こんにちは、郷土料理が大好き、すしログ(@sushilog01)です。
諏訪にある「みなとや旅館」さんは、日本最古の神社である諏訪大杜の秋宮の近くにある歴史ある温泉宿です。
長らく訪問したい一軒でしたが、この度お伺いして最高の滞在となりました。
雰囲気のある温泉、土地に根付いた郷土料理、女将さんの温かみのある接客、そして周囲の雰囲気。
全てが印象深く、師走の下旬に訪問して一年の疲れが癒やされた次第です。
個人的に、日本が誇る名旅館の一つだと感じました!
意外にもお部屋は普通ですが、温泉、郷土料理、中庭によって唯一無二の体験となります。
タップできる目次
「みなとや旅館」さんは江戸中期に創業されたとされます。
正確な創業が分からない理由としては、1874年(明治7年)に火災のため記録が消失してしまった為です。
しかしながら江戸時代中期の文書に屋号が確認されるため、その頃の創業とされている次第です。
お宿は旧中山道と甲州街道の分岐点にあり、昔の街道の風情をかすかに残す町並み。
その趣とお宿特有のおもてなしに惹かれて、文化人に愛されてきました。
白洲次郎・正子夫妻、岡本太郎さん、小林秀雄さん、永六輔さんなどが常連だったそうです。
こちらの温泉は神話時代に開湯された伝説を持つ「綿の湯」を引いており、源泉掛け流しです。
「綿の湯」は諏訪大社のご祭神である女神、八坂刀売神(やさかとめのかみ)が開湯されたと伝えられています。
化粧用に湯を綿に含ませて置いたところから温泉が湧いた…と言う伝説を持ちます。
諏訪の地は出雲から逃げ落ちてきた御名方神(たけみなかたのかみ)=諏訪大明神と八坂刀売神(やさかとめのかみ)が治めていたと伝えられる、日本でも古い伝説を持つ土地なので、ロマンが溢れる温泉です。
(※厳密に言うと、御名方神は土着の神「洩矢神(もりやがみ)」を倒しますが、共存して治め続けた)
温泉のスタイルは極めて独特で、中庭のど真ん中に鎮座する「庭湯」。
闇夜に水面がたゆたう温泉に浸かり夜空を見上げると、岡本太郎さんもここで「芸術が爆発」したのかな…などと感慨深いです。
雰囲気のみならず泉質も素晴らしく、温度も熱すぎないため、じっくりと浸かって楽しめます。
そして、温泉とともに揺るぎない魅力となるのが郷土料理です。
豪華な食材は皆無で、季節感や旬も前面に出していませんが、この土地でしか頂けない食材と味があり、個人的には「おもてなしを感じる饗応料理である」と感じました。
諏訪大杜に参詣して土地の空気を感じ、名湯に浸かり、おもてなしの郷土料理を肴に諏訪の酒を飲む。
そして、単に美味しいと言うだけでなく、味が心に染みわたることで自分を顧みるきっかけにもなります。
東京では感じ得ない感覚を取り戻し、感性に刺激を与える。
これぞ旅先での贅沢です。
こちらの宿に限った話ではありませんが、土地に身を順応させることで初めて感じられる魅力が温泉宿、料理旅館には確かにあると感じる昨今です。
土地を歩かずして複数のお店を車でホッピングする旅では、お宿の魅力は十分に感じられないと実感します。
速度を落とすことが温泉宿を楽しむ秘訣の一つです。
それでは、夕食の内容を紹介しましょう。
「みなとや旅館」さんの夕食は酒肴が小皿でたくさん提供されて、地酒と肴を満喫したところで【桜鍋】が登場する構成です。
諏訪周辺には酒蔵が多数あり、「みなとや旅館」さんよりも南方の上諏訪には「諏訪五蔵」と呼ばれる酒蔵があります。よって、「みなとや旅館」さんが提供する酒は全てが地酒。
日本酒は蔵違いで山恵錦(酒米)を使用する銘柄に絞っているのが、実に素敵です。
長野県は県独自の酒米と酵母を多数開発している土地なので、このように酒米を絞られると県外の人間としては楽しくなります。
なお、使用される器は江戸時代から大正期の骨董品なのではないかと思いました。
「またたび」と「こんまるはじき(こんまらはじき)」の果実酒。このような果実酒で心が躍る人は確実にお宿に魅了されるだろう。
こごみは塩漬けにしたものを戻していると思われ、シャキシャキした食感。
ぬめりのあるなめこと辛味大根。
一見すると何の変哲も無いかもしれない。しかし、実際には飾り包丁で特別感を与えており、嬉しくなる。このような調理法でおもてなしを感じるかどうかは和食を味わう上で必須と言える感性だろう。味付けは優しい甘味を含ませていて、噛みしめると豆腐の香りがふんわりと広がる。仕事で土地の保存食の魅力を伝えてくれる点が素晴らしい!
甘く炊かれているので一杯目のお酒から銘柄を重いものにシフトさせてから頂くのが良い。
ワカサギはサクサクと香ばしい。
南蛮酢には酸味をしっかりと利かせつつ甘味は優しい。
胡麻油でさっと炒めた醤油味。シャキシャキした食感。
これまたシャキシャキした食感と旨味を楽しめる魅力的な山菜だ。
シャキッとした食感の後にとろりととろける。
馬肉らしいスッキリした酸味があり、同時にコクもある。艶めかしい口当たりだ。
苦手な人もいるだろうが、長野の代表的な郷土料理だ。イナゴ、ハチノコ、ザザムシ。ザザムシは油脂が強く、今までに頂いたものよりも特に美味しいと感じた。
サクサクに焼いた小鮒。
甘味を付けた味噌味の桜鍋。
ネギはシャキシャキした食感で香りが良く、実に甘い。甘味を付けた味噌と素晴らしい相性だ。もちろん馬肉自体も美味いのだが、味付けと取り合わせが見事だと感じた。これは葱の旬に訪問して良かった。魅力的な調理法である!
なお使用するネギは信州名産品の「松本一本ねぎ」で、生産者から厳選して仕入れているとの談。しかし、2024年は酷暑の影響が出たのか不作で、限られたものを寒風保存して大切に使用されているそうだ。
ご飯は天日干しのお米。
椀は蜆汁。
蜆は諏訪湖のものかと考えたが、どうやら現在はとれなくなってしまったそうだ。
塩気を利かせたガチの乳酸発酵させた野沢菜だ。
信州らしく林檎でスッキリと。
次に、朝食の内容を紹介します。
郷土性が非常に強く…というか、郷土のものしか提供せず、ボリュームも軽いので、これぞあるべき姿の旅館の朝ご飯だと感じました。
完熟柿のフローズン。とろとろで濃密な甘味。朝風呂後に爽快なフローズンからスタート。
素朴なものばかりだが、それが嬉しい。土地に来た甲斐を感じるというものだ。
ワカサギは前日の晩ご飯に頂いたものと調理法が異なり、こちらは土っぽい野趣を感じさせる。他に、コシアブラのような油脂を感じる香りのある山菜に、奥は蜆の佃煮。
そして、野沢菜の油炒めと蕗。
蕎麦の身は香りよくとろり。安らぐ味わい。
信州味噌を塗って香ばしく焼き上げた焼きおにぎり。香りが堪らない。
蕎麦の香りをたっぷりと楽しめる寒天。ちなみに、長野県は寒天の名産地である。
「みなとや旅館」さんは、お電話での予約となります。
公式サイトをご参照の上で、余裕を持ってご予約ください。
店名:みなとや旅館(みなとやりょかん)
予算の目安:一室二名利用の場合、平日 28,150円、休前日 30,150円など。
TEL:0266-27-8144
住所:長野県諏訪郡下諏訪町立町3532
最寄駅:下諏訪駅から700m
営業時間:チェックイン16:00より、チェックアウト10:00まで ※夕ご飯は18時もしくは19時より、朝ご飯は7時から8時より
定休日:不定休
諏訪エリアでオススメの飲食店
全国から訪問する価値のある名店!長野県茅野の「無名」 長野の豊かな恵みを満喫させて頂けるご当地イタリアン!茅野「カエンネ(ca’enne)」郷土料理のパワーを実感する、すしログ(@sushilog01)でした。
本記事のリンクには広告がふくまれています。