こちらは唐津・虹の松原から少し奥まった場所…
鏡山の麓にある、素敵な日本料理店です。
店名の由来は、昔話。
「昔々、あるところに…」と言う始まりの文句に由来するだけあり、お店の建物にたどり着くと、誰しも期待が高まる事は間違いナシです。
「あるところ」さんの外観
築130年超の豪農の日本家屋を再生した空間は、優雅でありながら鄙びた幽玄さがあります。
聞けば、1年かけて自分たちで出来る限りの修復をされたそう。
ご夫婦で営んでおられるのですが、バイタリティに感心致しました。
さらに、家屋に山が付いてきたそうで(笑)、いわゆる摘み草もされております。
まさしく昔話の世界。
都会では実現不可能な田舎の贅沢なおもてなしが舌と心を喜ばせます。
「あるところ」さんのお料理の概観
しかし、「贅沢なおもてなし」と言っても、お料理は都会のような高級食材を多用したものではありません。
基本的には、家庭料理をプロが作ったような実直な和食。
週末限定の夜のコースは10,000円なので、冒頭に【小松菜煮浸し】が出てきた時は、正直なところ不安を覚えました。
しかし、中盤から黒鮑、鰤、猪と続き、クライマックスに向けて一気に心を掴まれました。
頂いてみて、冒頭の家庭的な料理はご主人の自信の表れだと実感。
基本的な調理技術や出汁の塩梅、使用する調味料などがハイレヴェルなので、何を頂いても安心感があると感じた次第です。
ご主人の平河直さんは福岡出身で、長らく東京で修業された方。
都会で培われた技術と唐津の食材が出会い、穏やかなのに個性のある平河さんの料理が生まれたわけだと感じました。
味付け、構成共に実直であるが故に食べ手を選ぶかもしれません。
派手な装飾やパフォーマンス、旨味の足し算を好む方には響かないでしょう。
しかし、実直なお料理がしみじみとした感動を呼び起こすからこそ、オープンから4年、このひっそりした場所で続いているのだと思います。
今の世の中で、このような料理を提供されるお店は大変貴重です。
料理に加えて、唐津焼の器を駆使した構成は、唐津で敢えて伺う価値があると感じました。
「裏山」の幸を活かし、四季折々の魅力を伝えてくれるお店かと思います。
屋内には薪の香りと温かみが充満しており、テーブルからすぐ近くにある厨房も親しみを感じさせてくれます。
なお、本記事を書いた後にミシュランを獲得されました。
ネット上の情報が非常に少ないお店に訪問した後、ミシュランを取る事が多いので、調査員の方は拙ブログを参考にして頂いているようです。
全国で何回か同じ経験がありますので…
「あるところ」さんのお料理の詳細
小松菜の煮浸し
前述の通り意表を突かれたが、出汁と調味料が良い事を確認。
なまこ酢
出汁が強く、酸味も良い塩梅。
なまこは赤ナマコで、茶ぶりか。
食感が良い。
モフグのお造り
モフグは地元唐津の呼び名で、標準和名はショウサイフグである模様。
フグはご存知の通りトラフグが屈指の知名度と魚味を誇り、マフグ、ヒガンフグ、ショウサイフグと次ぐ。
ちなみに、神奈川などの関東ではヒガンフグ=アカメフグも大衆的なフグとして知名度が高い。
サッと火入れして食感を軽く凝縮させ、旨味を活性化させている。
醤油にはカボスを混ぜているのか?
牡蠣の茶わん蒸し
牡蠣はぶつ切りにして使用。
茶わん蒸しはトロトロで滑らか。
牡蠣を入れてもムラが無いのは素晴らしい。
鮑の肝焼き
肉厚で柔らかく、むちむちした食感。
鮑もさる事ながら、肝を溶かし込んだ焼き地が魅力的。
香ばしく、味わい深く、磯の香りを上品に纏う。
鰤の塩焼き
皮目に効果的に包丁を入れ、自身の脂で「揚げ焼き」にしている。
よって、表面はパリパリ。
焼きの技術で食べさせる塩焼きだ。
元々は中国野菜である紅菜苔(コウサイタイ)も良き脇役。
器は殿山窯の矢野直人さんのもの。
モフグの白子の湯引き
トラフグ程に旨味は強くないが、優しい旨味を満喫。
器は隆太窯、中里太亀さんのもの。
蕗の薹の天麩羅
ちょうど当日道の駅で見かけ、心を惹かれた蕗の薹。
香り良く、爽やかな苦味。
味を活かしているのは、天麩羅の技術。
衣が薄く、しゅわっと溶ける。
これは、他の食材(特に山菜)の天麩羅も頂いてみたくなる。
地元産猪のしし鍋
全く予期せぬしし鍋の登場に歓喜!
地元で獲れた55キロの猪肉を、ふんだんに頂く。
鍋のツユが非常に美味しく、関西の鍋専門店に匹敵する完成度!
具の長ネギ、芹、椎茸も美味しく、心から満足させて頂いた。
個人的には、もう僅かに薄く切り付けられると、旨味を感じるスピードが上がり、更に美味しくなるかと思う。
お食事
雑炊かおにぎりかとの質問であったが、満場一致でおにぎり!
鍋なのに!?と思われる方も多いかも知れないが、鍋のツユが上品であり、羽釜・薪火炊きのご飯が美味しそうであったからこその選択。
あまりにも美味しそうな銀シャリだった。
そして、頂いてみて選択が正解だったことを痛感。
鍋のツユは別途吸い物として頂いた。
香の物も自家製であり抜かり無い。
そして、お代わりのおにぎりは、海苔を用い具は自家製の梅干しであった。
至福の一言である。
水菓子
黒糖饅頭。
手作りの、作り立て。
生地はふわふわで、粒あんは濃密な味わい。
なお、基本的にはお昼のコースをメインに提供されておりますが、週末のみ上記の夜のコースを頂けます。
お昼5,000円、夜10,000円と、明朗会計。
唐津の郷土性とともに今後のポテンシャルを感じさせるお店なので、またお伺いする日を楽しみにしております!
「あるところ」さんのお店の情報
あるところ(食べログのリンク)店名:あるところ食べるべき逸品:穏やかに静かな感動を導く唐津ならではの和食。予算の目安:昼のコース¥5,000、夜のコース¥10,000(土日祝日のみ)
最寄駅:虹ノ松原駅から2,600m
TEL:0955-58-8898
住所:佐賀県唐津市鏡732
営業時間:平日11:00~17:00、土日祝11:00~15:00、17:00~22:00
定休日:不定休
※完全予約制です
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