こちらは白金台にあり、なんと週の内3日しか営業しないと言う「知る人ぞ知る」鮨店です。
オープンは2014年で、2018年にはdancyuの鮨特集で紹介されたお店。
5年ほど経つ今でも訪問する人は限られており、押しなべて「握り好き」であるように感じます。
おまかせは酒肴無しで、お酒の種類は2種類、お酒は1人3本までと規定されているので、「飲み鮨」が好きな方は自然と足が向かないようです。
お店は目黒通り添いのビルの2階にあり、「えっ、こちら!?」と思う場所。
それでいてお店に入ると上質な空間が広がっており、小体でありながら風情があり、昔ながらの鮨店を表現している内装が「握り好き」であれば琴線に触れる事でしょう。
地蔵鮓さんの握りの概要
握り一筋26年と言う親方、武田求弘さんの握りは、美しく、渋い。
使用するタネは多くが江戸前鮨らしいもので、流行りに流されない。
仕事もまた、古典的。
しかし、現代の味覚、標準を踏まえて調整されており、鮨の進化を体現する握りだと感じます。
そして、包丁が美しい。
魚を巧くする事は勿論、シャリとのバランスも考えられた切り付けは一目で記憶に焼き付くフォルムに仕上げられております。
そして、シャリも端正な味わいで、完成度が高い。
味付けは酸っぱくなく、しょっぱくなく、甘くない。
2種類の赤酢をブレンドし、砂糖は不使用です。
硬さも決して硬くはないのにパラりとほどけ、噛みしめるともっちり感があり、お米の甘みが広がるシャリです。
その上、温度管理もバッチリ。
武田さんは営業されていない日も河岸に足を運び、魚を仕入れ、お店で仕込みをされているそう。
売上を下げてまで「美味い握り」を探求されているとは、凄い覚悟と研究欲!
一風変わった店名ながら、地蔵菩薩は大地から水や米を取り出し、大衆を救ってくれる存在。
立像なのはいつでも大衆のもとに駆けつける為。
或るお寺で地蔵菩薩像を拝受された事を受け、店名にしたとの事。
ド派手な料理が持て囃される昨今、店名のみならず親方の握りもまた、渋く質実剛健だと感じた次第です。
頂いたお酒
辰泉酒造・京の華純米吟醸1,000円、信濃鶴純米700円
地蔵鮓さんの握りの詳細
いくら
ぶちっと弾けた後に、とろ〜んととろける火入れ。
出汁醤油に漬けて。
ガリ
甘みを付けつつ酸味が走り、辛みが引き締めるガリ。
薄切りながらに食感が強い。
鮃
利尻産。もちもちと艶めかしい食感。
香りも強く、次第に立ち上がる。
墨烏賊
出水産。ねっちり感と甘みも前面に出した墨烏賊。
バツリよりも少し軽い食感で、弾けた後にねっちり感が広がる。
小鰭
佐賀産。歯切れが素晴らしい小鰭で、旨味と香りが力強く込み上げてくる。
また、余韻も長く、良い〆加減。
今度は大きな型のものを頂いてみたい。
鮪赤身
塩竃産。ハケで煮キリを塗って、しばらく置いて軽い漬け状に。
ねっちり、もっちりと艶めかしい食感。
酸味よりも旨味を感じさせる赤身。
鯵
出水の釣りもの。酢〆。
とろけて流れるように滑らかな口当たりの鯵。
脂があり旨いのに上品。
車海老
大分産。かなり大型で肉厚、50グラム強。
茹で加減が絶妙で、食感、甘み、香りのバランスが素晴らしい。
茹で置きを直前に火入れする仕事だが、最初の茹で時間が工夫されている。
プチッ、バツッと気持ち良くほどけ、しっとりな繊維質を噛み締めると、海老本体の甘みに加えて味噌のコクが協奏する。
海老の香りはしっかりだが、全く臭みは無い。
海苔を噛ませている点が面白く、味覚的にも邪魔をしていない。
赤貝
出始めの閖上産。食べる前から香りが広がる赤貝。
旨味のきめ細かさは言わずもがな。
鮪中トロ
大トロに近い霜降り状の部分。極薄切りで部位違いを2枚づけ。
脂だけでなく香りと食感が異なるので、噛み締める程に面白い。
強い脂に異なる風味が加わり、徐々に口の中で融合してゆく。
切り付けの厚みの妙である。
蝦蛄
松島産。蒸し上げなので繊維質のほどけ加減と香りが段違いなのは勿論、
ツメが素晴らしい。
なんと、蝦蛄ツメとは!
現在は穴子の煮汁と骨で作る煮ツメを
蛤にも蝦蛄にも使う事が一般的だが、古くは別々に用いていた。
手間を掛けて古い仕事を再現されているのも素晴らしいが、味も良い。
コクが濃厚な煮ツメで、確かに香りは甲殻類。
穴子のツメよりも相性が格段に良い事を体感した。
春子
身と皮目で〆の塩梅が異なる。そして、皮目を軽く炙る。
〆ながらしっとりしており、生に近い独特の〆加減。
鮪大トロ
かなり細かい包丁なので歯切れが良い。
脂だけでなく香りもある大トロ。
海胆軍艦
海苔の香りが良く、海胆も低温でありながら甘み十分。
鯖 追加
房州勝浦産。
ぷりっと〆られた身から脂が滲み、グイグイとテンションを上げる。
香りは爽やかに感じさせる。
あらゆるお店と異なる〆加減の鯖。
ボタンエビ 追加
島牧(積丹半島から南方)産。昆布〆
ボタンエビらしくブツッと弾け、とろっとろにとろける。
脱水が良く、昆布の香りは極々弱い。
山葵は少し多めに使用。
穴子
対馬産。濃厚でビターな煮ツメ!
ひもきゅう巻
閖上産だからこその巻物。
玉子
スフレ状のしゅわっと感が低く、しっとりと馴染んだ玉子。
海老の香りは上品。
以上、トータルで23,000円ほど。
13貫+いくら先付、巻物、玉子に2貫追加しただけですが、圧倒的な満足度で驚きました。
決して安くはありませんが、各々の存在感が強く、他に無い仕事を楽しませてくれるのは凄い。
営業日以外に研究されている成果を舌をもって感じさせます。
好みは分かれるかと思いますが(個人的にはそれが良い)、古典的な仕事が好きな握り好きならば、驚く事は間違いないかと思います。
地蔵鮓さんのお店の情報と予約方法
予約はお電話のみとなり、お電話は営業日以外でも可能とのことです。
営業日が限られているので、余裕を持って予約することが鉄則です。
店名:地蔵鮓(じぞうずし)
シャリの特徴:塩加減と酢の酸味が絶妙な万能型で、硬さと温度もバッチリ。
予算の目安:おまかせ15,000円〜
最寄駅:目黒駅から500m、白金台駅から550m
TEL:03-3445-5301
住所:東京都港区白金台3丁目18-5 NKビル2F
営業時間:木・金・土曜の18:00~21:00(最終入店は19時半まで)
定休日:日曜~水曜
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