すしログ No. 261 鮨かず矢@薬院(福岡県)

こちらは2015年4月にオープンされた薬院の鮨店です。

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親方は「すし割烹」のやま中さんで修業された方。

まだ30歳の若手ですが、15歳の頃から13年もの修行を積まれたようです。

それを知り、この時代に天晴!と心から感じました。

お店は住宅地の一角にあり、席数こそ少ないものの、中庭を見渡せるため開放感があります。

お昼は5,000円のおまかせがあり、夜も1万円との事で、今の鮨業界を考えるとリーズナブルな価格帯です。

鮨かず矢さんの握りの概観

親方はたまに掌ポンをされますが、基本的に4~5手で速いです。

握られている姿も凛々しく、本山葵を使用されている点とともに、入店早々、期待を抱きました。

ただ、頑張っておられますが、頂いた感想としては、改善されれば明らかに良くなる点が幾つか散見されました。

改善難易度が低いものから順に、

1. 鮨を握り置きする事を止める

2. 昼は炭火で脂の多い魚を炙らない

3. 仕入れとタネの構成を工夫する

の3点。

応援の意味を込めて、率直に記載させて頂きます。

1については、街場寿司ならいざ知らず、高級なお店であれば甚だ無粋です。

鮨好きは職人さんと一貫一貫の握りを介してコミュニケーションを取りたいもの。

人数分の握りを溜め置きして供す行為は、コミュニケーションの放棄に等しい。

親方は清々しい接客をされており、当指摘は不本意かと思いますが、だからこそ早急に止められた方が良いかと思います。

何事も思う事と為す事は別物になりがちなので、勘違いされてしまうのは残念です。

2については、カウンターの前に炭火があるので、炙る度に燻香と脂の焦げる強いが立ち上がり、嗅覚に影響を及ぼします。

熱源として炭火の使用自体は嬉しく、施工上の工夫も感じますが、脂の含有量が多い魚を炙っておられる為、強い匂いが充満します。

夜と同じコースを頼んでおられる1組の為に使用されただけなのに、影響が甚大で、これには心底参りました。

嗅覚は鮨、魚料理において非常に重要な感覚。

これについても早急に改善された方がベターです。

最後に3については、現状、仕入れとタネの構成に哲学を感じられませんでした。

冬のアオリイカで始まり、大トロが繰り出された時は首を傾げた次第です。

大トロの後も、鯛、鰤と続き、各々の味覚を考慮すると不思議な構成でした。

そして、産地(の選択)についても必然性に乏しく、仲卸のオススメ通りに(鵜呑みにして)仕入れているのか?と感じました。

また、おまかせの中に〆た青魚が入らない点は、極めて味気ない。

〆は鮨の仕事の中でも職人の技術を表す重要なファクター。

しかも、小鰭と鯖が共に旬のタイミングであり、九州は全国レヴェルの産地であるので、用いられないのは不可解とも言えます。

以上、かなり玄人向けの指摘となり口煩くて恐縮ですが、自身の好きな産地、関心のある産地で素材を選び、

味覚と嗅覚を意識したタネの構成を行えば、更に良くなると思います。

地元の裕福な方中心に津々浦々の素材を供する「寿司割烹」になるか、福岡市外や県外から鮨好きを集める「鮨の名店」になるか、それを決める分岐点は現在であり、若い内に意識的な方向づけを行われると、持ち前の握りの技術が光るかと感じました。

恐らくこのように指摘される方はいらっしゃらないのかと思いますので、今後のためを思って、思った事を書かせて頂きます。

(ポテンシャルが無い職人、お店はそもそも記事を書きませんので)

こちらのシャリは少し柔らかめながら、粘度はそこまで高くありません。

赤酢を用いており、酸味は強めではないものの、酢の香りが強めです。

塩気は穏やかで、軽い甘みが付いております。

この度頂いた握り

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お酒は銘柄を聞いたところ、福岡のお酒だと庭のうぐいすでしたので、そちらを頂きました。

フルーティな飲み口のお酒となりますが、住吉酒販で軽くやった後だったので。

また、他の銘柄が、田酒、而今、寫樂、澤屋まつもとと言う顔ぶれだった為。

お酒の仕入れについても、もっと頑張って!と言うラインナップですね(笑)

今の時代、分かりやすい人気酒・有名酒ではなく、親方の個性や嗜好が分かる日本酒を揃えられる事を強く推奨致します。

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ガリ

甘みがかなり強めで、辛味も低い。

シャクシャクな食感が良い。

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アオリイカ

スミイカ全盛期にアオリイカから登場し、意表を突かれる。

ただ、産地によって旬が異なる為、あながち間違いではない。

細切りにしており、とろりとした食感はアオリイカらしい。

ただ、甘みはそこまで強くないので、墨烏賊がベターでは?と思ってしまった。

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鮪大トロ

ボストン産。とにかく脂がしっかりしており、ボストンの大トロらしい。

但し、スジが口に残る点は残念。

タイセイヨウクロマグロの大トロを用いる場合、筋のケアは必要不可欠であろう。

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甘みの強いアオリイカ、脂の強い大トロの後に鯛とはビックリ。

玄界灘産で、これは今回の中で一番良かった。

旨味が強く、押し上げてくるような香りが魅力。

香りを堪能していると、さらに旨味が高まり、美味しかった。

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対馬産。脂しっかりだが、ややシャリの風味が勝つ。

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車海老

天草。天草なので当然ながら養殖モノであり、茹で置きであったが、十分な甘みがあった。

食感も硬くなく、茹で加減が良い。

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茶碗蒸し

椎茸が香り良く美味しい。

トロトロな食感も好感。

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針魚

「酢〆」との事。結構な凝縮感。

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鮟肝

塩蒸しにされており、シャリとの相性が良かった。

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ねっちりした食感で、壱岐との事。

燻香が初手で香らず、途中から広がっていくのが良い。

ただ、店内は前述の通り焼き物の匂いが強かったが…。

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バフンウニ

海苔を直前に炭で炙っておられ好印象。

海苔や穴子は炭火で魅力が向上するので、嬉しい側面。

ぐるりと包んで供する方法も、海胆のクオリティを補っており良い工夫。

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トリ貝

三河産。割としっかり目の火入れで、力強い歯応え。

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浅蜊の赤出汁。火入れが強すぎて、浅蜊の身が硬く縮こまっていた。

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金目鯛

炙り。大根おろしとゴマを使用。

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穴子

むっちり詰まった身はとろりととろける。

柔らかすぎず、皮を活かす煮加減に個性を感じて好印象。

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出汁巻玉子

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トロの鉄火巻

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水菓子

福岡で今の時期のイチゴならば、旬の走りのあまおうか?

お会計より逆算すると、お酒は1合1,200円。

お酒の価格は良心の価格であり、食事の満足度も影響してくるものですが、現状、コース価格は「高い」と感じてしまいました。

まだまだお若く、十分に方向修正可能なお年なので、これからの精進を心から祈念しております。

鮨かず矢のお店の情報と予約方法

予約については、お電話で可能です。

店名:鮨かず矢(すし かずや)

シャリの特徴:赤酢を用い、酸味と塩気を抑え、酢の香りが立つシャリ。

予算の目安:お昼のおまかせ5,000円、夜のおまかせは10,000円〜

最寄駅:薬院大通駅から500m

TEL:092-526-1737

住所:福岡県福岡市中央区薬院4-15-29 香ビル1F

営業時間:11:30~14:00、17:30~21:00

定休日:月曜

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