先月、1月末に銀座の無印(MUJI Diner)で「ます寿し作り体験」と言うイベントが開催されました。
これは期間限定で開催されたフェア<諸国祭 北陸編>に合わせて実施されたイベント。
富山の老舗・庄右衛門元祖関野屋さんが教えてくれるとの事で参加しました。
関野屋さんは1879年(明治11年)頃の創業で、富山でもかなりの歴史を誇る一軒です。
(ちなみに、現存する最古のお店は高田屋さんで明治5年創業との事です)
現在、7代目の関野伸也さんが先代、女将さんと共に暖簾を守っており、積極的にイベントに出展されているようです。
20代で笑顔が素敵なため「ますずし王子」の異名を持つそうですが(笑)、イベントでは女将さん(お母様)から叱咤激励されており、掛け合いが微笑ましかったです。
地方の老舗の方が郷土寿司や伝統料理を都会でPRするイベントは、これからも増えて行って欲しいものです。
何ぶん地元のみだと、伝統の魅力が「再発見」されにくいのは、筆者自身が地方出身なので痛いほど分かります。
現代の感性と伝統技術が合わさる事で、未来に残る食文化となると感じます。
関野屋さんがこだわるポイントとしては、天然のサクラマスの使用している点。
養殖モノは脂が強いので一般的にウケが良いのですが、魚の「香り」が弱くなったり、天然の香りから変質したりするのがネックです。
関野屋さんは、鱒乃寿しの醍醐味として「ネタの旨味とシャリの旨味の熟成の味」と考えているそうです。
この度のイベントについても天然モノを用意されており、しかもたっぷりなので満足度が高かったです。
今回はイベントであり、しかも厨房ではなかったので、鱒と酢飯の仕込みは事前にされておりました。
鮨研究者としては少々物足りませんでしたが、今度鱒を調達してゼロからやってみたいと思います。
とは言え、商品が入っていない鱒寿司用の容器(わっぱ)を見ると、否応無しにテンションが上がります。
ちなみに、鱒寿司のルーツは1717年(享保2年)に富山藩士である吉村新八が3代藩主・前田利興に献上した事によるそうですが、富山に定着した理由は別にあり、それが面白い。
実は、近代になり、わっぱ職人が職にあぶれそうになってしまったとの事。
と言うのも、わっぱ職人は鱒寿司よりも主に富山の薬売りの為に作っており、金属の容器が普及した事により、需要が減少したそうです。
そこで、わっぱ職人を救うべく、鱒寿司が名物料理として注目されて、店舗数が増加したとの事です。
こう言った名物のルーツは諸説あるかもしれませんが、人情を感じる素敵なエピソードだと感じます。
さて、肝心の作り方。
材料はお店のレシピではなく、イメージしたもの。手順は後述致します。
【材料】
・容器(食べ終わったものを転用)
・厚みのある輪ゴム
・鱒もしくは鮭 ※生食は厳禁!
・笹の葉8枚ほど
酢飯
・お米1〜1.5合
・酢+塩+砂糖(酢は50〜60mlで、他は好み)
鱒を〆る用
・塩
鱒を漬ける用(調味液)
・砂糖
・酢(100ml程)
まずは笹の葉を敷いていくのですが、底面の縁に合わせて直角に敷いていくのは、殊の外難しかったです。
ここが一番難しい。
無事に敷き詰めたらフタをセット。
ホッと一安心しました。
なお、鱒の仕事についてお伺いしたところ、塩で30分~45分〆てから、酢と砂糖の調味液に15分漬けるとの事でした。
脂が乗っていたら〆の時間を長くしても大丈夫なのは鯖と同じです。
次に、蓋を開け、容器に鱒を敷き詰めていきます。
押す際にある程度伸びるので、隙間があっても問題ありません。
そして、酢飯をギッシリ詰めます。
酢飯は西の鮨、鱒寿司の酢飯らしく、砂糖で甘みを加えたもの。
スッキリと味わいたい方は分量を減らしてシャリ切りすると良いかと思いますが、個人的に酢飯に甘みがゼロの鱒寿司は何か物足りないように感じます。
その後、笹の葉を織り込んで封印するのですが、この瞬間が一番気持ち良かったです。
おお!鱒寿司だ!と。
あとは、乾燥防止の保護シートを乗せ、フタをして閉じます。
仕上げに、専用の機械で押してほぼ完成です。
しかし、専用の押し機があるとは、驚きました。
家でやるときは大きめのまな板で押そうかな…
最後に竹とゴムで固定して、お店の包装紙を掛けると、市販品さながら。
なお、ゴムは下の竹に掛けて、上の竹をまたいで、下にまた掛けます。
最低半日寝かせてから頂きます。
開ける喜び…
押して寝かせると、鱒がみっちりと凝縮。
より鱒寿司らしくなっており、嬉しさひとしお。
鱒寿司って、幾つでも食べちゃいますね。
1ホール食べても飽きが来ません。
「ます寿し作り」と言うよりは
正に「体験」的なイベントでしたが、楽しかったです。
やはり、職人の方に教えてもらうと、我流では気付かない些細なポイントがありますね。
自分で実践して、「理想の鱒寿司」を作りたいと思います。
【手順】
1. お米を硬めに炊く(3cm四方程度の昆布と炊くと尚良い)
2. 炊きあがる間に鱒をサクの状態で〆る(満遍なく塩を振り30分~45分、脂の乗り具合次第)
3. 待っている間に砂糖と酢で調味液を作る(混ぜた後、馴染ませるのが良い)
4. 〆終えたら、酢で塩を流してから調味液に15分漬ける
(5. 調味液から引き上げ、冷蔵庫で30分〜60分寝かせると更に美味しい)
6. サクから切り身にする(細長く、厚みがある方がテンションが上がる)
7. シャリを切り、冷めるまで待つ
8. あとは上述・上掲の写真の通りの流れです
おまけ:富山でお伺いした事のある美味しい鱒寿司店
↓鱒寿司の応用で鮎寿司を作る料理人!
すしログ日本料理編 No. 174 御料理ふじ居@富山(富山県)
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