言わずと知れた浅草の老舗鮨店であり、1903年(明治36年)創業のお店です。
以前お伺いした際には【ちらし寿司】を頂き、煮ものの美味しさに唸ったものです。
外観は観光地である浅草であっても目を引く昭和建築。
12時に暖簾が挙げられるのを待つ間も、妙に楽しくなります。
今回は香港からの若いカップルもおられ、素晴らしい選択だなあ!と心底感じました。
そして、日本人の若いカップルであっても躊躇しそうな意匠なので、凄い勇気だなあ、とも(笑)
何はともあれ、何人、何歳であっても楽しませてくれる老舗であるのは間違いありません。
店内もまた唯一無二の雰囲気であり、古いカウンターに腕を置き、すり硝子から滲む陽光を肴に飲む酒は、勿論常温(ひや)の菊正宗720円。
田酒などの純米酒も置かれておりますが、この雰囲気なら菊正ですね(笑)
握りはお好みで頂きました。
頂いたタネ
・鮃
・カワハギ
・鯖
・小鰭
・春子
・煮イカ
・煮帆立
・穴子
・蛤
こちらのシャリは老舗らしく温度が低めですが、妙に馴染みます。
味付けは穏やかで、粒はもっちり。
表面にザラつきはありますが、老舗マジックで旨く感じさせます。
タップできる目次
紀文寿司さんの握り
ガリ
老舗では珍しく、甘みが限り無く弱い。
そして、辛く、食感はシャキシャキ。
今日び「クラシカル」な印象を与える「甘みのあるガリ」については、戦後に開店したお店から一般化されたのだろうか?
戦前から存在するお店では、砂糖は抑えられている事が多い気がする。
鮃
身質はしっとりで旨味が強い鮃。
香りも活きている。
この辺りは先々代(4代目)親方の関谷文吉氏が『魚味礼讃』の中で述べている白身の仕事を踏襲している。
カワハギ
こちらは鮃よりも格段にむっちりした食感で、肝がとろりと濃厚。
鮮度を感じさせる肝で大満足。
鯖
しっとりした〆加減で、脂がじんわり、とろりと広がる。
香りにキレのある鯖。
小鰭
身はしっとりだが、皮目の食感を残している。
塩気と塩による脱水の加減は軽く、酸味は浸透させている。
春子
超しっとりな春子で、香りを引き出している。
柔らかい食感、強い香りの春子としては非常に印象深い。
煮帆立
極厚な帆立で、漬け込みは上品かつしっとり。
あくまでも濃厚な煮ツメが味付けの主。
シャリの酸味が活きる仕事。
煮イカ
ごくごく柔らかく仕上げつつ、プツップツッと切れる。
全く硬くなく、イカらしい食感も出している。
そして、矢張り煮ツメが良い。
東京屈指の濃厚な煮ツメで、コクに加えて苦味が魅力。
軽い酸味もあり、若手の一般的な煮ツメとは大きく異なる。
穴子
身はしっとりで、皮目はむっちりと言う、面白い仕事の穴子。
蛤
これもしっとりに仕上げ、香り良く、肝の軽い苦味も楽しめる。
菊正宗の値段を引いて、算出すると1貫あたり600円少々。
この味わい、この雰囲気で予約せずお好みで楽しめるのは本当に素晴らしい。
これぞ握り好きの聖地の一つとも言える老舗だと思います。
紀文寿司さんのお店の情報
店名:紀文寿司(きぶんずし)
シャリの特徴:温度は低めながらにほどけ加減は良く、味付けは穏やか
予算の目安:3,000円〜
TEL:03-3841-0984
住所:東京都台東区浅草1-17-10
最寄駅:浅草駅(東武・都営・メトロ)から210m
営業時間:平日・土曜12:00~14:00、17:00~21:00、日曜12:00~19:30
定休日:水曜
本記事のリンクには広告がふくまれています。