こちらは2014年に2回お伺いして以来、実に6年ぶりくらいの訪問となりました。
親方の野谷峯雄(のやみねお)さんは既に70歳を超えておられるはずですが、非常にお元気!
女将さんもお元気で、2020年6月に移転した新築店舗でひときわ輝いておられます。
そう、こちらは住所こそ昔と同じですが、最近建てられたビルの1階に移転されて、雰囲気が随分と変わりました。
明るくて、清潔な店内に生まれ変わりました。
さが美さんは自身が訪問した後、「早川光の最高に旨い寿司」で紹介され、2015年には38軒中1位となる「大賞」を受賞されたそうです。
使用している山葵が粉山葵なので大きなハンディキャップがありますが、それを超える魅力を早川さんが評価されたと言うのは凄いですね。
自身も非常に久々に訪問しましたが、以前感じたことは変わりませんでした。
つまり、
>「普段着の鮨屋」としては素晴しいお店で、築地で「美味しい鮨」を「リーズナブル」に頂くなら当店かと思います
というもの。
そして、今回改めて良いなあ…と思ったのが、お店のタネケースです。
カウンターに座ると、今やトレンドではなくなったガラス張りのタネケースが挨拶をしてくれます。
ガラス張りのタネケースは昔はお洒落とされていたそうですが、現在はどうしても「古めかしさ」や「大衆感」を与えてしまうものです。
しかし、さが美さんは違います。
丁寧に仕込まれた数々のタネが整然と並び、ハッと息をのむような美しさがあります。
昔も同じようなことを感じましたが、数100軒の鮨店を回った後に伺うと、ひと際強く美しさを実感しました。
昔ながらの鮨店の様式美は、高級店・予約困難店だけをスタンプラリー的に巡っている人には永遠に実感できないものでしょう。
そして、味については「実直」の一言。
こちらは何と1,000円のおきまりを未だに出されていて、誰もが楽しめる価格なのに、しっかりと仕事を施していて鮨の醍醐味を伝えてくれます。
おきまりは3つあり、千円刻みです。
そして、1,000円、2,000円、3,000円の違いは、貫数が7、8、9と変わるだけでなく、質も向上するとの事です。
この度は久々なので一番高額な【らん】を頼みました。
なお、1,000円のものを頼みつつ、お好みで追加する方法もオススメです(初回訪問時にそうしました)。
こちらはシャリもガリもクラシカルです。
「シャリは穏やかな酢加減で、塩分は控えめ、やや甘みを出している。大ぶりながらにほどけ具合は上々で、タネとの相性は良好でした」と6年前に書いていますが、変わりはありません。
全般的に穏やかな味わいで、砂糖由来の甘みを効果的に用いた、大ぶりなシャリです。
そして、ガリも甘みがある昔ながらののもの。
このシャリとガリは戦後の昭和の味を引き継ぐもので、戦前や現在のものとは異なります。
昔の時代に生きていない自分でも懐かしさを感じる味わいで、こう言った味のシャリこそ、日本人の圧倒的多数がイメージする酢飯なのではないかと思います。
シャリについては、ここ10数年以内で随分進歩したのだと感じますね。
【らん】
恐らく多くの読者の方と同様に、僕も握りは1貫ずつ食べたいと思っています。
しかし、今回さが美さんで頂き、技術の高い「盛り込み」は満足できるものだと感じました。
鮨の盛り付けは「盛り込み」と呼ばれ、一つの独立した技術ですが、廃れつつあります。
今でも1貫ずつ食べたい気持ちは変わりませんが、「盛り込み」に敬意を抱いた次第です。
お店の省力化の為の「盛り込み」は論外ですが、タネの選び方にセンスがあり握りの技術がある場合、中々楽しめるものだと伝えて頂きました。
【らん】のタネはミルガイ、赤貝、イカ(墨烏賊ではない)、鮪赤身、真子鰈、鮪中トロ、小鰭、車海老、海胆軍艦、鉄火巻き。
特に印象的だったタネは小鰭、ミルガイ、車海老となります。
小鰭は新子が出始めたタイミングなので弱い時期ですが、〆の仕事で魅力が引き出されています。
強めに〆て味を引き出しつつ、小鰭特有の臭みを出さず、食感をしっとり仕上げる仕事はベテラン職人さんならでは。
ベテラン職人さんの美味しい小鰭を食べると、「鮨は小鰭に止めを刺す」と言われる理由に納得しますね。
車海老はベテラン職人さんらしく茹で置きなのに甘みを十分楽しませてくれる仕事。
全体的に鮪が多いのも、昔ながらだと感じました(笑)
幼少の頃、鮨=鮪=高級と認識していたなあと、ふと思い出しました。
そして、味噌汁がまた美味しい。
浅蜊の出汁がたっぷりと滲み出ていて、滋味深い味わいです。
誰もがふらっと寄れて、江戸前仕事を楽しめるお店。
良いですね。
さが美さんのお店の情報
さが美(食べログのリンク)店名:さが美(さがみ)シャリの特徴:甘みがあり、塩気・酸味ともに穏やか。予算の目安:おきまり1,000円〜最寄駅:築地駅から500m、新富町駅から650mTEL:03-3546-2748住所:東京都中央区築地7-14-13営業時間:12:00~13:00、17:00~22:00定休日:水曜
※土曜のランチは不定休のため、訪問当日の11時頃に電話確認必須。日曜は夜のみである模様。
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