先代(麻布)の頃から変わらぬ仕事。
事前に仕込まれている為、オーダー後に焼き、漬け、焼きの過程を経て、そこまで待つ事無く頂ける次第である。
こちらは肝吸いの味も見事。
昆布の旨味を強く利かせた力強い吸い地で、鰹節も支えている。
かなり強いものの雑味やにおいは無く、天然鰻の肝を活かす。
肝はぷりぷりで香りが強く、面白いのが甘み。
これは特徴的であった。
そして、甘みを引き締める軽やかな苦味。
いやはや、凄い旨味の肝であった。
椀ものとして、これは流石だと感服した。
椀妻が少ないところも良い。
他に、香の物も自家製で美味しい。
浅漬けと糠漬けが盛られており、特に糠漬けは秀逸。
そして、山椒も良い香りで、邪魔しない程度にビリビリと痺れる。
鰻を活かす技のみならず、お米、肝吸い、香の物、山椒と、全ての完成度が高く、お値段に見合った味わいがあると体感しました。
天然モノを頂きたくなった際は、僕はこちらを選びたいと思います。
店名:横浜 野田岩(よこはま のだいわ)
食べるべき逸品:天然鰻を活かす秀逸な仕事の蒲焼き。
予算の目安:【竹】2,600円~
TEL:045-320-3224
住所:神奈川県横浜市西区北幸2-13-9
最寄駅:横浜駅から900m
営業時間:11:30~14:00、17:00~20:30
定休日:日曜
本記事のリンクには広告がふくまれています。