こちらは創業を明治中頃にまで遡ると言う、大阪鮓の老舗中の老舗です。
第二次世界大戦中の空襲により資料が灰燼に帰したため、正確な創業年は不明ですが、創業から100年を超えるのは間違いなさそうです。
お店の存在は、当ブログの読者様より知りました。
心からお礼申し上げます!
大阪で大阪鮓の老舗と言えば、矢張りたこ竹さん、吉野鯗(よしのずし)さんが頭に浮かびます。
創業年はそれぞれ天保2年(1831年)、天保12年(1841年)と桁外れに古い歴史を誇りますが、たこ竹さんは休業されているのが心底残念なところ…
こちら寿し寅さんの当代大将は齢80を超えて尚、矍鑠(かくしゃく)たる動作で伝統的な大阪鮓を作っておられます。
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寿し寅さんの外観・内観
お店は大通りに面していながら、時代から取り残されたような趣深い外観。
時代に研磨された白木のテーブルが清々しく、店内の匂いは清浄そのもの。
空間だけで、大将のお人柄と誠実な味わいである事が予見されます。
そして、店内の壁にふと眼を走らせると、「美食不中飽人喫」の札が。
びしょくほうじんのきつにあたらず。
解釈がなかなか難しい漢文(禅語)に思いますが、読者の方はいかがでしょうか?
寿し寅さんの鮓の詳細
さて、この度は冬の寒い時期でしたので、第一の目的は【蒸しずし】でした。
【蒸しずし】は京都の印象が強い鮓ですが、大阪にもあったとは!
むしろ京都ではなく「明治初期に大阪で編み出されたもの」とする説もあるようですが、俳人・内藤鳴雪が元治〜慶応の折(1864年〜1868年)に新京極で食したとの記録があるそうなので、大阪よりも京都が発祥の地、と言うのが正しいところのようです。
とは言え、こちらの【蒸しずし】を頂き、京都との違いに驚きと喜びを抱いた次第です。
なお、【蒸しずし】だけでなく矢張り【大阪ずし(押し寿司)】も頂きたかったので、両品オーダーしました。
余ったら包んで頂こう…と考えていたのですが、難なく完食しました(笑)
ちなみに、上記メニューは3カ国語表記で素晴らしいですね(老舗なのに!)
【蒸しずし】
まず、ワイルドな見た目に心を掴まれました(笑)
錦糸玉子は京都の一般的なものよりも幅が広く、海苔がまぶされ、イカの切り身が鎮座しております。
逆から見ると、さらにキクラゲがたっぷりと。
胸を躍らせて一口頂いてみると、一口目から魅了されてしましました。
酢飯には甘辛く炊いた微塵切りの椎茸と刻んだ穴子ががまぶされており、熱して酸味がたった酢飯に馴染んでおります。
椎茸は非常に細かい微塵切りですが、他の具材は結構大振りなカット。
具の口当たりから、見た目にそぐわぬワイルドさを感じさせます。
ただ、一体感は高く、全体的なバランスに長けていると思いました。
海老オボロは自家製であり、海老の風味があります。
具の味付けや酢飯は関西鮓としては甘くありません。
卵が甘く、香ばしいので、印象が強まります。
酢飯の酸味はキリリと利いており、時折海苔がアクセントに。
イカは甘みよりも食感役。
見た目のワイルドさとは裏腹に、酢飯の酸味も相まって端正な味わいの蒸し寿司であると感じました。
ガリだけでなくフキ、牛蒡、油揚げの炊いたものが付いてくるところが人情(笑)
【大阪ずし(押し寿司)】
作られている姿には、長年培われた冴えがあります。
体重を掛けて勢いよく2、3度押し、素早く押し箱を回転させ、異なる角度からまた1、2度ほど押す。
大阪鮓の真骨頂を目の当たりにしました。
まず海老から頂いてみると、今までに無いほど、海老に塩を浸透させている点に驚きました。
酢飯に挟んだ椎茸の甘みと風味と合わさり、他には無い味わいになっております。
鯛はみっちりと〆ておられ、噛みしめると昆布の旨味が広がり、更に白板昆布の酸味と風味がかぶさります。
穴子はしっかり焼かれており、ぎゅっとした身は香ばしい。
見た目こそ無骨ですが、全て個性を感じさせる唯一無二味わいでした。
酢飯は冷たいものの、不思議と美味しい…
みっちりしていても米粒は立っており、これもまた大阪鮓の手練れの職人の技ゆえかと感じた次第です。
味とともにご主人の人情を味わうべく、再訪したいと思います。
寿し寅さんのお店の情報
寿し寅(食べログのリンク)店名:寿し寅(すしとら)予算の目安:蒸し寿司1,200円、大阪寿司1,800円最寄駅:桜川駅から140m
TEL:06-6561-4014
住所:大阪府大阪市浪速区桜川2-3-1
営業時間:11:00~20:00
定休日:日曜、祝日
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閉業されました!
ST様
ご報告を頂きまして、誠にありがとうございます。
残念ですね…
閉店前に頂けたのがせめてもの救いです。